
オフィスビルの大規模修繕費の目安はいくら?築年数や工事単価別の相場と費用を抑えるコツを解説
2025/07/24
オフィスビルを長く安定的に運用していくためには、定期的な大規模修繕が欠かせません。特に築10年・20年・30年と時間の経過とともに、外壁や屋上の防水、電気・空調設備などが老朽化し、修繕が必要になるケースが増えてきます。
本記事では、オフィスビルの大規模修繕費の目安を知りたい方に向けて、延床面積や築年数ごとの費用相場、工事単価別の相場感、そして費用を抑えるための具体的な方法まで詳しく解説します。
初めて修繕を検討するオーナー・管理者の方でも理解しやすい内容になっています。
目次
オフィスビルの大規模修繕とは?目的や目安を把握しよう!
オフィスビルの大規模修繕とは、経年劣化によって機能や安全性が低下した建物の外装・内装・設備を、一定周期で総合的に補修・更新する工事のことです。具体的には、外壁の塗装やタイル補修、屋上防水の再施工、共用部の照明や空調の更新、エレベーターのリニューアル、配管の交換などが含まれます。
通常は12〜15年に一度のペースで実施され、修繕費の目安は、内容によっては数千万円以上の費用がかかるケースもあります。
建物の資産価値維持や入居者の安心・快適性を守るためにも、計画的な大規模修繕は非常に重要です。
オフィスビルの大規模修繕費用の目安|延床面積と築年数で見る相場
オフィスビル大規模修繕の費用相場は、延床面積と築年数によって大きく変動します。築10年・20年・30年と経年が進むほど修繕範囲は広がり、費用も高額になる傾向があります。適切な予算計画を立てるためには、建物の規模ごとの修繕費目安を把握しておくことが重要です。
以下に、代表的な面積と築年数別の相場をわかりやすく表にまとめました。
延床面積 | 築10年 | 築20年 | 築30年 |
---|---|---|---|
500㎡ | 約300万円 | 約800万円 | 約1,200万円 |
1,000㎡ | 約600万円 | 約1,500万円 | 約2,000万円 |
2,000㎡ | 約1,200万円 | 約3,000万円 | 約4,000万円 |
5,000㎡ | 約3,000万円 | 約7,000万円 | 約9,000万円〜1億円以上 |
※建物の構造(RC造/SRC造)、階数、施工対象の範囲によって変動します。
オフィスビルの大規模修繕費は「仮設工事(足場・養生)」「共用部」「外装・屋上」「設備系統」「塗装・補修」など複数の工事が同時に発生するため、1工事項目ごとの予算管理が重要になります。仮設足場費だけで総費用の2〜3割を占めることも珍しくありません。
また、築30年を超える建物では、単なる修繕では対応しきれず、耐震補強や基礎の改良、インフラ更新(電気/排水/給水など)を含むリノベーションレベルの大規模改修となるケースもあります。
オフィスビル大規模修繕費用の目安|外壁塗装・防水など工事単価別に解説
オフィスビルの大規模修繕では、工事項目ごとに費用相場や単価の目安が異なります。建物の規模や劣化状況、選ぶ工法や材料によっても変動するため、ここでは代表的な工事項目別に㎡単価や費用目安を紹介します。
外壁塗装の費用目安(㎡単価・塗料別)
塗料の種類 | 単価目安(円/㎡) | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|---|
アクリル系塗料 | 約1,500〜2,500 | 5〜7年 | 初期費用が安いが耐久性が低い |
シリコン系塗料 | 約2,500〜3,500 | 10〜12年 | コストと耐久性のバランスが良い |
フッ素系塗料 | 約3,500〜5,000 | 15〜20年 | 高耐久で長期的なコスト削減につながる |
※大規模なオフィスビルの場合、足場代も含めると外壁塗装全体で500〜1,000万円程度になることもあります。
屋上・バルコニー防水の費用目安(㎡単価・工法別)
工法 | 単価目安(円/㎡) | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|---|
ウレタン防水(密着工法) | 約4,500〜6,500 | 10〜13年 | 下地に密着させる基本工法 |
ウレタン防水(通気緩衝工法) | 約5,500〜7,500 | 12〜15年 | 下地の湿気対策に優れる |
シート防水(塩ビ・ゴム) | 約5,000〜7,000 | 12〜15年 | 均一な厚みで仕上がりが安定 |
アスファルト防水 | 約6,000〜8,500 | 15〜20年 | 高耐久で長寿命 |
※広い屋上を持つオフィスビルでは1,000万円以上になるケースも少なくありません。
屋根修繕や葺き替えの費用目安
工事内容 | 単価目安 | 備考 |
---|---|---|
屋根補修(部分補修) | 約50〜150万円程度 | 小規模な修繕 |
屋根塗装 | 約3,000〜4,500円/㎡ | 防水性・美観維持 |
屋根葺き替え(金属屋根・スレート) | 約7,000〜12,000円/㎡ | 長期的に耐久性を確保 |
※オフィスビルでは屋根面積が広く、数百万円〜1,000万円以上になることもあります。
設備改修(給排水・電気設備など)の費用目安
工事項目 | 費用目安 | 備考 |
---|---|---|
給排水管更新 | 1戸あたり約50〜100万円 | ビル全体では数千万円規模になる場合も |
電気設備改修(配線・分電盤など) | 約500〜1,500万円程度 | 老朽化対策・安全性確保 |
空調設備更新 | 1台あたり約50〜150万円 | 台数によっては数千万円規模 |
※設備改修は劣化症状が出にくいため、突発的な故障を防ぐためにも計画的な更新が望まれます。
オフィスビル大規模修繕のタイミング|築年数別の修繕費の目安も紹介
オフィスビルの大規模修繕は、築年数の経過とともに必要性が高まっていきます。築10年・20年・30年とそれぞれの段階で劣化の進行度が異なり、求められる修繕内容や費用も大きく変わります。
ここでは、修繕の適切なタイミングを築年数別に整理し、それぞれの時期にかかる修繕費の目安についてもわかりやすく紹介します。
築年数 | 修繕内容の概要 | 主な工事項目 | 費用目安 |
---|---|---|---|
築10年 | 点検・軽微な補修 | 外壁点検、シーリング打ち替え、屋上トップコート更新、設備点検 | 約200〜500万円 |
築20年 | 大規模修繕の初期段階 | 外壁塗装、防水層の全面再施工、照明・空調・給排水設備の更新 | 約500〜2,000万円 |
築30年以降 | 本格的な大規模修繕 | 構造補修、全面配管更新、耐震補強、エレベーター更新など | 約3,000万円〜1億円以上 |
建物の使用状況や施工履歴によってもタイミングは前後するため、定期的な点検と専門家の診断をもとに判断することが重要です。
オフィスビル築10年目|点検と軽微な補修
築10年前後では、建物全体の健全性を確認するための定期点検と、必要最小限の補修が中心となります。外壁の劣化やシーリングのひび割れ、屋上防水層の劣化などは、早期に対処することで大規模な損傷を未然に防ぐことができます。
主な工事は外壁点検、シーリングの打ち替え、屋上のトップコート更新、共用設備の点検などで、費用はおおむね200〜500万円程度が目安です。
オフィスビル築20年目|大規模修繕の初期段階
築20年を迎えると、目視では確認できない部分の劣化が進行し、本格的な修繕が必要になる時期です。外壁塗装の塗り替えや屋上防水の再施工に加え、老朽化が進んだ照明や空調、給排水設備の更新も検討されます。
特に防水や配管などは放置すると建物全体に影響を及ぼすため、早めの対応が重要です。修繕費用は建物の規模や仕様によって異なりますが、おおよそ500万〜2,000万円が目安です。
オフィスビル築30年目以降|本格的な大規模修繕フェーズへ
築30年を超えると、建物全体の機能や安全性を根本から見直す必要が出てきます。外壁や防水に加えて、構造体の補修、配管や電気設備の全面更新、耐震補強、エレベーターのリニューアルなど、多岐にわたる工事が発生します。
工事項目が大規模かつ高額になるため、数年がかりの修繕計画と資金準備が不可欠です。総費用の目安は3,000万円から1億円を超えることもあり、専門家による診断と段階的な実施が重要です。
実録!新東亜工業の施工事例|5階建てビルの外壁塗装・防水工事
「外壁が汚れてきた」「屋上の雨漏りが心配」とお悩みのビルオーナー様に向けて、今回は東京都板橋区の5階建てビルにて実施した外壁塗装および防水工事の実例をご紹介します。初回のお問い合わせから現地調査、見積り提出、ご契約、施工中のやり取り、そして引き渡しまで——。リアルな会話形式で一連の流れを完全公開します。
ご相談内容
隣接する建物の解体工事を機に、外壁塗装と屋上防水工事を検討されたお客様からのご相談でした。新築工事が始まる前に工事を終えたいという明確なご要望があり、早急な対応が求められる案件でした。
お客様:お隣が解体されまして、新築が始まる前に外壁塗装を済ませたいんですが、見積りお願いできますか?
担当者:もちろんです。現地調査の日程として24日の13時はいかがでしょうか?
お客様:問題ないです!母が立ち会いますので、よろしくお願いします。
工事の概要|工事金額と期間

外壁塗装 施工前

外壁塗装 施工後
建物種別 | 5階建てビル |
---|---|
所在地 | 東京都板橋区 |
工事内容 | 外壁塗装・屋上防水工事 |
工法 | 砂骨仕上げ塗装、ウレタン密着工法、シーリング打ち替え 他 |
その他特記事項 | 隣地工事前の短期集中対応 |
工事金額:513万円
工期:40日間
現地調査で判明した劣化症状
現地調査の結果、屋上防水層の破断、外壁のひび割れ、タイルの浮きといった劣化が確認されました。特に雨漏りの懸念がある防水層については、優先的な対応が必要でした。
担当者:屋上の防水層が破れていたのと、外壁のひび割れが結構ありましたねぇ。
お客様:そうなんですねぇ…。やっぱり今のうちにやらないとですね。
施工中のやり取りと配慮
着工後の下地調査で、見積以上の劣化が確認されたため、追加補修をお客様にご相談。ご理解の上、フルスペックでの補修を実施。また、騒音・臭気などへの配慮や迅速な報告体制を徹底しました。
担当者:タイルなどは直さないと落ちてくる可能性があるので、予算はオーバーしますが、やった方がいいかと思います。
お客様:この際なので、追加分もお願いします。
担当者:ありがとうございます。明日から入らせていただきます!
引き渡し時のご感想
防水・塗装ともに完了し、最終検査後の是正も実施。仕上がりの品質にお客様も非常に満足され、保証書なども問題なくお渡しできました。
担当者:工事が完了となりました。本日をもって引き渡しとさせていただきます。
お客様:わかりました。本当に綺麗になって良かったです。ありがとうございました!
本工事では、隣地の新築工事が始まる前というタイトなスケジュールの中、外壁塗装と防水工事を高品質かつ確実に完了しました。現地調査での的確な劣化診断、丁寧な見積説明、細かな仕様打合せ、工事中のこまめな報告と柔軟な対応により、お客様との信頼関係を築くことができました。
オフィスビルの大規模修繕費用を抑えるための実践ポイント
オフィスビルの大規模修繕費用は高額になりやすいため、少しの工夫でコストを大きく抑えることが可能です。オフィスビル修繕費目安を把握したうえで、計画段階から無駄を省き、最適な工事を選ぶことがカギになります。
ここでは修繕費用を抑えるために実践できる具体的な方法を紹介します。
- 長期修繕計画を活用して優先順位を整理
- 繁忙期(春・秋)を避けた発注で単価交渉がしやすくなる
- 建材や設備を統一して仕入れコストを削減
- 施工時期をずらして分割発注でキャッシュフローを分散
- 補助金や税制優遇制度をフル活用(例:省エネ法・長寿命化補助)
詳しく解説していきます。
オフィスビルの大規模修繕費用を抑えるポイント1.長期修繕計画の活用
建物ごとの劣化傾向を把握し、優先順位を明確にした長期修繕計画(LCC計画)をもとに工事を段階的に実施することで、一度にかかる費用負担を抑えることができます。また、計画的に資材調達・人員確保を行うことで施工費も安定します。
オフィスビルの大規模修繕費用を抑えるポイント2.工事時期と発注タイミングの工夫
春(4〜6月)・秋(9〜11月)は工事の繁忙期であり、施工単価が高騰する傾向にあります。逆に閑散期に発注を行えば、コストダウン交渉がしやすくなります。早期発注・複数年契約も検討しましょう。
オフィスビルの大規模修繕費用を抑えるポイント3.建材・設備の仕様統一と一括発注
空調機器や照明器具、防水材などを複数物件で同時に一括発注することで、スケールメリットを活かしたコスト削減が可能です。とくに大手オーナーや管理会社では、物件横断的な見積調整が効果的です。
オフィスビルの大規模修繕費用を抑えるポイント4.工程の分割・予算分散
一度にすべてを施工するのではなく、複数年にわけて工程を分割することで、キャッシュフローへの圧迫を回避できます。初年度は躯体補修と防水、2年目は設備と内装という分け方も有効です。
オフィスビルの大規模修繕費用を抑えるポイント5.助成金・減税制度のフル活用
国や地方自治体が提供する助成金や税制優遇制度(省エネ・耐震・バリアフリー化など)は、申請タイミングと条件を満たせば数十万〜数百万円の補助が受けられます。制度は年ごとに変更されるため、最新情報の収集と専門家への相談を怠らないようにしましょう
オフィスビルの長期修繕計画とは?修繕費がどれくらい必要か事前に把握しよう!
オフィスビルを適切に維持するためには、将来を見据えた長期修繕計画の策定が欠かせません。これは10年〜30年程度のスパンで、いつ・どこに・どのくらいの修繕費がかかるかを事前に見積もる計画です。
修繕が後手に回ると、設備トラブルや資産価値の低下につながる可能性があるため、計画的な管理が重要です。特に築年数が進んだオフィスビルでは、外壁や防水層、設備配管の劣化が同時期に進行しやすいため、優先順位をつけた対応が求められます。
計画に含めるべき主なポイントは以下のとおりです。
- 対象項目の洗い出し(外壁、防水、空調、給排水、電気設備、EVなど)
- 修繕周期の設定(10年・20年・30年などの節目で実施)
- 概算の修繕費用の算出(㎡単価や過去実績に基づく)
- 修繕積立金の計画的な確保(将来的な不足を防ぐ)
オフィスビルの長期修繕計画は一度立てて終わりではなく、ビルの使用状況や法改正に応じて定期的に見直すことが重要です。信頼できる建築士やコンサルタントと連携しながら、無理のない修繕計画を立てておきましょう。
オフィスビル大規模修繕費の目安でよくある質問
大規模修繕は頻繁に行うものではないため、費用感やスケジュール、業者選定などに多くの疑問がつきものです。ここでは、オフィスビルの修繕計画に関してよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
Q1. オフィスビルの大規模修繕費は1㎡あたりどのくらいが目安ですか?
A. 一般的には1㎡あたり1.5万〜2.5万円が目安です。延床面積1,000㎡のビルであれば、総額1,500万〜2,500万円程度となります。工事内容や立地によって上下します。
Q2. オフィスビル大規模修繕費の目安に管理費は含まれますか?
A. 一般的に修繕費には管理費は含まれません。修繕費は別途、積立金や一時金で用意されるケースが多く、費用計画は明確に分けて考えることが重要です。
Q3. 修繕積立金で費用はまかなえますか?
A. 事前に計画的に積み立てていれば可能ですが、想定以上の劣化や追加工事で不足するケースもあります。その場合は修繕ローンや一時金、助成金の活用が有効です。
Q4. 費用をできるだけ抑えるにはどうすればいいですか?
A. 繁忙期を避けた発注、建材の共通化、工程の分割、補助金の申請などで総費用を抑えられます。特に長期修繕計画に基づいた段階的発注が有効です。
Q5. オフィスビルの大規模修繕費に消費税や設計費は含まれていますか?
A. 一般的な修繕費目安には、工事費が中心で、設計費や消費税、諸経費などが別途かかるケースもあります。見積もりを依頼する際は、費用の内訳をしっかり確認しましょう。
オフィスビルの大規模修繕費の目安について|まとめ
オフィスビルの大規模修繕は、単なる修理ではなく「建物の資産価値を維持・向上させるための投資」です。しかし高額な費用がかかるため、事前の備えと定期的な見直しが何よりも重要となります。
築年数や設備の更新周期に応じて適切な修繕計画を立て、必要な時期に必要な範囲だけを的確に実施することが、無駄な出費を防ぎつつ長期的なコスト管理につながります。
また、業者選びや見積もり取得、助成金の活用などを通じて、コストパフォーマンスを高める工夫も求められます。長期修繕計画と実行計画は、数年単位で見直すことが理想です。
専門家と連携しながら、適切な修繕サイクルと費用管理を実現していくことが、建物の安心・安全・快適性を長く維持するための鍵となるでしょう。