7 min

基礎コンクリートの防水・補修工事を解説

基礎コンクリートの防水工事を知りたい人

基礎コンクリートの防水工事を知りたい人

コンクリート基礎に防水工事は必要?
住宅基礎の防水工事とは?
基礎の防水工事にかかる費用はいくら?
基礎の防水処理の方法は?
基礎には塗膜防水は施工できる?

建物・住宅を長持ちさせたいと、建物の維持管理を大切に考えている方は外壁・屋上防水についての十分な知識を持ち、すでに対策をお考えではないでしょうか。

しかし、建物・住宅の基礎部分である基礎コンクリート部分についての防水・補修についてはいかがでしょうか?

建物・住宅の重要な構造部分である基礎コンクリートに防水・補修工事を施すことは、建物の安定性と耐久性をを確保し、住環境を向上させる手段のひとつです。

この記事では、建物・住宅の基礎コンクリートの防水・補修工事について、その方法や種類、またはメリット、デメリットを解説します。

建造物の基礎について、そのメンテナンス方法などの知識を身に着け、所有される大切な財産である建物の耐久性・安全性を守りましょう。

基礎コンクリートの劣化症状

建物・住宅の基礎が劣化する主な原因は水分の浸透が大きいようです。

では、建物・住宅の基礎コンクリートの劣化症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

まずは経年によって基礎コンクリートに出てくる症状を確認していきましょう。

ひび割れ

建物・住宅の基礎コンクリートの劣化のひとつに、ひび割れがあります。

経年が浅いうちは細かなひび割れですが、経年が進むにつれてひび割れの幅が広くなり、水分が入り込みやすくなります。

爆裂現象

建物・住宅の基礎コンクリート部分のひび割れが深くなると、水分・空気が内部に入り込むことで鉄筋部分が錆びて膨張します。

錆びて膨張した鉄骨はコンクリートを内部から圧迫し、基礎の外部に露出させてしまう「爆裂現象」を起こします。

鉄筋が露出していなくても、多くのひび割れがみられる場合、内部で爆裂が進んでいるかもしれません。

モルタルの浮き

基礎部分が劣化すると、モルタル面の浮きが発生します。その原因は紫外線や雨、経年によるもので、モルタル自体と表面塗装のとの間の接着力が弱まることで浮きが発生します。

また、基礎コンクリート内部の爆裂やひび割れが結合して表面であるモルタル面を浮き上がらせる場合もあります。

基礎コンクリートの補修工事

コンクリート基礎は、住宅や建物を支える大切な部分です。

そんな大切なコンクリート基礎部分の補修工事はどのようなものなのでしょうか。

それぞれの工法について詳しくみていきましょう。

アラミド繊維シートの貼付

アラミド繊維シートを用いたコンクリート基礎部分の補修工事は「ハイブリッド工法」と呼ばれ、強化繊維であるアラミド(炭素・カーボン)繊維シートと、接着剤兼強化剤であるエポキシ樹脂で基礎コンクリートを強固に補修します。

アラミド繊維シートとは、引張強度が鋼材の約7倍ある繊維で、建物の基礎部分の耐久性・耐震性の強化に役立ちます

アラミド繊維シートの貼り付けには、その量と、施工精度が重要になります。

業者によっては安い単価で気を引き付け、使うアラミド繊維シートの巾が必要分量よりも少ない、という事例もあるようです。

Uカットシール工法

Uカットシール工法とは、基礎コンクリートのひび割れ部に対し、専用の電動工具(ディスクグラインダー)と溝入れカッターを使ってUカットを施し、材料を充填しやすい形状に準備したあと、エポキシ樹脂やシール材を充填し、モルタルで表面を仕上げる工法です

細かいひび割れ、幅が広いひび割れの両者に対応し、材料がひび割れの奥の方まで届くようにする施工方法です。

カットの仕方次第では、Vカット工法とも呼ばれることもあります。

巾広なひび割れが目立つ基礎コンクリートにUカットシール工法を考えてみるのも基礎コンクリートを強固に補修する手段のひとつです。

ビックス工法

ビックス工法はコンクリート構造物のひび割れ補修工法の一つで、基礎コンクリートにも用いられる工法の一つで、ゴムチューブを使用した特殊注入器具によって低圧で時間を掛け、ひび割れの奥深くまで接着剤を注入する工法です。

手順としては、ひび割れ部分の表面に専用パイプを設置して、そこからゴム製の注入器でエポキシ樹脂を一定量注入していきます

微細なひび割れを少しずつ補修していけば、コンクリート基礎の性能を回復できるでしょう。

基礎コンクリート部に、細かなひび割れが多くみられる場合は、ビックス工法を考えてみてはいかがでしょうか。

基礎増し打ち補修

基礎増し打ち工法とは、建物の補修・改修工事に用いられる工法で、現状の基礎の隣に新しく基礎をつくるようなもので、現状の基礎と一体化させるために鉄筋の配筋接合をおこないコンクリートを打ちます。

基礎の増し打ちは、適切な箇所に施工する必要があり、しっかりとした耐震診断と構造計算が必須です。

施工業者の意見を複数取り入れ、工事計画を練りましょう。

基礎コンクリートの補修工事の費用相場

これまで紹介した4つの基礎コンクリートの補修工事の特徴と費用相場を表にまとめました。

施工方法費用相場
アラミド繊維シートの貼付アラミド繊維シートをエポキシ樹脂によって貼り付け、強度を上げる15,000~25,000円/㎡
Uカットシール工法ひび割れ箇所を電動工具でUカットしてシール材を注入し、表面はモルタルで形成10,000~20,000円/箇所
ビックス工法ゴムチューブによって低圧でひび割れの細かな部分に材料を注入する10,000~20,000円/箇所
基礎増し打ち補修既存の基礎に新しい基礎を作り一体化させる60,000~80,000円/㎡
※費用相場は材料代と作業費込

基礎コンクリート補修工事に掛かる費用は大・小のひび割れの補修を施す工法と、基礎を部分的に補強する工法に分かれます。

工法は劣化状況によって判断しなければならず、工法によって費用も大きく差が付きます。

基礎コンクリートの補修工事を考えるにあたり、掛けれる費用と工法の見極めを行うことで住宅・建物にとって最適な補修工事が行えます。

是非、工務店など、複数のプロに意見を聞くことや、見積りを取ることをおすすめします。

基礎コンクリートに防水工事が必要な理由

基礎コンクリートの劣化は、ひび割れや内部で鉄筋が錆びて膨張することから発生するコンクリートの爆裂・そしてこれら2つの症状からつながる、モルタルの浮きが主な要因です。

また、ひび割れ・爆裂を作る要因は水分が基礎コンクリート内部に染み込んでいき、鉄筋を錆びさせ、コンクリートを膨張・収縮を繰り返しさせることにあります。

住宅・建物の基礎コンクリートには建物の重さを支え、地震の揺れを吸収する重要な役割があり、ひび割れなどを放置すると、最悪の場合、震災の際に倒壊する恐れがあります。

水分が入り込んでいかないように、基礎コンクリートに防水工事が必要なことは言うまでもありませんね。

基礎コンクリートへの防水対策はその役割を強固なものに変えるでしょう。

基礎コンクリートの防水工事|基礎塗装

住宅の基礎コンクリートへの防水は、「基礎塗装」がおすすめです。

なぜなら、基礎コンクリートを塗装することで吸水性を抑え、防水性を高めることが、比較的安価で施工が可能だからです。

しかし、基礎塗装だけでは基礎コンクリートの補強は不十分です。

基礎コンクリートの補強がしっかりと施されていて、さらに基礎塗装を施すことが最も適切な基礎コンクリートの補強工事だといえます。

基礎塗装のメリット

基礎コンクリートの「基礎塗装」には、次のようなメリットがあります。

コンクリートの中性化を抑える

コンクリートはアルカリ性なので、空気中の炭酸ガスや二酸化炭素と反応して中性化を起こし、内部の鉄筋を腐食させます。

基礎コンクリートを塗装することで、炭酸ガス・二酸化炭素がコンクリート内に侵入することを防ぎ、コンクリートの中性化を抑制することが可能です。

美観の向上

基礎コンクリートを塗装すると、ひび割れなどが目立たなくなり、色も均一になるなど、建物の美観が高まります。

カビやコケの発生を抑制

カビやコケは水分を多く含んだ基礎部分に発生しがちです。万年日が当たらない基礎部分だとなおさらですね。

基礎塗装を施すことで、基礎コンクリートが水分を含むことを防ぎ、カビやコケの発生を抑制させます。

基礎塗装のメリットは住宅・建物の基礎補修を考える方にとって非常に魅力的でしたね。

塗装することで基礎に水分が侵入しづらくすると、大きな意味で基礎補強になり得ます。

基礎塗装のデメリット

つぎに基礎コンクリートに基礎塗装を施すデメリットもみていきましょう。

状況を判断せずに基礎塗装を行うとかえって建物に悪影響を及ぼします。

基礎コンクリートの劣化が把握しづらくなる

基礎コンクリートを塗装すると、表面はきれいな状態になりますが、内部の劣化状況は把握しづらくなります。

水漏れトラブルに気づけない

基礎部分を塗装すると、漏水していても外に症状がみられないため、床下に入らない限りトラブルに気づくことはできません。

基礎の表面しか保護できない

基礎塗装とは、字の意味のごとく、基礎の表面を塗装することです。そのため、塗装で保護できるのは表面のモルタルのみになります。

基礎コンクリートの補強をアラミド繊維シートの貼付、Uカットシール工法、ビックス工法、基礎増し打ち工法

で行ったうえで、基礎塗装は有効な防水効果を発揮します。

基礎塗装の費用相場

基礎塗装の費用相場は1㎡あたり3,500~4,000円です。

基礎塗装単体を依頼した場合の金額は、一般的な住宅なら5万円から8万円になるでしょう。

塗料の種類や施工面積によって多少の値幅はありますので、複数の施工業者に見積もりをお願いするとさらに費用が分かりやすく、納得のいくものになるでしょう。

基礎塗装の流れ

基礎塗装工事の流れを紹介します。

基礎塗装の工期は1日から2日で、基礎をしっかりと補強されてからの施工が効果的です。

  • 下地処理・高圧洗浄
  • 乾燥・養生
  • 塗装
  • 養生撤去・清掃

基礎塗装工事の見積りを依頼した際は、上記の項目それぞれに費用を記載していることを確認しましょう。

外壁塗装と同時に見積もりを依頼する場合でも、全体に組み込まれている項目と、基礎工事単体での項目を区別して考えることができると、費用がより明確にとらえることが可能です。


①高圧洗浄
②下塗り(シーラー塗布)
③中塗り

④上塗り

画像引用:【個人オーナー様】東京都品川区Dビル 大規模修繕工事


1.斫り
2.堀削
3.養生

4.コーキング工事
5.下地処理
6.防水モルタル塗布1回目

7.防水モルタル塗布2回目
8.防水モルタル塗布3回目
9.防水材塗布

10.山砂埋戻し
11.再生砕石
12.転圧

13.ワイヤーメッシュ
14.土間コンクリート打ち
15.土間押さえ

画像引用:【個人オーナー様】東京都江東区Sマンション 基礎防水工事

住宅の基礎コンクリートの種類

住宅の基礎コンクリートの種類を紹介します。

一口に「基礎」といっても住宅の基礎には3種類あります。

布基礎

住宅の外周や間仕切りの壁や柱が入る部分を中心に支えるのが「布基礎」です。

面で支える「ベタ基礎」に対して、「布基礎」は点で支える構造になります。

地盤がしっかりしている土地、地盤改良が進んでいる場所に適しているといえます。

コンクリートの厚さは、ベタ基礎が15cm程なのに対し、布基礎は5~6センチと、使用する材料コストの面では抑えることが可能です。

寒冷地など、地面が一定の深さまで凍結し、行政により「凍結深度」が設けられている場合、布基礎が向いているでしょう。

なぜなら、深い位置に基礎をつくるには「布基礎」は掘る面積が少ないため、残土処理費用が抑えられるからです。

また、凍結深度とは、通常より深いところに基礎を設置しなければならないという決まりで、地面が凍結して住宅基礎を押し上げるのを防ぐのが目的です。

ベタ基礎

「ベタ基礎」は、立ち上がっている部分と、床一面を鉄筋を入れたコンクリートで一体化して、大きな面で家の重みを支えているので、耐震性が高いという特徴があります。

面で支える構造の「ベタ基礎」は阪神淡路大震災以降から普及し始め、今では多くの住宅で取り入れられている構造です。

また、床下の地面を厚いコンクリートで覆うので、湿気が建物に影響しらいことも「ベタ基礎」の特徴として挙げられます。

さらに厚いコンクリートを使用することから、シロアリから住宅を守りやすくなるでしょう。

独立基礎

独立基礎とは、建物本体の基礎以外の基礎部分のことを指します。

例えば、、玄関ポーチ、独立したデッキなど、独立して支えが必要な部分が挙げられます。

まとめ

この記事では、住宅・建物の基礎コンクリートの防水・補修工事について紹介してきました。

大きくまとめると以下の通りになります。

  • 基礎コンクリートの劣化はひび割れ・爆裂・モルタル浮きという症状で現れる
  • 基礎コンクリートの補修工事はアラミド繊維シートの貼付、Uカットシール工法、ビックス工法、基礎増し打ち工法があり、劣化状態によって決めることができる。
  • 基礎塗装も住宅基礎を守る手段の一つで、劣化が進んでいない、補強された基礎コンクリートに早期に施すことで効果が得られやすい
  • 建物の基礎塗装を施すと、建物の美観が高まり、さらに防水効果など、多くのメリットが得られる
  • 住宅の基礎補修を考えるにあたり、住宅の基礎は大きく分けて「布基礎」「ベタ基礎」「独立基礎」があることを知りましょう

住宅・建物の基礎コンクリートの補修工事は建物を守る手段としてとても重要な役割を果たすことが分かりました。

そして施工法も、劣化状況によってさまざまです。個人で判断せず、プロの目線で工事計画を練ることが大切です。

ぜひ、みなさんの大切な建物を地震や経年劣化から守るため、基礎の補修から考えてみましょう。

関連記事
公式サイト