防水工事で使用される工法としては、ウレタン防水・シート防水などが有名です。
それぞれ違った特徴を持っており、最適な施工箇所が異なります。
ではウレタン防水・シート防水には、どのような違いがあるのでしょうか?
今回はウレタン防水・シート防水の特徴や費用、最適な施工箇所などについて解説していきます。
業者選びで失敗しないための注意点なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ウレタン防水のシート防水の違いとは?
防水工事の方法としては、ウレタン防水・シート防水などが主流です。
ウレタン防水 | シート防水 | |
---|---|---|
防水層の作り方 | 液状のウレタン樹脂を塗って防水層を形成 | 既存の防水層の上に防水シートを貼り付ける |
資材 | 液状のウレタン樹脂 | 塩ビシート ゴムシート |
工法 | 密着工法 密着メッシュ工法 通気緩衝工法 | 密着工法 機械固定工法 |
耐用年数 | 約10〜12年 | 約10〜15年 |
ここではウレタン防水・シート防水の特徴・種類について比較しながら詳しく解説していきます。
ウレタン防水とは?
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を塗ることによって防水層を作る防水工事です。
ウレタンは耐摩耗性が高く、弾力性のある素材のため、車のタイヤ・接着剤・スポンジなどにも使用されています。
ウレタン塗膜防水と呼ばれることもあり、一昔前は耐久性が弱いと言われていました。
しかしウレタン樹脂の研究が進むにつれて耐久性が上り、現在では高い防水性能が求められる屋外でも使用されています。
ウレタンの耐用年数は10〜12年で、近年では5〜6年おきにコーティングを塗り替える必要がなくなりました。
特に目立った短所もなく、現在の防水工事では主流とされている工法です。
ウレタン防水工法の種類
ウレタン防水は、劣化の状態に応じて以下の3つの工法が使い分けられます。
- 密着工法
- 密着メッシュ工法
- 通気緩衝工法
密着工法はウレタン樹脂を下地に直接塗る工法で、劣化が少ない箇所・新築時などに使用されます。
下地を乾燥させるのに時間がかかるので、ベランダなど限定的な範囲で使用するのが一般的です。
密着メッシュ工法はウレタン樹脂とメッシュの補強布を使用する工法で、状態が安定した下地へ施工されることが多いです。屋上・屋根のメンテナンスにも利用されています。
通気緩衝工法は、下地にウレタン樹脂を密着させない防水工事です。既に雨漏りを起こすほど劣化が進んでいる箇所にも施工できます。
マンションの屋上・劣化が進んでいる古い戸建住宅などで使用されることが多いです。
シート防水とは?
シート防水とは、ゴムシートや塩化ビニル(塩ビ)を既存の防水層の上に貼り付ける防水工事です。
屋上や陸屋根などで採用されることが多く、広範囲の防水対策をする場合にはコストパフォーマンスが良いことで知られています。
ベランダなどの狭い場所でも施工可能ですが、室外機がある場合は塗膜防水を行うことが多いです。
シート防水の耐用年数は10〜15年とウレタン防水よりも長く、メンテナンスの手間がかからないというメリットがあります。
しかし施工難易度が高く、専門業者がそこまで多くないのがデメリットです。
シート防水に使う防水シートの種類
シート防水に使われる防水シートには以下のような種類があります。
- 塩ビシート防水
- ゴムシート防水
塩ビシート防水とは、塩化ビニル樹脂製のシートを機械や接着剤で貼り付けて防水する工法です。
ゴムシート防水よりも耐久性が高く、燃えにくい性質を持っています。
下地に直接貼り付ける「密着工法」やディスク板などを使って固定する「機械固定工法」などが一般的です。
一方でゴムシート防水は、ゴム製のシートを貼り付けて防水する工法です。
ゴムシートは安価で軽量という特徴を持っています。また伸縮性に優れているので、地震の影響を受けにくいとされています。
ゴムシート防水は、ゴムシートを接着テープで貼り付ける「接着工法」が用いられることが多く、工期が短いのも特徴です。
ウレタン防水とシート防水のメリット・デメリット
これまでウレタン防水とシート防水の特徴について解説してきました。
ここではウレタン防水・シート防水のメリット・デメリットをそれぞれ解説していきます。
ウレタン防水のメリット・デメリット
最初にウレタン防水のメリット・デメリットを解説していきます。
ウレタン防水 | シート防水 | |
---|---|---|
メリット | ・温度変化・ひび割れに強い ・継ぎ目がない ・建物に負担をかけにくい ・柔軟な施工が可能 ・処分費用がかからない ・コストパフォーマンスが高い | ・どんな下地の上からでも施工可能 ・品質の差が生じにくい ・表面がなめらかに仕上がる ・工期が短い |
デメリット | ・施工難易度が高い ・紫外線に弱い ・乾燥するまでに時間がかかる ・衝撃に弱い ・トップコートの再塗装が必要 | ・複雑な形状の箇所には施工できない ・振動・騒音が発生しやすい ・施工できる業者が限られている |
ウレタン防水のメリット
ウレタン防水には以下のようなメリットがあります。
- 温度変化・ひび割れに強い
- 継ぎ目がない
- 建物に負担をかけにくい
- 柔軟な施工が可能
- 処分費用がかからない
- コストパフォーマンスが高い
ウレタン防水に使用されるウレタンは伸縮性が高く、温度変化に強いという特徴を持っています。
そのためひび割れにくく、複雑な形状の箇所でも施工しやすいです。
またシートなどを撤去する必要がなく、そもそもウレタンも安価で手に入るのでコストパフォーマンスが良いというメリットもあります。
ウレタン防水のデメリット
ウレタン防水のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 施工難易度が高い
- 紫外線に弱い
- 乾燥するまでに時間がかかる
- 衝撃に弱い
- トップコートの再塗装が必要
ウレタン防水の仕上がりは職人の持っている技術によって左右するため、施工難易度が高いです。
そのためウレタン防水を検討している場合は、施工実績などを参考にしっかり業者を精査する必要があります。
またウレタン防水では塗料が乾くまでに4〜5日ほどかかります。
施行中に雨が降ってしまうと、雨水の影響で表面が凸凹してしまう可能性がある点もデメリットだと言えるでしょう。
シート防水のメリット・デメリット
続いてシート防水のメリット・デメリットを解説していきます。
シート防水のメリット
シート防水には以下のようなメリットがあります。
- どんな下地の上からでも施工可能
- 品質の差が生じにくい
- 表面がなめらかに仕上がる
- 工期が短い
シート防水は、防水シートをそのまま上に被せるので、どんな下地の上からでも施工が可能というメリットがあります。
前回防水工事がシート防水以外を施工した箇所でも、問題なくシート防水を行うことが可能です。
またシート防水は、既製品のシートを貼るというシンプルな防水工事なので、品質の差が生じにくいです。
工期も短いので、速さを求める人はシート防水を検討すると良いでしょう。
シート防水のデメリット
シート防水のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 複雑な形状の箇所には施工できない
- 振動・騒音が発生しやすい
- 施工できる業者が限られている
シート防水は既製品のシートを使用するため、細かく大きさを変えることができません。
そのため室外機などが数多く設置されている屋上や、凹凸が激しい箇所には施工できないというデメリットがあります。
またシート防水にはドリルなどの機械を使用するため、振動・騒音が発生しやすいです。
シート防水を行う際には、近隣住民や入居者に知らせておく必要があるでしょう。
ウレタン防水・シート防水の費用の違い
ウレタン防水・シート防水の費用相場は以下の通りです。
- ウレタン防水:6,000〜8,000円(1㎡あたり)
- シート防水:6,000〜8,000円(1㎡あたり)
上記の通りウレタン防水とシート防水の施工費用はさほど変わりません。
一般的なベランダ(20㎡)であれば、足場代込みで約26万円程度で防水工事が可能です。
防水層の劣化状態によって費用が変動する可能性があるので、事前に施工業者と念入りに打ち合わせをしましょう。
ウレタン防水・シート防水はどんな箇所におすすめ?
ウレタン防水・シート防水にはそれぞれ異なった特徴があり、適した場所に施工する必要があります。
ここではウレタン防水・シート防水がおすすめな箇所をそれぞれ紹介していきます。
ウレタン防水がおすすめな箇所
ウレタン防水の施工がおすすめな箇所としては、以下のような所が挙げられます。
- マンション・ビルの屋上
- 陸屋根
- ベランダ・バルコニー
- 共用廊下
ウレタン防水で使用するウレタンには柔軟性が高く、様々な箇所への施工に使用しやすいという特徴があります。
そのため幅広い箇所への防水工事に適していると言えるでしょう。
シート防水がおすすめの箇所
シート防水の施工がおすすめの箇所としては、以下のような所が挙げられます。
- 防水工事が施された屋上
- 凹凸の少ない場所
シート防水は既製品のシートを使用するため、複雑な形状の箇所には施工できません。
しかし条件が揃えば、ウレタン防水よりも短期間で安く防水工事を行えることが多いです。
ウレタン防水・シート防水を依頼する際の注意点
ウレタン防水・シート防水を行う際は、業者に依頼するという人が圧倒的に多いでしょう。
しかし依頼する業者をしっかり精査しないと、大金を払って後悔することにもなりかねません。
ここではウレタン防水・シート防水を依頼する際の注意点について解説していきます。注意点としては以下の通りです。
- 基本的には専門業者に依頼する
- 複数社の見積もりをとる
- アフターフォロー・保証・実績などに注目する
注意点①:基本的には専門業者に依頼する
ウレタン防水・シート防水を依頼する際の注意点、1つ目は基本的には専門業者に依頼するという点です。
防水工事にはどのような工法を導入しても、高額な費用がかかってしまいます。
そのためDIYで防水工事をしようと考える人も多いでしょう。
防水工事には専門知識・技術が必要です。素人が焼き付け刃の知識で工事しても、十分な仕上がりにはなりません。
また防水工事には高所での作業が伴う場合も多く、危険が伴います。
DIYで防水工事を行うのではなく、専門業者に依頼するようにしましょう。
注意点②:複数社の見積もりをとる
ウレタン防水・シート防水を依頼する際の注意点、2つ目は複数社の見積もりをとることです。
防水工事を専門業者に依頼する際は施工前に見積もりを取るのですが、1社しか見積もりを取らないとその業者が良い業者なのかわかりません。
施工費用は業者によって異なりますので、複数社の見積もりをとって費用やサービスなどを比較しましょう。
最低でも3社以上相見積もりを取るのがおすすめです。
注意点③:アフターフォロー・保証・実績などに注目する
ウレタン防水・シート防水を依頼する際の注意点、3つ目はアフターフォロー・保証・実績などに注目することです。
防水工事を行っている業者は、独自のアフターサービスや保険を提供していることが多いです。
特に保険に加入していると、施工後に不具合が見つかった・業者が倒産してしまい補修できなかった場合などに保険金が支払われます。
またウレタン防水・シート防水施工には、高い技術が求められます。
ウレタン防水・シート防水の施工実績が豊富な業者を選んだ方が、失敗しにくいでしょう。
まとめ
今回はウレタン防水・シート防水の特徴や費用、最適な施工箇所などについて解説してきました。
本記事のまとめ
- ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を塗ることによって防水層を作る防水工事
- シート防水とは、ゴムシートや塩化ビニル(塩ビ)を既存の防水層の上に貼り付ける防水工事
- ウレタン防水はマンション・ビルの屋上などへの施工におすすめ
- シート防水はスピーディに工事を終わらせることができる
- 防水工事は業者に頼むのがおすすめ
ウレタン防水で使用されるウレタンは伸縮性が高く、様々な箇所に施工できるというメリットがあります。
シート防水はシートを貼り付けるだけで防水できるので、品質の差が生まれにくく、短期間で防水工事を終えられるのが特徴です。
ウレタン防水・シート防水それぞれの特徴をしっかり理解し、自分にとって最適な防水工事方法を選んでみてください。