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押さえコンクリートとアスファルト防水を解説|露出工法との違いは?

押さえコンクリート」という言葉を聞いてすぐに理解できる方は屋上防水について理解の深い方でしょう。

屋上防水においてアスファルト防水を施工する場合、押さえコンクリート仕上げと露出仕上げの2つの仕上げ方法があり、屋上の使用目的によってどちらの工法を行うかを判断します。

この記事では、屋上の防水で最も広く利用されているアスファルト防水の押さえコンクリート仕上げについて解説します。

アスファルト防水は防水工事の中でも最も耐久性の高い工法で、さらに仕上げ方法によってその効果は異なります。

露出仕上げとの違いや、各項目での比較も紹介していますので、どのような屋上が押さえコンクリート仕上げに向いているのか、またその補修方法なども紹介します。

屋上防水を考える方にとって、施工法の選択肢が増えるなど、有益な情報となっていますので、是非最後までお読みくださいね。

押さえコンクリートとは

押さえコンクリートとは、防水層の上からコンクリートを打設させ、さらに高い防水性・耐久性が備わります。

防水層を押さえて仕上げるという意味で、「押さえコンクリート」仕上げといいます。

押さえコンクリート仕上げのアスファルト防水の耐用年数

押さえコンクリート仕上げのアスファルト防水の耐用年数は17年といわれています。

耐用年数は一般的に工法・仕様・気象条件等で異なりますが、ある程度の目安として、通称、総プロによる「建築防水の耐久性向上技術」の中の「防水層の標準耐用年数」によると、アスファルト防水押さえコンクリート仕上げの場合は17年と示されています。

また、防水材料のメーカーである田島ルーフィング㈱の研究による見解をみると、平均耐用年数は26年とされています。

両者で大きな差が見られますが、定期的に防水施工のプロである防水専門業者による点検は欠かさず行いましょう。

※総プロとは、昭和55年から5年間にわたり実施された建設省総合技術開発プロジェクト「建築物の耐久性向上技術の開発」の総称。

押さえコンクリート仕上げが必要な屋上

屋上には様々な使い方があるのはご存知でしょうか。

特に押さえコンクリート仕上げのアスファルト防水が施された屋上は、高い耐久性を持ち、次のような使い方に向いています。

  • デパートや公共施設など、多くの人が頻繁に歩く屋上
  • オフィスビルやマンションなど憩いの場所として用いる屋上
  • 病院など、洗濯物を干す場所として用いる屋上
  • 駐車場として用いる屋上

人や車が頻繁に出入りする屋上は耐久性と防水性の両方が求められることには納得ですね。

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の劣化症状

押さえコンクリートは、屋上の厳しい自然環境にさらされ、温度変化・紫外線・雨風・地震などにより年月を重ねることで劣化が進みます。

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の劣化症状を下記にまとめました。

症状がみられる場合は、改修を視野に入れましょう。

ひび割れの発生

押さえコンクリートは建物への負荷を少なくするため、厚さ約6cmで打設します。

コンクリートは、温度の変化や、コンクリートに含まれた水分によって膨張・収縮繰り返し、ひび割れに発展します。

最初は軽微なひび割れでも、そこに雨水などが侵入し、さらに劣化が進みます。

コンクリートの浮き

コンクリートにひび割れが発生し、そこに振動などによってずれが生じ、浮きが発生します。

伸縮目地のひび割れ・剥がれ

コンクリートは日々伸縮し、劣化が進む特徴があるため、それを防ぐために縦横3メートル間隔で伸縮目地を打設します。

温度差などによって大きく伸縮・膨張を繰り返し、地震などの振動によって生じるコンクリートへの負担を伸縮性のある伸縮目地が吸収してくれるのです。

コンクリートの膨張を吸収する役割を持つ伸縮目地も、経年により劣化し、その機能が失われます。

時には劣化した伸縮目地が表面から飛び出し、歩行の障害になることもあり、伸縮目地の劣化の症状であるひび割れ・剥がれには気を付けておくべきでしょう。

水たまりの発生

押さえコンクリート・伸縮目地の経年による劣化により、押さえコンクリートとアスファルト防水層の間に雨水が侵入することが考えられます。

アスファルト防水層は耐久性もあり、防水効果も高いのですが、この防水層も経年などの理由で劣化していると、建物への浸水は防ぐことは難しいでしょう。

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修方法

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修方法として、挙げられるのは以下の2通りです。

  • コンクリートの上から新しい防水層を新設する
  • 現状のコンクリートを撤去し、防水層を新設する

一般的には、既存のコンクリート撤去には多大な労力が掛かり、撤去したコンクリートの廃棄には費用が掛かるため、コンクリートの劣化が著しくひどい場合を除いて、コンクリートを撤去せずに上から新しい防水層を新設する方法が採用されることが多いでしょう。

劣化している押さえコンクリートの上へ新しい防水層を新設することに違和感を感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし、押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修は、コンクリートを斫る手間や、斫る際に発生する騒音を考えると、劣化した下地からの水蒸気対策と、下地への追従に重きを置き、上から新しい防水層の新設を行うことが一般的です。

改修方法の流れ

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修方法の流れを紹介します。

こちらでは、一般的な改修方法であるコンクリートを撤去せずに上から新しい防水層を新設する方法の流れをご確認くださいね。

伸縮目地の撤去・シーリング充填

伸縮目地は温度差などによって大きく伸縮・膨張を繰り返し、地震などの振動によって生じるコンクリートへの負担を軽減する役割を担っています。

伸縮目地自体も経年によりその役割を果たせなくなっているため、改修の際はすべての伸縮目地を撤去します。

古い伸縮目地を残したまま新しい防水層を形成してしまうと、さらに劣化が進んだ伸縮目地が反り上がり、せっかく新設した防水層を破損させてしまう可能性があるためです。

既存の伸縮目地を撤去した後は、きれいに清掃し、新たにシーリング材を充填し、へらなどを使って押さえ、平滑に仕上げます。

下地処理

次に、劣化してくぼみや出っ張りがある既存の押さえコンクリートを平滑にする作業を行います。

新しい防水層の剥離を防ぐためです。

既存の押さえコンクリートにひび割れや欠損がみられる場合は、補修を施し、樹脂モルタルなどにより表面を平滑に仕上げます。

防水層の形成

下地が整ったら次は、新しい防水層を形成していきます。

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修の場合、既存の下地との通気性が重要になるので、コンクリートと新しい防水層の間に隙間を作り、通気性が保てる「通気緩衝工法」や、「脱気工法」と呼ばれる工法を採用します。

通気緩衝工法」とは、下地に通気緩衝シートを貼り付け、その上からウレタン防水を塗り付ける工法です。

通気緩衝シートが下地であるコンクリートの水分を吸収し、逃す役割を担います。

また、「脱気工法」とは、新しい防水層を完全に下地に密着させずに水分の逃げ道を作る絶縁工法、鋼製ディスクを設置し、機械的に通気層を作り、水分を逃す機械固定工法などがあり、この2つの工法を併用することもあります。

押さえコンクリート仕上げとアスファルト露出防水の違い

押さえコンクリート仕上げとアスファルト露出防水の違いを表にまとめてみました。

アスファルト露出防水とは、防水層が露出して見える、アスファルト防水の仕上げ方法です。

押さえコンクリート仕上げアスファルト防水アスファルト露出防水
特徴・防水層の上にコンクリートが打設されている
・重いので屋上への負荷が大きい
・耐用年数は約17年
・防水層が露出している
・軽いので屋上への負荷が少ない
・耐用年数は約13年
目視確認×
困難

可能
メリット・防水層が外傷を受けにくい
・紫外線による劣化の心配がない
・不具合を初期段階で補修できる
・漏水箇所が見つけやすく、局部補修が可能
デメリット・万一漏水した場合、損傷箇所を特定できず、全面改修することもある
・防水層の劣化の度合いを目視では確認できない
・防水層の劣化の度合いを確認するには大掛かりな撤去作業が必要
防水層が露出しているので外的損傷を受けやすい
採用される屋上の特徴車や人の出入りが頻繁にある屋上通常人などの立ち入りがない屋上

押さえコンクリート仕上げとアスファルト露出防水の違いはその耐用年数、屋上の使用方法によるところが大きいのではないでしょうか。

違いを理解して、適切な改修方法を選択することは、建物を守る上でとても重要なことですね。

まとめ

これまで、押さえコンクリート仕上げアスファルト防水についての情報、またその改修について紹介してきました。

また、アスファルト防水のもう一つの仕上げ方法である露出防水との違いも見てきましたね。

  • アスファルト防水の押さえコンクリート仕上げ・露出仕上は、屋上の使用目的によって異なる
  • 押さえコンクリート仕上げは高い耐久性を持ち、人や車の出入りが頻繁な屋上に適切な仕上げ方法
  • アスファルト防水の露出仕上げは、人の出入りなどがあまりない屋上に適している
  • 押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修方法は通常、既存の防水層は撤去しない
  • 押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修は下地との通気性が大切

いかがでしたでしょうか。アスファルト防水でも、仕上げによって大きく用途が変わり、またその改修方法も異なります。

一概に防水補修を行うといっても様々な施工法を用途や状況に合わせての選択が必要です。

屋上防水は建物の寿命を長く健全に保つ重要な手段であることは間違いありません。

ぜひ、防水工事のプロである防水工事専門業者のアドバイスを参考に、大切な資産である建物の価値を維持してくださいね。

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