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FRP防水を徹底解説|特徴や掛かる費用・メリットデメリット

そろそろ自宅や所有される建物の屋上の防水補修を考えている方で、気になる施工法について知識を深めたい方はいらっしゃいますか?

この記事ではFRP防水について、得られる効果や費用相場、メリットやデメリット、メンテナンス法まで、徹底解説します。

ぜひ今後の業者選定や工法選びにお役立てください!

FRP防水とは

FRP防水のFRPとは、繊維強化プラスチック「Fiber Reinforces Plastics」の略で、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などにガラス繊維や炭素繊維などの繊維を複合して強度を向上させた強化プラスチックです。

軽さ、強度、耐食性、成型性に優れているため、これらの性能と防水性が求められる小型船舶の船体や、自動車、鉄道車両、ロケットの内外装などに広く使われている材料です。

FRP防水の概要

FRP防水とは、素材が木やコンクリートでできている床の上にFRPのシートを敷きその上に樹脂を塗って硬化させ、防水効果を高める施工方法です。

樹脂の硬化後は、プラスチックのような硬さを感じる床になり、その上に太陽光などのダメージから表面を守るためにトップコートを塗付し、防水層が完成されます。

FRP防水の主な材料である防水用ポリエステル樹脂及び防水用ガラスマットは、建築学会・建築工事標準仕様書JASS8・防水工事で材料規程が定められています。

FRP防水の材料は燃えやすいため、施工中は火気厳禁という点は注意が必要ですが、施工後の一般的な火気使用は問題はありません。

FRP防水主な施工場所

FRP防水の主な施工場所は住宅のベランダやバルコニー、陸屋根(屋上)のほか、ビルやマンションなどの屋上など、幅広く使われている防水工事です。

また、FRPは衝撃に強い特徴を持つので、歩行・車の走行にも耐えるため、屋上や地下の駐車場にも施工が向いているといえる工法です。

FRP防水の耐用年数

FRP防水の耐用年数は10年から25年程と、幅広い期間の設定の理由はメンテナンスの有無で大きな差が生じることにあります。

施工から7年から10年を経過した時点でトップコートの塗り直し、FRPシートの損傷箇所の補修など、補修を検討しましょう。

また、天候などのダメージによっては10年も経たないうちに表面にひび割れが生じることも。

表面が損傷すると雨漏りの原因にもなり得るので、早めの補修を検討しましょう。

FRP防水の工程

FRP防水の工程を知り、さらにFRP防水の知識を深めましょう。

1.高圧洗浄

塗装面の凹凸や汚れを除く作業を行います。

施工面全体を均一化させる下地調整で、より高度な防水工事を可能にします。

高圧洗浄、ケレンなどで下地を調整した後は、樹脂やモルタルなどで下地を形成して終了です。

雨水が排水溝に流れやすくするために床面に勾配を付ける場合もあります。

2.プライマー塗付

下地の調整が終わった後にプライマーを塗付していきます。

プライマーを塗付することで上から塗る塗料を定着しやすくなります。

費用をカットするためにプライマーの塗布を省く業者がいる事には注意が必要です。

また、プライマー塗付後は次の工程に移らなければプライマー塗付による効果が低減されるので、スピーディーな施工が重要です。

3.シート状のFRPを敷く

防水効果を得るために、FRPシートを敷きこみます。

4.ポリエステル樹脂塗付

シートの上からポリエステル樹脂を塗り、硬化させます。

これで防水層の1層目が完了です。

5. ③・④を繰り返す(回数:1回)

さらに防水効果や強度を高めるために2層目の防水層を作ります。

トップコート塗布

仕上げに表面全体の強度を上げるため、トップコートを塗付します。

気を抜かず、ムラなく塗布することできれいな仕上がりになります。

FRP防水のメリット・デメリット

FRP防水のメリット・デメリットを把握することで不安を解消し、納得のいく防水工事を行うことができます。

一つずつ解説していきますので、屋上などの防水工事方法を選定する際の参考にしてください。

FRP防水のメリット

FRP防水のメリットして、以下の3つがあげられます。

工期が短い

FRP防水で使用する樹脂は硬化時間が短く、工期は1~2日です。

軽い防水層

FRP防水は1㎡あたりに使用するシートや樹脂の重さは3~5㎏程度と、軽量です。

そのため、下地への負担も軽く、建物への経年による重量のダメージも少ないといえます。

また、FRP防水はシートを敷いてから樹脂で硬化させるため、水を通しにくく、高い防水性を保つことが可能です。

軽いうえに、その高い防水性から、プールや船舶の防水にも使用されることが多いのも、納得の防水効果です。

頑丈で衝撃に強い

FRPは繊維強化プラスチックを使用しているので、衝撃に強い特徴があります。

FRP防水を施工した場所は歩行や車の走行にも耐えれる強度があります。

そのため、屋上などの駐車場に適した防水工事だといえます。

FRP防水のデメリット

FRP防水のデメリットは以下の2つが挙げられます。

施工費用が高い

FRP防水は高い防水効果が得られ、強度、耐久性に優れているうえに施工しやすいという

メリットがある分、施工費用が高いという点が否めません。

他の防水工事であるウレタン防水、シート防水に比べて施工費用が高くなることもあります。

後述のFRP防水の単価相場を参考に、費用と工期、防水効果を踏まえたうえで、より適切な防水工事を選択しましょう。

施工出来ない場所がある

FRPは伸縮性が低いという特徴を持っています。

そのため、大きく伸縮する可能性のある木造で広大な場所への施工は、防水層のひび割れが生じる可能性があり、施工は出来ません。

FRP防水の単価相場

FRPの単価相場をより知るために、多くの実績を持つ防水工事方法であるウレタン防水と比較してみます。

費用以外に得られるメリットも比較することで見えてきました。

FRP防水ウレタン防水
単価相場5,000~7,000円5,000~8,000円
主な施工場所ベランダ
ビル・マンションの屋上
屋上の駐車場
ビル・マンション・学校などの屋上
メリット高い防水性
防水層が軽量
実績の多さ
高い防水性
デメリット広くて木造の場所には施工は不可火を使う事もあり、安全面が心配
防水層が重い
施工期間1日から2日7日から12日
耐用年数10年から25年15年から25年

FRP防水とウレタン防水の単価相場を比較しました。

ウレタン防水と比べ、単価の幅が少なく、施工方法・場所にもよりますが施工にかかる料金は大差はないと感じます。

それぞれ5年から7年程度でトップコートの塗り替えなどを行い、防水効果を長く継続させることが可能です。

しかし、注目すべき点はFRP防水の工期の短さです。

アスファルト防水の工期は7日から12日掛かりますが、FRP防水は1日から2日と、大きな差があります。

ビルや建物の修繕に掛かる工期が短く済むことは、お店を営んでいる方などにとっては大きなメリットでしょう。

FRP防水が適する場所

FRP防水が適さない場所は木造で面積が広い場所でしたね。

FRP防水が最も適している場所は以下の通りです。

  • 人の出入りがあるところ
  • 重たい物を置く場所
  • バルコニーなどの面積が狭いところ

FRP防水は床面に貼った繊維シートを樹脂で固める工法です。

軽くて衝撃に強い床面に仕上がるため、人の出入りが多い倉庫、室外機を置くことによる

ダメージに強い、という事がいえます。

FRP防水の劣化症状と補修方法

FRP防水が劣化するとどのような症状になるのか、またその補修方法を事前に確認しておくと、事前の対策が取りやすいですね。

ひとつずつ見ていきましょう。

薄いひび割れ

FRP防水の施工後、5年ほどで表面に薄いひび割れが表れ始めることもあり得る症状です。

しかし、表面に生じる薄いひび割れは、表面を太陽光などから保護する目的で塗布したトップコートのひび割れであり、特に深刻な症状ではない、ということがいえます。

表面の薄いひび割れを放置すると下地のFRP防水層の劣化が早くなってしまいます。

薄いひび割れが気になり始めたら、トップコートの塗り替えを検討しましょう。

ひび割れの補修方法

トップコートの種類は大きく分けて2種類あり、新築時に使用するのは硬膜のポリエステル樹脂、改修時は軟膜のウレタン樹脂があります。

トップコートの補修手順は、

1.下地の洗浄・油分の撤去

2.トップコートの塗布

で、はじめに下地をきれいにすることでトップコートの密着性を高めます

浮き・剥がれ

防水層の浮きや剥がれは密着力不足や、雨漏りによる水分の蒸発が考えられます。

下地に浸透してしまった水分が蒸発すると、表面の防水層が膨れて表面を浮かせてしまう症状です。

浮き・剥がれの補修方法

浮き・剥がれの補修法としては、狭小部分なら膨れや剥がれた部分をケレンし、撤去した後

FRP防水を部分的に再施工が可能です。

しかし、浮きや剥がれが広範囲となると、下地に問題があると捉え、全体的に防水層を撤去し、

下地補修をしっかり行ってからFRP防水を再施工します。

浮き・剝がれの範囲によって問題が深刻かどうかが判断され、また掛かる費用も大きく変わります。

雨漏り

FRP防水が施工されている屋上に雨漏りが生じた際は、下地まで腐食が浸透しているかどうかを確認します。

下地が腐食してしまっていると、防水層を全面的に撤去し、下地への改修工事が必要です。

雨漏りの場合は改修工事が必要

雨漏りの場合、下地が腐食していない場合でも、下地自体に水分が浸透してしまっているため、硬膜なFRP防水では

今後また浮きや剥がれを再発しかねないため、FRP防水での改修ではなく、ウレタン塗膜防水による通気緩衝工法(絶縁工法)を採用する場合が多いです。

改修は、コスト・下地との相性・追従性を加味した選択をして工法を選択します。

FRP防水層のメンテナンス

建物に掛ける修繕費用はできるだけ抑えたうえで、高い効果を得たいものですね。

屋上防水についても同じことが言え、メンテナンス次第で次の防水改修工事まで高い防水効果を長い期間得ることができます

FRP防水層の寿命を延ばすためにはどんなメンテナンスを行えばいいのでしょうか。

5~6年に一度の間隔でトップコートを塗り替える

トップコートが劣化した防水層の表面から浸水していき、建物へ悪影響を及ぼす可能性があります。

強い太陽光、突風などにより屋上は常にダメージを受けやすい状態で、表面の細かなひび割れから劣化が進みます。

点検を定期的に行い、5年を目安にトップコートの塗り替えを検討しましょう

FRP防水における30年間のメンテナンス費用を表にまとめました。

メンテナンス費用(㎡)
0年目新規施工約6,000円
6年目トップコート塗り替え約2,500円
12年目寿命・貼替え約6,000円
18年目トップコート塗り替え約2,500円
24年目寿命・貼替え約6,000円
30年目トップコート塗り替え約2,500円
合計維持費用25,500円

FRP防水防水層の寿命を12年として、定期的な貼替・5年毎にメンテナンスした場合の合計金額を算出してみました。

おおよそのメンテナンスサイクルと、掛かる費用を把握しておくと、今後の資金計画が立てやすいでしょう。

FRP防水の塗り替えはDIYできる?

狭いベランダなら自分で防水工事ができないかな…と考える方はいらっしゃいませんか?

FRP防水の材料は一般には手に入りにくく、燃えやすい特徴もあるため、DIYは避けた方がいいでしょう。

なれないDIYにより塗りムラが生じたりと、かえって手間や費用がかさむと本末転倒ですね。

FRP防水の施工は、はじめから業者に依頼しましょう

排水溝を定期的に掃除する

屋根やベランダに水たまりが長期間残っている場合、FRP防水層の劣化が早くなります。

ルーフドレインと呼ばれる排水溝は雨水を建物の外に流す部分です。

排水溝にゴミが詰まってしまうと水たまりが発生しやすくなり、他にも、藻やコケも広がりやすくなります。

排水溝を定期的に掃除して水たまりを作らないようにしましょう。

防水層は10年から12年後にリフォームする

FRP防水層の耐用年数は塗装の仕様や環境、使用状況によって大きく変わりますが、一般的には10年から12年をめどに補修が必要です。

建物を新築してから10年から12年というと、外壁にもひび割れなどの劣化がみられる時期でもあります。

屋上防水や外壁の劣化を放置していると漏水の原因にもなり得ます。

屋上、外壁の点検を一緒に依頼することをおすすめします。

まとめ

FRP防水についてその特徴やメリット・デメリットを紹介してきました。

屋上へのFRP防水を考えるうえで、注目すべきポイントは以下の通りです。

  • FRP防水は防水層が軽量で建物への負担が少ない
  • 工期が1~2日と短い
  • 表面が衝撃に強い
  • 比較的費用が高い
  • 伸縮性が少ないので木造の建物の屋上には適さない
  • メンテナンスは5~6年のサイクルで行う
  • 防水層の改修は10年から12年に行う

これらのポイントを抑え、所有される建物を適切な費用と労力で、できる限り健全に維持しましょう。

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