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マンション大規模修繕の法律について解説

マンション管理組合が行う大規模修繕工事は、建物の資産価値の維持や居住環境の確保のために欠かせません。

しかし、この大規模修繕工事は法律上どのように位置づけられているのでしょうか。

今回は、マンション大規模修繕に関連する主な法律について解説します。

大規模修繕の実施は法律的に義務なの?

マンション管理組合には、適切な時期に大規模修繕工事を実施する義務があります。

この義務は、民法や区分所有法、マンション管理適正化法などの法律で定められています。

そのため、大規模修繕工事を怠れば、管理組合は法的責任を問われる可能性があります。

区分所有者からの訴訟リスクに加え、建物の老朽化が進み資産価値が下がるなどのデメリットも生じます。

適切な大規模修繕の実施は、法的義務であると同時に、マンション資産の維持・向上にも欠かせない重要な責務なのです。

大規模修繕の際に確認する法律は「建築基準法」

マンション管理組合が大規模修繕工事を実施する際に最も重要な法律が、「建築基準法」です。

この法律は、建築物の安全性や構造の合理化を目的として制定されたもので、建築物の規模や構造によらず全ての建築行為に適用されます。

大規模修繕工事は、ある程度の規模を超えると「大規模の修繕・模様替」に該当し、建築基準法の規制を受けることになります。

このため、工事着手前に建築基準法に基づく手続きを行う必要があるのです。

建築基準法を無視して工事を行った場合、最悪の場合は是正勧告や工事の一時停止を命じられる可能性があります。

適切な手続きを経ずに工事を進めれば、法的リスクにさらされてしまいます。

建築基準法の大規模修繕工事の定義

建築基準法第2条第14号では、大規模な修繕や模様替えの際に確認申請が必要となる工事を「大規模の修繕・模様替」と定義しています。具体的には以下の3つの基準があげられています。

  1. 主要構造部(壁、柱、小屋組など)の過半に係る工事
  2. 増築で延べ面積が建築物の3分の2以上になる工事
  3. その他主要な部分の工事で政令で定める規模の工事

マンションの大規模修繕では、主に1つ目の「主要構造部の過半に係る工事」に該当することが多くなります。壁や柱といった主要構造部分の補修・補強工事が伴うためです。

2つ目の増築工事についても、修繕に伴い延べ面積が大幅に増えるケースでは建築基準法の規制対象となります。

また、3つ目の「政令で定める工事」については、建築物全体の使用目的の変更や大規模な内装工事なども含まれます。

このように、マンション大規模修繕では主要構造部分への手が加えられることが多いため、ほとんどのケースで建築基準法の規制対象となり、確認申請の手続きが不可欠になります。法令の確実な理解と遵守が求められます。

建築基準法で大規模修繕工事に関係する法律

マンション大規模修繕の実施に際しては、建築基準法をはじめとする様々な法律を確認し、遵守する必要があります。

主な関係法令とその内容は以下の通りです。

確認申請

建築基準法では、規模が一定以上の「大規模の修繕・模様替え」を行う場合、あらかじめ所管行政庁に対し「確認申請」を行うことが義務付けられています。

確認申請では、修繕計画が建築基準法の構造関係規定や設備関係規定などに適合しているかを確認します。

法令に適合していない場合は指摘を受け、計画の見直しが必要になります。

管理組合は、専門家の助言を得ながら確認申請を慎重に行い、法令に沿った適切な工事計画を立てる必要があります。

区分所有法

マンションの専有部分(各住戸)と共用部分(エントランスや階段など)の権利関係を定めているのが区分所有法です。

大規模修繕工事では共用部分への手が入ることも多いため、この法律の規定を確認しておく必要があります。

特に重要なのが、修繕工事に関する決議要件の規定です。

区分所有法第17条では、共用部分の管理に関する事項は区分所有者の4分の3以上の賛成が必要とされています。

修繕に係る内容や費用負担など、決議を経る必要がある事項については、あらかじめ区分所有者の同意を得ておく必要があります。

マンション管理適正化法

マンション管理適正化法は、分譲マンションの適正な維持・管理を目的とした法律です。

この法律では大規模修繕に関する様々な規定が設けられています。

  • 長期修繕計画の作成・実施が義務付けられている
  • 修繕積立金の積立てが義務付けられている
  • 5年に1回以上の定期報告が義務付けられている

管理組合は、この法律に基づき適切に大規模修繕に取り組む必要があります。

計画的な修繕実施と修繕積立金の確保が、マンション資産の維持・向上につながります。

定期管理報告

マンション管理適正化法に基づき、分譲マンションの管理組合は5年に1回以上、定期的に建物の管理状況をまとめた「管理報告書」を提出しなければなりません。

この管理報告書には、建物の修繕履歴や修繕積立金の状況、設備の更新計画なども記載されます。

大規模修繕工事の必要性を示す重要な根拠資料ともなるため、管理組合はこの報告書の内容を精査し、活用する必要があります。

このように、マンション大規模修繕には様々な法令が関係しており、管理組合には建築基準法をはじめ、それらの法令を確実に理解し遵守する責任があります。

法令に沿った適切な手続きを経ることが、安全で円滑な修繕工事実施の鍵となるのです。

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