
木造住宅の陸屋根防水とは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説
2025/07/24
木造住宅の屋根にはさまざまな種類がありますが、その中でも近年人気を集めているのが「陸屋根(ろくやね)」です。
陸屋根はフラットな形状が特徴で、スタイリッシュな外観や屋上スペースの有効活用が可能になるため、都市部の住宅で多く採用されています。
一方で、平らな屋根は雨水の排水や防水対策が難しく、特に木造住宅との組み合わせでは構造面での課題も多いのが実情です。
本記事では、木造住宅における陸屋根の防水について、その種類や特徴、メリット・デメリット、トラブル例や適切な防水工法まで、わかりやすく解説します。
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目次
木造住宅の陸屋根防水とは?
木造住宅の陸屋根防水は、平坦な屋根面に施す防水処理のことで、雨水の浸入を防ぎ建物を保護する重要な工事です。一般的な勾配のある屋根とは異なり、陸屋根は傾斜がほとんどないため、雨水が滞留しやすく、特に慎重な防水計画が必要となります。
木造建築における陸屋根の特徴とメリット・デメリット
陸屋根はフラットでモダンな外観が魅力ですが、木造建築との組み合わせには構造的な注意点もあります。木材の特性を理解し、適切な防水・断熱・通気対策を講じることで、機能性とデザイン性を両立させることが可能です。
しかし、従来の勾配屋根と比較して、雨漏りリスクが高く、定期的なメンテナンスが必要となります。
陸屋根の構造的特徴
陸屋根は完全に平坦ではなく、排水のため1/100~1/200程度の緩やかな勾配を設けます。基本構造は、構造躯体の上に断熱材・防水層・保護層を重ねた多層構造となっており、排水は集水枡やドレン(排水口)を通じて建物内部の雨水管へ導かれます。
パラペット(立ち上がり部分)の設計も重要で、雨水の浸入を防ぐための笠木や防水処理が施されます。
木造住宅に陸屋根が採用される理由
近年の住宅デザインの多様化や都市部での建築条件の変化により、従来の勾配屋根とは異なる陸屋根の特徴が注目されています。
以下では、木造住宅に陸屋根が採用される主な理由について詳しく解説します。
モダンで洗練されたデザイン性
陸屋根は直線的でシャープなデザインが特徴で、現代的な住宅デザインにマッチします。スタイリッシュな外観は、都市部の狭小住宅でも洗練された印象を与え、建築デザインの自由度を高めます。屋根面がフラットなため、太陽光パネルの設置効率も良好です。
施工が簡単で工期が短い
陸屋根は複雑な勾配屋根と比較して施工が簡単で、工期短縮が可能です。屋根面でのメンテナンス作業時も、足場設置の必要がなく、作業員の安全性が確保されます。また、将来的な増改築時にも対応しやすい構造です。
コストを抑えやすく経済的
初期建設費用では、複雑な勾配屋根より安価に施工できる場合があります。屋根材料の使用量が少なく、施工の単純さからコストダウンが期待できます。ただし、定期的な防水工事が必要なため、ライフサイクルコストでは慎重な検討が必要です。
木造×陸屋根の弱点
木造陸屋根は、木材の特性と平坦な屋根形状が組み合わさることで、いくつかの構造的弱点が生じます。特に湿気に弱い木材を使用する建築物では、防水・通気・断熱の三要素のバランスが重要で、適切な設計と施工が求められます。これらの弱点を理解し、適切な対策を講じることで、長期間にわたって安全で快適な住環境を維持できます。
通気不足
木造陸屋根では、屋根内部の通気層確保が困難です。勾配屋根のような自然な空気の流れが期待できないため、機械的な換気設備の設置が必要となります。通気不足は結露やカビの原因となり、構造材の腐食を招く可能性があります。
雨漏りリスク
陸屋根は雨水の自然排水が困難で、雨水処理が複雑になります。排水ドレンの詰まりや防水層の劣化により、雨水が滞留しやすく、雨漏りのリスクが高まります。特に木造建築では、雨水の浸入が構造材に直接影響するため、より慎重な対策が必要です。
耐久性の低下
木造陸屋根は、木材の経年変化と防水材の劣化が同時に進行するため、全体的な耐久性に課題があります。定期的な点検とメンテナンスを怠ると雨漏りや構造材の腐食が発生し、建物の寿命を縮める可能性があります。
木造陸屋根で発生しやすいトラブルとリスク
木造陸屋根では、その構造的特徴から特有のトラブルが発生しやすくなります。早期発見と適切な対処により、大規模な修繕を避けることが可能です。
以下では、木造陸屋根で発生しやすいトラブルとリスクを紹介します。
雨漏りによる防水層の劣化や勾配不良
陸屋根の雨漏りは、主に勾配不良による水たまり、排水ドレンの詰まりによる排水不全・経年劣化による防水層の破損が原因です。特に木造建築では、雨水の浸入が構造材に直接影響するため、早期の発見と対処が重要となります。
結露・カビ・構造材の腐食
陸屋根は断熱性能が劣りやすく、室内外の温度差により結露が発生しやすくなります。結露はカビの発生原因となり、木造建築の構造材に腐食をもたらします。適切な断熱・防湿対策が不可欠です。
通気不足による熱こもりや耐久性の低下
陸屋根は通気層の確保が困難で、夏場の熱がこもりやすい構造です。過度な熱は防水材の劣化を促進し、室内環境の悪化も招きます。通気不足は構造材の湿気滞留にもつながり、建物全体の耐久性低下の原因となります。
木造陸屋根に適した防水工法
木造陸屋根の耐久性を高めるには、防水工法の選定が重要です。各工法には独自の特徴があり、建物の用途・予算・立地条件・メンテナンス計画などを総合的に判断して最適な工法を選定する必要があります。
ここでは、代表的な防水工法を紹介します。
ウレタン防水
ウレタン防水は液状の防水材を塗布して硬化させる工法で、複雑な形状にも対応可能です。密着工法は下地に直接塗布する方法で、通気緩衝工法は通気層を設けて下地の湿気を逃します。費用相場は6,500~12,000円/㎡、耐用年数は約10~12年です。
FRP防水
FRP(繊維強化プラスチック)防水は、ガラス繊維とポリエステル樹脂による強固な防水層を形成します。軽量で高い耐久性を持ちますが、熱膨張に弱い特徴があります。費用相場は6,500~10,000円/㎡、耐用年数は約10~15年です。
シート防水
シート防水は、塩化ビニルやゴム製のシートを敷設する工法です。既存の防水層の上に施工できるため、改修工事に適しています。ただし、複雑な形状には不向きで、施工条件が限定されます。費用相場は8,000~15,000円/㎡、耐用年数は約10~15年です。
実録!新東亜工業の施工事例|3階建てマンションの屋上防水工事
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ご相談内容
お問い合わせはメールで始まりました。屋上やベランダの防水劣化、排水溝の錆、駐輪場のライン引きについてもご相談がありました。
お客様はメールでのやりとりを希望されており、現地調査と見積が無料であることを案内することで安心感を提供できました。
お客様:屋上やベランダの防水塗装が剥がれているようなので見積をお願いします。
通路の排水溝の金属蓋の交換もお願いしたいです。担当者:現地調査・御見積は無料で行っておりますのでご安心ください。
お客様:12月12日 14時でお願いできますか? ついでに天窓と屋根の調査もお願いします。
工事の概要|工事金額と期間

屋上防水工事 施工前

屋上防水工事 施工後
建物種別 | 3階建てマンション(RC造) |
---|---|
所在地 | 東京都(詳細非公開) |
工事内容 | 屋上・塔屋・庇の防水工事、排水溝蓋交換、駐輪場ライン引き |
工法 | 通気緩衝工法(当初は密着工法予定) |
その他特記事項 | 天窓・廊下清掃・駐輪場区画調整含む |
工事金額:100万円
工期:5日間
現地調査で判明した劣化症状
屋上の防水層は部分的に切れ・膨れが見られ、塔屋屋根はより劣化が進んでいました。
一方でベランダや廊下の防水はまだ機能していると判断され、不要な工事は避ける形でご提案しました。
担当者:塔屋屋根の防水層は屋上よりも状態が悪く、以前の工事からかなり年数が経っていると思われます。
お客様:そうなんですね。やはり雨漏りしてからじゃ遅いので、防水お願いします。
担当者:防水層が生きている場所については、今回は工事しなくても大丈夫です。
施工中のやり取りと配慮
洗浄後の確認で、旧防水層の膨れが多数見つかり、急遽「通気緩衝工法」への変更を提案。
工法変更による追加費用やメリットを丁寧に説明し、納得を得て施工を進行。
室外機や物干し台の取り扱い、駐輪場ライン引きのスケジュールも調整されました。
担当者:古い防水層の膨れがあり、通気緩衝工法への変更をおすすめします。
お客様:金額によりますが、効果があるならお願いしたいです。
担当者:費用追加で対応可能です。支払いは完工時で結構です。
引き渡し時のご感想
駐輪場のライン引きを含めた全工程が完了。お客様には仕上がりをご確認いただき、満足のご感想をいただきました。
今後のトラブル時対応についても案内し、信頼関係を築いてお引き渡しとなりました。
担当者:駐輪場のライン引きも終わり、全ての工事が完了しました。
お客様:ありがとうございます。線がとてもきれいで満足です。
担当者:今後なにかあればいつでもご連絡ください。
本工事では、お客様のご要望を丁寧にヒアリングし、メール主体のやり取りにも柔軟に対応しました。
現地調査により劣化の状態を正確に把握し、必要な工事だけをご提案。
施工中には想定外の劣化が発見されましたが、最適な工法へ変更し、お客様の納得を得て対応。
お引き渡し後もフォロー体制を伝えることで、長期的な信頼関係を築くことができました。
木造陸屋根の防水施工時に重要となるポイント
木造陸屋根の防水工事を成功させるためには、施工時の重要なポイントを押さえることが不可欠です。以下のポイントを適切に実施することで、雨漏りリスクを最小限に抑えることができます。
適切な勾配(1/100~1/200)の確保
陸屋根は完全に平坦ではなく、雨水の適切な排水を確保するため、1/100~1/200の緩やかな勾配が必要です。勾配が不足すると雨水が滞留し、防水層の劣化が促進されます。
特に排水ドレン周辺では1/100の勾配を確保し、水たまりの発生を防ぐことが重要です。木造建築では、構造体の変形も考慮した勾配設計が必要となります。
通気層の設計
木造陸屋根では、構造材からの湿気を適切に排出するため、通気層の設計が重要です。防水層の下に通気緩衝層を設けることで、下地からの水蒸気を逃がし、防水層の膨れや剥がれを防ぎます。
通気口の配置や通気経路の確保により、屋根内部の結露を防止し、構造材の腐食リスクを軽減できます。
下地の平滑性確保
防水材の密着性を確保するため、下地の平滑性は極めて重要です。凹凸や段差があると防水材が適切に密着せず、雨漏りの原因となります。
既存防水層の除去、下地の清掃、不陸調整材による平滑化を行い、プライマー処理により防水材との密着性を向上させます。木造建築では、木材の収縮・膨張に対応できる柔軟性のある下地処理が必要です。
木造陸屋根のメンテナンス頻度と劣化サイン
木造陸屋根の長期的な維持には、定期的な点検とメンテナンスが不可欠です。劣化の兆候を早期に発見し、適切な時期に補修を行うことで、大規模な修繕を避けることができます。
点検の目安
木造陸屋根の点検は、年1回の定期点検を基本とし、台風や豪雨などの悪天候後には臨時点検を実施します。春から夏にかけての点検では、防水層の劣化状況や排水系統の確認を行い、秋から冬にかけては凍害対策の確認が重要です。
メンテナンス時期
防水層を保護するトップコートは、紫外線や風雨により劣化するため、5~7年周期での再施工が推奨されます。防水層本体の全面改修は、工法にもよりますが10~15年が目安となります。
劣化の兆候
劣化の主な兆候として、防水層の膨れやひび割れ・排水ドレンの詰まりによる排水不良・室内天井への水染みなどがあります。これらの症状が確認された場合は、速やかに専門業者による診断を受けることが重要です。
木造陸屋根の防水リフォーム費用と工事期間の目安
防水リフォームの費用は、選択する工法や建物の状態により大きく異なります。適切な予算計画と工法選択により、コストを抑えながら効果的な防水性能を確保できます。
工法別の費用相場一覧表
防水工法 | 費用相場(/㎡) | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|---|
ウレタン防水 | 6,500~12,000円 | 10~12年 | 複雑形状対応、コスト良好 |
FRP防水 | 6,500~10,000円 | 10~15年 | 軽量、高耐久、短工期 |
シート防水 | 8,000~15,000円 | 10~15年 | 改修に適している |
工期目安
工期は施工面積や工法により異なりますが、一般的な住宅規模では1日~7日程度です。ウレタン防水は乾燥時間が必要で3~5日、FRP防水は硬化が早く1~2日、シート防水は天候に左右されにくく2~4日が目安となります。
木造陸屋根の防水工事費用を抑えるコツ
木造陸屋根の防水工事費用を抑えるコツについて紹介していきます。参考にしてみてください。
助成金活用
多くの自治体では、住宅の防水工事に対する助成金制度を設けています。省エネ改修や耐震改修と併せて実施することで、より多くの助成金を受けられる場合があります。
定期的な点検
定期的な点検とメンテナンスにより、大規模な修繕を避けることができます。トップコートの再施工などの軽微な補修を適切な時期に実施することで、長期的なコストを抑制できます。
複数業者からの見積もり比較
複数の防水工事業者から見積もりを取得し、工法・材料・工期・保証内容を比較検討することで、適正価格での施工が可能です。
ただし、極端に安価な業者は施工品質に問題がある場合があるため、価格だけでなく実績や資格の確認も重要です。
木造陸屋根防水のよくある質問(FAQ)
木造陸屋根防水のよくある質問について紹介します。参考にしてみてください。
Q1. 木造住宅に陸屋根を採用するのは問題がありますか?
A. 適切な設計と施工により、木造住宅でも陸屋根の採用は可能です。重要なのは、防水・断熱・通気の三要素をバランスよく計画し、定期的なメンテナンスを実施することです。従来の勾配屋根と比較して雨漏りリスクは高くなりますが、適切な対策により安全性は確保できます。
Q2. 雨漏りした場合は部分補修で済みますか?
A.雨漏りの原因と範囲により判断が必要です。局所的な防水層の破損であれば部分補修で対応可能ですが、広範囲の劣化や構造材への影響が懸念される場合は、全面改修が必要になる場合があります。早期発見により部分補修で済む可能性が高くなります。
Q3. 新築時にどの防水工法を選ぶべき?
A.建物の用途、予算、メンテナンス計画を総合的に考慮して選択します。一般的な住宅では、コストと性能のバランスに優れるウレタン防水が多く選ばれますが、耐久性を重視する場合はFRP防水、改修しやすさを重視する場合はシート防水が適しています。
Q4. メンテナンスは自分でできますか?
A.基本的な点検(目視による劣化確認、排水ドレンの清掃)は自分で行えますが、防水工事は専門技術が必要な作業です。不適切な施工により雨漏りリスクが高まるため、専門業者への依頼を推奨します。定期的な清掃と点検により、専門工事の頻度を減らすことは可能です。
木造陸屋根を長持ちさせるには専門的な防水対策が不可欠|まとめ
木造陸屋根を長持ちさせるためには、適切な防水工法の選択と定期的なメンテナンスが最も重要です。建物の構造と使用条件に適した防水工法を選択し、施工時には勾配の確保、通気層の設計、下地処理を十分に行うことが基本となります。
完成後は年1回の定期点検を基本とし、台風や豪雨後には臨時点検を実施することで、劣化の兆候を早期発見できます。防水層の膨れやひび割れ・排水不良・室内への水染みなどの症状が確認された場合は、速やかに専門業者による診断を受けることが重要です。
防水層を保護するトップコートは5~7年周期での再施工が推奨され、防水層本体の全面改修は10~15年が目安となります。排水ドレンの清掃や通気口の確認など、日常的に行える簡単な点検も効果的で、これらの継続的な維持管理により防水性能を長期間保持できます。
適切な計画と実行により、木造陸屋根は機能性とデザイン性を兼ね備えた魅力的な住宅を実現する優れた選択肢となります。