マンションのエレベーター交換費用はいくら?工事の流れや補助金情報を解説

2025/10/08

分譲マンションのエレベーターは、住民の生活を支える重要な設備です。しかし、設置から20年以上が経過すると老朽化が進み、故障や部品の供給停止などの問題が発生します。安全性や快適性を維持するためには、定期的なメンテナンスに加え、適切なタイミングでの「エレベーター交換(リニューアル)」が必要です。

この記事では、マンションのエレベーターが必要となる理由、工事方式の種類、費用の目安、そして信頼できる業者選びのポイントまでを詳しく解説します。理事会や管理組合で検討中の方が、安心して判断できるよう、最新情報と実務的な視点からわかりやすくお伝えします。

目次

マンションのエレベーター交換とは?コスト削減にもつながるってほんと?

エレベーターは長年使用すると、部品の摩耗や制御システムの老朽化により、故障リスクが高まります。

ここでは、分譲マンションにおける「エレベーター交換」の必要性や、交換時期の目安、安全基準の変化などを詳しく解説します。交換を検討する前に知っておくべき基本を押さえましょう。

エレベーターの寿命と交換時期の目安

一般的に、マンションのエレベーターの寿命は 20〜25年 が目安とされています。これは機械部品の耐久年数や制御装置の電子部品の劣化が進む時期にあたります。特に1990年代以前に設置された機器は、メーカーの部品供給が終了しているケースも多く、「交換を検討する時期」に入っているといえるでしょう。

定期保守を行っていても、経年劣化によるトラブルは避けられません。交換を先延ばしにすると、突発的な故障や運行停止が発生し、住民の生活に支障をきたす可能性があります。そのため、早めに交換計画を立て、費用や期間を把握しておくことが重要です。

交換が必要となる主なサイン

エレベーターの動作に次のような変化が見られたら、「交換時期」が近づいているサインです。

  • ドアの開閉速度が遅くなった
  • 振動や騒音が増えた
  • 停止位置がずれる(段差が生じる)
  • 頻繁な故障や部品交換が必要

これらは制御装置やモーターの劣化が進んでいる証拠です。管理会社やメンテナンス業者から「主要機器の更新を推奨」と報告された場合は、単なる修理ではなく、交換リニューアルを検討するべき段階にあります。

安全基準・法改正による更新義務

国土交通省の定める「昇降機安全規則」や各自治体の条例では、エレベーターの構造・制御に関する安全基準が定期的に見直されています。古い制御方式(リレー制御など)は、現在の安全基準を満たしていない場合があります。

特に、地震対策や閉じ込め防止機能の強化、省エネ性能の改善が求められており、これらの機能を追加するには「制御盤のリニューアル」や「かご交換」が必要です。法改正に対応できない古い設備を放置すると、保守対応が難しくなり、結果的にマンション全体の安全性を損なう恐れがあります。

参考元:国土交通省「昇降機(エレベーター、エスカレーター等)について

老朽化を放置するリスクと費用増加の関係

老朽化したエレベーターを使い続けると、故障リスクが急増し、結果的に修理費用が膨らみます。制御盤や巻上機など主要部品の交換費用は高額で、複数回にわたる修理を行えば、最終的に交換費用を超えるケースもあります。

また、古いエレベーターは電力効率が悪く、運行コストも上昇します。最新モデルでは 消費電力を30〜40%削減 できるものもあり、交換後のランニングコスト削減効果は無視できません。長期的な費用対効果を考えれば、早期交換はむしろ経済的な選択といえます。

分譲マンションのエレベーターの交換工事とは?

エレベーター交換と一口に言っても、その工法にはいくつかの種類があります。分譲マンションの場合、建物構造や運用状況に応じて最適なリニューアル方式を選ぶことが重要です。

ここでは代表的な3つの工法「全撤去新設」「準撤去新設」「制御リニューアル」について詳しく解説します。

エレベーター交換工事の方式比較表

工法名特徴・内容適用条件工期目安メリット注意点
全撤去新設リニューアル既存機器をすべて新設に入れ替える方式。安全性・省エネ性を最大化。築30年以上、老朽化が著しい場合約2〜3カ月高性能・高耐震・資産価値向上費用・停止期間が大きい
準撤去新設リニューアル一部構造を残して主要機器を更新。コストと性能のバランス型。築20〜30年、構造制約のある物件約1〜2カ月費用を抑え性能改善、工期短め構造制約で機種が限られる
制御リニューアル制御盤・駆動装置など電子部品中心の改修。外観はそのまま。築15〜25年のマンション約2〜4週間費用・工期が少なく、省エネ改善外観改善は限定的、再交換前提

それぞれの特徴やマンションの状況を踏まえたうえで、適切な方法を選ぶことがより安全で快適な住環境の整備につながるでしょう。

マンションエレベーター交換の費用相場と内訳

エレベーター交換の費用は、工法や建物の規模、設置台数によって大きく異なります。

ここでは、マンションのエレベーター交換にかかる平均的な費用相場や、費用を構成する内訳、コストを抑えるためのポイントを詳しく解説します。予算計画を立てる際の参考にしてください。

部分改修と全面交換の費用比較

エレベーター交換の費用は、改修内容によって大きく変わります。

工法・改修内容費用相場(目安)特徴
制御盤などの部分改修約300万〜600万円電子制御機器など一部を更新。短期間・低コストで実施可能。
準撤去新設リニューアル約700万〜1,200万円主要機器を更新し、一部構造を残すバランス型リニューアル。
全面交換(全撤去新設)約1,000万〜2,000万円既存設備をすべて撤去し最新機器を導入。安全性・快適性が最も高い。

費用はメーカーや工法だけでなく、建物の階数・台数・仕様(デザイン・バリアフリー対応など)によっても異なります。複数の業者から見積もりを取得し、仕様の違いを確認することが重要です。

戸数・階数別の費用目安

分譲マンションのエレベーター交換費用は、戸数や階数によっても変動します。一般的な目安として、以下のような傾向があります。

  • 5階建以下・1基のみ:700万〜1,000万円
  • 10階建前後・1〜2基:1,000万〜1,500万円
  • 15階以上・複数基:1,500万〜2,500万円以上

複数基の交換を同時に行う場合は、資材搬入や仮設費をまとめられるため、1基あたりの単価が下がる傾向があります。逆に、1基のみ交換する場合は工事効率が悪く、単価が高くなることもあります。

工事費以外にかかる費用(設計・監理・仮設など)

エレベーター交換には、工事費以外にもさまざまな付帯費用が発生します。主な内訳は次の通りです。

  • 設計・監理費:全体費用の約5〜10%
  • 仮設・養生費:足場設置や養生材などの一時工事費
  • 試運転・検査費:完成後の安全確認・調整費用
  • 住民対応費:掲示・説明会・代替リフトの設置など

これらを含めると、総費用は見積金額の 1.1〜1.3倍程度 になるケースもあります。予算を立てる際は、付帯経費も含めて検討することが大切です。

費用を抑えるポイント(補助金・同時施工・仕様最適化)

マンションのエレベーター交換では、コスト削減の工夫も可能です。たとえば、大規模修繕工事と同時に実施 することで足場・仮設費を共有でき、全体コストを抑えられます。また、省エネ改修やバリアフリー改修を組み合わせることで、国や自治体の 補助金制度 を活用できる場合もあります。

さらに、メーカー標準仕様を採用したり、デザインやオプションを最小限にすることでコストを削減できます。重要なのは「価格だけでなく、長期的な維持費も含めた総合コスト」で判断することです。

エレベーター交換に活用できる補助金・助成制度【2025年】

分譲マンションのエレベーター交換では、国や自治体の補助金・助成金制度を活用できる場合があります。

ここでは、省エネ・耐震・バリアフリーなどの改修に適用される代表的な支援制度と、申請の流れを紹介します。費用負担を軽減するために、事前にチェックしておきましょう。

国や都道府県の支援制度(省エネ・耐震・バリアフリー)

国では、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や「住宅省エネ2025キャンペーン」など、耐震補強や省エネ改修を対象とした補助金制度があります。

また、東京都の「建築物省エネ改修促進事業」では、外壁・屋上防水改修とあわせてエレベーターの省エネ化を行う場合に補助金が支給されることもあります。

参考元:国土交通省「令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業
参考元:国土交通省 経済産業省 環境省「住宅省エネ2025キャンペーン
参考元:東京都 都市整備局「東京都既存非住宅省エネ改修促進事業補助金

申請手続きの流れと注意点

補助金の申請は、工事前に手続きを行う必要があります。申請には見積書・工事計画書・設計図面・管理組合議事録などが求められます。交付決定前に着工すると補助対象外となるため、スケジュール管理を徹底しましょう。

また、補助金は実績報告後に支給されるため、一時的な立替資金を確保しておくことも重要です。専門業者やコンサルタントに申請サポートを依頼するとスムーズに進みます。

マンションのエレベーター交換工事はどう進む?

エレベーター交換工事は、調査・設計から施工、検査までいくつかのステップを経て進行します。

ここでは、マンションのエレベーター交換における一般的な流れと期間の目安を紹介し、理事会や住民が押さえておくべきポイントを整理します。

ステップ1.現状調査・診断から見積取得(約2〜3週間)

最初のステップは、現状の設備状態を把握するための調査です。専門業者が制御盤・巻上機・扉などを確認し、耐用年数や不具合状況を報告します。

その結果をもとに、リニューアルの必要性や推奨工法を提案してもらいましょう。見積もり取得の段階では、複数業者に同一条件で依頼することが大切です。

ステップ2.仕様検討・理事会承認(約1〜2カ月)

見積書が出揃ったら、理事会や管理組合で内容を精査します。単に金額の安さではなく、仕様・保証内容・工期・保守条件などを総合的に比較することが重要です。

理事会で承認を得た後、住民説明会を開催し、工事の目的やスケジュールを丁寧に共有します。

ステップ3.工事開始前の準備と工事中の対応(約1〜3カ月)

工事期間中は、エレベーターの停止が避けられません。特に全撤去方式では2〜3カ月、準撤去方式でも1〜2カ月程度の停止期間が発生します。

そのため、高齢者や身体の不自由な方へのサポート体制を整えることが必要です。仮設リフトや昇降補助サービスを導入することで、住民の不便を最小限に抑えられます。

ステップ4.試運転・検査・引き渡し(約1〜2週間)

工事完了後は、試運転や法定検査を実施し、安全性・性能を確認します。メーカー担当者や管理会社の立ち会いのもとで最終確認を行い、問題がなければ正式に引き渡しとなります。

引き渡し後は、定期保守契約に切り替えて長期的な安定稼働を維持しましょう。

全体を通して、エレベーター交換工事は 計画開始から完了まで約4〜6カ月 を見込むのが一般的です。理事会では、住民への周知とスケジュール調整を早めに進めることが、スムーズな工事成功の鍵となります。

エレベーター交換における業者選びのポイント

エレベーター交換工事を成功させるためには、信頼できる業者の選定が欠かせません。分譲マンションのように多くの住民が関わる工事では、技術力だけでなく、説明力やサポート体制も重要です。

ここでは、マンションのエレベーター交換で失敗しないための業者選びのポイントを具体的に解説します。

メーカー系と独立系の違いを把握しておく

エレベーター業者は、大きく「メーカー系」と「独立系」に分かれます。

業者タイプ主な特徴メリットデメリット
メーカー系自社製品を中心に取り扱う品質・信頼性が高く、アフターサービスや保証体制が充実費用が高めで他メーカーへの切り替えが難しい
独立系複数メーカーの製品を扱うコストを抑えた柔軟な提案が可能。複数の機種比較ができるメーカー純正部品が使えない場合があり、保証対応に時間がかかることもある

分譲マンションでは、既設のメーカーや制御方式との相性も考慮する必要があります。特定メーカーに依存しない中立的な比較を行うことで、最適な選択ができるでしょう。

見積比較時は仕様・条件を確認する

見積もりを比較する際は、単純な金額比較ではなく、以下の点を必ず確認しましょう。

  • 仕様の同等性(機能・安全基準・素材)
  • 保証内容と期間(部品保証・施工保証)
  • 工期と夜間・休日対応の有無
  • アフターサポートや緊急対応体制

仕様が異なると価格差が出るため、同一条件での比較が欠かせません。特に「保証範囲」が狭い見積もりは、後の追加費用につながる可能性があります。

アフターサービス・保証期間を確認する

交換工事後のトラブルを防ぐには、アフターサービス体制を確認することが重要です。保証期間は通常1〜2年が一般的ですが、主要メーカーでは最長5年保証を設けている場合もあります。

消耗部品や制御盤の保証対象を明確にし、故障時の対応時間(24時間対応など)も契約前に確認しておきましょう。

分譲マンション・エレベーター定期保守の種類

エレベーターの安全運行を維持するためには、日常的な点検と定期保守契約が欠かせません。

ここでは、分譲マンションで一般的に採用されている「フルメンテナンス契約」と「POG契約(パーツ・オイル・グリース契約)」の違いを比較し、それぞれの特徴をわかりやすく説明します。

フルメンテナンス契約(FM契約)の特徴と内容

フルメンテナンス契約は、定期点検・消耗品交換・故障修理までをすべて業者が包括的に行う契約形態です。突発的な故障時の修理費も契約内に含まれるため、年間費用は高めですが、突発支出を防げるのが最大の利点です。

費用は1基あたり年間 30万〜50万円前後 が目安で、メーカー系業者に多く採用されています。安心して長期運用したい分譲マンションに向いており、特に築年数が経過した物件では、安定稼働を維持する上で効果的な契約方式です。

POG契約(パーツ・オイル・グリース契約)の特徴と違い

POG契約は、定期点検や潤滑油・消耗品の交換のみを含み、故障修理は別途見積となる契約です。年間コストは 15万〜30万円程度 と安価で済むものの、突発的な故障時に高額な修理費が発生する可能性があります。

小規模マンションや、新しいエレベーターを設置して間もない物件ではPOG契約が採用されることが多いですが、築年数が経過し故障リスクが高まる時期には、フルメンテナンス契約への切り替えを検討するのが安心です。

マンションのエレベーター交換に関するよくある質問(FAQ)

マンションのエレベーター交換には、さまざまな不安や疑問がつきものです。

ここでは、多くも方から寄せられるよくある質問を紹介しますので、ぜひご覧ください。

Q1. エレベーター交換は何年ごとに必要ですか?

A.一般的な交換目安は20〜25年です。保守契約で管理していても、制御盤やモーターなどの電子部品が経年劣化するため、部品供給の終了時期を目安に交換を検討しましょう。

Q2. 交換費用は修繕積立金から支払えますか?

A.はい、エレベーターは共用設備に該当するため、修繕積立金を充てることが可能です。ただし、積立残高が不足している場合は、一時金徴収や長期修繕計画の見直しが必要になることもあります。

Q3. 工事中はエレベーターが使えなくなりますか?

A.全面交換や準撤去方式では、工事期間中(約1〜3カ月)はエレベーターが停止します。高齢者や身体の不自由な方へのサポートを事前に検討しておきましょう。

Q4. 補助金の申請は誰が行うのですか?

A.通常は管理組合または代理の施工業者・コンサルタントが行います。申請には理事会の承認が必要で、申請後に交付決定が下りてから工事を開始します。

Q5. メーカー系と独立系、どちらに依頼すべき?

A.メーカー系は品質とサポート重視、独立系はコスト重視といった違いがあります。価格だけでなく、保証内容や将来的なメンテナンス体制も考慮して選定することが大切です。

Q6. 住民への説明はどのタイミングで行うべき?

A.理事会承認後、工事契約前に住民説明会を開催するのが理想です。工期・費用・安全対策などを明示し、理解と協力を得ることでトラブルを防げます。

マンションのエレベーター費用を把握して計画的な実施を|まとめ

分譲マンションのエレベーター交換は、住民の安全と快適性を守るための重要な投資です。老朽化を放置すると故障や事故のリスクが高まり、修理費用も増加します。早めに現状調査を行い、長期修繕計画の中で交換時期を見極めることが大切です。

また、補助金制度や信頼できる業者を活用すれば、コストを抑えつつ高品質なリニューアルが可能です。管理組合・理事会は、住民の理解と協力を得ながら、安全で持続的な設備管理を目指しましょう。