アパートの改修工事の計画はどう立てたらいい?
木造アパートの小規模修繕3回で中規模修繕になる?
住民の皆に大規模修繕の内容を周知する必要はある?
アパートの修繕費用の目安について教えて!
賃貸アパートの経営をしているオーナーさんの中には、将来的に莫大な維持費がかかるのでは?と不安に感じている方も少なくないのではないでしょうか。
逆に、大規模修繕の必要性を感じていないオーナーさんも中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらの記事では大規模修繕を行う必要性やかかる費用などをまとめています。
目次
賃貸アパート大規模修繕はなぜ必要なのか?
アパートの資産価値を維持できる
どんな建物でも、年月の経過とともに劣化がすすみます。
同じ築年数の建物でも、大規模修繕をはじめとした修繕工事を定期的に行っているかどうかで、その建物の資産価値は大きく変わります。
将来的に売却することになった場合も、高値で売却することが可能となります。
賃貸物件の資産価値は家賃にも直結します。
長く安定した経営を行うためにも、資産価値を維持する大規模修繕は必要不可欠です。
入居率があがる
大規模修繕では、外壁や屋根部分など外観に関わる工事を多く行います。
近年ではインターネットで物件を探す人も多く、外観が悪いと写真だけで検討から外されてしまうことも少なくありません。
賃貸物件は外観や設備を中心に選ぶ人が多い傾向があり、古くても安ければいいと考える入居者は少ない傾向があります。
空室を減らし入居率を上げるためには、大規模修繕は必要不可欠といえます。
減価償却の対象となり節税効果がある
大規模修繕にかかる費用は、新築の費用と同様に減価償却の対象となります。
不動産所得から控除されるため、その減税効果は非常に高いと言えます。
入居者の安全を守る
アパートの経営者には、入居者の安全を守る義務があります。
万が一建物の不具合による事故が発生すれば、多額の賠償金を支払わなければなりません。
具体的には、雨漏りによる漏電・外壁や屋根の落下・てすりの破損などが考えられます。
そういった不要な事故を防ぐためにも、大規模修繕や小規模修繕は定期的に行う必要があります。
賃貸の収益物件として長く活用できる
劣化がすすみ古くなったアパートは空室が増え、収益もあがらなくなります。
収益が少ないと建て替えることも難しくなってしまい、経営事態が暗礁に乗り上げてしまうこともあるでしょう。
定期的な修繕を行い正しくメンテナンスをしていくことで、同じ築年数の建物でも住み心地や外観に大きな違いが出ます。
大規模修繕には多額の費用がかかりますが、長期的な視点で考えると適宜大規模修繕を行う方が、大きな収益が見込めます。
賃貸アパートで行われる修繕工事3つ
アパートの劣化や不具合を改善するために、主に3つの修繕が必要とされています。
原状回復・小規模修繕・大規模修繕の3つです。それぞれの工事内容や必要性を確認していきましょう。
原状回復
入居者が退去したタイミングで、ハウスクリーニングや壁紙、フローリングの張り替えなどを行います。
畳の場合には畳を交換したり、網戸の交換なども行います。
基本的には入居者が入居した時と同じ状態へと戻す修繕となります。
これにより、室内が綺麗な状態となり、次の入居者が入居しやすくなります。
小規模修繕
必要に応じて行うのが小規模修繕です。
入居者からの依頼や要望によって行うこともあります。
設備の故障や、小さな修理などもこれにあたりますが、シロアリ予防剤の散布やコーキング打ち替えなど予防的に行う工事もこれに含まれます。
定期的にこうした小規模修繕を行うことで、大規模修繕にかかる費用を抑えることに繋がります。
大規模修繕
長期計画のもと、外壁工事や防水工事など大掛かりな工事を行います。
費用も非常に高額となり、施工期間も長くなるので事前の準備等が必要です。
大規模修繕を行う目安としては10〜15年程度と考えられていますが、賃貸アパートの場合にはオーナーに一任されています。
大規模修繕を実施する時期と工事の内容
先ほどもお伝えした通り、大規模修繕を行う時期について、特に決められたルールは存在しません。
分譲マンションでは、新築時に大規模修繕の長期計画が作成されているので、それに基づいて行われることが多いでしょう。
アパートなどの賃貸物件においては、オーナーの一存でその時期を決めることができます。
どのくらいの頻度で行うのが最適なのでしょうか。
一般的には10〜15年
特に決められたルールはありませんが、一般的には10〜15年に一度の頻度で行うのが理想とされています。
理由としては、使用される資材の多くが10年を保証期間としていることが挙げられます。
もちろん使用される資材や建物の立っている向き・場所によって、大規模修繕が必要となるタイミングは変わってきますので、建物の劣化調査などを利用して、その建物の状態をよく理解することが必要です。
その他鉄部の塗装などは5年程度が寿命と言われています。
これらの工事は大規模修繕に分類されることもありますが、5年に一度のペースで行った方がよいとされていますので、注意しましょう。
大規模修繕で行われる工事内容と費用目安
大規模修繕で行う工事とその費用について確認していきましょう。
工事によって行うタイミングが変わってきます。
大規模修繕は足場をかけて行うことが多いので、工期も長く多額の費用がかかります。
かかる費用は築年数や、それまでに行ってきたメンテナンスによっても大きく変わってきます。
下記は、木造10戸規模のアパートの場合の費用目安です。
築5年〜10年 | ベランダ・階段の鉄部塗装排水管の高圧洗浄 等 | 70万円(1戸あたり7万円程度) |
築10年〜15年 | 屋根塗装・外壁塗装防水工事(ベランダ・階段等)ベランダ・階段の鉄部塗装排水管の高圧洗浄 等 | 520万円(1戸あたり52万円) |
築16年〜20年 | ベランダ・階段の鉄部塗装排水管の高圧洗浄 外構の修繕 等 | 180万円(1戸あたり18万円) |
築21年〜25年 | 屋根塗装・外壁塗装防水工事(ベランダ・階段等)ベランダ・階段の鉄部塗装排水管の高圧洗浄 水回り設備の交換・修理 等 | 800万円(1戸あたり80万円) |
ここに記載したのはあくまで目安の金額です。
ここであげた工事とは別に、水回りの設備やエアコン、給湯器などは一斉に交換を行うのが一般的です。
これらの修理や交換は、入居率をあげることにも大きく影響を与える部分となるため、大規模修繕の際には検討してみるといいでしょう。
30年を超えると給排水管や貯水槽の交換も必要になってきます。
台風や大雨などの自然災害が起こる可能性も考慮して、30年で1500万円ほどはかかると考えておいた方が無難です。
大規模修繕は建物の状態をよく確認した上で、適切な工事を行いましょう。
大規模修繕費の積立について
分譲マンションの場合は区画所有者が共同で費用を負担しますが、賃貸アパートの場合はオーナーが全て負担しなければなりません。
多額の費用がかかる大規模修繕において、修繕費は必ず積み立てておく必要があります。
もちろん大規模修繕にはまとまった費用が必要となりますが、それ以外にも小規模修繕による出費も想定されるため、余裕のある計画が必要です。
また工事をいつ頃行うのか、といった長期計画もオーナー自らが立てなければなりません。
大規模修繕については不動産投資を始める段階から検討し、その準備をしていく必要があります。
修繕を先延ばしにすれば、入居率が下がり収益が減少します。結果としてさらに修繕が難しい状況になりかねません。
赤字経営を避けるためにも、計画的に修繕費を積み立て、必要なタイミングで修繕を行うことが大切です。
コツコツ修繕費を準備する自信がないという方は、修繕積立のできる保険に加入したり、管理会社や不動産会社に相談してみるのも手です。
アパートの大規模修繕の費用を抑えるポイント
高額な修繕費用を少しでも安く抑えたいと考える方は多いのではないでしょうか。
ここからは、費用を抑えるポイントをお伝えしていきます。
こまめな点検と小規模修繕
日常的な点検と小規模修繕をしているかどうかで、大規模修繕時にかかる費用が大きく変わってきます。
不具合が起こる前に対応することで、建物本体へのダメージを減らし、費用も最小限に抑えることができます。
まとめて工事を行う
複数の工事をまとめて行うことで費用や入居者への負担を減らすことができます。
足場が必要な外壁塗装と屋根塗装は、一度にまとめて行うことで、別々に行うより費用を抑えることができます。
その他にも足場工事が必要となる工事は、大規模修繕のタイミングでまとめて行うようにしましょう。
火災保険を活用する
経年劣化による破損等は対象外となりますが、自然災害による屋根や外壁の破損、雨漏りなどは火災保険の対象となることが少なくありません。
大規模修繕の際には、該当するものがないかよく確認し、利用できるのであればぜひ利用しましょう。
まとめ
アパートの大規模修繕について、基本的な費用、頻度、費用を抑えるポイントなどを解説しました。
- 資産価値の維持や入居者の安全確保のために大規模修繕は不可欠
- 大規模修繕費用は減価償却の対象となるため節税効果も高い
- 大規模修繕の頻度に特に決まったルールはないが、10年〜15年が一般的
- 主に外壁・屋根等外観に関わる工事が多い
- 築年数により行う工事は変わってくるが、1回の工事費用は数十万円から数百万円かかる
- 修繕費用は計画的に積み立てておくことが大切
大規模修繕は安定したアパート経営に欠かすことのできない大切な工事です。
事業計画作成のタイミングで大規模修繕を視野に入れて、修繕費を積み立てていくようにしましょう。