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中規模修繕とは?大規模修繕との違いや費用相場・工事内容や劣化診断・分散方式について解説

中規模修繕工事を知りたい人

中規模修繕工事を知りたい人

中規模修繕とはどんな工事?
中規模修繕工事はマンション・ビル・アパートに必要?
中規模修繕工事の内容は?期間は?費用はいくら?
中規模修繕工事をするおすすめの施工業者を知りたい!

建物の健康を守り、良好な住環境を維持するため、マンションの大規模修繕は欠かせません。しかし、その費用と負担は決して小なくありません。

従来の大規模修繕工事に代わり、今注目されているのが「中規模修繕」です。中規模修繕とは、建物の補修を分散して行う方式で、予算とスケジュールの負担を軽減できます。

この記事では、中規模修繕の内容と相場やそのメリットを紹介します。従来の大規模修繕工事との違い・費用の流れ・建物への影響なども解説します。マンション管理に関わる方々に、新たな修繕計画の選択肢となるため、ぜひ最後までお読みください。

中規模修繕とは

中規模修繕工事は、マンションやビルの共用部分を部分的に修繕する工事で、大規模修繕と小規模修繕の中間に位置するものです。
通常5年〜10年の周期で行われますが、必要に応じて実施されることが多いです。
以下は中規模修繕工事の主な内容です。

  • 外壁の塗装工事やひび割れ補修・外壁のタイル補修
  • 屋上や陸屋根の防水工事
  • 給水管や排水管などの給排水設備の修繕・更新
  • エントランスや廊下の床・壁のクラック補修
  • 電気設備の幹線や分電盤の修繕
  • エレベーターのリニューアル工事

特に外壁と屋上は建物を守る重要な役割を担っているため、破損や劣化した場合、大規模修繕の時期を待たず、中規模修繕として防水工事・補修工事の実施がほとんどです。

また、中規模修繕は、大規模修繕に比べて範囲が狭く、費用も抑えられるため、計画立案も柔軟に対応できるメリットがあります。

中規模修繕と大規模修繕の違い

建築基準法によれば、建物の半分以上を修繕・模様替えをする工事を大規模修繕工事と定義しています。

中規模修繕に関しては、建築基準法では明確に定義されていません。

マンションの大規模修繕は、一般的に12年ごとに長期修繕計画に沿って行われ、屋上・外壁・バルコニー・排水管・電気設備などの共用部分を修繕します。

共用部分の修繕を一度に行うため、工事期間は長く、そして莫大な修繕費が必要になります。
国土交通省が2021年に実施した「マンション大規模修繕工事の実態に関する調査」によると、大規模修繕の平均費用は1戸あたり約75万円〜125万円です。戸数が多い大規模マンションであれば、修繕費は1億円以上かかることがあります。

一方の中規模修繕は、「12年ごと」などの期間にこだわらず、建物の劣化度合いから判断して工事の実施を決めます。

部分的または範囲的に修繕工事を行うため、大規模修繕に比べ、工事の期間は短く、一度の出費は少なめです。また、修繕の緊急性が高い劣化箇所を優先して工事を実施することができるので、建物の長寿命化に繋がります。

業界で注目されている中規模修繕・分散方式とは

現在、不動産業界では「中規模修繕・分散方式」という修繕スタイルが注目されています。

従来の大規模修繕は前述したとおり、長期修繕計画をもとに行われます。

この修繕スタイルの問題点は、赤字のリスクがあることです。

マンションの大規模修繕の工事周期は一般的に12年と言われていますが、建物の劣化状況によって前後します。大規模修繕の回数と築年数の関係を以下の表にまとめました。

工事回数築年数
1回目13〜16年
2回目26〜33年
3回目27〜45年

国土交通省が発表する「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(平成29年5〜7月実施分)」というデータを元に作成しています。

1回目と2回目の間隔はおよそ13年です。13年の間に工事にあてる修繕積立金を集めなければなりませんが、修繕積立金を集めるスピードと工事をやらなければならないスピードがアンバランスになる現象が起こることがあります。

修繕積立金が不足している場合、工事を延期したり、優先度が高い箇所のみを先に工事することもできますが、劣化部分の放置は建物の耐久性・耐震性、入居率、資産価値に悪影響を与えるので、赤字になったとしても、大規模修繕工事はせざるを得ません。

そこで、上記の現象を解消するために提唱されたのが中規模修繕・分散方式です。

中規模修繕・分散方式は、18年周期で修繕計画をたて、大規模修繕工事の内容を分散して修繕していく方式です。大規模修繕計画よりも長い周期で計画を練る必要はありますが、大きな出費を避けることができます。

中規模修繕・分散方式のメリット

中規模修繕・分散方式のメリットは以下のとおりです。

中規模修繕・分散方式のメリット1.予算とスケジュールの負担軽減

大規模な修繕工事は一度に多額の資金と時間を必要とします。中規模修繕では、修繕の必要な箇所を段階的に処理するため、予算とスケジュールの負担を軽減できます。修繕積立金の減少が緩やかになるので、住民や建物所有者にかかる財政的負担が少なくなり、予算の適切な管理が可能になります。

中規模修繕・分散方式のメリット2.緊急性の高い修繕から対処できる

中規模修繕は、修繕の緊急性が高い箇所から優先的に処理できるため、問題が深刻化する前に対処できます。優先順位をつけて修繕計画を進行させるので、建物や施設の健全性を確保し、安全性や住環境を向上させます。

中規模修繕・分散方式のメリット3.長寿命化

中規模修繕は、建物や施設の長寿命化を図るのに役立ちます。劣化や損傷が早期に修復されるため、建物や施設の寿命が延び、資産価値が維持されます。

中規模修繕・分散方式を行うポイント

中規模修繕・分散方式を行う上での大きなポイントは以下の2つです。

  • 建物診断を行い、工事の必要性・優先順位を判断する
  • 18年周期を前提に長期修繕計画を立てる
  • 集約して単年度に大きな工事を実施するのではなく、範囲ごとに分散させる

中規模修繕・分散方式の計画を練るには、建物診断の結果が重要です。自己判断は危険なので、必ず建物診断を行う業者に依頼して、建物の状況を調査してもらいましょう。

中規模修繕工事の内容

中規模修繕工事では、建物の各部位に対する点検と修繕が行われ、外観の美観維持だけでなく、建物の機能性や安全性を向上させることが目的です。マンション、ビル、アパート、戸建て住宅など、建物の規模や用途に応じた修繕が必要です。

マンション中規模修繕工事の内容1.外壁修繕・タイル浮きや外壁タイル補修

外壁は建物の見た目を維持するだけでなく、風雨や紫外線から建物を保護する重要な部分です。外壁にひび割れや劣化が発生すると、雨水が内部に浸入し、建物の構造部分にダメージを与える可能性があります。そのため、定期的な外壁の点検と修繕が必要です。

ひび割れ(クラック)補修
外壁にできたひび割れは、雨水や湿気が建物内部に侵入する原因となります。クラックを早めに補修することで、建物の劣化を防ぎ、長期的な耐久性を維持することができます。

鉄部のケレン作業(サビ落とし)
鉄部の腐食を防ぐために、サビを取り除くケレン作業が行われます。サビを放置すると鉄部が劣化し、建物の安全性が損なわれるため、塗装前のケレン作業が不可欠です。

塗装工事
外壁塗装は、建物の外観を美しく保つだけでなく、建物を保護する機能もあります。塗装が劣化すると防水性が低下するため、定期的な再塗装が必要です。

レンガやサイディングの修理または交換
レンガやサイディングが劣化すると、剥がれや欠けが発生し、外壁全体の耐久性に影響を与えます。劣化が見られる場合は、修理または交換を行い、建物の安全性を確保します。

タイル浮きや外壁タイル補修
経年劣化や施工不良、地震などの外的要因によりタイルが浮き上がったり、剥離したりすることがあります。タイル浮きや剥離の補修は、安全性を確保するためにも定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。特に高層建物では、専門業者による診断と補修工事が推奨されます。

マンション中規模修繕工事の内容2.屋根・屋上の修繕や防水工事

屋根や屋上は、建物を雨や日光から守る重要な部分であり、特に雨水が溜まりやすい場所でもあります。定期的な修繕を行い、雨漏りを防ぎ、建物内部を守ることが必要です。

  • 防水工事
    屋根や屋上の防水工事は、雨水の浸入を防ぐための最も重要な作業です。防水層が劣化すると、雨漏りが発生し、建物内部の構造材が損傷する恐れがあります。防水シートやコーティングを使用して、劣化した防水層を補修・再施工することで、建物の長寿命化を図ります。
  • 雨樋の清掃
    雨樋は、雨水を屋根から適切に排水するための設備です。雨樋にゴミや落ち葉が詰まると、排水が滞り、屋根や外壁に水が溜まり、漏水や劣化を引き起こします。定期的に雨樋を清掃し、排水機能を維持することが、雨漏り防止の基本です。
  • 瓦の交換
    屋根に使用される瓦は、劣化や破損によって防水機能が低下することがあります。ひび割れた瓦やズレた瓦を交換することで、雨漏りを防止し、屋根の耐久性を向上させます。瓦の定期的な点検と交換を行うことが、屋根全体の修繕において重要です。

マンション中規模修繕工事の内容3.ベランダ・バルコニー修繕や防水工事

ベランダやバルコニーは、外部にさらされているため、雨風による劣化が避けられません。特に防水機能や塗装のメンテナンスは、居住空間を守るために欠かせない修繕項目です。

  • 防水工事
    ベランダやバルコニーの防水工事は、雨漏りを防ぐために不可欠です。特にベランダは水が溜まりやすい部分で、防水層が劣化すると、建物内部に雨水が浸入し、下階に水漏れが発生する可能性があります。防水層の再施工や部分補修を行い、防水性を維持します。
  • 塗装工事
    ベランダやバルコニーの手すりや床面は、紫外線や雨風の影響で塗装が剥がれやすくなります。塗装工事を行うことで、見た目を美しく保ち、錆や腐食を防ぐことができます。また、塗装を行うことで耐久性が向上し、長期的に安心して使用できる空間を提供します。

マンション中規模修繕工事の内容4.窓とドアの交換または修繕

窓やドアは、建物の気密性や断熱性を左右する部分です。特に古い窓やドアは、風雨や紫外線の影響で劣化しやすく、気密性が低下することで冷暖房効率が悪化し、光熱費の増加につながります。窓やドアの交換や修繕を行うことで、防音性や断熱性が向上し、快適な住環境へと変えられます。また、防犯性を高めるために最新の施錠に変更すれば、セキュリティの面でのメリットも得られます。

マンション中規模修繕工事の内容5.配管と給排水の修繕

配管と給排水設備は、日常生活において不可欠なインフラであり、経年劣化により漏水や詰まりが発生することがあります。特に、配管の腐食や破損は、水漏れや配管内部の詰まりを引き起こし、大規模なトラブルになる可能性があります。修繕工事で配管や給排水設備を交換・補修すれば、正常な水の流れを維持します。配管の状態を定期的に点検し、問題を早期発見できれば、トラブルを未然に防げるでしょう。

マンション中規模修繕工事の内容6.電気系統の更新

電気設備は、住環境の安全を確保するために定期的な点検と更新が必要です。特に、古い配線やコンセント、ブレーカーは、漏電や火災のリスクが高くなるため、定期的に更新することで、安全性を向上させます。

  • 新しい配線の取り替え
    古くなった電気配線を取り替えることで、漏電や火災のリスクを軽減します。特に電力消費量が増加する現代の生活環境に対応するためには、最新の配線に更新することが推奨されます。
  • コンセントの更新
    劣化したコンセントは火災やショートの原因となるため、定期的に交換が必要です。最新の安全規格に合ったコンセントに交換することで、安全性が高まり、利便性も向上します。
  • ブレーカーボックスの取り替え
    古いブレーカーボックスを交換することで、電気系統全体の安全性を高めることができます。新しいブレーカーボックスは電気トラブルに対応できる性能が備わっており、停電や火災を防ぐ役割を果たします。

マンション中規模修繕工事の内容7.内装の修繕または改修

内装の修繕や改修工事は、居住空間の快適さを保つために欠かせません。主に壁紙や床材の張り替え、畳の交換、ドアや建具の修理などが行われます。内装の劣化が進むと、室内の雰囲気だけでなく、断熱性や防音性にも影響を与えることがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。また、機能性を向上させるためのリフォームを行うことで、住環境を一新し、資産価値の維持・向上にも繋がります。

マンション中規模修繕工事の内容8.エレベーターのメンテナンス

エレベーターは、居住者やビル利用者の安全な移動を支える重要な設備であり、定期的な点検とメンテナンスが必要です。エレベーターの部品は長期間の使用により摩耗しやすく、故障や停止を未然に防ぐため、適切な部品交換やオイル交換が行われます。特に、老朽化したエレベーターは定期メンテナンスを怠ると安全性が低下するため、長期にわたる安全な運用を確保するための計画的な点検が求められます。

大規模修繕では、上記の工事を建物の劣化状態に応じて一度に行います。一方、中規模修繕・分散方式の工事内容は大規模修繕工事と同じですが、この方式の場合、必要な工事を必要な時に行います。つまり、上記の工事を分けて行います。例えば、築5年目に鉄部塗装など小規模のメンテナンス工事を行い、築10年目に屋上防水工事・外壁塗装工事を行う、という具合です。

中規模修繕工事の費用相場|マンション1戸あたりの工事別費用

中規模修繕工事は大規模修繕とは異なり、通常1〜3箇所を工事します。対象は主に共用部分です。

そのため、以下の表では工事場所別の一部費用相場を紹介します。

工事箇所1戸あたりの費用相場
防水工事3,000円〜6,500円/㎡
外壁塗装工事3,000円〜7,000円/㎡
給水排水設備1棟あたり70〜200万円
ベランダ・バルコニー手すりの防錆塗装約1,000円
配管工事約5万円〜10万円
床面FRP防止工事約6,000円〜9,000円
玄関ドアリフォーム玄関ドアの鉄部塗装約1,000〜3,000円/㎡
玄関ドア表面の塗装約3〜8万円/1戸あたり
ドア交換費用約20〜35万円/1戸あたり
ドア付帯部補修費用約5,000〜10万円

上記の費用はあくまで目安です。地域や物件の条件、工事の範囲や品質、業者の選定によって変動する可能性があります。
具体的な見積もりや計画を立てる際は、専門の建設会社や修繕業者に相談されることをおすすめします。また、修繕積立金の計画や管理も重要な要素ですので、適切な積立金の金額設定についても専門家の意見を求めるとよいでしょう。

中規模修繕はどこに頼めばいい?施工業者・会社の探し方ポイント

マンション・ビル・アパートの中規模修繕は、大規模修繕と異なるからどこに頼めばいいのだろう、と悩んでしまいますよね?

中規模修繕工事を依頼する業者を選ぶ際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。

  • 専門業者…屋上の防水工事なら防水工事業者、外壁の塗装工事なら塗装業者など、工事の場所ごとに専門の業者に依頼するようにしましょう。専門業者は技術力が高く、豊富な経験を持っていることが多いです。
  • 施工実績…過去の施工例や実績を確認し、類似の物件での修繕経験があるかをチェックしましょう。
  • 評判と口コミ…他のマンション管理組合やオーナーからの評判、インターネット上の口コミなども参考にすると、トラブル防止に繋がります。
  • アフターサービス…工事完了後の保証内容やアフターフォローの体制がある業者や施工会社を選びましょう。これらがあることで、工事完了後に不備があったとしても安心です。
  • 見積もりの明確さ…見積もりが詳細に書かれているか確認しましょう。不明瞭な点が多かったり、質問に対して答えを濁す業者は「悪徳業者」の傾向があります。

大規模修繕工事の業者ランキングや業者リストを参考にするのも手です。これらの情報はインターネット上に公開されていることがあるので、参考にしてみてください。

施工業者を探す際には、インターネットでの検索や業界団体への問い合わせ、他のマンション管理組合の推薦など、複数の方法を試すことがおすすめです。また、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することも重要です。修繕工事は建物の長期的な価値を保つための投資なので、業者の選定は慎重に行いましょう。

中規模修繕工事についてまとめ

今回は中規模修繕工事について解説しました。

中規模修繕工事はマンションやビルの共用部分を部分的に修繕する工事で、5〜10年の周期で行います。屋根・屋上の修繕や防水工事や外壁塗装や修繕、ベランダやバルコニーの修繕などを行います。

中規模修繕をしっかり行うことで建物の美観や耐久性を維持し、大規模修繕の費用も安くすることにつながりますので、しっかり計画を立てて修繕を行うようにしましょう。

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