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建築基準法とは?大規模修繕の定義を解説!

大型マンションなどで時に行われる、『大規模修繕』を見たことがある人も多いでしょう。

この記事では、大規模修繕の定義やそれに関係する建築基準法に関して解説します。

建築物を管理するオーナーさんは、こういった法律や定義を理解していないと時に法律違反となり罰則を受けてしまう場合もあります。

そういった事態にならないよう、ぜひ理解しておくことをおすすめします。

建築基準法とは?

建築基準法という言葉は耳にしたことがある人は多いかと思いますが、実際はどんな法律であるか?に関して解説できる人はあまり多くないでしょう。

ただ、家やマンションを建築する上でこの法律を守らないと違法建築となり、行政処分や罰則の対象となってしまう可能性があります。

建築を行う上で、必ず守る必要がある法律です。

建築基準法では、以下の4つの観点から建物の基準が定められています。

用途
建築物の用途は、住宅、事務所、工場などに区分され、それぞれ構造基準が異なります。
用途の変更を伴う大規模な修繕工事では、新しい用途に見合った基準を満たす必要があります。

敷地
建物を建てる敷地については、敷地面積の最低限度、建ぺい率、容積率などの規制があります。
隣地境界線からの距離なども定められています。

構造
建物の構造に関しては、構造計算によって地震や風圧、積雪等に対する安全性が確保されていることが求められます。
また、防火構造についての細かい規定もあります。

設備
建築設備としては、避難施設、給排水衛生設備、昇降機、遮音、省エネルギーについて具体的な技術的基準が設けられています。

用途区域について

建築基準法では、地域の特性に応じて用途区域が定められており、その区域内で建てられる建築物の用途が規制されています。

例えば、住宅専用地域では工場は建てられないなど騒音や環境などの面で住民の生活環境を守るための重要な役割を担っています。

大規模修繕で建物の用途を変更する場合は、この用途地域の規制にも留意する必要があります。

建築基準法の目的は、結局のところ国民の財産と生命を守ることにあります。

近年の自然災害の増加を受け、その重要性は一層高まっています。

実際、国土交通省の統計では、2018年の建築確認申請件数は約52万件に上ります。

このように大規模修繕を行う際には、建物の構造性能や防火性、周辺環境への影響など、建築基準法が定める様々な観点から建物をチェックする必要があるのです。

法令順守は、施主や入居者の安全を守る上で欠かせません。

建築基準法で定められている大規模修繕工事の定義

建築基準法で考えるところの『大規模修繕工事』は、建物の主要構造部において全体の半分を超える修繕を行う工事となります。

建物の主要構造部分あとは、大きく考えて壁・柱・床・はり・などで例えば建物に主要の柱が10本あれば6本以上を修繕すると大規模修繕となります。

逆に、間仕切り壁や屋外の階段、ひさしなどといった部分は主要な構造部には当たりません。

建物の根底となる部分を半分以上修繕することが、大規模修繕工事の定義となります。

建築基準法で大規模修繕に関連する法律

建築基準法で大規模修繕に関連する法律について、見ていきましょう。

確認申請の要否

確認申請は、建物に関して新築したり大規模な修繕を行う際に必要な申請となります。

確認申請の提出は基本的に、建築主が行わなくてはいけないのですが専門的な知識など建築士の人や施工業者さんがサポートしてくれるケースが多いですね。

確認申請が必要なケースを、表にしてみます。

都市計画区域内準都市計画区域準景観地区その他の地域
特殊建築物
新築
必要必要必要必要
特殊建築物
大規模の修繕・模様替え
必要必要必要必要
中・大規模建築物
新築
必要必要必要必要
中・大規模建築物
大規模の修繕・模様替え
必要必要必要必要
上記以外の建築物
新築
必要必要必要不要
上記以外の建築物
大規模の修繕・模様替え
不要不要不要不要
  • 特殊建造物・・・学校や病院・映画館など多くの人が利用する建物で、床面積の合計が200平方メートルを超えるもの
  • 中・大規模建築物・・・3階以上の木造建築又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの・2階以上の木造建築又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの

引用元:法令検索

上記の条件では木造の2階建てで小規模なお家だと、申請が不要と言うことになりますね。

確認申請を行う必要のある建のタイプ

マンションなどの区分所有建物では、大規模な修繕工事を行う際に確認申請が必要になる場合があります。

区分所有法では、建物の主要な部分の変更には区分所有者の合意が必要とされています。

具体的にはエレベーターの設置や増設、バルコニーの取り付けなどが該当します。

しかし、一定の範囲の修繕工事については、確認申請を経ずに実施可能です。

建築基準法施行令第3条の3の2では、建物の主要構造部分を損なわない増築、修繕、模様替えは、確認申請が不要と定められています。

区分所有法

区分所有法第17条では、専有部分の修繕は各区分所有者が自身で行いますが、共用部分の修繕については以下のルールが適用されます。

  • 非常に大きな修繕は区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成が必要(特別多数決議)
  • それ以外の修繕は区分所有者および議決権の過半数の賛成で可能(普通決議)

特別多数決議が必要なケース

特別多数決議が必要な大規模修繕工事の具体例を挙げると、以下のようなものがあります。

  • 基礎、主要構造部の補強
  • エレベーターの設置や増設
  • バルコニーの増設
  • 共用部分の大幅な間取り変更

こうした工事は、建物の主要な部分に変更を加えるものであり、区分所有者の合意が法的に義務付けられています。

普通決議で施工可能なケース

一方、普通決議があれば施工できる範囲の修繕工事としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 外壁、屋根、階段の修繕
  • 給排水設備の修繕
  • エントランス、廊下のリニューアル
  • 駐車場や植栽の改修

つまり、建物の主要構造部分には手を加えず、共用部分の美装や設備更新を行う程度であれば、議決権過半数の賛成で実施可能です。

マンション管理適正化法

マンション管理適正化法は、マンションの適正な維持管理と修繕積立金の適正な運用を促進することで、安全で快適なマンション居住環境を確保することを目的とした法律です。

この法律の中核をなすのが、一定の大規模建築物について義務付けられている「定期管理報告」です。

定期管理報告

定期管理報告とは、建物の現状と将来の修繕計画について、国土交通大臣への報告を定期的に行うことを義務付けたものです。

目的は高経年マンションなどの安全性を確保し、居住者の生命や財産を守ることにあります。

定期管理報告が必要な特殊建造物とは

定期管理報告の対象となる「特殊建築物」の基準は以下の通りです。

  • 高さ60m以上の建物
  • 地階を除く階数が20以上の建物
  • 延べ面積10,000㎡以上の建物

国土交通省の統計データによれば、2018年現在でこの基準に該当する特殊建築物は全国で約22,000棟あり、そのうち約15,000棟がマンションやアパートなどの共同住宅でした。

つまり、多くの共同住宅がこの定期報告の対象となっているということです。

報告を怠れば、最大50万円の過料が課せられる可能性もあります。

定期管理報告の周期

定期管理報告は、以下の周期で国土交通大臣への提出が義務付けられています。

  • 新築から10年以内の建物:3年に1回
  • 新築から11年目以降の建物:2年に1回

つまり、建物が経年するにつれ、より頻繁な報告が求められます。

これは高経年マンションほど建物の劣化リスクが高くなるためです。

例えば、30年前に建設されたマンションであれば、2年に1回の報告が必要になります。

定期報告の主な内容としては以下のようなものがあります。

  • 建物の現在の状況
  • 定期的な点検の結果
  • 修繕積立金の状況
  • 将来の修繕計画

このように、マンション管理適正化法は、定期的なマンション点検と適正な修繕積立金の運用を法的に義務付けることで、マンションの安全性と居住環境の維持向上を図っています。

確認申請における構造計算の要否

まず、構造計算とは『建物の安全性を確認するための計算』を指します。

この構造計算は、建物を安全に利用するために必要なものとなってきますので確認申請の際に必要となる場合があります。

特殊建造物や中・大規模建築物の新築であれば、構造計算はもちろん必要ですがそれらの大規模の修繕や大規模の模様替えに関しては『構造耐力上の危険性が増大しない』計画であれば不要です。

つまりは、修繕・模様替えする箇所の既存素材と比較して荷重が増えない仕様とすれば構造計算を行わなくても良いこととなります。

要は安全性を高める仕様であれば、これを省くことができるということですね。

建物の建築や修繕に置いて、安全性は非常に重要です。

建築法をしっかりと遵守しながら、大規模の修繕や大規模の模様替えを計画しましょう。

大規模の修繕とは

大規模修繕工事のうち、大規模の修繕に関して建築基準法では以下のように記載されています。

建築基準法第2条第14 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう

引用元:法令検索

修繕とは、基本的に今ある形や材質を変えずに治す・補う・繕うといったイメージです。

劣化した場所を同じ材料で治すといった感じですと、よりわかりやすいでしょうか。

  • 屋根を同じ素材でふき替える
  • コンクリート壁のひび割れをコンクリートで補修

などは修繕と分類される一例です。

大規模の模様替えとは

次に、大規模の模様替えについて建築基準法では、以下のように記載されています。

建築基準法第2条第15 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう

引用元:法令検索

つまりは、既存の部分を違う材料や仕様で造りかえ性能や品質を回復・向上させる工事となります。

模様替えという言葉から、規模が修繕よりも小さく聞こえがちですが実は模様替えの方が大掛かりなものとなってしまいます。

例えば、木造の階段を鉄筋の階段へ変えることをイメージするとわかりやすいのですが、素材を変えてしまうので修繕よりもはるかに大掛かりになってしまいますね。

  • 階段を木造から鉄骨に変える
  • 屋根を瓦からガルバリウム鋼板に変える

上記のような工事は、模様替えに分類される一例です。

また、『塗り替え』に関しては模様替えにも修繕にも当てはまらないまた別の工事であると認識されます。

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