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中規模修繕を解説|分散方式とは?大規模修繕との違いは?

住まいは私たちの大切な場所。その建物の健康を守り、住環境を良好に維持するために、修繕計画は重要です。

しかし、修繕工事には予算とスケジュールの調整が必要で、その負担は大きいことがあります。

従来の修繕計画では大規模修繕工事が中心でしたが、今注目されているのは「中規模修繕・分散方式」。

この記事では、中規模修繕とそのメリットに焦点を当て、予算とスケジュールの負担軽減について紹介していきます。

中規模修繕とは

中規模修繕とは、その名のとおり中規模の修繕工事(メンテナンス)のことです。

防水関係の工事を中心に、範囲ごとに行われます。

例えば、

  • 足場を必要とする外壁・バルコニー部の防水塗装工事のみ
  • 屋上の防水工事のみ
  • 共用部(階段・廊下)の修繕・改修工事のみ

など、大規模修繕工事で行われる工事内容を分散して行います。

中規模修繕と大規模修繕の違い

建築基準法によれば、建物の半分以上を修繕・模様替えをする工事を大規模修繕工事と定義しています。

中規模修繕に関しては、建築基準法では明確に定義されていません。

マンションの大規模修繕は、一般的に12年ごとに長期修繕計画に沿って行われ、屋上・外壁・バルコニー・排水管・電気設備などの共用部分を修繕します。

共用部分の修繕を一度に行うため、工事期間は長く、そして莫大な修繕費が必要です。国土交通省が2021年に実施した「マンション大規模修繕工事の実態に関する調査」によると、大規模修繕の平均的な費用は1戸あたり約75万円〜125万円です。戸数が多い大規模マンションであれば、修繕費は1億円以上かかることがあります。

一方の中規模修繕は、「12年ごと」などの期間にこだわらず、建物の劣化度合いから判断して工事の実施を決めます。

部分的または範囲的に修繕工事を行うため、大規模修繕に比べ、工事の期間は短く、一度の出費は少なめです。また、修繕の緊急性が高い劣化箇所を優先して工事を実施することができるので、建物の長寿命化に繋がります。

業界で注目されている中規模修繕・分散方式とは

現在、不動産業界では「中規模修繕・分散方式」という修繕スタイルが注目されています。

従来の大規模修繕は前述したとおり、長期修繕計画をもとに行われます。

この修繕スタイルの問題点は、赤字のリスクがあることです。

マンションの大規模修繕の工事周期は一般的に12年と言われていますが、建物の劣化状況によって前後します。大規模修繕の回数と築年数の関係を以下の表にまとめました。

工事回数築年数
1回目13〜16年
2回目26〜33年
3回目27〜45年

国土交通省が発表する「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(平成29年5〜7月実施分)」というデータを元に作成しています。

1回目と2回目の間隔はおよそ13年です。13年の間に工事にあてる修繕積立金を集めなければなりませんが、修繕積立金を集めるスピードと工事をやらなければならないスピードがアンバランスになる現象が起こることがあります。

修繕積立金が不足している場合、工事を延期したり、優先度が高い箇所のみを先に工事することもできますが、劣化部分の放置は建物の耐久性・耐震性、入居率、資産価値に悪影響を与えるので、赤字になったとしても、大規模修繕工事はせざるを得ません。

そこで、上記の現象を解消するために提唱されたのが中規模修繕・分散方式です。

中規模修繕・分散方式は、18年の周期で修繕計画をたて、大規模修繕工事の内容を分散して修繕していく方式です。大規模修繕計画よりも長い周期で計画を練る必要はありますが、修繕積立金を集める年月が長く、かつ単年度の大きな出費を避けることができます。

中規模修繕・分散方式のメリット

中規模修繕・分散方式のメリットは以下のとおりです。

予算とスケジュールの負担軽減

大規模な修繕工事は一度に多額の資金と時間を必要とします。中規模修繕では、修繕の必要な箇所を段階的に処理するため、予算とスケジュールの負担を軽減できます。修繕積立金の減少が緩やかになるので、住民や建物所有者にかかる財政的負担が少なくなり、予算の適切な管理が可能になります。

緊急性の高い修繕から対処できる

中規模修繕は、修繕の緊急性が高い箇所から優先的に処理できるため、問題が深刻化する前に対処できます。優先順位をつけて修繕計画を進行させるので、建物や施設の健全性を確保し、安全性や住環境を向上させます。

長寿命化

中規模修繕は、建物や施設の長寿命化を図るのに役立ちます。劣化や損傷が早期に修復されるため、建物や施設の寿命が延び、資産価値が維持されます。

中規模修繕・分散方式を行うポイント

中規模修繕・分散方式を行う上での大きなポイントは以下の2つです。

  • 建物診断を行い、工事の必要性を判断する
  • 建物診断の結果を元に、足場をかけるような大掛かりな工事が必要かどうかを慎重に判断する

中規模修繕・分散方式の計画を練るには、建物診断の結果が重要です。自己判断は危険なので、必ず建物診断を行う業者に依頼して、建物の状況を調査してもらいましょう。

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