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アスファルト防水の特徴・工法の種類・アスベスト問題などを解説

アスファルト防水は、屋上によく採用される防水工事のひとつです。

防水工事を検討していると、「どんな工事を選べばいいかわからない」「アスファルト防水に興味があるけど、どんな工事?」など、さまざまなお悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか。

今回は、アスファルト防水の特徴や工法、気になるアスベスト問題などを徹底解説していきます。

防水工事についてお悩みの方やアスファルト防水について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

アスファルト防水とは?

アスファルト防水とは、溶かした液体状のアスファルトを浸透させた「アスファルトルーフィング」と呼ばれるシートを使用する防水工法です。

防水工事は外壁やベランダ・バルコニーなどさまざまな場所に対して施工されますが、アスファルト防水は主に屋上防水として使用されます。

日本で最も古くから施工されている防水工法であるアスファルト防水は、その分実績も豊富で信頼度の高い防水工法だといえるでしょう。

アスファルト防水のメリット

アスファルト防水のメリットには、以下のようなものがあります。

  • 歴史が古く実績が豊富で、信頼度が高い
  • 耐久性に優れている
  • 防水性能が高い
  • 安定した防水層が形成できる

アスファルト防水は古くから施工されている防水工法なので、施工実績やデータが豊富です。

防水効果のデータが多く蓄積されているため信頼度が高く、安心して採用できる工法だといえるでしょう。

アスファルト防水は、塗膜防水やシート防水といったその他の防水工法に比べて、耐久性に優れています。

耐用年数は20年ほどで、一般的な防水層に比べて約2倍も長持ちする防水層を形成することができます。

とくにアスファルト防水がよく施工される屋上は、紫外線や雨水の影響を強く受ける場所です。

このような影響を受けても長く防水性能を発揮できることは、アスファルト防水の大きなメリットです。

また、アスファルト防水は水密性が高く、高い防水性能を持っています。

耐久性の高さと相まって、屋上という雨水や紫外線の影響が大きい厳しい環境であっても、長期にわたって防水性能が維持できるでしょう。

アスファルト防水で使用するシート状のアスファルトルーフィングは、工場で生産されているため品質が安定しています。

例えば塗膜防水では職人の手で塗料を均等な厚さに塗布する必要がありますが、アスファルトルーフィングシートは工場から一定の厚さで作られたシートが届くため、均等な厚さの防水層が形成できます。

アスファルト防水のデメリット

メリットの多いアスファルト防水ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。

  • 工法によって強い臭いが出る場合や火災発生のリスクがある
  • 工法によっては職人の高い技術力が必要
  • 建物によっては施工できない

それぞれの特徴については次の見出しで詳しく紹介しますが、アスファルト防水の中にもいくつかの種類があります。

その中でも熱を使ってアスファルトを溶かす「トーチ工法」や「熱工法」を採用する場合、強い臭いが発生する場合や周りのものに火が移って火災が発生するリスクがあります。

アスファルトが発する強い臭いは近隣住民にも迷惑がかかる場合もあるため、事前の説明や周辺環境への配慮が必要となるでしょう。

同じく熱工法やトーチ工法では、アスファルトの温度管理や均一な接着など、高い技術力が必要となります。

作業難易度が高いため、経験豊富な業者や職人に依頼することがおすすめです。

アスファルト防水はアスファルトを使用するため、防水層に重さがあります。

ルーフィングシート単体でも重さがあり、その上にさらにアスファルトを重ねるため、施工後はかなり建物に負担がかかる防水工事です。

そのため、耐荷重が十分ではない建物や土台が弱い木造住宅などには、施工できない場合があります。

また、ルーフィングシートが重ねにくい複雑な形状の場所に対しても、施工できないことが多いです。

複雑な形状の場所には、凹凸が多い場所や室外機などの設置物が多い場所などが該当します。

アスファルト防水の種類

先ほど少し触れましたが、アスファルト防水の中でもいくつかの種類があり、異なる工程や特徴を持っています。

ここでは、アスファルト防水の3つの工法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく紹介していきます。

最適な工法を見つけるためにも、ぜひ確認してくださいね。

常温工法(冷工法)

アスファルト防水の常温工法は、3種類の工法の中で唯一熱を使わないことが特徴です。

熱を使わないため安全に施工でき、他の工法に比べて強い臭いも発生しないため、近年最も主流となっている工法です。

常温工法のメリット
  • 熱を使わないので、火災リスクがなく安全
  • 強い臭いが発生しない
  • 狭い場所や周囲に配慮が必要な密集した地域でも施工可能

常温工法最大の特徴は熱を使わないことで、安全性が高いために人気が集まっている工法です。

熱を加えることで発生するアスファルト特有の臭いも発生しないので、他の工法では施工できない狭い場所や密集した地域でも施工することができます。

常温工法のデメリット
  • 熱を使用する工法に比べて、密着度が劣る
  • シートを何枚も重ねるので重量がある

常温工法では熱を使用しないことが大きなメリットなのですが、一方で熱を使用しない分他の工法に比べて密着度が劣ります。

防水層の密着度が劣ることで、防水効果も少し低くなってしまうことが考えられます。

また、常温工法で十分な防水効果を発揮するためには、ルーフィングシートを何枚も重ねなければいけません。

ルーフィングシートは単体で重さのある材料なので、重ねることでかなりの重量になるでしょう。

屋上の耐久性や建物の耐荷重をしっかりと確認してから施工することが重要です。

常温工法の流れ

  1. STEP

    下地処理

    下地処理では、施工する部分の下地の汚れを落とし清掃します。

    下地処理は完成度にも影響する重要な工程です。

  2. STEP

    ドレンの設置

    ドレンとは、雨水を排出するための排水溝のことです。

    防水層を形成する前のこの段階で、ドレンの設置を行います。

  3. STEP

    プライマーの塗布

    プライマーとは接着剤のことで、下地とシートを接着するために専用のプライマーを塗布します。

  4. STEP

    パラペットにルーフィングシートを貼り付ける

    パラペットとは、屋上などの外周部に設置された、外壁と屋根の境界にある立ち上がった壁のことです。

    まずはそのパラペットの立ち上がり部分に、続いて屋上の全体部分の下地にルーフィングシートを貼り付けていきます。

  5. STEP

    ルーフィングシートを下地に貼り付ける

    片面が自着層と呼ばれる粘着面になっているルーフィングシートを、複数枚交互に張り合わせていくことで防水層を形成します。

  6. STEP

    ルーフィングシートの継ぎ目をシール材で充填する

    シートの継ぎ目部分は雨水が侵入しやすかったり劣化しやすかったりと弱点になってしまうため、継ぎ目にシール材を充填して補強することが大切です。

  7. STEP

    トップコートの塗布

    最後に、防水層を紫外線や雨風などの刺激から保護する役割のあるトップコートを塗布して完了です。

    アスファルト防水の常温工法は、5〜7日ほどかけて以上のような工程で施工されます。

アスファルト防水の常温工法は、5〜7日ほどかけて以上のような工程で施工されます。

トーチ工法

アスファルト防水のトーチ工法は、トーチバーナーと呼ばれる機械を使用して施工する工法です。

トーチバーナーの熱でルーフィングシートのアスファルトを炙り溶かしながら、下地とシートを貼り重ねていくことが特徴です。

トーチ工法のメリット
  • シートを隙間なく接着でき、常温工法に比べて高い防水性を発揮する
  • 熱工法よりも煙と臭いの発生を抑えられる
  • 大型機械や装置の用意や設置をしなくてもいい

トーチ工法では、トーチバーナーの熱を使って隙間なく下地とルーフィングシートを接着することができるため、高い防水性をはっきします。

また、トーチ工法も熱を使う工法ではありますが、熱工法に比べると煙や臭いの発生を抑えられることも、大きなメリットのひとつです。

そしてトーチ工法で使用するのはごく一般的なバーナーであるトーチバーナーで、そのほかに大きな機械や装置を用意・設置する必要がありません。

トーチ工法のデメリット
  • 燃えやすいものがある場所や狭い場所では施工できない
  • 工事の施工難易度が高く、高い技術力を必要とする

トーチ工法では、トーチバーナーを使用して炙りながら工事を行うため、火災のリスクを減らすためにも近くに燃えやすいものがある場合や狭い場所では施工することができません。

また、トーチ工法は非常に施工難易度の高い工事で、職人の高い技術を必要とします。

局所的にバーナーを当てながらアスファルトを溶かしていくため、均一に溶かすための繊細な作業が求められます。

トーチ工法の流れ

  1. STEP

    下地処理

  2. STEP

    ドレンの設置

  3. STEP

    プライマーの塗布

  4. STEP

    パラペットにルーフィングシートを貼り付ける

  5. STEP

    トーチバーナーを使用して下地にルーフィングシートを貼り付ける

    トーチ工法では、トーチバーナーを使用してルーフィングシート裏面と下地を炙り、アスファルトを溶かしながら貼り付けていきます。

    難しい作業で、接着不良が起こりやすい工程です。

    均一にルーフィングシートを炙りながら張り合わせていく、繊細な作業と高い技術力が求められます。

  6. STEP

    トップコートの塗布

アスファルト防水のトーチ工法は、8〜12日ほどかけて以上のような工程で施工されます。

熱工法

アスファルト防水の熱工法は、熱を加えて溶かしたアスファルトとルーフィングシートを使用する工法です。

溶かしたアスファルトとルーフィングシートを重ねて防水層を形成することが特徴です。

このアスファルト防水の熱工法は日本で100年以上の歴史があり、たくさんの施工実績がある信頼度の高い工事だといえます。

熱工法のメリット
  • 施工実績やノウハウが豊富で信頼できる
  • 水密性や耐久性に優れている
  • トーチ工法よりも技術的には難しくない

熱工法は、アスファルト防水の中でも最も古くから採用されてきた工法で、実績やノウハウが豊富です。

100年以上も親しまれてきた防水工事で、信頼して施工することができるでしょう。

熱で溶かしたアスファルトを接着剤としても使用する工法で、水密性や耐久性に優れていることは大きなメリットだといえます。

水密性と耐久性に優れていることにより、長期にわたって高い防水性能を発揮してくれます。

トーチ工法は、局所的にバーナーで炙りながらアスファルトを溶かしていくため、均一な作業が難しいと紹介しました。

一方で熱工法は、溶融釜のなかで溶かしたアスファルトを全面に流し込みます。

不足している部分がすぐにわかるため、トーチ工法に比べると技術的には難しくなく、施工に慣れている職人も多いことから安心して任せることができるでしょう。

熱工法のデメリット
  • 煙やアスファルト独特の臭いが発生する
  • 火災のリスクがある
  • 溶融釜を設置する場所を確保する必要がある

熱工法では、溶融釜の中でアスファルトを溶かします。

220〜270度の熱でアスファルトを溶かすため、どうしても煙や独特の臭いが発生してしまいます。

また、熱を使用することで火災のリスクが避けられないことも、デメリットのひとつです。

火災のリスクがあることや周辺環境への配慮が必要となることから、最近では熱工法が採用されることが減ってきています。

工事にあたっては、大きな溶融釜の設置場所を確保する必要もあります。

熱工法の流れ

  1. STEP

    下地処理

  2. STEP

    ドレンの設置

  3. STEP

    プライマーの塗布

  4. STEP

    パラペットにルーフィングシートを貼り付ける

  5. STEP

    ルーフィングシートに溶かしたアスファルトを流しながら、下地全体に貼り付ける

    熱工法では、溶融釜の中であらかじめアスファルトを溶かしておきます。

    ルーフィングシートの上に溶かしたアスファルトを流して貼り付け、溶かしたアスファルトは接着剤としても使用されることが特徴です。

  6. STEP

    溶かしたアスファルトをルーフィングシートに塗る

    さらに溶かしたアスファルトの上にはルーフィングシートを貼り付け、何度か積み重ねて防水層を形成するのが熱工法の基本です。

    溶かしたアスファルトをルーフィングシートに塗る作業は、アスファルト塗りとも呼ばれます。

アスファルト防水の熱工法は、8〜12日ほどかけて以上のような工程で施工されます。

アスファルト防水の耐用年数

アスファルト防水に限らず防水層は経年劣化によって防水機能が低下していってしまいます。

防水工事の種類によって耐久性が異なるため、それぞれ耐用年数が決まっています。

アスファルト防水の耐用年数は、10〜20年程度が目安です。

アスファルト防水は耐久性に優れているため、他の防水工事に比べて耐用年数が長めです。

耐用年数が経過すると、防水層にひび割れなどの劣化症状が現れ、防水機能が低下して雨漏りが発生するリスクが高まります。

アスファルト防水を施工したら、耐用年数を目安にした次の工事時期を確認しておき、定期的に防水工事を行うようにしましょう。

アスファルト防水を用いる場所

アスファルト防水は、主に屋上防水に用いられる工法です。

屋上は一般住宅からビルまでさまざまな建物で見かけますが、アスファルト防水はその中でもマンション・アパート・ビルなどの大きな建物の屋上で採用されることが多いです。

マンションやビルの屋上を管理している方の中には、屋上緑化に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。

アスファルト防水は、仕上げ方法の変更により屋上緑化にも対応することができます。

耐久性に優れた防水層の上から植物の設置ができるため、屋上緑化を検討している場合にもアスファルト防水はおすすめです。

重量のあるアスファルト防水にも耐えられるマンション・アパート・ビルなどの防水工事として、アスファルト防水はよく用いられます。

アスファルト防水の費用相場

アスファルト防水の費用相場は、1㎡あたり6,000〜8,000円ほどが目安となります。

決して安価な防水工事ではありませんが、その性能の良さや大掛かりな工事内容を考慮すると、コストパフォーマンスのいい防水工事だといえるでしょう。

アスファルト防水にかかる費用総額は、施工面積はもちろん、既存防水層の状態や周辺環境、人件費などさまざまな要因によって変動します。

また、同じ条件でアスファルト防水を施工する場合でも、依頼する業者によっても費用が異なるでしょう。

アスファルト防水を検討していて正確な費用が知りたい方は、業者に見積もりを依頼してみてください。

アスファルト防水の部分補修

アスファルト防水では、劣化した一部分のみを補修する「部分補修」を行うことができます。

部分補修が可能な劣化症状には、以下のようなものがあります。

  • 押さえコンクリートのひび割れ
  • 押さえコンクリートの剥離
  • 伸縮目地の劣化
  • ルーフィングシートの膨れ
  • ルーフィングシートの継ぎ目の剥がれ

アスファルト防水の以上のような劣化症状は部分補修が可能ですが、その他の部分に劣化がなく正常に機能していることが前提です。

全体的に劣化が進んでいる場合は、部分補修では対応できず防水工事が必要となります。

また、劣化症状が一部分であっても、すでに雨漏りが発生している場合は部分補修では対応できません。

部分補修では全体に防水工事を施すよりも費用を抑えられることがメリットですが、何度も部分補修を繰り返すと防水層がつぎはぎ状になってしまうため、防水機能が低下してしまうでしょう。

そのため、部分補修がした箇所が増えてきた場合や耐用年数が近づいている場合などは、部分補修ではなく全体の防水改修工事を検討してくださいね。

アスベストの問題

「防水工事にもアスベストが使用されているの?」と、防水工事とアスベストの関係について疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

アスベストは発がん性が問題となった人体に有害な物質で、かつては建築材料をはじめとするさまざまな用途で使用されていたため、その健康被害が問題となりました。

日本では昭和50年(1975年)に吹き付けアスベストの使用が禁止され、平成18年(2006年)にはアスベストを0.1%以上含む製品の出荷が禁止されています。

そのため、現在施工されている防水工事には、アスベストは使用されていません。

ただし、アスベストに対する規制が強化された平成18年より前の工事では、防水工事においてもアスベストが含まれている可能性があります。

防水工事会社の中には、過去の施工におけるアスベスト使用歴について情報公開している場合もあるので、気になる方は確認してみてください。

アスファルト防水においても、過去の工事ではルーフィングシートや接着剤などにアスベストが使用されていたケースもありますが、現在ではアスベストが使用されることはありません。

まとめ

アスファルト防水は、日本で古くから使用されている信頼度の高い防水工事です。

  • アスファルト防水は、主に屋上に施工される
  • 耐久性と水密性に優れているため、長期にわたって高い防水性能を発揮する
  • 工法によっては熱を使用するため、火災のリスクがある
  • アスファルト防水では屋上緑化も可能
  • 現在のアスファルト防水工事にはアスベストは使用されていない

今回は、屋上に施工する防水工事として人気のアスファルト防水について、工事内容や費用、メリット・デメリットなどを徹底解説しました。

今回の記事が、アスファルト防水を検討している方やアスファルト防水について知りたい方の参考となれば幸いです。

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