大規模修繕の予算を解説!費用相場・積立金の目安と失敗しない計画の立て方

2025/09/26

マンションやビルの大規模修繕は、建物の価値や快適な住環境を守るために欠かせない工事です。しかし、多くの管理組合やオーナーが頭を悩ませるのが「予算」の問題です。修繕積立金が不足すれば、追加徴収金融機関からの借入に頼らざるを得ず、住民の不満やトラブルを招くリスクも高まります。一方で、過剰な予算設定は毎月の負担を重くし、入居者離れを引き起こす恐れもあります。
この記事では大規模修繕について、工事費用の相場や予算計画の立て方、資金不足を回避するためのポイントをわかりやすく解説します。さらに実際の事例やトラブル回避策も紹介し、管理組合やオーナーが安心して工事を進められる知識を提供します。

大規模修繕における予算の基礎知識

大規模修繕を計画するうえで、最初に押さえておきたいのが予算の考え方です。予算は単なる数字ではなく、建物の将来を左右する重要な要素です。十分な準備ができていれば、必要な工事をスムーズに進められますが、逆に見通しが甘いと追加徴収や借入といった負担につながり、住民やオーナーに大きな影響を及ぼします。ここでは、大規模修繕に必要な予算の位置づけと、その基本的な考え方を整理していきます。

大規模修繕と予算計画の関係

大規模修繕は、外壁塗装、防水工事、設備更新など多岐にわたります。そのため一度に数千万円規模の費用がかかるのが一般的です。この莫大な費用をどのように調達し、どの範囲まで工事を行うかを決めるのが「予算計画」です。
予算計画がしっかり立てられていれば、無理なく修繕を実施でき、追加負担のリスクも抑えられます。逆に、計画が不十分だと「工事範囲を削らざるを得ない」「緊急性のある補修に回せない」といった問題に直結します。

修繕積立金の役割と基本的な考え方

大規模修繕の予算の大部分は、住民が毎月支払う「修繕積立金」から賄われます。これは建物の長期的な維持管理を見据えて積み立てる資金であり、いわば建物の生命線です。
国土交通省の「マンション修繕積立金に関するガイドライン」では、一定の目安額が示されており、戸数や規模に応じた適正水準を維持することが推奨されています。しかし、現実には積立金が不足しているケースも多く、追加徴収や借入に頼らざるを得ない事例も少なくありません。
そのため「予算=修繕積立金の残高+追加資金の可能性」と考え、早めに不足リスクを見込んだ計画を立てることが大切です。

大規模修繕の費用相場と予算目安

大規模修繕の予算を検討する際には、建物の規模や工事項目ごとにかかる費用を把握しておくことが大切です。おおまかな相場を知ることで、積立金が十分かどうか、追加資金が必要かどうかを判断できます。ここでは、建物規模別・工事項目別の目安を紹介し、さらに小規模修繕との費用の違いも解説します。

建物規模別の費用相場

マンションやビルの大規模修繕では、戸数や階数によって必要な費用が大きく変動します。以下は目安となる費用レンジです。

建物規模想定戸数・階数大規模修繕費用の目安
小規模マンション20〜30戸・3〜5階3,000万〜5,000万円
中規模マンション50〜100戸・5〜10階7,000万〜1億5,000万円
大規模マンション・ビル100戸以上・10階以上2億円以上になる場合も
※立地条件、劣化状況、施工範囲によって金額は前後します。

建物が大きいほど足場や共通仮設費が増えるため、単純に戸数で割った負担額が高くなるケースもあります。

工事項目ごとの費用目安

大規模修繕は「外装」「防水」「設備更新」など複数の工事をまとめて行うのが一般的です。以下は代表的な工事項目とその相場です。

工事項目内容費用相場の目安
外壁塗装外壁の塗り替え、クラック補修1㎡あたり3,000〜6,000円
シーリング工事外壁目地やサッシ周りの打ち替え700〜1,200円/m
防水工事屋上・バルコニーの防水層更新1㎡あたり4,500〜8,000円
鉄部塗装手すり・階段・扉の塗装数十万〜数百万円
設備更新給排水管・電気設備・照明交換数百万〜数千万円規模

工事項目ごとに単価が明確なものもあれば、規模や仕様によって幅が大きい工事もあります。そのため、複数業者からの見積もりを比較することが不可欠です。

大規模修繕と小規模修繕の費用比較

小規模修繕は、部分的な補修や小規模な防水工事などを指し、数十万〜数百万円程度で収まることが多いのに対し、大規模修繕は数千万〜数億円規模となります。

区分費用目安工期の目安特徴
小規模修繕数十万〜数百万円数日〜数週間部分補修が中心。早急な対応が可能
大規模修繕数千万〜数億円数ヶ月建物全体を対象。長期計画が必須

このように、費用のスケールが大きく異なるため、予算計画も根本的に違ってきます。

予算を立てる際のポイント

大規模修繕の予算を適切に組むためには、ただ相場を知るだけでは不十分です。建物の状態や修繕の優先度を踏まえ、計画的に資金を積み立てていく仕組みを整えることが大切です。ここでは、予算を考える上で欠かせない3つのポイントを解説します。

長期修繕計画との連動

大規模修繕は通常12〜15年周期で行われますが、実際には外壁や防水、設備ごとに耐用年数が異なります。長期修繕計画は、それぞれの工事項目の更新時期を見据えて資金を配分するための設計図のようなものです。
この計画に基づいて積立額を調整すれば、突発的に資金不足に陥るリスクを減らせます。逆に長期修繕計画が不十分だと、修繕費が膨らみ、予算をオーバーする事態につながります。定期的な見直しも欠かせません。

複数見積もりの活用と予算シミュレーション

大規模修繕は数千万円単位の大きな取引になるため、業者によって見積もりの内容や金額に大きな差が出ることがあります。必ず複数社から見積もりを取り、金額だけでなく工事範囲・仕様・保証内容を比較することが重要です。
また、見積もりをもとに「基本工事のみのケース」「追加工事を含めたケース」など複数の予算シミュレーションを作成しておくと、臨機応変に対応できます。これにより、無理のない予算組みが可能になります。

修繕積立金の見直し

大規模修繕の予算を安定させる最大のカギは修繕積立金です。積立金が不足していると、追加徴収や借入に頼らざるを得ず、住民の反発を招く原因になります。
国土交通省のガイドラインでも、築年数の経過とともに積立金の水準を段階的に引き上げることが推奨されています。定期的に修繕積立金の収支を確認し、長期修繕計画との整合性を取ることが、資金不足を回避する最も確実な方法です。

実録!新東亜工業の施工事例|8階建てマンションの大規模修繕工事

築17年の8階建てマンションにおける、管理組合主導による大規模修繕工事の一部始終をご紹介します。
「予算オーバーを避けたい」「融資は極力使いたくない」といった現実的な課題を抱える中で、新東亜工業がどのように提案し、信頼を築きながら工事を完遂したのか──。
理事会への説明から近隣対応、完成後のフォローまで、実際のやり取りを交えてリアルにお伝えします。

大規模修繕・防水工事・外壁塗装のご依頼やご相談は、メール・お電話からお受け致しております。

ご相談内容

築17年が経過し、管理組合では以前から大規模修繕の検討がされていましたが、資材高騰などにより予算が合わず延期されていた背景があります。「融資は避けたい」「必要な部分に絞って実施したい」といった要望の中、数社に見積り依頼をされていた中で弊社にご相談をいただきました。

担当者:お問い合わせありがとうございます。ご予算に合わせて施工範囲を調整することも可能です。弊社は子会社で材料問屋を持っているため、同じ工事でも他社様より価格を抑えるご提案が可能です。
お客様:なるべく費用を抑えたいので、ぜひ現地調査をお願いします。図面などもご用意します。
担当者:ありがとうございます。図面と、屋上に鍵があるようであればご用意をお願いします。

工事の概要|工事金額と期間

大規模修繕 施工前

大規模修繕 施工後

項目 内容
建物種別 分譲マンション(8階建て)
所在地 東京都内(詳細非公開)
工事内容 大規模修繕工事(外壁補修・塗装・防水・シーリング・長尺シート他)
工法 足場設置のうえ全面修繕/ウレタン塗膜防水(密着工法)他
その他特記事項 理事会へのプレゼンあり、工事中の騒音・近隣対策対応あり

工事金額:2,430万円 期間:約2カ月間

現地調査で判明した劣化症状

現地調査では、屋上の防水層や外壁のシーリング、タイル目地などに劣化が見られました。既存のアスファルトシート防水はまだ機能していたものの、再施工のタイミングとしては適切であり、ウレタン塗膜防水による上塗りを推奨しました。また、タイルの一部には硬化不良が確認され、慎重な撤去作業が必要な状態でした。

担当者:屋上はアスファルトシート防水ですね。状態は悪くないので、ウレタン塗膜防水の密着工法が適しています。
お客様:それでお願いします。あとベランダは見た目を良くしたいので、長尺シートも検討したいです。
担当者:シートは費用が倍近くかかるので、ウレタンの方が予算には優しいですね。
お客様:でも可能ならシートにしたいので、そちらで見積りお願いします。

施工中のやり取りと配慮

工事期間中は、騒音や近隣への影響を最小限に抑える配慮を行いました。作業工程や騒音の案内は掲示板やホワイトボードで事前に周知し、近隣住民や管理人との連携も徹底。足場設置やメッシュシートの風対策も含め、安全対策も万全に対応しました。また、アスベスト調査も事前に実施し、含有なしを確認済みです。

お客様:日曜に音がしたって苦情が来たのですが…。
担当者:調べたところ、隣の工事のものでした。担当者に周知のお願いはしておきました。
お客様:ありがとうございます。トラブルにならなくてよかったです。

引き渡し時のご感想

工事完了後、お客様からは「タイルもまったく違和感がない」「すごく綺麗になった」と高い評価をいただきました。タイルの保管方法や施工写真・保証書を含めた竣工図書の提出も行い、今後のメンテナンスにも役立てていただける内容でお渡ししました。

お客様:どこを張り替えたかわからないくらい自然ですね。
担当者:窯焼きで色を合わせたので、かなり近く再現できています。必要があればいつでもご連絡ください。
お客様:ありがとうございます。次は廊下の床や照明をまとめて検討したいと思います。

今回の工事では、以下のような成果が得られました。

  • ご予算に合わせた柔軟な工事範囲調整
  • 自社施工・材料問屋からの直接仕入れでコストダウンを実現
  • 理事会での丁寧なプレゼンと近隣配慮で信頼を構築
  • 施工中の進捗報告や打ち合わせで透明性を確保
  • 外観と防水性が向上し、物件価値の維持につながった

新東亜工業では、お客様の状況に合わせた提案と対応を徹底しております。

大規模修繕に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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予算不足が招くトラブルと回避策

大規模修繕で最も避けたいのが「予算不足」です。工事を始めてから資金が足りないことに気づくと、追加徴収や工事範囲の縮小など、大きなトラブルに発展します。ここではよくあるケースとその回避方法を紹介します。

追加徴収や借入のリスク

修繕積立金が不足している場合、管理組合は住民に一時金を請求したり、金融機関から借入を行ったりする必要が出てきます。突然の負担増は住民の反発を招き、支払いが滞るケースもあります。さらに借入をした場合は利息負担が発生し、次回以降の修繕にも影響が及びます。

工事範囲縮小による劣化再発

予算が足りないと、外壁の一部補修だけで済ませたり、防水工事を最低限の範囲に絞ったりと、工事範囲を縮小せざるを得ないことがあります。しかし不十分な修繕は、劣化の再発や雨漏りなどのトラブルを短期間で引き起こし、結局は再び高額な工事費を支払うことになります。

早期点検・計画見直しで防ぐ方法

予算不足を防ぐ最善の方法は「早めの準備」です。築年数が10年を過ぎた段階で点検を行い、修繕積立金と長期修繕計画のバランスを確認することで、足りない部分を事前に調整できます。さらに、工事前には必ず複数の業者から見積もりを取り、必要に応じて仕様や工法を見直すことで、コストダウンと品質維持の両立を図れます。

大規模修繕予算に関するよくある質問(FAQ)

大規模修繕予算に関するよくある質問です。

Q1. 予算はどのくらい前から準備すべきですか?

一般的には、初回の大規模修繕が行われる築12〜15年を目安に、早めの積立を始めることが理想です。実際には新築当初から修繕積立金を計画的に集めていないと、工事直前に資金不足に陥るケースもあります。少なくとも築10年を迎える前には長期修繕計画を立て、積立水準を見直すことが推奨されます。

Q2. 積立金が不足した場合はどうすればよいですか?

不足が判明した場合、追加徴収や金融機関からの借入が検討されます。しかしどちらも住民負担が大きく、合意形成が難航しやすいです。早期に計画を見直し、可能であれば工事項目の優先順位を整理して段階的に実施するなど、資金不足を最小限に抑える方法を検討しましょう。

Q3. 借入や一時金徴収は一般的に行われていますか?

実際には、多くの管理組合がやむを得ず借入や一時金徴収を行っています。ただし、金融機関の審査や利息負担、住民間の負担格差といった問題が発生しやすいため、最後の手段として位置付けるのが基本です。安定的に修繕を実施するためには、あらかじめ積立金を段階的に増額するのが最も安全な方法です。

Q4. 専門コンサルタントに予算計画を依頼するメリットは?

専門コンサルタントは、工事費用の妥当性チェックや見積もり比較、長期修繕計画の作成をサポートしてくれます。管理組合だけでは判断が難しい費用項目や工事範囲についても客観的なアドバイスが得られるため、無駄な支出を抑えやすくなります。大規模な修繕を安心して進めたい場合には、外部専門家の活用は有効な選択肢といえます。

大規模修繕の予算についてまとめ

大規模修繕の予算は、建物の資産価値や住民の暮らしを守るための最重要テーマです。相場や積立金の目安を把握し、長期修繕計画に沿って早めに準備を進めることが、トラブル回避につながります。積立金不足が判明してから慌てて対応するのではなく、複数の見積もりを比較し、資金調達方法や工事項目の優先度をあらかじめ検討しておくことが大切です。予算計画をしっかり整えておけば、追加徴収や借入といったリスクを避け、安心して大規模修繕を実施できます。