4 min

外廊下の防水工事を解説|共用廊下のメンテナンスは修繕積立金で行える?

共用廊下や外廊下のメンテナンスと修繕について理解しておくことは、マンションやアパートの管理組合、オーナーにとって非常に重要になってきます。特に、外廊下の防水工事は建物の寿命と住環境の維持において不可欠な要素の一つです。

この記事では、外廊下の防水工事に焦点を当て、修繕積立金によるメンテナンスについても詳しく解説します。

外廊下に防水工事を行う必要性

外廊下は基本的に建物の外部に位置することが多く、気象条件や年間を通じての気温変化にさらされます。

さらに歩行使用の頻度に応じて、コンクリートの劣化スピードや乾燥に伴う収縮、ひび割れが早まってしまう可能性も。

そのため、外廊下の防水は極めて重要です。
外廊下の防水が不適切である場合、水が侵入し、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 1建物の損傷
    水が壁や床に浸透すると、建物構造が崩壊する恐れがあります。これにより建物全体に大きな修繕コストが発生します。
  • 2 住環境の悪化
    外廊下が水浸しになると、住民が通行するのが難しくなり、住環境が悪化します。また、カビや藻が発生する可能性も高まります。
  • 3 安全性の低下
    滑りやすい床面や傷んだ手すりは、住民の安全に影響を与える可能性があります。
  • 4 住民の不満
    外廊下の状態が悪い場合、住民からの苦情や不満が増える可能性があり、管理組合に対するプレッシャーとなるでしょう。

更に日本の場合、地震や台風、梅雨、雪などの自然環境や災害が多発する地域もあります。
ひび割れや腐食を放置すれば、更にダメージを増大させる原因になり、建物の寿命を縮めることに
なってしまいます。

防水工事を行うことで、

  • 建物の寿命を延ばすことが出来る
  • 建物の耐久性を高めることが出来る
  • 建物の耐水性を高めることが出来る
  • 劣化・腐食の修繕
  • 雨漏り被害を避けることが出来る

上記のようなメリットが挙げられます。

外廊下の防水工事の種類

外廊下の防水工事にはさまざまな種類があります。実際に施工する建物や条件に応じて、
施工方法は異なりますがメインとなる防水工事は主に「ウレタン防水」と「長尺シート」の施工方法です。

ウレタン防水

ウレタン防水は、ポリウレタン樹脂を使用した防水材料を外廊下の床や壁に塗布する方法で耐久性に優れていて亀裂追従性が良いため、多くの防水工事で利用されています。
塗料のような素材のため、階段や廊下、ベランダなどの複雑な形状の現場や狭小部分の場所でも比較的簡単に施工することが可能です。

デメリット
  • 乾燥に時間がかかり、その間歩くことが出来ないためマンションの廊下等には不向き
  • 手塗りになるため、均一な膜厚に仕上がりにくい
  • 加工の際3回も塗り直す手間がかかる
メリット
  • 安価でコスパが良い
  • 5〜6年ごとに再塗装することで防水効果は長続きする
  • 太陽光や雨、気温変化にさらされても劣化しにくい


それぞれの工法、1㎡あたりの金額、耐用年数は以下の通りです。

密着工法4,000円〜5,500円(1㎡程度)5~8年程度
メッシュ工法4,500〜7,500円(1㎡程度)10~12年程度
通気緩衝工法6,000~8,500円(1㎡程度)13~15年程度

ウレタン防水の施工の流れ

  • 高圧洗浄
    床や壁の細かい汚れを高圧洗浄で落としていきます。汚れを全て落とすことで、この後に塗るプライマー・防水材が下地に定着しやすくなります!
  • プライマーを塗る
    プライマー(接着剤)を塗ることで防水材と下地の密着性が増し、剥がれにくくしてくれます。
  • 通気シートを貼る
    通気シートを下地に貼り付けることで、防水層が膨らむことを防ぎます。
  • 防水材を塗る
    防水材は2回に分けて、塗布します。厚みを持たせることで、より高い防水効果を発揮することができます。
  • トップコート塗布
    表面を保護する役目を果たし、紫外線や傷から防水層を守り劣化を防ぎます。

長尺シート

長尺シートはシート状床材とも言われ、防水性のほかにも防音性・防滑性があり、プラスチック、金属、ゴム、アスファルト、合成材料、または他の防水材料から作られます。
建物の広い面積を迅速にカバーでき、シーム(接合部)を最小限に抑えることができることから防水性や機密性が高い施工方法と言えます!

デメリット
  • 費用がウレタン防水よりも割高
  • 継ぎ目の処理が不適切であると漏水のリスクが生じる
メリット
  • 比較的簡単に大面積を迅速にカバーできる
  • 接合部分が小さいためシームレスな仕上がり
  • 曲線や角度に合わせてカスタマイズ可能

それぞれの工法、1㎡あたりの金額、耐用年数は以下の通りです。

長尺シート1,447円(1㎡あたり)12~18年程度

長尺シートの施工の流れ

  • モルタルを塗る
    モルタルを塗ることで表面の凸凹を整えます。
  • 接着剤のを塗る
    シートを下地にしっかりと接着するために、適切な接着剤を塗布します。
  • 長尺シートを貼る
    シート貼り付け時、ローラー等を使いエアバブルを排除し密着性を高めます。
  • シーリング
    シートの側面と躯体の隙間をシーリングで埋めます。

外廊下の劣化の状況

最近のアパート・マンションの外廊下は塩ビ防滑シート貼り仕様等になっているので、防水性と審美性が図られている場所も増えてきました。
しかし、築年数20年以上の物件の場合防水モルタルや防塵塗料のみとなっている場合が多いです。

塗料の劣化

塗料の劣化は、主に以下のような症状があります。

  • 色褪せ
  • 剥がれ
  • ひび割れ
  • チョーキング
  • 塗膜の膨れ

コーキング材の劣化

コーキングは雨風や紫外線に晒されることで、劣化していきます。
その際に、ひび割れや収縮による隙間などが発生してしまっていると水が侵入しやすくなり劣化の原因へなります。

コケ・カビの繁殖

床にコケやカビが繁殖している場合、性能が低下しているサインとも言えます。
コケが繁殖してしまうと、防水層が浮いてしまう可能性が出てくるためメンテナンスが必要です。

基本的に劣化していると判断される基準は、経年数やどんな改修をしたかで決まってきます。
劣化具合というのは防水層を総合的に判断することで分かるので、見た目だけではなかなか気付けないのが難しいポイントでもあります。

床防水工事の場合、問題視されているのが水溜まりや勾配不良の問題です。
溝の1番高いところから排水溝まで高低差をつける必要があり、水溜まりを完全に無くすことは
困難なのです。

共用廊下のメンテナンスは修繕積立金で行える

アパート・マンションの廊下やエントランス、ロビーなどの共用部分は管理組合がメンテナンスすることになります。
このメンテナンス費用については、管理組合に修繕積立金を支払い積み立てていくこととなります。

具体的な金額についてはそれぞれの管理組合で決定されますが、一般的には築年数の浅いうちは安く、古くなると高くなっていくのが一般的と言われています。

専有部分と共有部分の区分けが分からない…

意外と知らない人が多い、マンションやアパートの区分け。
実は、以下のような箇所も共用部分とされています。

  • バルコニー
  • インターホン

一見専有部分にも思えますが、こちらも基本的には「共有部分」のため修繕の際は管理組合からの修繕積立金にてメンテナンスすることが可能です。

また修繕費の費用はインフレの影響を受けているため、実際にかかる見積もり額よりも多めの資金を用意しておくと良いでしょう。

まとめ

最後に今回の記事のポイントをまとめます。

  • 外廊下の防水工事は、建物の維持や安全性のためにとても重要
  • ウレタン防水のメリット・デメリット
  • 長尺シートのメリット・デメリット
  • 共用部分のメンテナンスは修繕積立金で行える

定期的なメンテナンスをすることで建物の資産価値を維持することと、住民が快適に過ごすことに繋がります。
防水状況を巡回・点検を実施されていないオーナー様は、ぜひ現状の建物状態を見直してみてはいかがでしょうか?

関連記事
公式サイト