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マンション大規模修繕の足場は必要?設置するメリット・費用の計算方法を解説

マンションの大規模修繕工事では仮設の足場を設置します。作業員が効率的かつ安全に建物の修繕を行うには、足場の設置は必要不可欠です。

しかし、本当に足場は必要なものなのだろうか、と疑問に思っていませんか?

マンションの規模によっては、足場の設置には百万円以上の費用がかかることも少なくありません。

大規模修繕は既に高額な出費ですから、可能な限りコストを削減したいと考えるのは自然なことです。

管理組合員やマンションのオーナーが足場の必要性や費用相場を理解しておくことは、大規模修繕を成功に導く重要なポイントです。

この記事では、マンションの大規模修繕で足場の設置が必要な理由や費用相場、足場の種類について解説していきます。

マンション大規模修繕工事で足場は必須

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、足場費用は全体の22.8%を占めるそうです。

この割合からも、足場の設置費用は比較的高額であることが伺えます。

コストをできるだけ削減したいという考えは理解できますが、マンションに限らず、建物の大規模修繕において足場の設置は不可欠です。

ただ、なぜ足場を設置しなければならないのでしょう?。以下では大規模修繕で足場の必要性とその理由について解説します。

円滑に大規模修繕を進める

マンションの大規模修繕において足場が必要になるのは、主に外壁の修繕工事です。

マンションの周囲に足場を組むことにより、、作業員は高所など、マンションの隅々までスムーズに移動することができます。

これにより、修繕工事は効率よく進行し、時間とコストの節約にもつながります。

また、足場は労働安全衛生規則に則って設置されます。作業員の安全と安心を確保することで、施工品質が向上し、事故のリスクも低減されます。

安全に工事ができる

マンションの外壁工事を行う場合、高所でも作業員が安心して工事を進められるよう、安全性を確保する必要があります。

足場を設置することで作業員の足元が安定し、転落などの事故を未然に防ぐことができます。

また、上からの作業用具の落下を防ぐという意味でも足場の存在は重要です。

そのため、足場は作業員のみならずマンションの居住者や近隣住民の安全を守るために欠かせないものです。

事故やトラブルの予防

足場は、養生シート(飛散防止シート)と共に設置されることが一般的です。

この養生シートは、作業員が高所から落下するリスクを減らし、塗料の飛散などによる事故やトラブルも防ぐ役割があります。

また、工事中に発生する騒音やほこりの拡散を抑える効果があります。

ただ、養生シート(飛散防止シート)は、足場がなければ設置できません。

マンション大規模修繕の足場費用相場

足場は作業員・居住者・近隣住民の安全を守るために必要なものですが、養生シートの設置においても、足場は重要な役割を担っています。

マンションの大規模修繕は、建物の現状に応じた工事を行います。

そのため、実施する工事の内容は回数ごとに変わり、それに伴い足場費用も変動します。

工事金額における足場費用の割合は総じて2〜3割です。

国土交通省の調査によると、工事総額に占める足場費用の割合は約2〜3割とされていますが、具体的な足場費用は工事の規模や条件によって異なります。

足場の費用相場を把握することは、適切な施工会社を選定する際の目安となります。

ここでは、足場の費用相場・足場の種類および単価・足場費用の計算方法について紹介します。

足場費用の計算方法

足場費用の計算式は次のとおりです。

施工面積×単価

※施工面積は(建物外周+8m)×高さ

足場はマンションの外壁から離して建物を囲むように設置するため、外周に8mが加算されます。

足場の設置にかかる期間

足場の設置・解体期間は、工事の種類や規模によって異なりますが、平均的な日数は以下のとおりです。

規模設置にかかる平均日数解体にかかる平均日数
小規模マンション(50戸未満)10〜20日間3〜6日間
中規模マンション(50〜100戸未満)15〜30日間5〜10日間
大規模マンション(100戸以上)およそ1ヶ月※状況によるおよそ20日間

足場の種類と平均単価

マンションの大規模修繕工事で使用される足場は主に3種類です。

足場の名前単価相場
枠組足場1,000〜1,500円/㎡
単管足場500〜800円/㎡
クサビ緊結式足場(ビケ足場)800〜1,200円/㎡
吊り足場3,500円/㎡〜

足場と共に設置する養生シートの単価は1平方メートルあたり150〜200円が目安になります。

以下では、各足場の特徴や主に使われる建物について紹介します。

枠組足場

枠組足場は、マンションの大規模修繕工事に限らず、ビルや戸建てなど様々な建物の工事で使用される足場です。

枠状に溶接した鉄骨と床板をクレーン車で積み上げて組み立ていきます。強度が高い上に、他の種類の足場と比べ、組み立てや解体作業が比較的容易で、短期間で作業が完遂するのが特徴です。

しかし、枠組足場は部材の種類が多く、クレーン車も使用するため、コストがかかります。また、狭い場所や複雑な形状の建物では使用が難しい場合があります。

単管足場

単管足場は、単管と呼ばれる直径約5センチの鉄パイプとつなぎ止め金具を組み合わせて作られる床のない足場です。

主に戸建て住宅や小規模なマンションなど、低層の建物やスペースが限られた場所で使用されます。 

非常にシンプルな構造であるため、建物の形状にあわせて足場を自由に調整することができ、設置費用も比較的低めです。。

しかし、単管足場は床板がなく、2本のパイプの上を歩く設計なので、転落の危険性があります。

また、構造上揺れやすいので、枠組足場やくさび緊結式足場に比べて安全性が劣ります。

クサビ緊結式足場(ビケ足場)

クサビ緊結式足場は、ヒゲ足場とも呼ばれ、一定間隔に緊結部(くさびポケット)が設置された支柱の鋼管に、手すりや筋交などに付いているくさびをハンマーでポケットに打ち込んで緊結する足場です。

主に、低・中層の建物や狭いスペースで使用されています。

ハンマー1本で組み立て・解体ができるため、作業が効率的で、コストも抑えられます。

しかし、組立・解体作業中に金属音が響くことがデメリットです。

吊り足場

吊り足場は、地面から組み立てあげていく通常の足場とは異なり、構造物の上からチェーン・パイプ・金具・作業板を吊り下げる足場です。

主に橋梁工事や高層マンションのメンテナンスなど、高所での作業で使われます。

他の足場に比べて設置の手間がかからないため、吊り足場を用いれば工期を短縮することができます。

また、充分な作業スペースがない場合にも吊り足場は適しています。

ただ、空中で作業を行うため、落下対策など安全性を重視する必要があります。

吊り足場には以下の2種類があります。

  • 吊り枠足場…既成の足場を吊り下げるタイプ
  • 吊り棚足場…吊りチェーンで井の字の形に組んだ足場用単管・角型鋼管などを吊り下げ、作業板をかけるタイプ

必要に応じて追加される足場

必要があれば、以下のような足場が追加される場合があります。

  • 先行足場…建物の新築工事において、あらかじめ完成時の高さまで足場を組む方法。主に低層の住宅で使われる。墜落のリスクが低減されるのがメリット。費用は外部足場の費用+1平方メートルあたり400円〜
  • 稼動式足場…下部にキャスターがついた足場。ローリングタワーとも呼ばれている。高所での作業に適しており、内装工事・電気工事・防災工事などで主に使用される。費用相場は1日あたり1段1,500〜8,000円。

マンション大規模修繕工事の足場設置から解体の流れ

マンション大規模修繕工事の足場の設置から解体までの流れを把握しておくことで、工事全体のスケジュールも見えてきます。

ここでは、マンション大規模修繕工事で足場を設置する際の流れを紹介します。

管理組合や近隣への案内

大規模修繕工事を実施する前に、居住者だけではなく、近隣にも周知しておきましょう。

特に騒音の影響が出そうな地域には挨拶状を、ある程度影響が出そうな地域にはお知らせチラシを配布すると効果的です。工事期間についてもお知らせしましょう。

事前に知らせることでトラブルを避けることができます。管理組合や周辺への周知が完了したら足場工事に入ります。

養生シート設置

足場の組立作業が完了したら、今度は仮設足場に養生シートを張ります。

どのような養生シートを使用するかは施工業者と相談しましょう。

大規模修繕工事開始

養生シートが設置されると、大規模修繕工事が開始できます。

可能な限り、居住者や周辺地域への影響を防ぐため、事前に対策を講じましょう。

足場解体

大規模修繕工事が終了したら、足場の解体です。

解体の際、金属音を含めた騒音が発生する可能性が高いため、改めて居住者や周辺に周知しておくとよいでしょう。

点検と清掃

足場が解体されたら、大規模修繕工事が計画通りに実施されたのか点検を行います。

点検後、不具合がなければ清掃を行い、工事完了です。

マンション大規模修繕工事の足場費用を抑える方法

足場費用を抑える4つのポイントを紹介します。

無足場工法を利用する

無足場工法とは、その名の通り足場を組まず、ゴンドラや、ロープを使って工事を行う工法です。

工事費削減のために採用されることが多く、近年は無足場工法を積極的に採用する企業が増えています。

ロープを使用する場合、作業員はフルハーネスと呼ばれる器具を装着し、ロープを器具に取り付けて屋上から降りて現場で作業を行います。

ゴンドラを使う場合は、ケージと呼ばれるゴンドラを屋上から吊り下げ、作業員が中に乗って作業をします。

いずれも足場が不要なため、短時間で作業を開始することができ、足場が組めない狭い場所でのピンポイント作業にも最適です。

ただし、建物の形状によっては作業が不可能な場合もあり、また風の強い日は安全上、作業が難しい場合もあります。

足場が必要な工事をすべて行う

屋根工事以外にも足場が必要な工事はたくさんあるため、改修工事をまとめて行う方法も有効です。

例えば、工事を2回に分けると、足場を2回組まなければなりません。

工事をまとめて行えば、足場代1回あたり15~20万円ほど節約できます。

管理会社に施工業者選びを丸投げしない

大規模修繕工事の施工業者選定をマンション管理会社だけに任せると、修繕費が高額になる可能性があります。

足場の設置だけで数百万円、修繕費全体で数千万円かかるためです。

コストパフォーマンスがよい施工業者を選びたいのであれば、管理組合が中心となって検討することをおすすめします。

相見積もりを依頼する

足場の相場を紹介しましたが、これはあくまでも相場であり、施工費用は業者によって異なります。

そのため、相見積もりを取ることで実際の足場費用を確認でき、費用を節約できる可能性があります。

足場代は大規模修繕工事の総工事費の20%程度が目安ですが、施工業者によっては10%程度になることもあります。

また、相見積もりを取るメリットは、足場の費用のほか、工事全体の価格を知るうえでも有効です。

足場代だけにとらわれず、大規模修繕工事に取り組む際は、トータルコストを考えるようにしましょう。

マンション大規模修繕の足場設置に関する注意点

マンション大規模修繕の足場費用を確認する際や、工事を開始する前に、注意点も確認しておきましょう。

注意点を押さえておかなければ、工事の依頼後に金銭トラブルや近隣住民からの苦情が発生する可能性があります。

ここでは、足場設置に関する注意点を紹介します。

足場費用が無料のときは理由を確認

キャンペーンで「足場代無料」を謳う建設会社があります。

完全に無料であればお得ですが、額面通りに受け取らず、必ず内容を確認しましょう。

足場代が無料であっても、他の項目が高額であれば、トータルのコストは良くありません。

瑕疵保険に加入している施工業者に依頼

大規模修繕工事の瑕疵保険とは、施工完了後に修繕箇所に瑕疵や欠陥があった場合に修繕費用を補償する保険です。

例えば、竣工後に窓のサッシから雨漏りした場合、施工業者が瑕疵保険に加入していれば、保険会社が事故状況を確認して支払いを決定し、修理費用が支払われます。

万が一、施工業者が瑕疵保険に加入していない場合、倒産などで修理代金が支払われなかったり、賠償責任を回避してトラブルに発展する危険性があるでしょう。

瑕疵保険に加入している施工業者に依頼することは、大規模修繕工事を円滑に進めるうえで大切なポイントとなります。

隣接する土地への足場の侵入を防ぐ

足場を組む際、隣地をまたぐ必要がある場合があります。

隣地をまたぐ可能性がないかを早めに確認し、可能であれば隣地の所有者に相談しましょう。

近隣や居住者に理解を求める

隣地をまたぐ足場に限らず、マンションの大規模修繕工事を行う際には、あらゆる可能性を考慮し、近隣居住者の協力が必要です。

例えば、足場設置時に発生する騒音や、風通しや日当たりが悪くなる可能性を説明しておけば、後々のクレームを最小限に抑えることができます。

また、足場設置に必要なスペースを確保するため、バルコニーに置いてある車や鉢植えの移動をお願いする可能性があることを近隣居住者に事前に説明しておくとよいでしょう。

防犯対策をする

足場を組んだり、飛散防止用のメッシュシートを貼ったりすれば、その間にある団地の景観はどうしても悪くなります。

そのため、空き巣や不審者が入ってくるかもしれません。

本格的な大規模修繕工事が始まる前から、足場が組まれたら戸締まりを徹底するなど、居住者の皆さんは防犯対策を行いましょう。

また、近所の方にも空き巣対策の案内をすることも大切です。

マンション大規模修繕足場の必要性まとめ

マンション大規模修繕の足場について解説しました。

まとめると、

  • 総工費の約20%を足場設置費用が占めることもある
  • 足場にはいくつかの種類があり費用が異なる
  • 居住者や近隣には事前に工事の案内をする

マンションの大規模修繕工事を効率よく、安全に安心して進めるためには、足場が欠かせません。

足場設置を含め、大規模修繕工事全体の費用に対するコストパフォーマンスが高い施工業者を選びましょう。

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