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収益物件は大規模修繕工事を実施した方がいい理由!修繕内容やかかる費用

近年、不動産投資の人気の高まりもありマンションやアパートなど、収益物件を管理している人も多くいらっしゃるかと思います。

ただ、物件を管理するにあたって心配事も。

中でも大規模修繕工事には、不安を感じるケースも多いかと思います。

今回の記事では、収益物件の大規模修繕工事に関して解説していきます。

マンション等の収益物件が大規模修繕の実施で高値で売れる理由

マンションや賃貸アパートなどの収益物件は、大規模修繕工事を実施することで資産価値が高まり、より高値での売却が可能になります。

その主な理由は以下の3点です。

購入希望者が融資を受けやすくなる

収益物件の購入には多額の資金が必要になるため、金融機関からの融資が不可欠です。

しかし、金融機関は老朽化した建物には積極的に融資を行いません。

なぜなら、将来的に大規模修繕が必要となり、リスクが高いと判断されるためです。

一方、適切な修繕工事が実施されている物件であれば、融資審査で高い評価が得られます。

リスクが低いと判断されるため、融資を受けやすくなるのです。

実際、不動産会社大手のアパマンショップの調べでは、大規模修繕工事後の収益物件は約89%の確率で融資が通ります。

一方、修繕前の物件では融資が通る確率は約57%にとどまっています。

価格交渉されにくい

適切な修繕工事が実施されていない物件は、修繕費用の見積もりが難しいため、購入者から値下げ交渉を受けやすくなります。

しかし、大規模修繕が済んでいれば、今後数年間は大きな費用がかからないことが明確です。

そのため、売主の期待する価格で取引できる可能性が高まります。

購入希望者の印象が良くなる

大規模修繕後の物件は、外観や共用部分が美しく、最新の設備が導入されているなど、魅力が高まっています。

老朽化した建物に比べ、購入希望者の印象は格段に良くなります。

その結果、反対に競争率が上がり、売却価格が高くなる場合もあります。

このように、マンション等の収益物件では、大規模修繕工事を実施することが、売却価格を高める重要な要素となっています。

収益物件の資産価値を維持・向上させるためにも、計画的な修繕工事の実施が不可欠なのです。

大規模修繕工事の修繕内容と項目別の相場費用

大規模修繕工事では、老朽化した建物の設備や構造物を計画的に直して建物の長寿命化を図るため様々な工事を行います。

行われる主な修繕内容と、その費用相場を見ていきましょう。

外壁工事

マンションの外壁は、日々の風雨に最も晒される部分です。

そのため、外壁のひび割れやタイル剥がれ、サイディング材の劣化などの不具合が発生しがちです。

外壁工事では、これらの不具合を補修・防止することが目的です。

修繕内容

  • クラック(ひび割れ)の補修
  • タイルやサイディングの張り替え
  • 外壁の塗装
  • 付帯部分(鋼板部分)の錆止め塗装

相場費用

建物の高さや足場の必要性、立地条件によっても費用が変わってきますが費用相場は以下のようなものとなります。

工事内容単価目安戸建て(33坪)の場合マンション(1住戸)
外壁塗装6,000円〜12,000円/㎡60万円〜120万円20万円〜40万円
クラック補修1,000円〜3,000円/箇所3万円〜10万円1万円〜3万円
タイル張替12,000円〜20,000円/㎡120万円〜200万円40万円〜70万円
出典:リフォーム産業新聞2022年データ

給排水設備工事

給排水設備は、建物の水回りを支える重要な設備です。

長年の使用でさび、詰まり、劣化などの不具合が生じがちです。

給排水設備工事では、これらの不具合を解消し、設備の延命化や水漏れ対策を行います。

修繕内容

  • 給水管や排水管の取り替え
  • 排水口や排水トラップの詰まり除去
  • トイレの取り換え
  • 台所の流し台やシンクの取り換え

相場費用(一般的なマンション1住戸の場合)

工事内容費用目安
給水管取り替え10万円〜30万円
排水管取り替え15万円〜45万円
トイレ取り換え5万円〜15万円/台
システムキッチン取り換え30万円〜100万円
出典:カリフォルニアリフォーム「水まわり設備の修理・交換費用」

給排水設備の修繕費用は、配管の長さや工事の難易度、建物の構造によって大きく変動します。

漏水による二次被害を防ぐため、早期の修繕が賢明です。

給湯設備工事

給湯設備は、シャワーや風呂、台所などの温水を賄う設備です。

経年劣化により不具合が生じると、追い焚き不良や水漏れ、極端な場合は給湯ができなくなる可能性があります。

修繕内容

  • ガス給湯器やエコキュートの取り替え
  • ガス給湯器の部品交換(熱交換器、無線リモコンなど)
  • ふろ給湯器の取り替え
  • 給湯配管の取り替え

相場費用(一般的なマンション1住戸の場合)

工事内容費用目安
ガス給湯器取り替え(24号)20万円〜40万円
エコキュート取り替え(370L)70万円〜120万円
ふろ給湯器取り替え30万円〜60万円
給湯配管取り替え10万円〜30万円
出典:カリフォルニアリフォーム「給湯器の交換費用」

長期間使い続けると、ガス給湯器はつろ火不良や水漏れ、エコキュートは断熱性能の低下などの不具合が発生します。

事故やトラブルを未然に防ぐため、適切な時期の給湯設備工事が重要です。

ベランダ・バルコニー工事

ベランダやバルコニーの劣化は、美観を損なうだけでなく、手すりや床板が外れて大きな事故につながる恐れもあります。

そのため定期的な点検と修繕工事が不可欠です。

修繕内容

  • ベランダ防水工事
  • 手すりの取り替え
  • 床板の張り替え
  • ドレンの詰まり除去
  • ひび割れ補修

相場費用(一般的な4階建て集合住宅の場合)

工事内容平均費用
ベランダ防水工事(4階分)80万円
手すり取り替え(4戸分)60万円
床板張り替え(4戸分)50万円
ドレン詰まり除去(4戸分)6万円
出典: リフォムでりっく「ベランダの補修費用事例」

立地場所や施工条件によって工事費用は変動しますが、初期費用をケチると将来的に大がかりな工事が必要になる可能性があります。

屋上防水工事

マンション屋上のひび割れやコーキングの劣化は、雨水の浸入を招きます。

そのまま放置すると内部の木材が腐敗し、構造上の問題が生じるリスクがあります。

修繕内容

  • ウレタン防水層の打ち替え
  • 屋上防水トップコートの塗り替え
  • 笠木の取り替え
  • 排水口周りの防水処理
  • コーキング打ち替え

相場費用(一般的なマンション300平米の屋上の場合)

工事内容平均費用
ウレタン防水工事150万円〜300万円
トップコート塗り替え50万円〜100万円
笠木取り替え30万円
排水口防水処理10万円
コーキング打ち替え20万円
出典: リフォーム費用ガイド「屋上防水の費用相場」

防水工事費用は面積に比例して高くなる傾向があり、手抜き工事は絶対に避けるべきです。

適切な工事で雨漏りのリスクを最小化しましょう。

玄関やドアのリフォーム

玄関ドアはセキュリティと防犯上の重要な役割を担っています。

長年の使用で傷んだり、新しい防犯性能が求められたりすると、ドアの交換やリフォームが必要になります。

修繕内容

  • 玄関ドアの取り替え
  • ドアクローザー交換
  • ドア塗装
  • 鍵やシリンダー交換
  • 門扉の取り替え

相場費用(マンション1住戸の場合)

工事内容費用目安※一戸当たり
玄関ドア取り替え(介護環境対応)30万円〜60万円
ドアクローザー交換3万円〜5万円
ドア塗装5万円〜15万円
シリンダー交換1万円〜2万円
門扉取り替え30万円〜50万円
出典: リフォーム産業新聞「玄関ドア交換費用」

防犯性能や利便性の向上、バリアフリー化対応など、リフォームのメリットは大きいです。

玄関は住戸の顔でもあるため、適切なリフォームが不可欠です。

電気設備関連の工事

電気設備は建物の命綱ともいえる重要な設備です。

長年の使用で配線が古くなったり、新しい設備への更新が求められたりすると、電気設備の工事が必要になります。

修繕内容

  • 幹線・分電盤の取り替え
  • 照明器具の取り替え
  • コンセント増設
  • 非常用照明・誘導灯の取り替え
  • 電気錠やインターホンの取り替え

相場費用(一般的なマンション1住戸の場合)

工事内容費用目安
分電盤取り替え10万円〜20万円
照明器具取り替え(4室分)8万円〜16万円
コンセント増設(4箇所)4万円〜8万円
非常用照明取り替え3万円〜5万円
インターホン取り替え5万円〜10万円
出典:リフォームなび「電気工事の費用相場」

電気設備の老朽化は漏電や火災の危険があり看過できません。

また、省エネ性能の向上のためにLED照明への切り替えなども検討されます。

設備の現状に合わせた適切なタイミングで工事を行いましょう。

空調設備関連の工事

空調設備は、マンションの快適性に大きく影響する重要な設備です。

長期使用による老朽化、新しい高効率モデルへの乗り換えなどが、工事のきっかけになります。

修繕内容

  • エアコン室外機・室内機の取り替え
  • 中央管理方式への更新
  • パッケージエアコンの取り替え
  • 24時間換気設備の取り替え

相場費用(一般的なマンション1住戸の場合)

工事内容費用目安
エアコン取り替え(6畳用)15万円〜30万円
セントラル管理システム導入80万円〜120万円
パッケージエアコン取り替え40万円〜70万円
換気扇・環境換気設備取り替え10万円〜20万円
出典:リフォームお家臣「マンションのエアコン取り替え費用」

マンションの場合、個別の工事費用は比較的安価ですが、全戸で行うと工事費が高額になります。

省エネ性、快適性、メンテナンス性を考え、費用対効果の高い設備に統一する工夫が賢明です。

共用部の補修工事

マンションの共用部分は多くの住民で共有されるスペースです。

その老朽化は美観を損なうだけでなく、事故のリスクも高まります。

共用部の補修工事で、安全性と快適性を維持することが大切です。

修繕内容

  • 外廊下の手摺り取り替え
  • 階段室の内壁補修と塗装
  • 共用廊下の床のクッション張り替え
  • 集会所の天井や壁の修繕
  • エントランスホールの改修

相場費用(一般的な30戸のマンションの場合)

工事内容費用目安
外廊下手摺り取り替え80万円〜120万円
階段室内壁塗装(6階分)100万円程度
廊下床張り替え(6階分)150万円程度
集会所の壁天井補修と塗装30万円〜50万円
エントランスホール改修50万円〜100万円
出典:駅ビル・マンションリフォーム組合「共用部分の補修費用」

共用部の補修工事は全体に影響するため、計画的に実施する必要があります。

費用は戸数に比例するため、修繕積立金を適切に設定しておくことが肝心です。

エレベーター等の工事

エレベーターはマンション住民の重要な移動手段です。

老朽化すると安全性が低下したり、バリアフリー化への対応が求められたりするため、定期的な修繕工事が不可欠です。

修繕内容

  • エレベーター機器の更新
  • エレベーター昇降路内の防耐火対策
  • かご内仕上げ材の張り替え
  • インターホンやボタン類の取り替え
  • バリアフリー化対応(車椅子対応など)

相場費用(マンション6階建て1基の場合)

工事内容費用目安
エレベーター機器更新800万円〜1,200万円
防耐火対策(6層分)100万円〜150万円
かご内装修繕50万円〜100万円
インターホン取り替え20万円程度
バリアフリー化工事100万円〜200万円
出典:リフォーム産業新聞「エレベーター更新費用」

エレベーターは高額な設備です。

修繕積立金を十分に確保し、将来の更新工事に備えることが賢明です。

また、介護対応など、ニーズに合わせたリフォームを検討するのも良いでしょう。

消防用設備の工事

マンションでは法令で定められた消防用設備の設置と定期点検が義務付けられています。

老朽化した設備の更新や、法改正に伴う設備追加を行う必要があります。

修繕内容

  • スプリンクラー設備の更新
  • 消火器ボックスの取り替え
  • 避難器具(避難はしご、避難袋)の更新
  • 誘導灯や案内板の設置
  • 自動火災報知設備の更新

相場費用(一般的な30戸のマンション6階建ての場合)

工事内容費用目安
スプリンクラー設備更新(6層分)500万円〜800万円
消火器ボックス取り替え(30箇所)30万円程度
避難器具一式50万円〜100万円
誘導灯・案内板設置100万円程度
自動火災報知設備更新300万円〜500万円
出典:リフォーム産業新聞「消防設備工事費用」

消防設備は命に関わる重要な設備です。

法令順守と安全性確保のため、定期的な点検と適切なタイミングでの更新が必須です。

初期費用をケチると事故のリスクが高まります。

修繕工事を行うタイミングや周期の目安

国土交通省が発行する【民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック】によると、建物に関して想定される不具合のタイミングについて以下のようにまとめられています。

屋根塗装・補修→11~15年目
防水・葺替→21~25年目
外壁塗装→11~18年目
タイル張り補修→12~18年目
給湯器・エアコン交換→11~15年目
階段・廊下鉄部塗装→4~10年目
塗装・防水→11~18年目
給排水管高圧洗浄→5年目
取り替え→30年目
参考:民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

この目安で改修工事が計画されることが多いですね。

収益物件の修繕費を抑えるポイント

ここまで、収益物件の修繕費用について解説してきましたが、かなりの金額が想定されるということがわかります。

お金がかかるからといって、修繕工事を行わないというのは建物の価値も下げますし危険度も増し事故が起これば取り返しのつかないこととなります。

不動産物件を保持した時点で、修繕工事は不可欠なものとなります。

少しでも修繕費を抑えるポイントを見ていきましょう。

  • 定期点検をしっかり行う
  • 小さい不具合はすぐに修繕する
  • 品質の高い材料を使用する
  • 実績がしっかりした施工会社を選ぶ
  • しっかりと管理してくれる管理会社を選ぶ

コロナウイルスに関連し、建築業界も材料の高騰など様々な困難もありますが、技術の進歩もあり近年では非常に質の高い材料が出てきています。

質の良いものを使用すれば、建物自体の質も上がり長持ちしやすくなります。

実績があり、親身に計画してくれる施工会社を選ぶことも修繕費節約のために重要です。

収益物件の大規模修繕工事にかかるコストと収益

収益物件は、通常の住居用マンションと違い、住人が変わったり年数がたてば家賃を下げないといけなくなることも。

そうなってくると住民の数によっては修繕工事のための、費用を準備するのも難しくなってしまうこともあります。

収益物件の修繕工事にはどれくらいかかるのか?コストと収益について考えていきましょう。

  • 月10万円の部屋が20ある賃貸マンション
  • 10年目の改修工事を行う
  • 収益は10万円×12カ月=1年で120万円×10年間=1200万円×20部屋=2億4000万円
  • 通常マンションの大規模修繕工事例から546,150円×20部屋=1億923万円

単純に見ると十分収益があるように感じられますね。

ただ、これはあくまでも10年目の改修工事をイメージしています。

築年数を重ねると、家賃は値下げする必要がありますし、建物の劣化が進むため修繕費用は上がっていきます。

また、マンションが常に満室であれば良いのですがもちろん空室の可能性もありますので、収益と修繕費用のバランスは考える必要がありますね。

マンションにかかる修繕費は?

マンションは、大勢の人が住む建物です。

定期的な点検や、修繕工事を中長期の期間で計画し行っていくことが基本となっています。

収益物件に関わらず、マンションの修繕工事にかかる平均的な修繕費について見ていきましょう。

大規模修繕工事の場合

大規模修繕工事は、近年ではガイドラインの改訂が行われ18年周期で行われるケースもありますが、築10年ごとに計画されるケースもあります。

マンションの規模にもよりますが、通常の居住用分譲マンションでは以下のような金額が想定されます。

11~15年目546,150円
(一戸当たり)
21~25年目1,158,580円
(一戸当たり)

分譲マンションでは、この金額を修繕費用として各家庭が積み立てを行うこととなります。

中規模修繕工事の場合

中規模修繕工事は、大規模修繕工事までの中間くらいの期間で行われることが多く、汚れや亀裂など目に見えてわかる不具合を修繕することが多いです。

一戸当たりの負担額も、大規模修繕工事よりも抑えられた金額となります。

5~10年目85,250円
(一戸当たり)

小規模修繕工事の場合

小規模修繕工事は、日常で感じる不具合などを都度修繕を行うものです。

収益物件では、入居者退去の際に行うクリーニングや修繕工事が同じですね。

修繕内容によっては、大きい金額になることもある工事です。

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