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陸屋根(フラットループ)の防水工事を解説|費用は?シート防水は屋上に最適?

陸屋根の防水工事を知りたい人

陸屋根の防水工事を知りたい人

陸屋根の防水工事はどんなことをする?
陸屋根の防水工事の費用はいくら?
陸屋根防水工事とは?
シート防水で雨漏りは起こる?
陸屋根にはウレタン防水が最適?
陸屋根防水の耐用年数はどれくらい?
陸屋根の防水塗装工事とは?
コンクリート屋根に防水シートは施工できる?

陸屋根は一般的な屋根とは異なり、傾斜がない平な屋根を指し、フラットルーフとも呼ばれています。

屋上スペースとして家庭菜園に利用したり、洗濯物を干したり、スペースを有効に活用できます。

比較的高層の建築物に利用されることが多いですが、デザイン性の高さや利便性から二階建てや三階建ての戸建住宅に取り入られることも増えています。

陸屋根のある家に住んでいるけれど、防水工事した方がいいの?と不安に感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

こちらの記事では陸屋根の防水工事の費用やタイミング、工事の方法など陸屋根のメンテナンスに関する記事を詳しく掲載しています。

陸屋根とは

陸屋根とは、傾きがない、平らな屋根のことです。

洗濯物を干したり、屋上菜園を楽しむなど、スペースを有効活用できるのが特徴です。

フラットルーフとも呼ばれています。

屋上に繋がる階段が設置されている場合は、日頃から屋上の点検作業を行うことができます。

陸屋根に防水工事を行う必要性

陸屋根は平坦なため、傾斜がついている通常の屋根より水が溜まりやすいです。水はけが悪いと、防水性が低下した場合、雨漏りが起こるリスクが高くなります。

屋上から建物内部に侵入した雨水は、天井からの雨漏りに繋がるだけではなく、鉄筋をサビつかせたり、木材を腐らせるなど、建物本体の耐久性にも大きな悪影響を与えます。

新築時には十分な防水加工が施される陸屋根ですが、どんなに高価な防水加工を施したとしても、月日の経過とともに防水効果は薄れてきてしまいます。

雨漏り対策や建物内部の腐食防止のためには、陸屋根の防水工事は重要です。

陸屋根の防水工事のタイミングと見分け方

陸屋根に防水工事を行うタイミングと、見分け方を解説していきます。
自宅の陸屋根に防水工事の施工を検討している方は参考にしてください。

陸屋根の防水工事を行うタイミング

陸屋根の防水工事を行うタイミングを材工別に解説します。

木造の場合

一般的な戸建住宅で陸屋根を採用している場合、建物自体は木造という場合が多いのではないでしょうか。

木造建築の場合、鉄筋コンクリート造りに増して雨漏りの危険が高く、こまめな防水工事が必要となります。

一般的には10〜15年を目安に防水工事を行うことが理想ですが、状態によってはもっと早い段階で予防的に工事を行うこともあります。

鉄筋コンクリート造の場合

鉄筋コンクリートは、自由な形で建築ができ非常に耐久性や強度が高く、大きな建築物にも多く利用されています。

コンクリート打ちっぱなしの建物も重厚感のある質感で、根強い人気があります。

鉄筋コンクリート造りの建物には屋上や陸屋根があるのが一般的です。

非常に丈夫な鉄筋コンクリート造りの建物ですが、最大の弱点とも言えるのが水です。

コンクリート内部に水が侵入してしまうと、内部の鉄筋が錆び、建物本体の耐久性が大きく下がってしまいます。

水の侵入を防ぐためにも、陸屋根・屋上の防水工事はかかせません。

防水層の寿命は10〜15年程度といわれているので、これを目安に工事を検討してみるといいでしょう。

防水工事を行うタイミングの見分け方|劣化症状

木造建築も鉄筋コンクリート造りの場合も、10年を超えたあたりで防水工事を検討した方がいいでしょう。

さらに、下記のような症状が現れた場合には早急に対応することをお勧めします。

陸屋根で起こる劣化症状
  • 目地やコンクリートにひび割れがみられる
  • 排水溝(ドレン)にゴミが溜まっている
  • 雨の日に一時的でも水が溜まっている
  • 雑草が生えている
  • 剥がれてたり破損したりしている部分がある
  • 防水層が膨らんでいる

このような場合にはかなり防水効果が下がっていることが予測されます。

すでに雨漏りが発生している場合もあるかもしれません。

まだ雨漏りしていないとしても、いつ雨漏りになってもおかしくない状態と考えられます。

日常的に陸屋根の状態を確認し、異常が見られた場合には早めに専門業者に相談するようにしましょう。

陸屋根の防水工事の種類

陸屋根の防水工事は、通常の屋根に施される塗装や葺き替えなどの防水工事とは異なり、大掛かりな足場の設置が不要なことが大きな特徴の一つです。

また、陸屋根に施工される防水工事の種類は複数あり、予算や施行場所にあわせて選択できるのも、一般的な屋根のメンテナンスとの大きな違いです。

陸屋根の防水工事には大きく分けて塗膜防水・シート防水・アスファルト防水の3種類があります。

それぞれの工事の方法とメリット・デメリットを確認していきましょう。

塗膜防水

塗膜防水とは、防水効果のある液体を塗ることで、水の侵入を防ぐ方法です。

液状のため、隙間や段差など平らでない場所や、複雑な形の場所にも工事が安易です。

塗膜防水にはう「ウレタン防水」と「FRP防水」があります。

ウレタン防水

ウレタン防水は液状のウレタン樹脂を施工箇所に2回塗り重ねる工法で、多くの建物に採用されています。

費用は比較的安く、既存の防水層を撤去せずに重ねて施工ができます

また、面積や形状などの条件に左右されないことも特徴の一つです。

デメリットとしては、乾燥に時間がかかるため、工期が他の防水工事に比べて長いことです。完全に乾燥するまでは陸屋根が利用できないため、スケジュールは十分に検討する必要があります。

ウレタン防水には以下のような工法があります。

  • 密着工法
    下地に直接ウレタンを塗布していく方法です。
    複雑な形の場所や凹凸のある場所にも施工がしやすいメリットがあります。
  • 密着メッシュ工法
    メッシュシートを防水層と下地の間にいれた状態で施工します。
    勾配がある場所などにも均一に塗布することができます。
  • 通気緩衝工法
    下地に密着させず通気性のあるシートの上にウレタン樹脂を塗布します。水分を逃すことができるので、水分が多い場所にも施工しやすいのが特徴です。すでに雨漏りが起きてしまった場所にも選択されています。

FRP防水

FRP防水はウレタンに比べて、非常に強度が高く軽いのが特徴です。そのため、人がよく歩いたり、重い物を置く陸屋根に適しています。

FRP防水は、「FRP」と呼ばれるプラスチック製の繊維を敷き詰め、その上に樹脂を塗って固める工法です。

FRP防水で作られた床はとても頑丈ですが、その分、下地の伸縮に弱いため、木造の陸屋根には不向きです。木は天候や気温によって伸縮するからです。

シート防水

シート防水は、防水効果のあるシートを施工箇所に貼り付ける工法です。シートには主にゴムシートまたはポリ塩化ビニールシートを使用し、熱やプライマーと呼ばれる接着剤で貼り付けます。

色や柄の入っているものもあり、マンションの廊下等の人の目に付く場所にもよく採用されます。

1番のメリットは、基本的にシートの寿命が来るまで、メンテナンスが不要なことです。

さらに紫外線や熱にも強く、耐久性にも優れています。施工費用も安価なのでコストパフォーマンスは抜群です。

上記のようにシート防水は耐久性とコストパフォーマンスに優れていますが、その反面、風が強い場所への施工には向かず、工事難易度が高いため、担当した職人によって仕上がりにばらつきがでてしまいます。施工業者は実績や施工事例を確認して慎重に選ぶようにしましょう。

シート防水には以下のような工法があります。

  • 密着工法
    専用の接着剤を使用して、下地に直接防水シートを貼り付けて施工します。
    下地の影響が大きい工法のため、水分を含んでいたり破損があったりする下地への施工は注意が必要です。
  • 機械固定方式
    専用の機械でビスなどを打ち込むことで防水シートを貼り付けます。
    下地との防水シートの間に隙間ができ、脱湿することができるため、下地の影響を受けにくいのが特徴です。

アスファルト防水

アスファルト防水は古くから利用されてきた工法で、大型建築物の新築時に陸屋根に施されるのが一般的です。

耐用年数は20年程度と最も長く、その間のメンテナンスは特に必要ありません。

防水性能は高いですが、アスファルト防水で形成された防水層は非常に重いため、主に鉄筋コンクリート造りの建物に利用されています。木造住宅にはあまり向きませんが、人が出入りしない場所には利用されることもあります。

ただ、アスファルト防水は新築時に陸屋根に施されるのが一般的なので、他の防水層でできた陸屋根をアスファルト防水に改修することは滅多にありません。

施工方法には熱工法・トーチ法・常温法があります。

熱工法は、熱で溶かしたアスファルトを染み込ませたルーフィングシートを積み重ねて防水層を作る工法です。最も高い防水効果が得られますが、施工中に独特のにおいや煙が発生します。

トーチ法では、トーチバーナーでシートに含まれたアスファルトを溶かすことで密着させます。火を利用するため、多少の煙や匂いが発生します。

常温法は冷工法とも呼ばれており、施工時の煙や匂いの心配はありません。しかし、高い接着技術が必要となります。

アスファルト防水には以下のような工法があります。

  • 熱工法
    溶かしたアスファルトを使い、ルーフィングシートを重ねて防水層を形成します。
    施工時に独特の臭い、煙が発生することから近隣への配慮が必要となります。
  • トーチ工法
    シートに染み込んだアスファルトをトーチバーナーを使って溶かすことで、ルーフィングシートと接着させ施工させます。臭いや熱も少なく、熱工法に変わって選ばれることが多くなっています。
  • 常温工法
    名前の通り、改良されたシートを使って熱を使用せずに接着させます。
    安全な施工が実現しますが、熱工法やバーナー工法と比べると接着性が劣ります。

陸屋根の防水工事の費用相場と耐用年数

陸屋根の防水工事に関する、耐用年数と価格をまとめています。

施工場所やメンテナンスの必要性、予算にあわせて最適な工法を選ぶことが大切です。

ウレタン防水FRP防水シート防水アスファルト防水
特徴面積・形状・材質問わずどんなところにも施工が可能強靭な防水層を形成する物が少なく広い場所の施工に適している伝統的で信用度の高い防水工事
工期1日〜5日程度1日〜2日程度1日〜5日程度3週間程度
耐用年数10〜12年程度10〜12年程度10〜15年程度15〜25年程度
費用相場6,500~12,000円/㎡6,500~10,000円/㎡8,000~15,000円/㎡11,000~22,000円/㎡
工法の種類密着工法
通気緩衝工法
密着メッシュ工法
密着工法
固定式機械工法
熱工法
常温工法(冷工法)
トーチ工法
適した建物ビル、マンションの屋上
バルコニーやベランダ など
マンションやオフィスビルの屋上
バルコニーやベランダ
屋上駐車場 など
マンション・ビルの屋上など広い面積の場所
マンション・学校などの大型建築物の屋上 など
不向きな建物なし木造の建物凹凸のある場所
ベランダなどの狭い場所
バルコニー・ベランダ
既存防水層がアスファルト防水以外の建物 など

陸屋根の防水効果を上げる方法

月日の経過に伴い、防水効果が下がってしまうのは避けられませんが、防水効果を少しでも長く持続させる方法をご紹介します。

ルーフドレンを普段から掃除しておく

ルーフドレンとはいわゆる排水溝です。

陸屋根には排水のためにルーフドレンが作られています。

水が溜まっている状態が続くと、その部分から防水効果が低下してしまいますので、できる限り水溜りができない状態にしておく必要があります。

そのためには、定期的にルーフドレンに溜まったゴミや埃を除去して、水が流れやすい状態を作り出すことが大切です。

早めのメンテナンス

陸屋根の表面をよく観察していると、表面の色が変わっている場合があります。

これはトップコートが劣化していることを意味します。

トップコートは防水層を紫外線や太陽の熱から守る役割があり、トップコートが劣化して役割を果たせなくなると防水層もみるみるうちに劣化してしまいます。

一般的にトップコートは5年に一度程度塗り重ねると良いとされていますが、変色がみられた場合には専門業者に早めに相談することをお勧めします。

現在では耐用年数が10年を超えるようなトップコートも開発されています。

メンテナンスの回数を減らすためには、そういった新しい資材も検討してみるといいでしょう。

陸屋根の防水工事の選び方

防水工事をしたいけど、どういう工事がいいのだろう
ホームセンターに売っている防水塗料を使って自分でもできるかも
と考えている方もいるかもしれません。

防水工事は専門性が高いため、専門の知識を持っている専門業者に任せた方が賢明です。

基本的には工務店やリフォーム会社、防水工事を専門に行なっている業者などに依頼できます。

中にはウレタン工法のみ、シート工法のみ、などできる工事が限られている業者もあるので、よく話を聞いてみましょう。

どのように業者を選べばいいのでしょうか。

相見積もりをとる

工事の依頼をする場合には、必ず相見積もりを取りましょう。

話をすれば、その業者が専門的な知識を持ち合わせているかも確認できます。

相見積もりの際には、見積書が細かく記載されているかも確認してください。

中には「防水工事一式」といった項目のみで、工事の詳細が記載されていない場合があります。

その場合、どういった工事が含まれているかわからず、追加で費用が請求されるといったトラブルに繋がりかねません。

一言で防水シート、ウレタンといっても、メーカーやグレードによって耐用年数や塗布可能面積、費用が違ってくるため、どんな資材を使うのかがわからなければ、提示された価格が安いのか高いかの判断もできません。

また塗布面積や施工面積についても、その根拠とともに明確に示してもらうようにしましょう。

誰がみてもどこにどんな工事を行うのかわかるような見積書が理想的です。

少しでもわからない部分があれば、必ず事前に確認するようにしてください。

明確な返答ができない業者は、防水工事に詳しくない可能性もあります。

詳細な見積書を提示する業者は、いわゆる優良業者と言われる業者である可能性が高いので、業者選定の目安の一つになります。

実績が豊富

近年は施工事例や実績をホームページで公開している会社も多く、簡単に実績を確認できます。

防水工事は専門的な知識や技術が必要なので、業者の施工実績は確認しておくといいでしょう。

同じような工事をたくさん手がけていれば、経験も豊富で高い工事技術が期待できます。

アフターフォローが充実している

万が一工事に不具合があった場合でも、保証が充実していてすぐに再工事や補修をしてくれるのであれば安心です。

保証やアフターフォローが充実している業者は、工事技術や施工に自信がある場合が多く、高品質の工事をおこなってくれる可能性も高いでしょう。

どういった場合に保証が受けられるのか、何年保証なのか、など細かいことは契約書内に記載してもらうと安心です。

まとめ

陸屋根のメンテナンスや防水工事について解説してきました。

まとめると、

  • 陸屋根は傾斜がなく水捌けが悪いため防水工事は必須
  • 陸屋根に行う防水工事の種類は、塗膜防水・シート防水・アスファルト防水の3種類が代表的
  • 塗膜防水はウレタンとFRP防水があり、凹凸のある場所や他の防水層の上からでも施工でき、主流となっている
  • シート防水は安価でメンテナンスも不要で、コストパフォーマンスが高い
  • アスファルト防水は昔から採用されている信用のある工法で、耐久性が最も長く新築時に行われることが多い
  • 業者選びは見積書に詳細を記載できるような、知識・経験が豊富な業者を選ぶとよい
  • 防水効果を長持ちさせるためには、ルーフドレンの掃除と早めのメンテナンスが効果的

こちらの記事を読んでいただき、現在陸屋根の防水工事を検討している方の参考になれば幸いです。

長く大切に住み続けるためにも、定期的な防水工事で雨から建物を守りましょう。

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