大規模修繕工事の進め方とは?8つのステップで流れとスムーズに進めるポイントを解説
2025/02/25
「大規模修繕工事は、何から始めればよい?」
「修繕委員会の発足や業者選定、総会承認までの流れを知りたい」
マンションの大規模修繕工事は、外壁補修や防水工事、シーリング工事、鉄部塗装などをまとめて行う大きな工事です。建物の劣化を補修し、安全性や快適性、資産価値を維持するために欠かせません。
一方で、大規模修繕工事は費用が大きく、準備期間も長くなります。建物診断、修繕計画、資金計画、発注方式の検討、施工会社選定、総会承認、工事説明会など、段階ごとに確認すべきことがあります。
進め方を理解しないまま着工を急ぐと、見積比較が不十分になったり、住民への説明不足でトラブルになったりする可能性があります。早い段階から全体の流れを把握し、計画的に進めることが大切です。
本記事では、大規模修繕工事の進め方を8つのステップで解説します。あわせて、スムーズに進めるためのポイントも紹介するので、管理組合やオーナーの方はぜひ参考にしてください。
目次
大規模修繕工事とは?
大規模修繕工事とは、マンションやビルなどの建物で、外壁・屋上・共用部・設備などの劣化部分をまとめて修繕する工事です。建物を長く安全に使い続けるために、計画的に実施されます。
マンションでは、外壁補修、タイル補修、シーリング打ち替え、屋上防水、ベランダ防水、鉄部塗装、共用廊下の補修などをまとめて行うことが多くあります。
実施の間隔は、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」で12〜15年程度が目安とされています。建物のまわりに足場を組み、数か月かけて工事を行うのが一般的です。
大規模修繕工事の進め方|全体の流れ
大規模修繕工事は、管理組合が次の8つのステップで進めます。
| ステップ | 内容 |
| STEP1 | 修繕委員会を発足する |
| STEP2 | 発注方式を決める |
| STEP3 | 建物診断・劣化調査を行う |
| STEP4 | 工事内容と予算を決める |
| STEP5 | 施工会社を選定する |
| STEP6 | 総会で承認を得る |
| STEP7 | 工事説明会を行う |
| STEP8 | 着工から完了・引き渡しまで |
着工までに1年以上の準備期間がかかることが多いため、工事を予定している時期の2年ほど前から動き始めるのが目安です。
STEP1|修繕委員会を発足する
大規模修繕工事を進める際は、まず修繕委員会を発足するのが一般的です。理事会だけで進めると負担が大きくなりやすいため、工事内容や業者選定を検討する専門チームをつくります。
修繕委員会は、理事会の下に置く組織です。建物診断の依頼、工事内容の検討、見積比較、住民への説明資料の作成などを担当し、準備から工事の完了まで関わります。
メンバーに建築や設備に詳しい住民がいると心強いですが、専門知識がなくても、役割分担を明確にすれば運営できます。修繕委員会を設けない場合は、理事の任期を2年にして半数ずつ交代するなど、引き継ぎで検討が止まらない工夫をしている管理組合もあります。
STEP2|発注方式を決める
次に、工事の設計(どこをどう直すかの仕様づくり)と施工を、誰に任せるかを決めます。設計監理方式を選ぶと、次の建物診断から設計事務所やコンサルタントが担当するため、建物診断の前に決めておく必要があります。
| 発注方式 | 進め方 | メリット | 注意点 |
| 責任施工方式 | 施工会社1社が、調査・提案・施工までまとめて担う | 窓口が1社で、打ち合わせや日程調整が進めやすい | 工事内容や金額の妥当性を第三者が確かめにくい |
| 設計監理方式 | 設計事務所やコンサルタントが調査・仕様書作成・見積比較・工事監理を行い、施工は別の会社が担う | 施工会社とは別の立場で工事内容を確かめられる | 設計監理の費用が別にかかる |
| 管理会社主導方式 | 日常管理を担う管理会社が窓口になり、工事を進める | 建物の状況を知っている管理会社と連携しやすい | 施工会社の選定や見積比較が管理会社任せになりやすい |
どの方式にもメリットと注意点があり、一律の正解はありません。管理組合の体制、専門知識の有無、予算、工事の規模をふまえて選びましょう。
STEP3|建物診断・劣化調査を行う
次に、建物診断・劣化調査を行います。外壁、屋上、防水層、シーリング、鉄部、共用廊下、階段、設備まわりなどを確認し、劣化状況を把握します。
目視調査だけでなく、打診調査や漏水調査を行う場合もあります。診断結果は、必要な工事項目や優先順位を決めるための重要な資料になります。
診断は、工事を前提にせず、利害関係のない専門家に依頼すると客観的な結果を得やすくなります。結果によっては、工事の時期を数年先に延ばすことも選択肢になります。
STEP4|工事内容と予算を決める
建物診断の結果をもとに、工事内容と予算を決めます。どの部位を修繕するのか、今回の工事で実施する範囲と次回以降に回す範囲を整理しましょう。
修繕計画では、工事項目、概算費用、工事時期、工期、住民への影響などを確認します。長期修繕計画との整合性も見ながら、無理のない計画を立てることが大切です。
大規模修繕工事では、資金計画の確認が欠かせません。修繕積立金で費用をまかなえるか、不足がある場合は一時金徴収や借入れが必要かを検討します。
修繕積立金が足りない場合の主な対処法は、次のとおりです。
- 一時金を徴収する
- 金融機関から借り入れる
- 工事内容を見直し、優先度の低い工事を次回に回す
- 修繕積立金を値上げする
必要な工事を削りすぎると、劣化が進んで次回の費用が増えることがあります。早い段階で概算費用を把握し、管理組合内で資金計画を共有しましょう。
STEP5|施工会社を選定する
発注方式が決まったら、施工会社を選定します。複数社から見積もりや提案を受け、施工実績、見積書の内訳、保証内容、住民対応、担当者の説明力を比較します。
価格だけで選ぶと、施工品質や追加費用でトラブルになることがあります。選定理由を記録し、総会で説明できるようにしておきましょう。
施工会社の選び方は、大規模修繕の業者選定の記事で詳しく解説しています。
STEP6|総会で承認を得る
施工会社や工事内容、費用がまとまったら、総会で承認を得ます。外壁補修や防水工事などの一般的な大規模修繕工事は、出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決まる普通決議で承認されます(区分所有法18条・39条)。管理規約に別の定めがある場合は、規約に従います。
総会では、工事の必要性、工事内容、見積比較、選定理由、工期、住民への影響などを説明します。住民から質問が出ることを想定し、資料をわかりやすく準備しましょう。
STEP7|工事説明会を行う
総会で承認され、施工会社と契約したら、着工の1か月ほど前に住民向けの工事説明会を開きます。工事期間、作業時間、騒音や臭気、足場設置、ベランダ使用制限、洗濯物の制限、防犯対策などを説明します。
説明が不十分だと、工事中のクレームや不安につながります。掲示物や配布資料も活用し、住民が確認しやすい形で情報共有しましょう。
工事車両の出入りや騒音で近隣にも影響が出るため、近隣の建物への挨拶もあわせて行いましょう。
STEP8|着工から完了・引き渡しまで
着工後は、工程表に沿って工事を進めます。代表的な工事の流れは次のとおりです。建物によって順番が前後することもあります。
| 工程 | 内容 |
| 仮設工事 | 足場を組み、落下物や塗料の飛散を防ぐネットで囲う |
| 下地補修工事 | 外壁のひび割れ・浮き・欠損、タイルの浮きや剥がれを補修する |
| シーリング工事 | 外壁の目地やサッシまわりのシーリング材を打ち替える |
| 塗装工事 | 外壁を塗り替え、手すりや扉などの鉄部は錆を落としてから塗装する |
| 防水工事 | 屋上やベランダの防水層をつくり直す |
| 完了検査・足場の解体 | 仕上がりを確認し、手直しを終えてから足場を外す |
工事中は、進捗状況や変更点を管理組合・施工会社・監理者で共有することが大切です。追加工事が必要になった場合は、承認手続きや費用の確認を行いましょう。
工事が終わったら、完了検査を行います。契約通りに施工されているか、不具合や手直しがないかを確認します。
引き渡し時には、保証書、施工写真、使用材料の資料、工事報告書などを受け取り、保管しておきましょう。次回の修繕計画やアフターフォローにも役立ちます。
引き渡し後も、保証期間中の定期点検で不具合がないかを確認します。点検の時期と保証の範囲は、契約のときに書面で確認しておきましょう。
大規模修繕工事をスムーズに進めるためのポイント
早めに準備を始める
大規模修繕工事は、修繕委員会の発足から着工までに1年以上かかることが多い工事です。準備が遅れると、見積比較や住民への説明を急ぐことになり、施工会社を十分に比べられないまま決めてしまうおそれがあります。長期修繕計画で予定されている工事時期を確認し、余裕を持って動き始めましょう。
検討の途中経過を住民にこまめに知らせる
大規模修繕工事では、工事内容や費用負担、業者選定について住民間で意見が分かれることがあります。費用が大きいため、不安や反対意見が出るのは自然なことです。
検討の途中から、建物診断の結果や見積比較、工事の必要性を掲示や広報誌でこまめに共有しましょう。総会の直前に初めて説明するよりも、合意を得やすくなります。
公的な資料を参考にする
国土交通省は、マンション管理のページで、長期修繕計画作成ガイドラインや修繕積立金に関するガイドラインを公表しています。住宅金融支援機構も、工事と資金計画の進め方をまとめた「大規模修繕の手引き」を公開しています。
進め方に迷ったときは、こうした公的な資料で手順や考え方を確認すると、管理会社や施工会社の提案を判断しやすくなります。
追加工事の扱いを契約前に決めておく
工事中に想定以上の劣化が見つかり、追加費用が発生することがあります。追加費用をめぐるトラブルを防ぐには、契約前に追加工事の扱いを確認しておくことが重要です。
追加工事が必要になった場合の承認手続き、単価、住民への説明方法を決めておきましょう。予備費を見込んでおくことも有効です。
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。
外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。

工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
ご相談内容・お問い合わせ内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。
最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。
オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。
劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。
オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。
工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。
報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
\お問い合わせや工事のお見積もり無料!/
大規模修繕工事の進め方に関するよくある質問(FAQ)
大規模修繕工事の費用は誰が支払うのですか?
分譲マンションの大規模修繕工事の費用は、区分所有者が毎月積み立てている修繕積立金から支払うのが一般的です。
積立金で足りない場合は、一時金の徴収や金融機関からの借入れを検討します。賃貸マンションやアパートの場合は、オーナーが負担します。
大規模修繕工事は何年ごとに行うべきですか?
大規模修繕工事は、一般的に12〜15年ごとを目安に検討されることが多くあります。ただし、建物の劣化状況や立地条件、過去の修繕履歴によって適切な時期は異なります。
年数だけで判断せず、建物診断を行って必要な工事を確認しましょう。
大規模修繕工事の期間はどれくらいですか?
工事そのものの期間は、30〜50戸程度のマンションで3〜6か月ほどが目安です。規模や工事の範囲によっては、半年以上かかることもあります。
準備期間を含めると、修繕委員会の発足から完了までに2年ほどかかることもあります。
工事中も住みながら過ごせますか?
大規模修繕工事は、住みながら行うのが一般的です。基本的に在宅している必要はありません。
ただし、ベランダの片付けや、室内からの確認が必要な工程では、一時的に対応をお願いされることがあります。日程は工事説明会や掲示物で確認しましょう。
まとめ|大規模修繕工事は8つのステップで計画的に進めよう
大規模修繕工事は、修繕委員会の発足、発注方式の決定、建物診断、工事内容と予算の決定、施工会社の選定、総会での承認、工事説明会、着工から引き渡しまでの8つのステップで進めます。
着工までに1年以上かかることが多いため、早めに準備を始め、検討の途中経過を住民と共有しながら進めることが大切です。
大規模修繕工事は、マンションの安全性や快適性、資産価値を守るための重要な工事です。早めに建物診断や見積もり相談を行い、無理のない計画で進めましょう。
