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屋上防水工事の伸縮目地処理|必要性・役割・施工方法を解説

防水工事では、施工面のどこからも水が漏れてこない処置が大切です。

せっかく防水工事をしても、どこからか水が漏れてきては本末転倒になるでしょう。

そこで躯体に作られた目地処理が、防水工事の重要ポイントです。

防水工事をする場合、目地処理はどのような方法をとるか。

劣化の見分けかたや防水工事での目地処理の必要性を解説します。

防水工事に目地処理はなぜ必要なのか

防水工事をするうえで、目地処理は絶対に必要な工程です。

なぜ必要なのか、構造から理由を考える必要があるでしょう。

そもそも目地とはどんな役割か

目地は、構造上とても大切な存在です。

目的に合わせてさまざまな所に作られますが、一般的に屋上に使われているのが、緩衝目地です。

基本的なことですが、どんな物質でも熱によって膨張収縮します。

温度が上がれば膨張し、下がると収縮するのが基本です。

コンクリートやモルタルで作られた構造体も例外ではありません。

太陽光などで温度が上がると、膨張するのです。

膨張するとなれば、どこかに力が掛かります。

この力をどこかに逃がさなければ、想定していない部分でゆがみが生まれ、躯体を破壊するかもしれません。

それほど強い力が掛かるのです。

日当たりにも影響されることからも、常に一定の膨張量が決まっているわけではありません。

複雑に力が掛かるかもしれないため、耐えるのではなく逃がすほうがリスクが少ないでしょう。

そこで設計段階からこの力を意識的に逃がす場所が、屋上やベランダでも作られる緩衝目地です。

意図的に隙間を作り、プラスチック目地材などを詰め込むことで、膨張収縮する力を躯体から逃がします。

他にも意図的にひび割れを集める誘発目地などもありますが、デザイン的なものでなければ、力を逃がすために作られた場所と思えばいいでしょう。

つまり、目地とは隙間なのです。

これが防水工事と大きな関係を持ちます。

目地の構造と処理

膨張収縮したときに、躯体が緩衝しないように設計しないと破壊しかねません。

そこで目地は構造上、力を逃がし集めるように設計します。

屋上の緩衝目地の場合、太陽光の変化などで力が働く可能性があり、お互いがぶつからないように目地を入れて独立した一定区画を作るのです。

独立している状態ですので、隙間ができあがります。

この隙間を処理しないと、雨水などが流れ込み漏水の原因となるのは想像できるでしょう。

そこで水が回らないように防水工事をするとき目地処理します。

不十分な目地処理だと、他の防水部分に対しても影響を与え、雨漏りにもつながるかもしれません。

目地処理の出来は、防水工事に対して重大な問題を作り出すのです。

目地処理の工程

屋上防水工事における目地処理の工程を見ていきましょう。

防水工事に入る前段階として、これだけの目地処理の工程が必要です。

一例としてシーリング工法を上げていますが、ウレタン樹脂を使った方法などもあります。

  1. 既存目地の撤去
  2. 目地の清掃と調整
  3. クラック補修
  4. バックアップ材の挿入
  5. プライマー塗布
  6. シーリング材充填
  7. 補強クロス貼り
  8. 養生

既存目地の撤去

目地処理のはじめとして、既存目地を撤去します。

古い目地は劣化の可能性があるため、そのままでは防水工事後に問題となるかもしれません。

撤去して新しく作り直すことが必要です。

躯体に付着している部分を含め、きれいに撤去することが大切で、不陸調整もおこないます。

目地の清掃と調整

目地に余計な付着物がないように徹底的に除去・清掃し、内部まで乾燥させます。

異物がついていると、新たなシーリング材が躯体に密着しません。

防水工事の妨げにもなることから、除去と清掃はとても重要な工程です。

乾燥も不十分だと、防水工事に対して大きなリスクを作り出します。

天候も含めて徹底した乾燥が必要です。

同時に躯体状況の確認もします。

クラック補修

目地の清掃と調整をおこなうと躯体面がはっきりするため、クラックなどの状況確認ができます。

問題があるなら、この時点での補修が必要です。

ヘアクラックの場合、セメントミルクを使ったノロ引きなどで対応できます。

0.3mm以上になると構造クラックと呼ばれ、防水構造を破談させる可能性が出てくる状態です。

躯体としても一体化していないため、目地処理と同時に補修が必要になります。

構造的に強度を必要としないなら、ベビーサンダーなどでUカットしたのちにシーリング材を充填する方法がとられます。

バックアップ材の挿入

目地に新たなバックアップ材を挿入します。

目地の深さを調節する一方で、三面密着を防ぐのが意図です。

三面密着とは、目地に充填させるシーリング材が、コンクリート両面だけでなく下地を含めた3つの面に密着した状態を指します。

絶対に問題があるわけではありませんが、力のかかり方が複雑でシーリングが割れるなどの劣化を招きやすいことから避けることが一般的です。

もともと屋上は熱による膨張収縮が激しいことから、二面密着の状態を作るほうが劣化しにくくなるでしょう。

そのためにもバックアップ材で縁を切ることが大切です。

プライマー塗布

次の工程で充填するシーリング材を接着させるために、プライマーを塗布します。

シーリング材だけでは、強い接着力を発揮できません。

隙間ができる可能性が高いため、プライマーを使って密着させます。

ポイントは乾燥した躯体に塗布することです。

プライマーの性質上、水があると接着できません。

乾燥した状態かつ天気を見て施工する必要があるでしょう。

余計なところに付着しないよう、養生も必要です。

シーリング材充填

プライマーの状態を見てシーリング材を充填します。

使われるシーリング材もいろいろとありますが、内部に気泡が入らずバックアップ材まで届くように圧力をかけなければいけません。

最終的な整形作業も含め、ヘラを使って圧力をかけて密着させます。

補強クロス貼り

シーリング材の上から、目地用の補強クロスを貼り付けます。

シーリング材に対して防水工事をしやすくすることと、目地になにかあったときにも防水を保つためです。

しわができると水漏れする原因を作るため注意しなければいけません。

端部も隙間ができやすいことから、2重貼りするのが基本です。

きっちり抑えて仕上げ、平滑面を作ります。

養生

最終的なシーリングの硬化まで養生します。

雨に濡れるとシーリングの変質を招くなどの問題が出るため、天候の確認も必要です。

目地処理を失敗したら防水工事はどうなるか

防水工事に目地処理は必須です。

仮に失敗したらどうなるか、リスクを知ることが施工時期を選ぶうえでも大切でしょう。

防水加工の早期劣化

目地処理がしっかりしていないと、早期に防水機能を失う可能性が出てきます。

目地処理の失敗でよくあるのが、乾燥しきっていない状態での施工です。

水分を含んだまま防水工事を進めると、内部で逃げ場を失った水分が蒸発して押し出します。

防水層を内部から押上げ、膨れ上がった状態になるケースも出てきます。

プライマーの効果も落ちるため、早期に防水能力を失う可能性があるのです。

雨漏りの可能性

非常に大きなリスクであり、工事の失敗ともなるのが雨漏りです。

そもそも雨漏りしない状態を作るのが、防水工事の目的になります。

雨漏りの可能性がある個所はいくつもあります。

特に目地処理から補強クロスの施工不良による雨漏りは、高いリスクがある部分です。

施工上、隙間ができないよう密着させることを、なによりも気を付けなければいけません。

防水工事のタイミング

防水工事のタイミングとしては、目地の劣化が重要な意味を持ちます。

目安として、目地のシーリング材の変化によってひび割れや雑草が生えるような状況です。

本来、目地のシーリングは土ではないため、雑草は生えません。

フラットだったシーリングが劣化でやせていき、土や泥などがたまると雑草が生えてきます。

劣化が進むとシーリングの柔軟性が失われ、接着面に隙間もできるのです。

このような状態が見られるなら、防水工事を考えた方がいいでしょう。

雑草が生えたからといって、いますぐに防水工事を必要としているというわけではありません。

しかし、劣化はかなり進んでおり、近い将来水漏れなどに発展する可能性があります。

防水工事には費用も掛かることから、早めに段取りをしたほうがいいタイミングです。

まとめ

この記事のまとめです。

・目地は躯体の伸縮を受け止める場所

・目地が劣化すると雨漏りなどのリスクが広がる

・ひび割れや雑草が生えてくる状況は、目地が劣化しているサインなので防水工事のタイミングがきている

防水工事には、目地処理が必ずついてきます。

目地は構造上必要ですが、目地自体が隙間なのに違いはありません。

水漏れに繋がらないよう目地処理したうえで防水工事をしなければ、生活環境は守れないといってもいいでしょう。

防水工事において非常に重要なポイントになりますので、状態を含め見落とさないことが大切です。

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