マンションの大規模修繕の時期はいつ?回数別の考え方やタイミングをプロが解説
2025/09/16
「そろそろマンションの大規模修繕が必要なのは分かっているけれど、具体的にいつ実施すればいいのか分からない」とお悩みの方は少なくありません。
国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕の周期は一般的に12〜15年程度が目安とされています。ただし、実際に何年目で実施すべきかは、築年数だけでなく建物の劣化状況によっても変わるため、適切に判断することが大切です。
本記事では、国土交通省のデータをもとにした時期の目安から、1回目・2回目・3回目以降の回数別の実施時期、判断のポイント、着工までのスケジュールの立て方まで、分かりやすく解説します。
目次
マンション大規模修繕の時期はいつ?目安のタイミング

マンションの大規模修繕の時期を判断する方法として、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)」や「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」のデータを参考にする選択肢もあります。
ここでは、マンションの大規模修繕の時期を判断するうえで基準となる2つのデータをご紹介します。
国土交通省のガイドラインでは「12〜15年程度」
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、マンションの大規模修繕工事の周期の目安について「概ね12〜15年に1回」と示されています。
関連記事:大規模修繕の国土交通省ガイドラインとは?概要から改定点・修繕積立金・長期修繕計画を解説
実態調査では約7割が12〜15年で実施
国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、大規模修繕工事を実施したマンションの平均修繕周期として最も多かったのは「13年」でした。
次いで「12年」「14年」「15年」となっており、全体の約7割が12〜15年の周期で実施されていることがわかります。
ただし、これはあくまで平均的な年数であり、建物の立地環境や使用されている塗料・防水材のグレード、日頃のメンテナンス状況によって、実際に必要な時期は前後します。
年数だけで判断せず、後述する劣化サインや建物調査診断の結果もあわせて確認することが重要です。
関連記事:大規模修繕の周期に法律の定めはある?根拠と関連法律を解説
マンションの大規模修繕が12年周期で行われることが多い理由
実態調査では13年が最も多いものの、マンションの大規模修繕では長く「12年周期」が目安とされてきました。12年という数字が定着した理由は、主に次の3つです。
国土交通省のガイドラインで「12年程度」と示されていた
2008年(平成20年)に国土交通省が公表した長期修繕計画作成ガイドラインでは、外壁塗装などの修繕周期の例として「12年程度」が示されていました。管理会社や設計事務所がこの数字をもとに長期修繕計画をつくったため、12年周期が広まりました。
2021年(令和3年)の改定で、目安は「12〜15年程度」と幅を持たせた表現に変わっています。
外壁の全面打診調査と足場を共用できる
建築基準法第12条では、竣工または外壁改修から10年を超えた一定規模以上の建物に対し、外壁の全面打診等による調査結果の報告が義務付けられています。
この調査には足場が必要になるため、このタイミングで大規模修繕を実施するマンションが多いことも、12〜15年という周期が定着した背景の一つといえるでしょう。
塗料や防水材の耐用年数に合わせている
大規模修繕の周期の目安は、外壁塗装や屋上防水などに使用される塗料・防水材の耐久性を踏まえたものです。塗料や防水材はおおむね10〜15年程度で性能が低下し始めるため、この時期に合わせて修繕を行うことで、建物の劣化を最小限に抑えられるとされています。
【回数別】マンションの大規模修繕の実施時期とは?

大規模修繕の適切な時期は、1回目・2回目・3回目以降で異なります。工事を重ねるごとに建物の劣化が進行し、修繕の目的や工事範囲が変化していくためです。
本章では、国土交通省の実態調査をもとに、回数別の実施時期と工事内容の傾向を解説します。
1回目の時期|築12〜15年
1回目の大規模修繕は、築12〜15年程度で実施されるケースが最も多くなっています。国土交通省の実態調査でも、1回目の工事は築15年以下で実施されている割合が最も高いという結果が示されています。
1回目の修繕は予防・保全としての側面が大きく、外壁塗装や屋上・バルコニーの防水工事など、建物の表面的な劣化に対する修繕工事がメインです。
給排水管などの設備系統は大規模な更新・修繕を必要としないケースが多く、他の回数と比べて費用を抑えやすい段階といえるでしょう。
関連記事:マンション大規模修繕の1回目と2回目の違いとは?時期・費用・工事内容を徹底比較
2回目の時期|築25〜30年
2回目の大規模修繕は、築25〜30年頃に実施される傾向です。国土交通省の実態調査でも、2回目の工事は築26〜30年で実施されている割合が最も高いという結果になっています。
2回目では、外壁や防水といった表面的な工事に加えて、給排水管やエレベーター、電気設備といった建物の基幹設備にも本格的な劣化がみられやすいため、1回目と比べて工事範囲が広がる分、費用も高くなる傾向があります。
関連記事:マンション大規模修繕2回目の費用相場は?資金不足時の対応や工事内容・注意点を解説
3回目以降の時期|築40年前後
3回目以降の大規模修繕は、築40年前後で実施されるマンションが多くなります。国土交通省の実態調査でも、3回目の工事は築41年以上で実施されている割合が最も高いという結果が出ています。
この段階になると、構造体そのものの本格的な補修や、給排水管の全面交換、エレベーターの更新など、建物の根幹に関わる大規模な工事が必要になるケースが増えます。そのため、修繕と建て替えを比較検討する管理組合も少なくありません。
3回目以降の大規模修繕を検討する際は、以下の表を参考に、建て替えも選択肢に入れることをおすすめします。
| 項目 | 判断基準 |
|---|---|
| 修繕を選ぶ目安 | 構造体の健全性が保たれている修繕費用が建て替え費用の50%以下立地条件が良好で将来的な資産価値が期待できる |
| 建て替えを検討する目安 | 構造体に重大な欠陥が発見されている修繕費用が建て替え費用の70%以上敷地に余剰容積率がある |
関連記事:マンション大規模修繕の3回目とは?時期や工事内容・費用・注意点を解説
マンションの大規模修繕の時期を判断する時のポイント

築年数はあくまで目安であり、実際の実施時期は建物ごとの状態によって判断する必要があります。具体的には、以下3つのポイントに注目しましょう。
劣化サインから判断する
築年数が目安の周期に達していなくても、以下のような劣化サインが見られる場合は、早めの点検・修繕の検討が必要です。
- 外壁のひび割れ・塗膜の剥がれ・チョーキング現象
- シーリング材の破断・肉やせ
- 屋上やバルコニーの防水層のひび割れ・膨れ・水たまり
- 雨漏りや室内のシミ
- 鉄部の錆・腐食
これらの症状は、放置するほど内部の鉄筋腐食や漏水被害へとつながり、修復コストが大きくなる傾向があります。目視で気になる症状が見られた場合は、周期にかかわらず専門業者への相談を検討しましょう。
建物調査診断を受ける
劣化サインの有無にかかわらず、大規模修繕の時期を正確に判断するためには、専門業者による建物調査診断を受けることが重要です。
調査では、目視点検に加えて、打診調査や赤外線カメラなどの非破壊検査を組み合わせることで、外壁や防水層の内部まで含めた劣化状況を客観的に把握できます。
調査結果は、修繕の緊急度や概算費用、工事時期の判断材料として活用できるため、大規模修繕の実施時期に迷ったら、まず建物調査診断を受けることをおすすめします。
長期修繕計画と照らし合わせる
長期修繕計画は、10年・20年といった長期スパンでの修繕周期と資金計画を見通す資料です。多くのマンションでは、この計画にもとづいて大規模修繕の実施時期があらかじめ設定されています。
ただし、計画作成時から時間が経過している場合、建築コストの上昇や実際の劣化の進行度合いとのズレが生じているケースも少なくありません。
建物調査診断の結果と長期修繕計画を照らし合わせ、必要に応じて計画自体を見直すことで、無理のない時期・資金計画で大規模修繕を実施できます。
関連記事:大規模修繕の長期修繕計画とは?目的・作成手順・見直し時期・費用相場まで解説
修繕時期を遅らせる・早める場合のメリット・デメリット

大規模修繕の時期は、ガイドラインの目安(12〜15年程度)より遅らせることも、早めることもできます。それぞれのメリットとデメリットは次のとおりです。
修繕時期を遅らせる場合(15年・18年周期)
国土交通省のガイドライン上の目安である12〜15年程度よりも修繕時期を遅らせ、16〜18年程度に延ばすマンションも存在します。
マンションの大規模修繕を行う時期を遅らせることには、次のようなメリットとデメリットが存在します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| メリット | ・大規模修繕の実施回数を減らせる ・住民の費用負担や工事による生活制約の頻度を抑えられる |
| デメリット | ・劣化の進行で1回あたりの工事費用が高額になりやすい ・想定外の劣化が見つかり、追加工事が発生するリスクが高まる |
マンションに使用している建材や立地などにより、劣化の進行が緩やかな場合は、修繕時期を遅らせる選択肢も考えられます。
ただし、根拠のない先延ばしはかえってリスクを高める可能性があるため、建物調査診断を受け、劣化状況を確認したうえで判断することが大切です。
周期を15年や18年に延ばすには、次のような条件がそろっている必要があります。
- 前回の大規模修繕で、耐久性の高い塗料・防水材・シーリング材を使っている
- 修繕と修繕のあいだに、定期点検と小さな補修を続けている
- 建物調査診断で、劣化の進み具合を定期的に確かめている
長く持つ材料を使う分、1回あたりの工事費用は高くなりやすい点にも注意が必要です。
修繕時期を早める場合
マンションの大規模修繕は、ガイドライン上の目安より早い10〜12年程度で実施したり、部分的な予防修繕を取り入れたりする考え方もあります。
修繕時期を早めるメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| メリット | ・劣化の進行を抑え、建物の資産価値を維持しやすい ・1回あたりの工事費用を比較的抑えやすい ・軽微な段階で対応でき、想定外の追加工事が発生しにくい |
| デメリット | ・実施回数が増え、住民の費用負担や生活制約の頻度も増える ・修繕の都度、住民説明や合意形成が必要になる ・修繕積立金の積立ペースを早める必要がある |
建物の劣化状況や住民合意の得やすさ、修繕積立金の蓄積状況を踏まえ、管理組合ごとに最適な時期を検討しましょう。
マンション大規模修繕の時期に合わせたスケジュールの考え方

マンションの大規模修繕は、着工から逆算して準備を進める必要があります。準備期間は2〜3年が一般的です。
ここでは、大規模修繕の着工までの流れを3つの段階に分けてご紹介します。
着工2〜3年前|修繕委員会の設置・建物調査診断
大規模修繕の準備は、着工の2〜3年前から始めます。管理組合に修繕委員会を設置し、理事会とは別に工事の検討を専門的に進める体制を整えましょう。
委員会の設置後は、専門業者による建物調査診断を実施します。
資金計画や工事スケジュールの精度を高めるためにも、外壁や屋上防水、共用設備などの劣化状況を客観的に把握し、必要な工事内容と優先順位を決めることが大切です。
関連記事:大規模修繕委員会とは?役割や手順と成功へ導くチェックポイント
着工1〜2年前|工事内容の決定・施工会社の選定
着工1〜2年前は、調査診断の結果と長期修繕計画を照らし合わせ、具体的な工事範囲と資金計画を固める段階です。
このタイミングで、施工会社の選定も進めましょう。複数社から見積もりを取り、金額だけでなく工事内容の妥当性・実績・保証内容を比較して決めることが大切です。
自治体の補助金・助成金を活用できる場合は、この段階で対象条件や申請時期も確認しておきましょう。
着工3〜6ヶ月前|総会決議と住民説明会
工事内容・施工会社・資金計画が固まったら、着工の3〜6ヶ月前を目安に、総会で工事の実施を決議します。
決議の前後には住民説明会を開き、修繕内容や費用負担、工事期間中の生活への影響を丁寧に説明しましょう。
特に、騒音・洗濯物干しの制限・断水などが発生する場合は、事前にスケジュールを共有しておくことが重要です。住民の理解と協力を得ておくと、着工後のトラブルを防ぎやすくなります。
関連記事:大規模修繕工事の進め方とは?マンション修繕の流れ・費用・発注方式・注意点を解説
マンションの大規模修繕の時期に関するよくある質問
- マンションの大規模修繕の時期は法律で決まっていますか?
- 大規模修繕の実施時期そのものを義務付ける法律はありません。国土交通省のガイドラインが示す「12〜15年程度」は、あくまで目安です。
ただし建築基準法第12条により、一定規模以上の建物は竣工・外壁改修から10年を超えると外壁の調査報告が義務付けられており、この調査結果が実質的な判断材料の一つとなります。
- マンションの2回目の大規模修繕はいつ行うのが適切ですか?
- 2回目の大規模修繕は、築25〜30年頃に実施するマンションが多い傾向です。国土交通省の実態調査でも、築26〜30年で実施されている割合が最も高くなっています。
ただし給排水管など設備系統の劣化状況によって時期は前後するため、建物調査診断の結果もあわせて確認することをおすすめします。
- マンションの大規模修繕で修繕積立金が足りない場合、修繕時期を遅らせてもよいですか?
- 修繕積立金の不足を理由に時期を遅らせることは可能ですが、劣化の進行により将来の工事費用がかさむ点に注意が必要です。
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立額が長期修繕計画に対して不足しているマンションが36.6%にのぼると報告されています。
時期を遅らせる場合は、一時金の分割徴収や金融機関からの借入も含め、早めに資金計画を検討しましょう。
- マンションの大規模修繕費用の相場はどのくらいですか?
- 国土交通省の実態調査によると、1回目の大規模修繕工事の戸当たり工事金額は100万円超120万円以下が最も多く(中央値110.2万円)、平均は151.6万円です。
2回目以降は設備更新工事が加わるため、費用はさらに高くなる傾向があります。マンションの規模や劣化状況によって金額は変わるため、複数社からの見積もり比較をおすすめします。
- 築20年のマンションでは大規模修繕を実施すべきですか?
- 築20年は、1回目の大規模修繕(築12〜15年目安)をすでに実施している場合が多い時期ですが、建物の劣化状況などによっては2回目を検討すべきケースもあります。
マンションの外壁や防水層に劣化サインが見られる場合は、周期にかかわらず建物調査診断を受け、修繕の要否を確認することをおすすめします。
- マンションの大規模修繕は18年周期でも大丈夫ですか?
- 建物の状態と準備しだいでは、18年周期でも大規模修繕を行うことは可能です。
ただし、耐久性の高い材料を使うこと、修繕と修繕のあいだに定期点検と小さな補修を続けること、建物調査診断で劣化の進み具合を確かめることが前提になります。
長く持つ材料を使う分、1回あたりの工事費用は高くなりやすいため、長期修繕計画と資金計画もあわせて見直しましょう。
- 大規模修繕の工事に向いている季節はありますか?
- 気温や天候が安定している春(3〜5月)と秋(9〜11月)は、塗料や防水材が乾きやすく、工事に向いているといわれます。
梅雨や台風の時期は雨で工事が止まりやすく、冬は気温が低いと塗料が乾きにくくなります。
ただし、数か月かかる工事をすべて良い季節に収めるのは難しいため、季節よりも、予備日を含めた工程と住民の生活への影響を優先して決めましょう。
まとめ|マンションの大規模修繕の時期は築年数と劣化状況から判断しよう
国土交通省のガイドラインや実態調査によれば、マンションの大規模修繕は概ね12〜15年ごとが目安であり、約7割のマンションがこの周期で修繕を実施していることがわかっています。
修繕回数別の時期としては、1回目が築12〜15年、2回目が築25〜30年、3回目以降が築40年前後で検討することをおすすめします。
ただし、大規模修繕の適切な時期は築年数だけで決まるものではありません。劣化サインの有無や建物調査診断の結果、長期修繕計画との照らし合わせをもとに、建物ごとの状況に応じて判断することが大切です。
着工の2〜3年前から計画的に準備を進めながら、無理のない資金計画と住民合意のもとで、ご自身のマンションに最適なタイミングを見極めましょう。
