大規模修繕とは?修繕と改修の違い・工事内容・周期や費用の目安を解説

2025/09/17

マンションを長期にわたって安全で快適に保つためには、定期的な大規模修繕が不可欠です。

しかし、「マンション大規模修繕は何年ごとに実施すべきか」「大規模修繕工事費用はどれくらいかかるのか」「大規模修繕周期の決め方は」など、疑問や不安を抱える管理組合の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、大規模修繕の意味と、修繕工事・改修工事の違い、主な工事内容、周期・期間・費用の目安を解説します。東京都文京区のマンションで実際に行った工事の金額と期間も紹介するので、管理組合やオーナーの方は参考にしてください。

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大規模修繕の要点

基本的な大規模修繕の要点は以下になります。

周期:12〜15年

費用:1戸あたり約100〜125万円

主な工事:外壁補修・防水・塗装など

大規模修繕とは?

大規模修繕とは、時間の経過で傷んだ建物を、建築当時の性能に戻すために行う、まとまった修繕工事です。対象は主に分譲マンションの共用部分で、管理組合が長期修繕計画に基づいて行います。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでも、外壁の全面的な塗装のように、建物の全体や複数の部位をまとめて行う計画的な修繕として扱われています。足場を組んで、外壁補修・防水工事・鉄部塗装などを一度に行うのが一般的です。

目的は、ひび割れやタイルの浮き、防水層の劣化などを補修し、建物の安全性と資産価値を保つことです。劣化を放置すると、雨漏りやタイルの落下、内部の鉄筋の錆につながり、あとで直す費用も大きくなります。

修繕工事と改修工事の違い

大規模修繕の話では、「修繕」と「改修」という言葉がよく出てきます。違いは、工事の目的です。

区分主な内容目的
修繕工事ひび割れ補修、防水層や塗装の再施工建物を当初の性能まで回復
改修工事オートロック新設、バリアフリー化建物の性能・利便性を向上

修繕工事は「マイナスをゼロに戻す工事」、改修工事は「ゼロをプラスにする工事」と考えると分かりやすいでしょう。

実務上の大規模修繕では、足場を設置する機会を活かし、修繕と改修を同時に実施するケースが一般的です。

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大規模修繕で行う主な工事内容

大規模修繕の具体的な工事内容を工程ごとに解説に関するイメージ写真

長期修繕計画作成ガイドラインでは、修繕の対象を仮設工事・建物工事・設備工事・外構などに分けています。マンションの大規模修繕で行う主な工事は、次のとおりです。並び順は、実際に工事を進める順番のおおよその目安です。

工事主な内容目的
仮設工事足場とメッシュシートを設置する作業の安全確保と、塗料・粉じんの飛散防止
下地補修工事ひび割れ・欠損・爆裂を補修する仕上げの土台を整え、躯体の劣化を止める
洗浄工事高圧洗浄で外壁や床の汚れを落とす塗装やシーリングの密着をよくする
タイル補修工事浮いたタイルを再接着・張り替えるタイルの落下事故を防ぐ
シーリング工事目地やサッシまわりのシーリング材を打ち替えるすき間からの雨水の侵入を防ぐ
外壁塗装工事下塗り・中塗り・上塗りで塗り替える外壁を雨風や紫外線から守り、美観を戻す
鉄部塗装工事錆を落とし、錆止めと仕上げ塗装をする手すりや扉の腐食を防ぐ
防水工事屋上やバルコニーの防水層をつくり直す雨漏りを防ぐ
長尺シート張り替え工事共用廊下や階段の床シートを張り替えるつまずきや雨水の侵入を防ぐ
給排水管・設備の更新配管の更新、照明のLED化など(別工事のことも多い)設備の老朽化に対応する

仮設工事

建物全体を囲むように鋼管足場を設置し、作業員の転落防止や工具・資材の落下防止を図ります。

さらに、塗料や粉じんの飛散を防ぐため、建物外周にはメッシュシートを張り巡らせます。

足場は単なる作業用設備ではなく、職人が安定した姿勢で作業できることで施工精度を高める役割も担っています。

また、現場事務所、資材置き場、仮設トイレなどの仮設設備もこの段階で整備され、工事期間中の円滑な現場運営を支えます。

下地補修工事

コンクリート躯体に発生したひび割れや欠損、鉄筋の露出などを補修し、建物本来の耐久性を回復させます。

幅0.3mm未満の軽微なひび割れは樹脂注入で対応し、0.3mm以上のひび割れにはUカット・Vカット工法を用いて確実に補修します。

また、鉄筋の錆びによってコンクリートが内部から破壊される「爆裂」が発生している箇所では、劣化部分を除去し、防錆処理を施したうえでモルタルで復旧します。

下地補修が不十分なまま塗装を行うと、数年で再劣化するリスクが高まるため、見えない部分ほど丁寧な施工が求められます。

洗浄工事

洗浄工事は、高圧洗浄機で外壁や床の汚れ、古い塗膜のはがれかけた部分を落とす工事です。

汚れが残ったまま塗装やシーリングを行うと、材料がしっかり密着せず、早くはがれる原因になります。仕上げの工事の品質を左右する下準備として、下地補修のあとに行います。

タイル補修工事

外壁タイルの浮きや剥離は、落下事故による人身被害につながる重大な劣化症状です。

そのため、大規模修繕では必ずタイルの打診調査を実施します。

作業員が専用ハンマーでタイルを叩き、音の違いから浮きの有無を確認し、危険箇所を特定します。

浮きが軽度の場合は、エポキシ樹脂を注入してタイルを躯体に再接着する部分注入工法を採用します。

一方、浮きが進行している場合や剥離の恐れがある場合は、タイルを撤去し張り替えを行います。

シーリング工事

外壁目地やサッシ周りに充填されているシーリング材は、紫外線や温度変化の影響で徐々に硬化・ひび割れ・痩せが進行します。

劣化した状態を放置すると、隙間から雨水が浸入し、躯体劣化や雨漏りの原因となります。

工事では、既存のシーリング材を完全に撤去し、接着面を清掃したうえでプライマーを塗布します。

その後、新しいシーリング材を適切な厚みで充填します。シーリングの施工精度は防水性能に直結するため、材料選定と施工管理が非常に重要です。

外壁塗装工事

外壁塗装工事は、建物を雨水・紫外線・排気ガスから守る保護機能と、美観を回復する役割を担います。

塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3工程で行われ、下塗りで下地との密着性を確保し、中塗りで塗膜の厚みを形成、上塗りで耐候性と仕上がりを整えます。

使用する塗料は、アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などがあり、予算と耐用年数のバランスを考慮して選定します。

鉄部塗装工事

手すりや階段、扉、配管などの鉄部は、錆びやすく劣化が進行しやすい部位です。

鉄部塗装では、まずケレン作業によって既存の錆や旧塗膜を除去し、下地を整えます。

その後、錆止め塗料を塗布し、仕上げ塗装を行います。

錆止め処理が不十分だと、短期間で再発する恐れがあるため、下地処理の丁寧さが重要です。

防水工事

屋上やベランダの防水層が劣化すると、雨水が建物内部へ浸入し、コンクリートや鉄筋の劣化を引き起こします。

防水工法には、ウレタン防水、シート防水、FRP防水などがあり、劣化状況や使用環境、予算に応じて最適な工法を選択します。

一般的な防水層の耐用年数は10〜15年程度で、大規模修繕のタイミングで更新することが建物寿命の延伸につながります。

長尺シート張り替え工事

長尺シートとは、共用廊下や階段、バルコニーの床に貼られている、塩化ビニル製の床シートです。

長年の歩行で擦り減ったり、端からはがれたりすると、見た目が悪くなるだけでなく、つまずきや雨水の侵入の原因になります。大規模修繕では、古いシートをはがして下地を整え、新しいシートに張り替えます。

給排水管・設備の更新

建物の築年数によっては、外壁や防水の工事とあわせて、給排水管の更新や、照明のLED化、インターホンの交換などを行うこともあります。

ただし、設備は外壁や防水と交換の時期が違うため、大規模修繕とは別の工事として行う場合も多いです。2回目・3回目の大規模修繕では、設備の更新を同時に行うかどうかを、長期修繕計画で確認しておきましょう。

大規模修繕の周期・期間・費用の目安

工事費用・見積もりのイメージ

大規模修繕の周期

マンションの大規模修繕は、12〜15年ごとに行うのが一般的です。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでも、外壁塗装や屋上防水などの修繕周期の目安は12〜15年程度とされています。

また、同じガイドラインでは、長期修繕計画の期間を30年以上、かつ大規模修繕が2回含まれる期間以上とするよう求めています。大規模修繕は1回で終わりではなく、繰り返し行う前提で計画する工事です。

建築基準法では、一定の規模のマンションに定期報告が義務づけられており、外壁タイルなどは竣工や外壁改修から10年を超えると全面打診調査が必要になります。大規模修繕の時期を、この全面打診調査に合わせることも多くあります。

1回目・2回目・3回目以降で、主な工事内容の目安は次のとおりです。

修繕回数・築年数目安主な工事内容特徴・ポイント
初回(築12〜15年)外壁補修、外壁塗装、防水工事、シーリング工事予防保全が中心。
初期劣化への対応が主で、建物の寿命を延ばすことが目的。
比較的工事範囲は限定的。
2回目(築25〜30年)給排水管更新の検討、サッシ交換、設備の老朽化対策、防水・外壁工事本格的な劣化対策が必要。
設備系工事が増え、費用は初回より20〜30%増加する傾向。
3回目以降(築40年以上)耐震補強、大規模設備更新、バリアフリー化、外壁・構造補修建物の骨格に関わる工事が中心。
資金計画の見直しが必須で、建て替え検討も視野に入る段階。

大規模修繕は回数を重ねるごとに工事内容が高度化し、費用や判断の重要性も増していきます。

実際の時期は、建物診断の結果や修繕積立金の残高を見て決めます。

大規模修繕の工事期間

大規模修繕は、準備期間と工事期間を合わせて数年単位で進行します。

まず計画段階から着工までの準備期間は、おおよそ1〜2年が一般的です。

この間に、修繕委員会の設置、建物診断、工事計画の立案、施工業者選定、総会決議などを行います。

実際の工事期間はマンション規模により異なり、50戸未満で3〜4ヶ月、100戸以上では6ヶ月〜1年程度かかります。

大規模修繕の費用と財源

大規模修繕の費用は、マンションの規模・築年数・工事項目によって大きく異なります。

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、1回目の大規模修繕における1戸あたりの費用相場は約100〜125万円とされています。

マンション全体では、50戸未満で3,000万〜4,000万円、100戸以上では1億5,000万円超が一般的です。

2回目以降は劣化範囲が広がり、設備更新も加わるため、回数を重ねるごとに費用は増加します。

費用の財源は、区分所有者が毎月積み立てている修繕積立金です。積立金が足りない場合は、一時金の徴収や金融機関からの借入れを検討することになります。

大規模修繕の費用相場早見表

項目費用相場・割合補足説明
1回目の大規模修繕(1戸あたり)約100〜125万円国土交通省調査による一般的な目安
マンション全体(50戸未満)約3,000万〜4,000万円小規模マンションの平均的な総工事費
マンション全体(100戸以上)約1億5,000万円以上規模拡大に伴い総額も大きくなる
2回目以降の修繕費用1回目より増加傾向劣化拡大・設備更新が主な要因
主な工事項目の内訳全体の6〜7割足場・外壁補修・防水工事が中心
費用の主な財源修繕積立金積立不足は一時金徴収や延期リスクあり

関連記事:大規模修繕工事の費用はいくら?相場からコスト削減のコツ・払えない時の対処法を解説

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大規模修繕の進め方

大規模修繕は、管理組合が次の8つのステップで進めます。

  • 修繕委員会を発足する
  • 発注方式を決める
  • 建物診断・劣化調査を行う
  • 工事内容と予算を決める
  • 施工会社を選定する
  • 総会で承認を得る
  • 工事説明会を行う
  • 着工から完了・引き渡しまで

着工までに1年以上の準備期間がかかることが多いため、早めに動き始めることが大切です。各ステップでやることは、大規模修繕工事の進め方の記事で詳しく解説しています。

東京都文京区マンションの大規模修繕事例

東京都文京区の7階建て・36戸のマンション(RC造)で、新東亜工業が行った2回目の大規模修繕の事例です。

工事金額3,998万円(追加の下地補修 約300万円を含む)
工事期間106日間
主な工事足場仮設、下地補修、洗浄、シーリング、外壁・鉄部塗装、ウレタン塗膜防水(密着工法)、長尺シート張り替え

足場を組んで外壁を近くで調べたところ、事前の調査では見えなかった下地の傷みが見つかり、約300万円の追加の下地補修が必要になりました。補修する数量の根拠を示して説明し、管理組合の合意を得てから工事を行っています。

工事中は、エントランスのモニターに「本日のバルコニー使用可否」を毎朝表示し、住民がその日の予定を立てやすいようにしました。

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大規模修繕に関するよくある質問

大規模修繕に確認申請は必要ですか?
外壁塗装や防水工事などの一般的なマンションの大規模修繕では、通常、確認申請は必要ありません。
建築基準法上の「大規模の修繕」は、壁・柱・床・はり・屋根・階段といった主要構造部の一種以上について、その過半を修繕する工事を指し、一般的な大規模修繕の多くはこれに当たらないためです。
構造に関わる工事を含む場合は、大規模修繕と建築基準法の関係の記事もあわせてご覧ください。
大規模修繕を実施しないとどうなりますか?
大規模修繕を実施しない場合、外壁や防水層の劣化が進行し、雨漏りやタイルの剥落など重大な不具合が発生する可能性があります。
さらに、コンクリート内部に雨水が浸入すると鉄筋腐食が進み、建物の構造安全性にも悪影響を及ぼします。
結果として、修繕費用が想定以上に膨らみ、資産価値の大幅な低下や居住環境の悪化につながります。計画的に修繕を行わないことは、長期的に見て大きなリスクとなります。
工事中に追加工事が出たらどうなりますか?
足場を組んで外壁を近くで調べると、事前の調査では見えなかった傷みが見つかり、追加工事が必要になることがあります。
追加の工事をするかどうかは、施工会社から補修の数量と金額の根拠を示してもらい、管理組合で確認してから決めます。契約の前に、追加工事が出たときの単価と承認の手順を決めておくと安心です。
工事中も住みながら過ごせますか?
大規模修繕は、住みながら行うのが一般的です。
ただし、工程によってはバルコニーが使えない日や、洗濯物を外に干せない日があります。日程は工事説明会や掲示物で事前に知らされるので、確認しておきましょう。

大規模修繕のまとめ

大規模修繕とは、傷んだ建物を建築当時の性能に戻すために行う、まとまった修繕工事です。主に分譲マンションの共用部分を対象に、管理組合が長期修繕計画に基づいて行います。

  • 周期は12〜15年ごとが一般的
  • 工事は仮設・下地補修・シーリング・塗装・防水などで構成される
  • 工事期間は50戸未満で3〜4か月ほど
  • 費用の財源は修繕積立金

大規模修繕を検討し始めたら、まずは建物診断で今の状態を確かめ、長期修繕計画と修繕積立金の残高を見直すところから始めましょう。

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