マンションの大規模修繕工事「何年ごとなのか」「どのくらいの費用が発生するのか」などの疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
マンション大規模修繕計画で設定している周期は適切ではない場合があり、状況によっては見直しも検討しなければなりません。
そこで今回は、マンションの大規模修繕工事は何年ごとに実施すべきかを解説します。
目次
マンションの大規模修繕工事は何年ごと?
一般的に、マンションの大規模修繕工事は築後12年が目安とされています。
ただし、必ずしも12年と決まっているわけではありません。
マンションの立地、構造、管理状況、管理組合の方針などによって大きく異なります。
例えば、マンションの劣化が著しい場合は大規模修繕周期が早くなり、傷みが少ない場合は12年以上大規模修繕工事を行わない場合もあります。
国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、最初の大規模修繕工事は築13~16年頃に行われており、2回目は築26~33年前後、3回目以上は築37~45年前後です。
マンションの大規模修繕は12年ごとに行うことが推奨されていますが、実際には13年~16年ごとに行われていることが分かります。
12年ごとが推奨される理由
マンション大規模修繕の多くは13年~16年周期で行われていますが、本来は12年ごとの実施が理想です。
なぜ12年という周期なのか、主な理由を解説します。
全面打診調査の実施期限
大規模修繕を12年ごとに実施したい理由のひとつは、外壁全体の打診調査が義務化されたことです。
2008年4月1日より、建築基準法第12条に基づく定期報告制度が変更されました。
マンションの大規模修繕の観点から、外壁タイルの劣化・損傷が見直されたためです。
従来は、手の届く範囲の打診・目視検査で異常が見つかれば、建物所有者等に注意喚起を行っていました。
しかし、見直しにより、従来の調査に加え、建物の竣工や外壁改修から10年後に本格的な調査が必要になります。
また、一部の例外として、3年以内に外壁の改修工事を行うことが確実な場合は、10年以上経過していても打診調査は不要とされています。
外壁の全面打診検査の期限は10年以内であることに加え、全面打診検査免除の条件である外壁改修工事の実施期限は3年以内です。
つまり、判断の基準は13年以内とし、マンションの大規模修繕は12年以降が推奨されます。
ガイドラインに記載されている
国土交通省の長期修繕計画標準様式には、「外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕工事の周期は約12年」という記述があります。
また、長期修繕計画は30年以上で計画すること、5年ごとに見直しが必要であることも記載されています。
工事に使用した素材の保証期間
防水材や塗料などは、機能や性能が徐々に低下し、保証期間が切れます。
マンションの外に使用される防水材や塗料、タイル、シーリングなどは、紫外線や雨風に耐えられる機能がありますが、10年以上が経過すると劣化症状が表れます。
マンションの防水性能や塗装の劣化が目立つ時期と、保証期間が切れるタイミングで大規模修繕工事を行うケースが多いです。
大規模修繕工事時期の見直しの必要性
長期修繕計画は1度作ればよいというものではありません。
計画はあくまで将来像であり、計画通りにいかないことも多いです。
突然の災害や想定外の出費など、計画時には想定していなかった事態を考慮し、適宜計画を見直す必要があります。
長期修繕計画の具体的な見直し時期は、一般的に5年周期とされています。
国土交通省が公表している「長期修繕計画作成ガイドライン」では、5年ごとの見直しを前提としています。
ただし、あくまで目安であり、マンションが立地する環境によっては、5年サイクルが当てはまらない場合もあるため注意しましょう。
また、大規模修繕工事の完了は、長期修繕計画を見直す良いタイミングです。
大規模修繕工事は、マンションの修繕積立金を最も多く消費する修繕工事です。
将来の貯蓄を見直して、計画通りに支出できているかを確認する良い機会となるでしょう。
実施時期を決める際に確認すること
大規模修繕の実施時期を決定する際には、以下の点を確認しましょう。
- 建物診断と劣化診断
- 入居者の要望
- 修繕積立金の状況
- マンションの状況
- マンションの形状
- マンションの環境要因
- マンションの使用方法
大規模修繕工事を行う際には、必ずマンションの劣化状況を把握し、結果を踏まえて修繕計画を立てましょう。
大規模修繕は、計画開始から工事完了まで、合計2~3年程度かかる大がかりな工事です。
計画から着工まで約1~2年、着工から約3~6ヶ月、集合住宅や大規模マンション、高層マンションの場合は工期だけで1年以上かかることもあります。
マンションの大規模修繕工事内容
マンションの大規模修繕は回数によって工事内容が変わり、経年劣化すれば修繕箇所が増えます。
ここでは、1~2回目の大規模修繕で行われるケースが多い工事内容を紹介します。
仮設工事
マンション大規模修繕の最初に行われるのが「仮設工事」です。
仮設工事とは、建設期間中に使用する施設や設備の工事のことです。
仮囲い、建物を覆う養生シート、工事用の電源・水道を設置します。
また、仮設工事中は、外壁塗装のための足場が組まれるため、窓の外で作業する方や、日差しが遮られる可能性があることを入居者の知らせておくことが大切です。
下地補修工事
次に「下地補修工事」が実施されます。
下地補修工事は、屋根や外壁を塗装する際に、劣化やひび割れを補修する工事のことです。
下地補修工事は美観を保ち、強度を高めるだけではなく、塗装の仕上がりにも影響する大切な工事です。
ただし、窓の外で作業をしている人がいたり、日差しが入らなかったりするため注意しましょう。
タイル補修工事
劣化したタイルや緩んだタイルを補修する、タイル補修工事を行います。
目視では問題がないように見えても、点検・診断の際にタイルの緩みが見つかることも少なくありません。
美観を良くするだけではなく、タイル落下の危険も防ぐことができるため、大規模修繕には欠かせない工事です。
なお、外壁のタイル補修工事は、窓の外で直接作業したり、足場で日当たりが悪くなることもあります。
シーリング工事
外壁の下地補修が終わったら、シーリング工事を行います。
シーリングとは、外壁のタイルをつなぐ素材のことです。
シーリングの剥がれやひび割れを補修することで、マンション内部や鉄部に水が浸入することを防ぎ、マンションの劣化を防ぎます。
また、シーリング工事はマンションの気密性を向上させ、断熱効果が期待できる工程です。
外壁塗装工事
外壁塗装はマンションの外観を保つだけではなく、断熱性や防水性を維持する役割も担っています。
外壁塗装では上塗り、中塗り、下塗りの工程があり、それぞれの工程は外壁が乾いていないと次の作業ができません。
中塗りから塗料が乾くまでの3日間は臭気が強く、吹き付け塗装の場合は吹き付け機の音が気になるかもしれません。
臭気や音に敏感な方は、窓を開けない、窓から離れた部屋にいる、休日は外に出るなどの対策をした方がよいでしょう。
鉄部塗装工事
外壁塗装の次は、鉄部の塗装工事を行います。
鉄部塗装工事とは、ドアや外階段、手すりなどに使われている鉄部を塗装する工事のことです。
外観や耐久性、マンションの資産価値を維持するためにも重要な工程といえます。
錆が発生している場合は、塗装前に刷毛で錆を落とします。
また、鉄部の塗装も、騒音や臭いが気になる場合があるため注意が必要です。
防水工事
最後に防水工事を行います。
防水工事とは、部屋のベランダ、屋上、廊下などのコンクリートを雨水や汚れから守る工事です。
防水工事にはFRP防水やシート防水などいくつかの種類があり、それぞれ見積もり額や施工方法が異なります。
マンション部位で何年ごとに修繕が必要が異なる
大規模修繕工事は12年ごとに行いますが、マンションの部位によって劣化状況が異なるため、下記のように部位ごとに修繕周期の目安があります。
屋上 | 10年 |
ベランダバルコニー | 12年 |
外壁 | 13年 |
廊下や階段 | 12年 |
エントランスなど | 20年 |
マンション全体の大規模修繕は12~15年ごとに行うことが一般的ですが、上記を参考に、大規模修繕の前に部分的に小規模修繕を行うことで、建物を長持ちさせられるでしょう。
まとめ
マンション大規模修繕が何年ごとに実施すべきか、推奨される周期について解説しました。
まとめると、
- マンション大規模修繕は12年周期で行うことが理想
- 建物の建築条件や周辺環境によって最適な周期が異なる
- 事前に建物診断を行い修繕計画を立てる
マンションは何度も修繕が必要になるため、長期的なケアを考えてくれる信頼できる業者に依頼することが建物を長く安全に保つことにつながります。
マンション大規模修繕は、適切な工事の周期をアドバイスしてくれる優良業者を選びましょう。