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屋上緑化の基礎知識|ウレタン塗膜防水は不適切?

屋上緑化を試してみたいけど、どうすればいいかわからないと悩んでいませんか?

「普段から自然を感じたい」「植物に癒されたい」などさまざまな理由から、屋上緑化を目指している方や実施している方は少なくありません。

今回は屋上緑化を始めたい方に知って欲しい基礎知識を紹介します。

屋上緑化に適した屋上の防水工事と合わせて解説していくので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

屋上緑化とは

屋上緑化とは、建物の屋上で植物を育てることを言います。

緑が少なく植物を育てる空間も限られている都市部でも行うことができ、環境に優しいというメリットもあります。

屋上緑化を行う上で気をつけたいのが、屋上の防水工事についてです。

防水機能を損なわずに屋上緑化を行うためには、屋上緑化に適した防水工事を選択することが重要です。

屋上緑化の構造

屋上緑化の構造は、主に以下の3つにわけられます。

  • 下層部
  • 中層部
  • 上層部

ここでは、それぞれの役割を紹介します。

下層部|防水層+耐根層+断熱材

下層部は、主に防水層・耐根層・断熱材の3つから形成されています。

防水層は、建物内部への水漏れを防ぐために必須です。

防水層は、屋上緑化を考慮した高品質な防水材料を使用して最初に施工されます。

耐根層は、植物の根から防水層を守るために必要です。

一般的な防水層では植物の根に耐えることができないため、屋上緑化を行う場合には必ず耐根層を設置します。

断熱材には、屋上の熱損失の予防や建物内の温度を制御する役割があります。

耐根層とは

一般的な防水層は植物の根の侵入を防ぐことができないため、耐根層の設置が必要となります。

屋上緑化では、PETフィルムをコーティングしたシートを使用することが主流です。

耐根層の効果で植物の根を滑らせることで、防水層への根の侵入を防ぎます。

耐根層は、露出仕様の場合には防水層の上に敷設され、その上に植栽を施します。

保護仕様の場合には、緑地帯を設ける平面部の全面に対して耐根層を施工することが望ましいです。

中層部|植栽基盤

中層部には、植栽基盤が設置されます。

植栽基盤とは、植物の成長のために必要となる水分や栄養を提供する部分です。

凹凸のある樹脂製の板やブロックなどを敷き、余分な雨水の排出や適度な保水などの適切な水分管理を行います。

上層部|客土+植物

防水層、耐根層、植栽基盤が整ったら、いよいよ植物を植える段階です。

上層部にはまず客土を敷設し、植物を植えていきます。

屋上の環境に対応できる種類の植物を選んで植えることが重要です。

また、メンテナンス面についても考慮しながら、植物の種類を選んでいくようにしましょう。

屋上緑化を計画する際の注意点

屋上緑化は環境にも優しいシステムですが、さまざまな点を考慮しながら計画していく必要があります。

まず屋上緑化を計画するにあたって、建物自体が屋上緑化によって追加される重量に耐えられるかどうかを考慮しましょう。

屋上緑化を行うと、植物の重みだけではなく土や水の重量も加わります。

さらに積雪などにも耐える必要があるため、建物の構造がこのような屋上緑化のすべての重量が追加されても安全かどうかを確かめることが重要です。

屋上緑化では屋上で水を使用して植物を育てていくため、耐久性の高い防水層はもちろん効果的な排水システムが欠かせません。

また、経年劣化が避けられない防水層のメンテナンスにも通常以上に注意する必要があります。

屋上緑化を計画する際は、屋上の気象条件や必要なメンテナンスを考慮しながら、最適な植物を選んで植えることが大切です。

メンテナンスが比較的簡単で、病気や害虫に強い種類の植物が望ましいとされています。

屋上緑化を設置すれば、水やりや除草などの定期的なメンテナンスが必要です。

メンテナンスの導線を考え、できるだけメンテナンスを行いやすい設計にすることをおすすめします。

そして屋上緑化には、初期費用だけではなくランニングコストも発生します。

長期的に維持していくためにかかる費用も考慮して、屋上緑化を行うかどうか決めましょう。

屋上緑化の種類

屋上緑化の中にも種類があることを知っていますか?

ここでは、

  • 庭園型緑化
  • 薄層型緑化

の2種類について、詳しく紹介していきます。

庭園型緑化

庭園型緑化は、樹木や草花、石などのさまざまな種類を使用し、伝統的な庭園を設計する屋上緑化です。

庭園型緑化では、都市部のビルの屋上に自然豊かで美しい庭園を作り上げることができます。

また、バーベキューができるウッドデッキの設置や菜園を作る場合も、庭園型緑化に該当します。

庭園型緑化の特徴については、以下の表を参考にしてください。

防水層の種類アスファルト防水改質アスファルト防水
床面仕上げ押さえコンクリート
植栽基盤客土底面での確実な保水排水機能が必要
付帯設備水やりのための
メンテナンス・定期点検必須

庭園型緑化ではさまざまなデザインを楽しみ、人間にとっても休息の場所を作り出すことができますが、定期的なメンテナンスが必須です。

この定期的なメンテナンスは、植物はもちろん設備に対しても必要となります。

薄層型緑化

薄層型緑化は、比較的薄い土で植物を育成する屋上緑化の種類です。

土が薄いことで全体的な重量が抑えられるため、限られたスペースやマンションなどの一般的な建物でも行うことができます。

薄層型緑化の特徴については、以下の表を参考にしてください。

防水層の種類アスファルト防水塩ビシート防水ウレタン塗膜防水
床面仕上げ軽歩行の場合:露出仕様で施工可能重歩行の場合:保護層が必要
植栽基盤客土底面での確実な保水排水機能が必要
付帯設備植栽基盤/乾式工法のいずれか
メンテナンス・定期点検メンテナンスは軽微季節ごとの点検が必要

薄層型緑化では、比較的メンテナンスが軽微な植物が選ばれることが多いです。

システム自体も庭園型緑化に比べて設置が容易で、建物への負荷も少ないです。

薄い土壌でも育てられる植物を選ぶ必要がありますが、芝生や多肉植物、低木や根の浅い草花など、工夫次第で美しい環境を整えることができます。

屋上緑化が可能な屋上・屋根の形状

建物の屋上は、主に傾斜のある勾配屋根と平らな陸屋根の2種類があります。

勾配屋根では傾斜を雨水が流れ落ちていくことで排水を促し、陸屋根では排水口から建物外部へと排水を行います。

勾配屋根は主に一般的な戸建て住宅で、陸屋根は主にRC造・S造の建物での採用が主流です。

傾斜角度によっては、勾配屋根でも屋上緑化を行うことができます。

勾配屋根への屋上緑化の設置は漏水リスクが少ない一方、植栽基盤や客土の転落防止とメンテナンス対策が必須です。

平らな陸屋根には、屋上緑化で最も一般的かつ最適な形状だと言われています。

陸屋根に屋上緑化を施す際は、防水対策が重要です。

コンクリートは簡単には水を通しませんが、経年劣化で生じたヒビなどから水が侵入する恐れがあるため、防水層の設置は必須です。

防水層を形成する防水工事の種類

屋上緑化で重要となる防水層を形成するための防水工事には、いくつかの種類があります。

ここでは、

  • アスファルト防水
  • 改質アスファルトシート防水
  • 塩ビシート防水
  • ウレタン塗膜防水
  • FRP防水

の5つの防水工事を紹介します。

そして屋上緑化に最適な防水工事についても解説するので、参考にしてみてくださいね。

アスファルト防水

アスファルト防水とは、溶かして液体状にしたアスファルトとアスファルトが含まれたシート状の防水材料を使用して行う防水工事です。

公共仕様では唯一保護層のコンクリート打設が認められているため、庭園型の屋上緑化においては必須の工法となっています。

最近では、改質アスファルトシート防水や塗膜防水を取り入れて併用する工法のハイブリット化も進んできています。

改質アスファルトシート防水

改質アスファルトとは、アスファルトにゴムや樹脂などの改質剤を使用する工法です。

改質剤を使用することで、アスファルトにしなやかさが生まれます。

改質アスファルトシート防水は、高温でもダレにくく、低温でも軟らかさを失わないことがメリットです。

アスファルト防水と併用されることもあります。

塩ビシート防水

塩化ビニールを使用したシート防水は、大掛かりな施工器具が必要なく工期が短いことが特徴です。

比較的価格が安い防水工法で、短い工期で広範囲への施工が可能です。

薄層緑化の場合に、塩ビシート防水の接着仕様が対応しています。

単層の露出仕様で採用されることが一般的な工法です。

ウレタン塗膜防水

ウレタン塗膜防水は、液体状のウレタン防水材を使用して防水層を形成する工法です。

液体状の防水材を使用するため、さまざまな形状への施工が可能です。

ウレタン防水は湿度が高い環境では劣化を招くため、屋上緑化で使用する場合には、粘着層付き耐根層か改質アスファルトシートなどを緑地帯に施設してください。

FRP防水

FRP防水とは、ガラス繊維強化プラスチックを使用した防水方法です。

強度が高く耐久性に優れていますが、使用する材料は軽量で建物への負担も少ないです。

さらにFRP防水は耐水性にも優れていますが被膜が硬いことも特徴で、動きあることが予想される乾式の下地へ使用する際には検討が必要となります。

屋上緑化に最適な防水工事とは

屋上緑化に最もおすすめする防水工事は、耐久性の高いアスファルト防水です。

ただし屋上緑化の防水工事は、計画している屋上緑化の種類や建物の構造、予算などさまざまな要因を考慮しながら決めていく必要があります。

広範囲で単純な形状への施工ならシート防水、複雑な形状で強度や耐久性を求められる際はFRP防水もおすすめです。

すべての防水工事に対して共通するのが、定期的なメンテナンスや補修が必須だということです。

定期的なメンテナンスや補修を行うかどうかで、防水層や建物自体の寿命を大きく左右します。

できるだけ早い段階でメンテナンスや補修を行なっていくことで、結果的な費用削減にもつながります。

特に屋上緑化をする場合は、防水機能の維持がとても重要です。

屋上緑化の設備と防水層の両方の定期的な点検とメンテナンスを、必ず行うようにしましょう。

屋上緑化を長持ちさせるポイント

屋上緑化をできるだけ綺麗な状態で長持ちさせるためには、いくつかのポイントがあります。

ここで紹介する長持ちさせるためのポイントを参考に、適切な維持や管理を行なってみてくださいね。

防水層の点検

先ほども紹介したように、屋上緑化に防水機能は欠かせません。

通常の建物と比べても、防水層の点検は定期的かつ慎重に行なっていく必要があります。

屋上緑化の場合の防水層の点検は、月1回を理想として最低でも季節ごとに実施してください。

防水層の耐用年数は、トップコートの塗り替えなどのメンテナンスを前提としていることが多いです。

劣化症状への対応だけではなく、定期的に点検していくことが重要となります。

定期的な清掃

防水層や屋上緑化の設備にとって、汚れの放置は美観を損なうだけではなく劣化にもつながります。

特に排水口周りの掃除を怠っていると、ゴミや汚れが原因で排水口が詰まってしまいます。

排水口の詰まりを放置すれば、排水機能が失われるリスクが高いです。

うまく排水されないままでは、植物に影響を与えたり水溜りができて防水層を劣化させたりするリスクがあります。

このような理由から、屋上緑化や防水層を長期的に健全に保つためには、定期的な清掃が欠かせません。

余計なものを置かない・清掃の導線を確保するなど、普段から清掃がしやすい環境を整えておくことも大切です。

屋上緑化助成金制度とは

屋上緑化は、地球温暖化が深刻化している現代で環境に優しいと注目されています。

自然環境が不足している都市部での緑化を促進するため、屋上緑化助成金制度が存在します。

屋上緑化を行う際、条件に当てはまれば助成金を受け取れる場合があるでしょう。

細かい条件は自治体によっても異なりますが、屋上だけではなく壁面やベランダの緑化の場合でも、助成金の対象となることがあります。

対象となる条件

助成金を受け取れる条件は、各自治体によって異なります。

工事の前に申請する必要があるため、屋上緑化の検討を始めた段階で自分の自治体の条件を必ず確認しましょう。

ここでは、東京都の助成対象となる条件を紹介します。

  • 公開性を有する場所での緑化事業であること
  • 都市計画法第7条に基づく市街化区域に立地する場所での緑化事業であること
  • 原則として、区市町村の助成等他の助成制度の適用を受けないもの
  • 一般施設の助成額は、対象工事費の2分の1とし、上限は200万円

この他にも期間などの条件が年度ごとに定められます。

埼玉県川口市の緑の補助金では生け垣やフェンス緑化への補助金制度があるなど、補助の対象や条件は自治体によってかなり大きく異なるので、注意が必要です。

まとめ

屋上緑化は、自然環境の少ない都市部にも緑を増やすことのできる環境に優しい取り組みとして、近年注目されています。

  • 屋上に庭園や自然を味わえる環境を生み出すことができる
  • 専門的な防水対策が必須
  • 平らな陸屋根または緩やかな傾斜の屋根で屋上緑化が可能
  • 屋上緑化の工事に対して助成金が受け取れる可能性がある

地球温暖化が深刻な現在で、都市部でも自然豊かな環境を作ることのできる屋上緑化はさまざまなプラスの影響をもたらします。

今回の記事を参考に、ぜひ屋上緑化を検討してみてくださいね。

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