分譲マンションの大規模修繕工事には多額の費用が必要ですが、補助金や助成金を活用することで負担を軽減できます。東京都や神奈川県横浜市をはじめとするエリアなど、各自治体が独自の支援制度を設けており、エレベーターの改修工事や建物の省エネ化など、様々な工事に適用が可能です。国土交通省も支援制度を整備していますが、申請条件や期限、対象工事の範囲は地域によって異なります。そこで本記事では、マンションの大規模修繕工事における補助金・助成金制度の仕組みから、具体的な探し方、申請時の注意点まで、管理組合として知っておくべき情報を解説します。
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
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マンション大規模修繕工事の助成金とは
マンション大規模修繕工事は高額な費用がかかるため、着工前の見積もりでは修繕積立金が足りず、入居者から仮徴収金を徴収しなければならないケースも少なくありません。
費用面で入居者とトラブルにならないように、大規模修繕の補助金・助成金制度を活用する方法が有効です。
最初に、マンション大規模修繕の助成金とは何か、似ている補助金との違いを解説します。
補助金と助成金の違い
補助金制度と助成金制度は、言葉も意味も違います。
意味の違いを知っておかなければ、許可が下りないということにもなりかねません。
工事の延期やトラブルを避けるためにも、補助金制度と助成金制度の違いから確認しておきましょう。
助成金とは
助成金は、基本的に各制度で定められた条件を満たした場合に支給されるものを指します。
例えば、東京都では「エコ住宅推進事業費補助金」や「マンション劣化診断調査費補助金」といった助成金は一定の条件を満たした場合に支給されます。
補助金とは
補助金は、一定の審査を経て条件を満たした申請の一部に交付されるものです。
つまり、条件を満たしていても状況によっては給付されない場合もあります。
大規模修繕工事で利用できる制度としては、「熱エネルギー有効利用支援補助金」、「マンション住宅計画修繕調査費補助金」などがあります。
なお、補助金や助成制度は自治体によって異なります。
補助金制度の場合、条件を満たせば大規模修繕工事の資金に上乗せされることもありますが、助成金制度は適切な手続きを踏まないと審査に通りにくいケースも多いです。
マンション大規模修繕工事で適用される補助金の種類
マンションの大規模修繕工事で利用できる補助金・助成金のうち、一部内容を紹介します。
計画中の大規模修繕工事の概要と照らし合わせて、紹介する補助金・助成金が利用できるかどうか確認してみましょう。
劣化診断補助事業
劣化診断補助事業とは、大規模修繕工事に先立ち、建物の劣化状況を診断する費用の一部を補助する制度です。
劣化診断費用のみを助成する制度や、建物の適切な管理を促進する制度などさまざまです。
例えば、東京都にはマンションの劣化診断費用が50万円まで補助される制度があります。
制度を利用するための条件をチェックしたうえで申請をしましょう。
防災対策整備費補助金
防災対策設備費補助金は、マンション等の防災対策や安全管理を促すための制度です。
防災工事費用の補助から、防災マニュアル作成のための専門家派遣まで、事業によって複数の支援形態があります。
例えば、東京都の案件では、工事費に対して最大1,000万円の補助を行っています。
対象となる工事には規定があるため、利用の際は確認しましょう。
アスベスト除去等事業補助金
アスベスト除去等事業費補助金とは、既存の建物からアスベストを除去する工事費用に充てることができる制度です。
アスベストは健康に多大な悪影響を及ぼすため、入居者の安全のためにも制度を活用しましょう。
自治体や制度によって金額は異なりますが、上限1億円のところもあります。
制度の詳細は国土交通省や各自治体のホームページから確認が必要です。
共用部分改修費用補助・助成制度
共用部分リフォーム費用補助・助成制度とは、建物の共用部分の工事費用に充てられる制度です。
補助・助成の目的は、共用部分の維持管理や防災対策などが挙げられます。
また、共用部分のバリアフリー化費用に対する補助・助成制度もあります。
建物利用者が不便なく共用部分を利用できるよう、補助金・助成金制度を活用しましょう。
マンションアドバイザー派遣
マンションアドバイザー派遣には、「マンション管理アドバイザー制度」と「マンション建て替え・改修アドバイザー制度」があります。
マンション管理アドバイザー制度とは、建物の適切な維持や管理を目的としており、専門家が相談に応じる制度です。
マンションの維持・管理は専門知識が求められ、管理組合のみでは対応できない場合があります。
アドバイザーに対応してもらうことで、大規模修繕工事を含めた適切な維持管理を行うことが可能です。
マンション建替・リフォームアドバイザー制度とは、マンション管理組合に建替・リフォーム工事のアドバイザーを派遣する制度です。
制度により、マンションの建替えやリフォームに必要なアドバイスを受けたり、検討資料の作成支援を依頼ができます。
東京都では相談内容によってコースが分かれているため、アドバイザーのサポートを受けたい場合は、制度の詳細を確認しましょう。
マンション大規模修繕の補助金を探す方法
マンションがある自治体に補助金・助成金制度があるかどうかを確認するには、2つの方法があります。
マンション大規模修繕の補助金制度の探し方を紹介します。
自治体のホームページで探す
マンション大規模修繕の助成金・補助金制度がある場合は、必ず記載されています。
最も確実な方法は、自治体のホームページで最新情報を確認することです。
実際に調べる際には、インターネット検索で「○○区(市)大規模修繕補助金」「○○区(市)リフォーム工事補助金」と入力すると該当するページが出てきます。
検索しても制度に関する自治体のホームページが出てこない場合は、自治体が補助金を出していない可能性が高いです。
補助金情報を掲載しているサイトを見る
自治体のホームページのほかに、助成金や補助金制度について検索できる専門サイトがあります。
適切な制度がなかなか見つからない場合は、専門サイトをチェックしましょう。
ただし、情報は常に更新されているわけではありません。
専門サイトは制度を探すためには有効な手段ですが、最終確認は自治体のホームページを閲覧する必要があります。
マンション大規模修繕で補助金を受ける際の注意点
マンション大規模修繕で補助金を受ける際には、早めに準備を進めることが大切です。
ここでは、補助金を受ける前に確認すべき注意点を紹介します。
決められた期間内に申請をする
マンション大規模修繕の補助金の申請は、着工前に行う必要があります。
申請から交付決定通知が届くまで1ヶ月程度かかる場合があり、その間に着工できない可能性もあるため、受付期間開始後できるだけ早く申請することが重要です。
また、受付期間内に応募者の上限に達した場合や、補助制度の予算が不足する場合は、先着順で受付を終了することもあります。
受付開始日は各自治体のホームページに明記されているため、事前に工事見積書を確認するなど、すぐに申請できるように準備しておきましょう。
塗料が指定されていることがある
省エネ目的工事で補助金制度を利用する場合は、以下のように塗料が指定されることも少なくありません。
- 外部からの熱の侵入を防ぐ遮熱塗料
- 居室内外の熱の移動を防ぐ断熱塗料
遮熱塗料や断熱塗料は通常の塗料よりも高価ですが、補助金を受けられること以外にもメリットがあります。
塗料の効果でアパート内を快適な温度に保つことができ、冷暖房費の節約になります。
さらに、耐用年数が約15~20年と長いため、費用が安く耐用年数が短い材料を使用するよりもコストパフォーマンスがよいといえるでしょう。
納税履歴を確認される
補助金を受けるためには、以下の税金を納めていなければなりません。
申請者が個人の場合:住民税・所得税
法人の場合:法人税・法人事業税
自治体が納税履歴を確認するため、補助金の申請前に納税状況を把握しておきましょう。
税金を滞納している場合は、全額納付をすれば申請が可能です。
補助金の原資は税金である、納税の義務を果たしていないと申請はできません。
必要書類の準備に時間がかかる
補助金申請書や完了報告書を提出する際には、以下の書類が必要です。
不備があると補助金を受け取ることができないため注意しましょう。
- 自治体指定補助金交付申請書
- 本人確認書類(運転免許証、住基カードなど)
- マンションの平面図・立体図
- 登記事項証明書(発行から3ヶ月以内)
- 市税納税証明書
- 工事の見積書または領収書
- ビフォーアフター写真
- 塗料出荷証明書
自治体指定補助金交付申請書は自治体の窓口またはホームページ、本人確認書類と市税納税証明書は市役所・区役所で受け取ることが可能です。
マンションの平面図・立体図は管理会社、登記事項証明書は法務局です。
そのほかは施工業者に用意してもらえます。
自治体によっては、上記以外にも必要な書類があるため、必ず確認をしましょう。
自治体指定の業者以外は利用できないことがある
多くの自治体では、補助金を申請する自治体内に営業所を有する施工業者を指定しているため、適用条件を確認し、適切な業者を選びましょう。
基本的に、地元に根ざした建設会社であれば補助金制度に精通しており、補助金の対象となります。
自治体指定の業者は、必要書類や工事内容も把握しているため安心です。
指定がない場合、業者選びの際に補助金を利用した施工実績があるかどうかも考慮し、スムーズに補助金を受給できるようにしましょう。
受給の回数制限が設けられていることがある
補助金申請条件にもあるように、補助金の受給回数や受給期間には制限があります。
多くの自治体では同じマンションで補助金を受けられるのは1回のみですが、前回の工事から1年経過した場合に複数回補助金を受けられる場合があります。
申請書類を用意しても回数制限のため交付を受けられないということがないように、過去に交付を受けた工事がないか、過去の履歴を確認しておきましょう。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
マンション大規模修繕補助金まとめ
マンション大規模修繕の補助金について解説しました。
まとめると、
- 補助金の申請条件や金額、必要書類は自治体によって異なる
- 確実に補助金を受けるためには各自治体の補助金制度を理解する
- 工事見積書の取得や書類の準備など申請前に行うことも多い
マンション大規模修繕の補助金を受けたい場合は、早めの準備が大切です。
大規模修繕の実績がある施工業者であれば自治体の制度にも詳しく、申請のサポートも行っています。
マンション大規模修繕の費用、補助金を利用したい場合には、実績豊富な業者に相談してみましょう。