修繕工事とは?改修・補修との違いから費用相場・内容・業者の選び方まで解説
2026/07/08
建物は年月の経過とともに、外壁のひび割れや雨漏り、設備の老朽化など、さまざまな劣化が進みます。こうした不具合を放置すると、建物の寿命や資産価値の低下につながるため、適切なタイミングで修繕工事を実施することが重要です。
一方で、「修繕工事とはどのような工事なのか」「改修工事や補修工事とは何が違うのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、修繕工事の基本的な定義から、改修工事・補修工事との違い、主な工事内容や費用相場について詳しく解説します。記事の後半では、修繕工事を依頼する業者の選び方や、工事の流れまで紹介するのでぜひ参考にしてください。
目次
修繕工事とは?定義をわかりやすく解説

修繕工事とは、経年劣化した建物の部分を補修し、新築時の性能・機能まで回復させる工事です。
国土交通省は、修繕を以下のように定義しています。
「修繕とは、経年劣化した建築物の部分を、既存のものと概ね同じ位置に概ね同じ材料、形状、寸法のものを用いて原状回復を図ることをいいます。」
修繕工事の代表例は、外壁のひび割れ補修や鉄部の再塗装、防水層のやり直しなどです。建物は新築直後から劣化が進むため、資産価値と寿命を守るには長期修繕計画に基づく計画的な実施が欠かせません。
つまり修繕工事は、劣化した部分を「元の状態に戻す」ことを目的とした工事です。
修繕工事と改修工事・補修工事の違い

修繕工事・改修工事・補修工事の違いは主に目的にあり、修繕は「原状回復」、改修は「性能向上」、補修は「部分的な修復・応急処置」を目指す工事です。
3つの工事の違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | 修繕工事 | 改修工事 | 補修工事 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 建設当初の水準まで原状回復 | 機能・性能の向上 | 部分的な修復・応急処置 |
| 対象範囲 | 建物全体の劣化箇所 | 建物全体(性能向上を含む) | 特定の損傷部分のみ |
| 実施タイミング | 計画的・定期的 | 計画的(修繕に合わせて実施) | 不具合発生時に随時 |
| 規模 | 小〜大規模 | 主に大規模 | 小規模 |
| 工事内容 | 劣化部分の修理・交換 | 設備のグレードアップ・付加価値の追加 | 損傷部分の応急的な修理 |
| 効果の持続性 | 長期的(10年以上) | 長期的+性能向上 | 短期的(数年程度) |
表のとおり、目的のほかにも、対象範囲や実施タイミング、効果の持続性に違いがあります。
工事の目的に合わせて、どの工事が必要かを見極めることが大切です。
なお、以下の記事では、「改修」工事について詳しく解説しているので合わせてご覧ください。
>>改修工事とは?修繕との違いや種類・費用相場・注意点・業者の選び方まで解説
修繕工事と改修工事の違い
修繕工事と改修工事の違いは、工事の目的が「原状回復」か「性能向上」かという点です。
修繕工事は、劣化した部分を建設当初の水準まで戻すことを目指します。一方で改修工事は、元に戻すだけでなく、新築時以上に機能・性能を高めることを目的とします。
例えば、外壁の補修や屋根材の交換は修繕、耐震補強やバリアフリー化、省エネ設備の導入は改修にあたります。規模も修繕は小〜大規模まで幅広いのに対し、改修は主に大規模で費用も高くなりがちです。なお実際の工事では、外壁塗装の修繕に合わせて遮熱・断熱塗料を採用するなど、両者を同時に行うケースも多くあります。
「元に戻す」のが修繕、「今より良くする」のが改修と押さえておきましょう。
修繕工事と補修工事の違い
修繕工事と補修工事の違いは対応する範囲で、補修は不具合箇所だけの応急処置、修繕は建物全体の計画的な原状回復です。
例えば、ひび割れ部分だけをその場で埋めるのが補修、外壁全体を塗り直すのが修繕です。補修は短期間・低コストで対応できる反面、根本的な解決にはならず、効果も数年程度にとどまります。
同じ箇所で繰り返し不具合が出る場合や建物全体が経年劣化している場合は、計画的な修繕工事のほうが長期的にはコストを抑えられるケースもあります。
その場しのぎの補修か、建物全体を見た修繕か、という違いを押さえておきましょう。
修繕工事を行うメリット

修繕工事を行う主なメリットは、以下の4つです。
- 建物の資産価値を維持しやすくなる
- 家賃水準や入居率を維持しやすくなる
- 劣化の放置による高額な修繕費を防ぎやすくなる
- 入居者満足度の低下や退去リスクを抑えやすくなる
適切なタイミングで修繕工事をすることで、建物の維持管理と運用面の両方でメリットが得られます。
建物の資産価値を維持しやすくなる
修繕工事を行う最大のメリットは、建物の資産価値を長期的に維持しやすくなる点です。
建物は新築直後から劣化が始まり、放置すれば外観も構造性能も損なわれていきます。外壁のひび割れや防水機能の低下、鉄部のサビは、市場価値を着実に下げる要因です。
修繕周期に合わせて主要部位を計画的に原状回復すれば、新築時に近い状態を保てます。その結果、売却時の査定額や金融機関の担保評価の目減りも防ぎやすくなります。
計画的な修繕は、建物の価値を守るための備えといえます。
家賃水準や入居率を維持しやすくなる
修繕工事を行うと、家賃水準と入居率を維持しやすくなります。
外壁の汚れや共用部の傷みが目立つ物件は、内見時の印象が悪くなりがちです。家賃の値下げを迫られたり、空室期間が長引いたりするケースも少なくありません。
一方で、外観や共用部が良好な物件は、同エリアでも競争力を保ちやすくなります。相場どおりの家賃でも入居者を確保しやすく、安定した稼働につながります。
外観や共用部の状態を保つことが、家賃と入居率を守るポイントです。
劣化の放置による高額な修繕費を防ぎやすくなる
適切な時期に修繕工事をすれば、劣化の放置による将来の高額な出費を防ぎやすくなります。
建物の劣化は時間の経過とともに進行するため、小さな不具合を放置すると、修繕範囲が広がり、高額な工事が必要になりかねません。
例えば、外壁の小さなひび割れを放置すると、そこから雨水が浸入し、内部の鉄筋が腐食したり、躯体の劣化が進んだりする恐れがあります。このような状態になると、外壁の大規模な補修や防水工事、場合によっては構造部分の補修が必要になることもあります。
設備の老朽化も同様です。給排水管や防水層などは耐用年数を迎える前に計画的に更新することで、漏水事故や緊急工事を回避しやすくなります。
小さな不具合のうちに直すことが、結果的に修繕費を抑えることにつながります。
入居者満足度の低下や退去リスクを抑えやすくなる
修繕工事は、入居者満足度を保ち、退去リスクを抑えるうえでも欠かせません。
雨漏りや設備の不具合、共用部の傷みは、日々の住み心地を悪化させます。不満が積み重なれば、それがやがて退去の引き金になりかねません。
退去が発生すると、空室期間の家賃収入減少や原状回復費、新たな入居者募集費用などのコストが発生します。こうしたコストは、賃貸経営の収益を着実に圧迫していきます。
劣化を早めに修繕し、快適で安全な住環境を保つことが大切です。
修繕工事が必要な建物
修繕工事は、住宅から商業施設・公共施設まで、あらゆる用途の建物で必要になります。
具体的には、分譲マンションや賃貸アパート、戸建て住宅、商業ビル、医療施設、工場、学校、公共施設などが対象です。それぞれの建物には特有の構造・素材が使われており、修繕の方法や頻度も大きく異なります。
代表的な建物は、主に以下の5つです。
- 戸建て住宅
- マンション
- 賃貸アパート
- ビル・商業施設
- 医療施設・学校・公共建物
建物の種類に合った方法と頻度で、修繕を進めましょう。
戸建て住宅
戸建て住宅では、外壁や屋根の定期的な塗り替えや防水工事が重要です。
木造住宅では、外壁や屋根の塗装や防水が劣化しやすいためです。また、木材は湿気に弱いため、通気性や防腐処理のチェックも定期的に行う必要があります。
外まわりの塗装・防水と木材の状態を、定期的に確認しておきましょう。
マンション
マンションでは、外壁や屋上防水・共用設備を中心とした、計画的な大規模修繕が必要です。
RC造のマンションでは、コンクリートの中性化による鉄筋の腐食が課題となるためです。
修繕の時期と内容を、計画的に決めておくことが大切です。
賃貸アパート
賃貸アパートでは、外廊下・階段・玄関ドアなどの共用部のメンテナンスと、外壁・屋根の修繕が必要です。
アパートや集合住宅の修繕は、入居者の安全性・満足度にも直結するため、定期的な点検と対応が求められます。
入居者が日々使う共用部ほど、こまめな点検を心がけましょう。
ビル・商業施設
ビル・商業施設では、鉄部の錆や塗膜の剥がれを防ぐ塗装や補修が重要です。
鉄骨造の建物では、鉄部の錆や塗膜の剥がれが起きやすいためです。特に雨風にさらされる外部鉄骨や階段、屋上機器の点検が欠かせません。
鉄部の状態を定期的に確認し、腐食を防ぎましょう。
医療施設・学校・公共建物
医療施設・学校・公共建物では、安全性や衛生面を保つための修繕が欠かせません。
多くの人が出入りする公共性の高い施設だからです。内装や空調・電気設備などのインフラメンテナンスも定期的に行う必要があります。
利用者の安全を第一に、計画的に修繕を進めましょう。
修繕工事が必要になる劣化症状

修繕工事が必要なサインは、外壁のひび割れや防水層の膨れ、鉄部の錆びなど、部位ごとの劣化症状として現れます。
部位ごとに、見られる症状と放置した場合のリスクを以下の表に整理しました。
| 部位 | 主な劣化症状 | 放置するとどうなるか |
|---|---|---|
| 外壁(塗膜) | ひび割れ、塗装の剥がれ、チョーキング(白い粉) | 防水性低下により雨水が浸入し、下地やコンクリートが劣化 |
| 外壁(タイル) | 浮き、剥がれ、欠損、目地のひび割れ | タイル剥落による落下事故、鉄筋腐食や爆裂への進行 |
| シーリング(目地・サッシ周り) | 硬化、ひび割れ、痩せ、剥離 | つなぎ目から浸水し、雨漏りや外壁内部の劣化を誘発 |
| 屋上・ベランダ防水 | 防水層の膨れ・剥がれ、ひび割れ | 雨漏り、躯体コンクリートの劣化、鉄筋腐食 |
| 鉄部(手すり・階段等) | 錆び、腐食、塗膜の浮き | 強度低下による破損・脱落、安全性の低下 |
| コンクリート躯体 | 白華現象、剥離・爆裂、鉄筋露出 | 構造性能の低下、補修費の大幅増大 |
| 室内 | 雨漏り、シミ、カビ | 居住環境の悪化、健康被害、内装の損傷 |
| 給排水設備 | 水漏れ、異臭、配管の錆 | 漏水被害、衛生環境の悪化、階下への二次被害 |
表のとおり、どの症状も放置すると、雨漏りや構造性能の低下、漏水被害など、より大きな被害につながる恐れがあります。
これらの症状を見つけたら、早めに専門家に相談しましょう。
室内に現れる修繕工事のサイン
天井や壁のシミ、カビ、湿気による異臭も、修繕を検討するサインです。
屋根・屋上・外壁・配管などの不具合が、室内側に現れている可能性があるためです。表面だけを補修せず、漏水経路や結露の原因を調査する必要があります。
学校・医療施設・共同住宅など利用を止めにくい建物では、利用者の安全確保や工区分けも含めて修繕計画を立てることが大切です。
室内の異変は、建物の外側の不具合を知らせるサインとして見逃さないようにしましょう。
修繕工事を実施する時期・タイミング

修繕工事の時期は、最初が築10年、その後は12〜15年周期の大規模修繕が目安です。
ただし、目安は建物の種類や部位によって異なるため、主に以下の2つの視点で確認しましょう。
- 【建物別】修繕工事の時期・タイミング
- 【部位別】修繕工事の時期・タイミング
目安を知ったうえで、実際の劣化状況に合わせて時期を判断することが大切です。
【建物別】修繕工事の時期・タイミング
修繕工事の時期は、戸建ては新築から約10年が最初の目安、マンションは12〜15年周期の大規模修繕が基本です。
修繕工事の周期は、建物の種類によって考え方が異なります。建物ごとの目安は以下の表のとおりです。
| 建物の種類 | 修繕時期の目安 |
|---|---|
| 戸建て住宅(木造) | 築10〜15年で1回目、築20〜30年で2回目 |
| 分譲マンション | 12〜15年周期で大規模修繕 |
| 賃貸アパート・マンション | 12〜15年が基本(木造サイディングは10年も) |
| ビル・商業ビル | オーナー判断(明確な周期規定なし) |
ただし周期はあくまで目安で、立地・構造・管理状態によって変動するため、建物診断にもとづく判断が欠かせません。
【部位別】修繕工事の時期・タイミング
部位ごとの修繕周期は、鉄部が4〜6年、外壁・防水層が5〜15年、給排水管が15〜20年など、部位によって大きく異なります。
建物は部位ごとに劣化の速度が異なるためです。紫外線や雨風の影響を直接受ける鉄部・外壁・防水層は周期が短く、配管や設備は比較的長くなります。部位ごとの目安は以下の表のとおりです。
| 修繕箇所 | 推奨される修繕周期 | 主な工事内容 |
|---|---|---|
| 共用部の鉄部 | 4〜6年 | 錆び止め塗装、塗り替え |
| シーリング(目地・サッシ周り) | 5〜10年 | 打ち替え、打ち増し |
| 外壁面 | 5〜15年 | ひび割れ補修、塗装、タイル補修 |
| 屋上・バルコニー防水層 | 5〜15年 | 防水層の全面改修、床材の補修 |
| 給排水管 | 15〜20年 | 配管の更新・交換 |
| エレベーター | 部品更新15〜20年/本体更新 約30年 | 部品交換、制御装置の更新 |
これらの周期はあくまで目安であり、立地条件・使用状況・気候によって変動します。特に、鉄部やシーリングは周期が短く、外壁・防水の大規模修繕を待たずに劣化が進むケースもあります。
修繕周期は部位別に管理し、定期的な点検で実際の状態を確認しながら柔軟に対応しましょう。
なお、大規模修繕の周期に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はあわせてご参照ください。
>>大規模修繕の周期は建物で変わる?ガイドラインや劣化状況から工事期間を紐解く
修繕工事の種類と工事内容

修繕工事の主な種類は、建物の部位ごとに以下の5つです。
- 外壁修繕工事|ひび割れ補修と塗装
- 屋根修繕工事|屋根材の補修・交換
- 屋上防水工事|雨漏り防止の要
- 給排水管修繕工事|漏水や水質悪化を防ぐ
- 鉄部塗装工事|錆び防止とメンテナンス
部位ごとに異なる工法や材料が使われるため、それぞれの工事内容と重要性を押さえておきましょう。
外壁修繕工事|ひび割れ補修と塗装
外壁修繕工事では、ひび割れの補修、シーリング材の打ち替え、塗装の塗り替えなどを行います。
外壁は建物の外観を形成するだけでなく、雨水の浸入を防ぐ役割を担っているためです。ひび割れは放置すると雨水が内部に浸入し、鉄筋の腐食やコンクリートの劣化を引き起こしかねません。
シーリング材は建物の揺れを吸収し、防水性を保つために不可欠です。外壁塗装は美観の回復だけでなく、紫外線や雨風から建物を保護する役割も果たしています。
外壁の修繕は、見た目と防水性の両方を取り戻すための工事です。
【関連記事】ビルの外壁修繕・補修の費用相場やタイミングは?工事内容や注意点・低コストで行う方法を紹介
屋根修繕工事|屋根材の補修・交換
屋根修繕工事では、防水塗装の再施工・屋根材の交換・防水シートの貼り替えなどを行います。
屋根は建物を雨や日差しから守る重要な部分ですが、経年とともに防水性能が低下します。瓦やスレートのずれ・割れ・金属屋根のサビや浮き・塗装の劣化などが主な劣化症状です。
放置すると雨漏りにつながるため、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。
屋上防水工事|雨漏り防止の要
屋上防水工事は、劣化した防水層をやり直して雨漏りを防ぐ工事で、修繕周期は10〜15年が目安です。
屋上の防水層は、建物を雨水から守る最も重要な部分です。防水層が劣化すると雨漏りが発生し、室内の天井や壁にシミやカビが生じるだけでなく、構造体の劣化にもつながります。
工法には、既存の防水層を撤去して新たに施工する「撤去工法」と、既存層の上に重ねる「かぶせ工法」があります。使用される材料にはアスファルト防水、ウレタン塗膜防水、シート防水(塩ビ・ゴム)などがあり、建物の状況や予算に応じて最適な工法を選択します。
防水層は雨漏り防止の要なので、周期を目安に計画的に工事しましょう。
【関連記事】屋根の防水工事費用はいくら?工法別の相場と費用を抑えるポイントを徹底解説
給排水管修繕工事|漏水や水質悪化を防ぐ
給排水管修繕工事では、老朽化した配管を新しいものに交換し、漏水や水質悪化を防ぎます。
給排水管は建物の壁や床の内部に配置されているため、日常生活では目に見えません。しかし、配管が劣化すると漏水や赤水、水圧の低下などが発生し、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
特に鋼管は錆びやすく、15〜20年で交換が必要になることが多いです。近年は耐久性の高い樹脂管やステンレス管への更新が一般的です。
配管工事は大掛かりな作業となるため、計画的に実施しましょう。
【関連記事】マンション給排水管の専有部分・共有部分の交換費用は?寿命・工事の種類を解説
鉄部塗装工事|錆び防止とメンテナンス
鉄部塗装工事は、錆びやすい手すりや柵、扉などの鉄部を塗り直し、錆びの進行を防ぐ工事です。
階段の手すりや柵、扉などの鉄部は、錆びが発生しやすい箇所です。錆びを放置すると鉄部の強度が低下し、安全性に問題が生じるだけでなく、美観も大きく損なわれます。
鉄部塗装工事では、まず既存の錆びや古い塗膜を除去(ケレン)し、錆び止め塗料を塗布し、最後に仕上げ塗装を施します。鉄部は他の部位より劣化が早いため、4〜6年ごとの塗り替えが目安です。
こまめな塗装メンテナンスが、錆びの進行を防ぎ、鉄部を長持ちさせるポイントです。
【関連記事】鉄部の塗装工事は何年ごと?周期の目安と最適なタイミングを解説
修繕工事の費用相場

修繕工事の費用相場は、マンションの大規模修繕なら戸あたり100〜125万円(1回目)、外壁塗装なら1㎡あたり2,000〜4,000円が目安です。
費用は、主に以下の2つの見方で確認できます。
- マンション大規模修繕の費用相場(戸あたり・平米あたり)
- 工事内容別の費用単価
適切な予算を確保するために、相場を把握しておきましょう。
マンション大規模修繕の費用相場(戸あたり・平米あたり)
マンション大規模修繕の費用相場は、戸あたり100〜125万円(1回目)、床面積1㎡あたり10,000〜15,000円が目安です。
国土交通省の令和3年度「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目の大規模修繕工事の費用は戸あたり100〜125万円が最も多く、平均は約151.6万円です。
床面積1平方メートルあたりでは、10,000〜15,000円が相場で、平均は約13,000円です。
回数別に見ると、戸あたりの工事金額は1回目が最も高く、2回目・3回目と下がっていく傾向があります。これは、近年建てられたマンションほど戸あたりの床面積が大きいことなどが影響しているためです。
ただし㎡あたりの単価で見ると、給排水管の更新といった工事項目が増えるぶん、回を重ねるごとに高くなります。
なお、マンション全体での総額は、50戸以下の小規模物件で3,000〜4,000万円、100戸以上の大規模物件では1億円を超えることもあります。
回数や規模によって金額は変わるため、相場は目安として押さえておきましょう。
工事内容別の費用単価
主な修繕工事の費用単価は、外壁塗装で1㎡あたり2,000〜4,000円、屋上防水工事で1㎡あたり4,000〜8,000円が目安です。
そのほかの工事も含めた単価の目安は、以下の表のとおりです。
| 工事項目 | 費用相場 | 単位 |
|---|---|---|
| 外壁塗装 | 2,000〜4,000円 | 1㎡あたり |
| タイル補修(浮き注入) | 500〜900円 | 1か所あたり |
| タイル補修(張り替え) | 10,000〜50,000円 | 1㎡あたり |
| 屋上防水工事 | 4,000〜8,000円 | 1㎡あたり |
| 鉄部塗装 | 1,000〜3,000円 | 1㎡あたり |
| シーリング打ち替え | 900〜1,500円 | 1mあたり |
| 給排水管更新 | 50〜100万円 | 1戸あたり |
これらの単価は目安であり、建物の状況、使用する材料のグレード、施工業者によって変動します。
複数の業者から見積もりを取得し、内容を比較することが大切です。
修繕工事の事例|工事内容・費用を紹介

当社が施工した修繕工事の費用は、一般住宅の事例で合計107万円、マンションの事例で合計1,960万円でした。
一般住宅とマンションそれぞれの工事内容や費用を、以下の2つの事例で紹介します。
- 一般住宅の修繕工事事例
- マンションの修繕工事事例
建物の規模や工事の範囲によって、費用は大きく変わります。
一般住宅の修繕工事事例
神奈川県綾瀬市の個人邸(I様邸)では、外壁塗装を中心とする修繕工事を合計107万円で行いました。
経年により外壁や付帯部の塗膜が劣化していたため、足場を仮設し、高圧洗浄で汚れと旧塗膜を除去したうえで、各部を丁寧に塗り直しました。実施した工事は以下のとおりです。
- 足場仮設工事
- 洗浄工事
- 塗装工事(外壁・面格子・天井・庇・破風・波板木下地・戸袋)
- 波板交換工事
足場から塗装、波板交換までの工事をすべて含めて、修繕費用は合計107万円です。
マンションの修繕工事事例
東京都目黒区のマンション(Tマンション)では、外壁・防水・共用部を含む各所修繕工事を合計1,960万円で行いました。
タイルの浮きやひび割れ、鉄筋爆裂、シーリングの劣化など複数の課題があったため、建物全体の保護と資産価値維持を目的に総合的な修繕をしました。主な工事内容は以下の通りです。
- 足場仮設工事
- 下地補修工事(タイル張替え・ひび割れ補修・鉄筋爆裂補修・欠損補修・塗膜脆弱部補修)
- 板金工事
- 洗浄工事
- シーリング工事(廊下床打継目地・パネル目地・Exp.J取合い・SD廻り・手摺り根元廻り)
- 塗装工事(天井・玄関扉・PS扉・消防扉・サッシ枠・手摺り・各種扉・アンテナ等)
- 防水工事(屋上・ルーフバルコニー・共用廊下・屋外階段)
- 長尺シート工事(廊下・階段)
この総合的な修繕により、建物の耐久性や防水性の向上に加え、美観の回復にもつながっています。
参照:【管理組合様】東京都目黒区Tマンション 各所修繕工事 費用公開
他の事例を知りたい方は以下もご参照ください。
修繕工事業者を選ぶ際のチェックポイント

修繕工事業者を選ぶ際のチェックポイントは、主に以下の4つです。
- チェックポイント1.施工実績が豊富か
- チェックポイント2.見積書の内容が明確か
- チェックポイント3.有資格者が在籍しているか
- チェックポイント4.アフターサービスと保証制度が充実しているか
価格だけで決めず、4つのポイントを総合的に確認することが、信頼できる業者選びにつながります。
チェックポイント1.施工実績が豊富か
まず確認したいのが、同規模・同種の建物での施工実績が豊富かどうかです。
マンションの大規模修繕なら、同程度の戸数や構造の物件での経験が豊富かどうかが重要になります。実績のある業者は、工事中に起こりうる問題を予測し、適切に対処するノウハウを持っているためです。
過去の施工事例を見せてもらい、施工前後の写真や仕上がりの状況について説明を受けると、技術力や対応の丁寧さを判断しやすくなります。
自分の建物に近い事例があるかどうかを、必ず確かめましょう。
チェックポイント2.見積書の内容が明確か
見積書は、工事項目ごとに数量・単価・金額が明記されているかを確認しましょう。
見積書の詳細さと透明性は、信頼できる業者を見分ける大きな手がかりです。使用する材料のメーカー名や品番まで示されている見積書が理想的です。
しかし、「一式」表記が多いものや、極端に簡略化された見積書は注意が必要です。不明点に対して納得できる説明が得られるかも判断基準になります。
複数の業者から見積もりを取って比較し、内容が明確な業者を選びましょう。
見積書の内容を確認したい方は、以下のサンプルをご覧ください。
チェックポイント3.有資格者が在籍しているか
建築施工管理技士・一級建築士・塗装技能士などの有資格者が在籍しているか、あわせて建設業許可を持っているかを確認しましょう。
建設業法では、税込500万円以上の工事を請け負う場合に建設業許可が必要とされ(建築一式工事は1,500万円以上)、修繕工事もこれに該当します。大規模な修繕を依頼する際は、業者が適切な許可を持っているか確認しましょう。
許可の有無は、国土交通省や各都道府県の建設業者検索システムで調べられます。
資格と許可の両方を確かめておくと安心です。
チェックポイント4.アフターサービスと保証制度が充実しているか
工事後のアフターサービスや保証制度が充実しているかも、チェックすべき項目です。
保証期間は工事内容によって幅があり、数年程度のものから10年保証を設けている業者までさまざまです。保証の内容・対応範囲・期間を契約前に明確にしておきましょう。
あわせて、工事後の定期点検サービスや、トラブル発生時に迅速に対応できる体制が整っているかも確認したいポイントです。長く付き合える業者を選んでおくと、次回以降の修繕もスムーズに進められます。
修繕工事の準備と施工の流れ

修繕工事は、主に以下の7つのステップで進めます。
- Step1:建物診断・劣化調査
- Step2:長期修繕計画の策定
- Step3:施工業者の選定・見積もり取得
- Step4:住民説明会・近隣への挨拶
- Step5:工事の実施
- Step6:完成検査・引き渡し
- Step7:アフターフォロー
修繕工事を成功させるには、適切な準備と計画的な進行が不可欠です。
Step1:建物診断・劣化調査
まずは専門家による建物の詳細な調査を実施します。具体的な調査項目は以下の通りです。
- 外壁・屋根のひび割れや塗膜の劣化状況
- タイルの浮き・剥離・欠損の有無
- シーリング(コーキング)の劣化状況
- 雨漏りや漏水の有無
- 防水層の劣化状況
- 鉄部の錆びや腐食の進行状況
- コンクリートのひび割れ・欠損・鉄筋爆裂の有無
- 共用部(廊下・階段・手すりなど)の劣化状況
- 給排水設備や配管の状態
調査結果をもとに修繕工事の範囲と優先順位を決定します。
Step2:長期修繕計画の策定
建物診断の結果をもとに、今後10〜30年を見据えた長期修繕計画を策定します。
修繕時期や工事内容、概算費用を明確にし、計画的な修繕と資金準備を進めます。マンションでは、管理組合で計画を共有し、合意形成を図ることが重要です。
Step3:施工業者の選定・見積もり取得
複数の施工業者に見積もりを依頼し、価格だけでなく工事内容、実績、提案力を総合的に評価します。
業者選定後、詳細な工事内容や工程、費用について協議し、契約を締結します。この段階で保証内容やアフターサービスについても確認しましょう。
Step4:住民説明会・近隣への挨拶
工事の実施前には、居住者や関係者向けの説明会を開き、近隣住民へも事前に挨拶します。
説明会では、工事期間、騒音や振動が出る時間帯、駐車場やベランダの使用制限など、生活への影響を丁寧に伝えましょう。
近隣住民への挨拶が欠かせないのは、修繕工事では、足場の組み立て・解体時の騒音、作業中の振動、塗料の飛散やにおいなど、隣接する建物へ影響が及ぶ場面が少なくないためです。
そのため、着工前に工事責任者が近隣を訪問し、工事の概要・期間・影響の出る時間帯を伝えておくのが標準的な工程です。
Step5:工事の実施
計画にもとづき、足場の設置、下地処理、塗装、防水といった各工程を確実に進めていきます。工事期間中は進捗を定期的に確認し、状況に応じて調整を加えることも必要です。
設計監理方式の場合は、工事監理者が各工程の中間検査を行い、施工品質をチェックします。
Step6:完成検査・引き渡し
工事が完了したら、施主立ち会いのもとで完成検査を実施します。契約どおりに施工されているか、仕上がりに問題がないかを一つひとつ確認していきましょう。
不備があれば手直しを依頼し、すべて解消されたうえで正式な引き渡しとなります。このとき、保証書や完成図書も忘れずに受け取ってください。
Step7:アフターフォロー
引き渡し後も、定期的な点検やメンテナンスを継続することが大切です。
保証期間内に不具合が見つかった場合は、速やかに業者へ連絡して対応してもらいましょう。日常的に建物の状態を見守り続けることが、次回の修繕までコンディションを良好に保つ秘訣です。
修繕工事に関するよくある質問

修繕工事について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。工事を検討する際の参考にしてください。
Q1. 修繕工事は何年ごとに行うべきですか?
一般的には、最初の修繕工事は築10年を目安に実施し、その後は12〜15年周期で大規模修繕を行うのが標準的です。ただし鉄部塗装は4〜6年、給排水管は15〜20年など、部位によって適切な周期は異なります。
立地条件や使用状況でも変わるため、定期的な建物診断を受け、実際の劣化状況に応じた計画を立てましょう。
Q2. 修繕積立金はどのくらい必要ですか?
20階未満のマンションで専有面積1㎡あたり月額おおむね250〜335円が目安です。
ただしこれはあくまで平均的な水準で、必要額は築年数や計画している工事内容によって変わります。長期修繕計画にもとづいて適切な金額を設定し、計画的に積み立てることが大切です。
Q3. 修繕工事中の生活への影響はどの程度ですか?
工事期間は通常数週間から数か月程度で、その間は騒音・振動・塗料のにおいのほか、ベランダの使用制限などの影響が出ることがあります。
外壁塗装や防水工事では足場が設置されるため、ベランダの使用が制限されたり、窓の開閉に制約が生じたりすることがあります。
業者は生活への影響を最小限に抑えるよう配慮しますが、事前の説明会でスケジュールや注意事項を確認しておくと安心です。
Q4. 修繕工事の見積もりは何社から取るべきですか?
一般的には3〜5社程度から相見積もりを取得するのがおすすめです。複数を比較することで、適正価格の把握や工事内容の違いを理解できます。
ただし価格だけで判断せず、施工実績・提案内容・保証制度・対応の質なども含めて総合的に評価しましょう。
Q5. 修繕工事に補助金や助成金は使えますか?
工事内容や所在地によっては、国や自治体の支援制度を活用できます。代表的なものは以下のとおりです。
- マンション長寿命化促進税制
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- 自治体の改修補助
- 介護保険の住宅改修費(戸建て等)
国の年度事業は予算や名称、申請期間が毎年変わるため、計画時には最新の制度を確認してください。
まとめ

修繕工事は、建物を長く安全に保ち、資産価値を守るために欠かせない取り組みです。この記事で解説してきた内容を、以下のポイントで振り返りましょう。
- 修繕工事とは、劣化した建物を建設当初の水準まで回復させる工事
- 改修工事は性能向上、補修工事は応急処置を目的としており、修繕工事とは役割が異なる
- 築10年を目安に最初の修繕を実施し、その後は部位ごとの適切な周期で計画的に進める
- マンションでは、長期修繕計画を策定し、計画的に修繕積立金を確保することが重要
- 業者を選ぶ際は、施工実績や見積書の透明性、有資格者の在籍状況を確認する
小さな劣化のうちに適切に対処することで、大規模な損傷を防ぎ、結果的に費用を抑えられます。現在、建物の劣化や修繕工事について悩んでいるなら、まずは専門家による建物診断を受けることから始めてみてください。
現状を正確に把握することで、適切な修繕計画を立てることができます。信頼できる業者を見つけ、長期的な視点で建物を大切に守っていきましょう。
