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脱気筒とは?屋上の防水工事で必要?仕組み・役割・用途・種類などを解説

脱気筒について知りたい人

脱気筒について知りたい人

脱気筒とは?
脱気筒はシート防水で使う?
防水工事の脱気装置の役割は?
脱気筒は何平米で使う?
ウレタン防水通気緩衝工法で脱気筒を設置する理由は?

脱気筒には、どのような役割や用途があるか知っていますか?

防水工事の際に取り付けることになったものの、「本当に必要なの?」「何のために必要なの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、脱気筒の役割・用途について徹底解説します。

脱気筒について疑問がある方や防水工事を検討している方などは、ぜひ参考にしてみてくださいね。

脱気筒とは

脱気筒は「だっきとう」と読み、名前の通り筒状の見た目をしています。

屋上に使用され、防水層とコンクリートなどの下地との間に発生する水蒸気を排出する役割を持つ、非常に重要な筒です。

一見邪魔な筒にも見える脱気筒ですが、実は屋上にはなくてはならないものなのです。

屋上のコンクリートは雨や湿気による水分を含んでいて、太陽熱によってその水分が熱されることで水蒸気が発生します。

この水蒸気が排出されないままでは、

  • 下地との接着不良が起きる
  • 防水層の膨らみが発生する
  • シワの原因となる

上記のような問題が発生するリスクが高いです。

脱気筒が外に水蒸気を排出することによって、このようなリスクを軽減することができます。

脱気筒の役割

脱気筒の役割は、先ほども紹介したように防水層と下地との間に発生した水蒸気を外に排出することです。

屋上に脱気筒が設置されていなければ、雨や湿気と太陽熱の影響を受ける限り発生する水蒸気を外に逃すことができず、防水層と下地との間に膨らみができて隙間を作ってしまいます。

膨らみを放置していると、以下のようなリスクがあります。

  • 防水層の劣化が早まる
  • 膨らみだけではなく、亀裂や穴があくなど損傷する
  • 雨漏りの原因となる

このような劣化は脱気筒を設置していても徐々に起こる問題ではありますが、脱気筒の役割によって水蒸気の逃げ場を作り、劣化を遅れさせる効果が期待できるのです。

脱気筒を設置する防水工事の種類

防水層の劣化を防ぐため、屋上になくてはならない脱気筒。

そんな脱気筒を設置する防水工事には、実はいくつかの種類があります。

ここでは、3つの防水工事について解説します。

ウレタン防水の通気緩衝工法(絶縁工法)

ウレタン防水の中でも通気緩衝工法(絶縁工法)では、

  • ウレタン樹脂
  • 通気緩衝シート
  • メッシュシート
  • 脱気筒

を使用します。

通気性能のある通気緩衝シートを使用し、さらに脱気筒を設置することで、水蒸気を外に排出し防水層の膨れを予防することができます。

屋上の防水工事としてよく用いられる工法ですが、工事は難易度が高く経験と知識のある職人による施工が必須です。

ウレタン防水の工法には「通気緩衝工法」の他にも「密着工法」というものもありますが、この防水工法では基本的に脱気筒は使用しません。

シート防水

シート防水は、防水性のある「塩ビシート」か「ゴムシート」のどちらかを敷く工法です。

シート防水には、

  • 耐久性に優れている
  • 比較的安価で施工できる

というメリットがあります。

シート防水では、脱気筒をつける場合とつけない場合のどちらも考えられます。

シートから気泡が抜ける仕組みになっているため、脱気筒の設置は必須ではありません。

シート防水の場合は、既存の防水層や下地の状態、屋上の使用状況などによって、脱気筒を設置するかどうかを専門業者と相談して決めるといいでしょう。

FRP防水

FRP防水とは、繊維強化プレスチックを使用した防水工事のことです。

液状の材料を流し込んで防水層を形成するため、継ぎ目がなく強度が高いことが特徴です。

軽量で強度の高いFRP防水はさまざまな場所に使用できることがメリットですが、費用が高額になりがちであることがデメリットとしてあげられます。

脱気筒の種類

屋上の防水工事に欠かせない脱気筒にも、種類があることを知っていますか?

屋上の環境や使用用途などによって、さまざまな材料で製造された脱気筒を選んで使用することになります。

ここでは、脱気筒の種類を3つ紹介します。

  • ステンレス製
  • アルミ性
  • 塩化ビニール製

以下ではこれらの特徴・メリットを紹介していきます。

ステンレス製

ステンレスでできた脱気筒は、とても錆びにくいことが特徴です。

強度が高く耐久性に優れているため、長期間に渡って使用できることがメリットです。

また、耐熱性にも優れていて温度変化に強いという特徴もあります。

ステンレス製の脱気筒であれば、高温のものを扱う場所や高温になってしまう環境でも使用することができます。

アルミ製

アルミ製の脱気筒は、軽量で扱いやすいことが特徴です。

一方で強度が足りないことが懸念されるため、アルミに他の金属を混ぜて強度を上げた「アルミ合金製」の脱気筒もよく使用されます。

ステンレス製の脱気筒に比べると安価であることが一般的で、コストを抑えたい方におすすめです。

塩化ビニール製

塩化ビニール製の脱気筒は耐久性に優れており、耐用年数が長いことが特徴です。

さまざまな化学薬品に対しても耐性があるため、化学薬品を扱う場所や腐食のリスクが考えられる場所でよく使用されます。

また、電気を通さない絶縁性があるため、この目的で選ばれることもあります。

塩化ビニール製の脱気筒と塩化ビニールシートの組み合わせは、相性がよく防水性が高いです。

脱気筒を取り付ける場所

脱気筒を取り付ける場所は、以下のような条件を参考に決定します。

  • 床面のうち最も高い場所
  • 日照時間が長い場所
  • コンクリート目地部分が好ましい

空気は高い位置に集まる性質を持っていることから、より高い位置に脱気筒を取り付けることで効率的に水蒸気を排出できます。

コンクリート目地部分に取り付けることができれば、さらに効率的な水蒸気の排出が可能です。

塗膜防水の場合は通気シートに穴をあけて脱気筒を取り付け、シート防水の場合は防水層に穴をあけてから脱気筒を取り付けます。

脱気筒の施工方法

脱気筒の施工がどのように行われるのか、知らない方が多いのではないでしょうか。

脱気筒を取り付ける個数は、施工方法や屋上の面積、脱気筒の製品仕様によってもさまざまですが、50㎡に1個程度で設置する場合が多いです。

今回はウレタン防水通気緩衝工法(絶縁工法)を例に挙げて施工の流れを紹介していきます。大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 既存ドレンの撤去
  2. 既存シートの撤去
  3. ケレン清掃・下地調整
  4. プライマー塗布
  5. 自着シート敷込み
  6. メッシュテープ貼付け
  7. 改修ドレン取り付け
  8. 脱気筒設置
  9. 入隅シール充填
  10. ウレタン樹脂の流し込み
  11. トップコート

下記でより詳しく解説していきます。

既存ドレンの撤去

ドレンとは雨水などを排出する排水溝のことです。

通常、防水層とドレンの改修はセットで行います。

既存シートの撤去

既存シートの撤去は、必要に応じて行われます。

劣化した既存シートの場合には、完全に撤去する作業が初めに行われるでしょう。

既存シートに劣化が見られない場合には、既存シートを利用して施工が行われる場合もあります。

劣化の具合は素人には判断が難しいため、必ず防水工事の専門家による判断を仰ぐようにしてくださいね。

ケレン清掃・下地調整

脱気筒の施工前には、表面の汚れを清掃する必要があります。

ケレン清掃と呼ばれる下地処理を行うことで、下地と新しく塗布する防水剤との密着度を上げることが可能です。

ケレン清掃によって汚れや付着物を取り除き、綺麗な状態に整えてからさらに下地の調整を行います。

防水層が形成される部分の下地を清潔かつ平らに整えることは、防水工事の完成度にも影響する重要なポイントです。

プライマー塗布

整えた下地の上には、プライマーと呼ばれる下地処理材を塗布します。

プライマーを塗布することで、防水層を剥がれにくくする効果があります。

プライマー塗布によって、防水層の寿命を伸ばす効果が期待できるでしょう。

自着シート敷込み

自着シートを敷き込みます。

裏面に粘着力がある防水シートを、防水層として敷き込む作業です。

自着性があるため、下地に直接敷き込むことができます。

屋上やバルコニーのほかにも、浴室などに使われることもある防水材です。

メッシュテープ貼付け

メッシュテープは、補強を目的として使用されます。

防水層の継ぎ目などの強度が落ちる部分やひび割れや劣化が起こりやすい部分などに、メッシュテープを貼ることで補強を行います。

このような細かい作業が、防水層全体の寿命を伸ばすことにつながるでしょう。

改修ドレン取り付け

改修ドレンを取り付けます。

このとき、ドレンと防水層の周辺が勾配不良を起こさないように、ドレン周辺を調整します。

脱気筒の取付

ここまで準備を整えて下地の整備ができたら、いよいよ脱気筒の取り付けになります。

形成した防水層の上に脱気筒を取り付け、脱気筒と防水層をしっかりと一体化させることがポイントです。

脱気筒の取り付けには、専用のアダプターやシール材などが使用されます。

入隅シール充填

入隅とは、壁際にある隅の部分のことを言います。

入隅にシール材を充填することで水の侵入を防止し、より強い防水機能を作ることが可能です。

ヘラなどを使用して、端までしっかりとシール材を充填します。

ウレタン樹脂の流し込み

脱気筒周辺には、さらにウレタン樹脂を流し込みます。

ウレタン樹脂を流し込むことで、しっかりと密閉することが可能です。

この工程により脱気筒と防水層の間が密閉し、隙間がなくなることで水の侵入を防ぎます。

防水性能を保つためにも重要な工程です。

ウレタン樹脂は2〜3回塗り重ねます。

トップコート

最後に防水層を保護するため、トップコートの塗布を行います。

トップコートを塗布することで、

  • 紫外線や刺激から防水層を保護する
  • 耐久性を高める

などの効果が期待できます。

防水層の寿命を伸ばすためには、定期的なトップコートの再塗装が有効です。

完成

まとめ

脱気筒の施工は、屋上の防水工事にとって欠かせない工程とも言えます。

邪魔な筒という印象を持っていた方も、防水機能を維持するための重要性がわかっていただけたのではないでしょうか。

今回の記事が、脱気筒の必要性や施工方法について理解する参考となれば幸いです。

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