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鉄骨ALC造建物の屋上・屋根防水工事を解説|水に弱い?施工費用の相場は?

主にマンションやアパートなどでみられる鉄骨ALC造建物ですが、「そもそもALC造って何?」と詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。

今回は、鉄骨ALC造建物の基礎知識から、屋上・屋根の防水工事についてを詳しく解説していきます。

鉄骨ALC造が水に弱いのでは?と悩んでいる方から防水工事の費用相場が気になる方まで、ぜひ参考にしてみてくださいね。

屋上防水の必要な鉄骨ALC造建物とは

そもそも鉄骨ALC建造物についてよく知らない方が多いのではないでしょうか。

主にマンションやアパートに使用される建物の構造のひとつで、「ALC造」と書かれていることもあります。

ここからは、鉄骨ALC建造物についてさらに詳しく解説していきます。

屋上防水の必要な鉄骨ALC造建物の「ALC」とは?

ALCとは「Autoclaved Lightweight Concrete」の略で、気泡加工を施し軽量化したコンクリートのことです。

コンクリートの材料であるセメントや生石灰などを高温で熱することで発泡させ、気泡加工を施します。

この気泡加工により、強度がありながら軽量な素材となります。

実際に建物を建設する際の材料として使用するのは、工場で作ったALCパネルというものです。

ALCパネルはALCと鉄骨を組み合わせて強度を増した板状の材料で、組み立てや運搬がしやすいという特徴があります。

屋上防水の必要な鉄骨ALC造建物の構造

鉄骨ALC造建物は、より強度の高い鉄骨で骨組みを作りALCパネルで囲っていく構造が基本です。

ALC造と記載のある建物でも、ALCのみで建築されていることはありません。

鉄骨とALCパネルの両方を使用することから、鉄骨ALC造建物と呼ばれます。

ALCパネルは、主に

  • 外壁
  • 屋根
  • 部屋同士の仕切り

などに使用されます。

屋上防水の必要な鉄骨ALC造建物のメリット・デメリット

ALCという素材についてわかったところで、さらに鉄骨ALC造建物について深掘りしていきます。

実際にALC造の建物にどのようなメリットやデメリットがあるのか気になりますよね。

ここでは、鉄骨ALC造建物のメリットとデメリットについてそれぞれ詳しく紹介します。

屋上防水の必要な鉄骨ALC造建物のメリット

鉄骨ALC造建物のメリットには、以下のようなものがあります。

  • 耐火性・断熱性・耐久性が高い
  • 通常の軽量鉄骨造より防音性が若干高い
  • 調湿性能がある
  • 地震による歪み・地盤沈下の心配が少ない

鉄骨ALC造建物は火事が起きた際に燃えにくく、一般的な住宅に比べて火事の被害を抑えられるでしょう。

ALCパネルの特徴である気泡が空気の層を作ることで断熱性が高まるため、夏は涼しく冬は暖かく快適に過ごすことができます。

ALCパネルは鉄骨と組み合わせて作られており、パネル自体の強度や耐久性が高く、物をぶつけたなどの物理的衝撃や地震にも強いです。

ALCパネルに厚みがあるため、一般的な軽量鉄骨造よりも鉄骨ALC造建物の方が防音性にが若干高いと言われています。

ALCの持つ調湿性能により室内の湿気をある程度調節してくれるため、鉄骨造よりも結露が起こりにくいです。

鉄骨ALC造建物は一般的なコンクリート建築物に比べて軽量なので、地盤沈下の影響を受けにくいと言えます。

屋上防水の必要な鉄骨ALC造建物のデメリット

鉄骨ALC造建物のデメリットには、以下のようなものがあります。

  • 水に弱い
  • 継ぎ目のシーリング材が劣化しやすい

鉄骨ALC造建物は水に弱いため、長時間にわたって水の影響を受けると気泡の中に水が溜まり腐食の原因となってしまいます。

そのため、防水性の高い塗料を使用した定期的なメンテナンスが必要です。

外壁材の継ぎ目にはシーリング材を充填して建物の防水性や気密性を保っていますが、このシーリング材は紫外線や雨などのさまざまな影響を受けて徐々に劣化していきます。

シーリング材の劣化を放置すると、雨漏りや気密性の低下などが発生し、内部の鉄骨に水分が染み込めば錆の原因にもなってしまうでしょう。

鉄骨ALC造建物の屋上の防水工事

雨に弱い鉄骨ALC造建物の屋上には、しっかりと防水工事を施工する必要があります。

ここでは、鉄骨ALC造建物の屋上の防水工事について、

  • アスファルト防水
  • 改質アスファルトシート防水
  • シート防水
  • ウレタン防水

の4つの工法をそれぞれ詳しく解説していきます。

鉄骨ALC造建物の屋上防水工事1.アスファルト防水

アスファルト防水は、従来から広く使われている伝統的な防水工事のひとつです。

アスファルト防水の中でも熱工法という工事では、熱を加えて溶かした液状のアスファルトとルーフィングシートを積み重ねることで、防水層を形成していきます。

ルーフィングシートとは、建物の内部に水を入れないためのシートのことです。

アスファルトの防水は100年以上も歴史のある防水工事で、非常に信頼性が高いです。

広い場所への施工に適していて、学校やマンションなどの屋上に採用されることが多いでしょう。

鉄骨ALC造建物の屋上防水工事2.改質アスファルトシート防水

改質アスファルトシート防水とは、温度特性や耐候性をより特化した「改質アスファルトシート」を使用した防水工事です。

アスファルト防水に比べて温度特性や耐候性に特化しているほか、設備と施工を簡略化できるというメリットもあります。

しかしその分、アスファルト防水に比べても費用が高くなることが一般的です。

トーチ工法|ALC造建物の屋上防水を熱で形成

トーチ工法とは、トーチバーナーと呼ばれる道具を使用して、ルーフィングシートの裏面と下地を貼り重ねていく工法です。

バーナーの熱でアスファルトを溶かしながら、シートと下地を接着していきます。

トーチ工法では、シートを隙間なく熱で溶着できるため、防水効果が高いことが特徴です。

施工費用も比較的やすく、民間工事でよく採用されます。

常温工法(冷工法)|ALC造建物の屋上防水でも広く利用

常温工法(冷工法)は、さまざまな現場で多く採用されている工法です。

常温工法(冷工法)では、熱を使わずに防水層を形成していくことが特徴です。

ルーフィングシートの裏面にゴムアスファルトの粘着層をコーティングして、複数枚交互に貼り付けていきます。

軟粘着状態となった下地が、施工したコンクリートにしっかり付着してくれます。

熱を使わずに工事を行うため、熱や匂いが発生せず環境に優しく、安全性にも優れていることがメリットです。

鉄骨ALC造建物の屋上防水工事3.シート防水

シート防水とは、塩化ビニールやゴムでできた防水シートを使用した防水工事のことです。

シート防水では工場で加工された防水シートを使用するため、厚さが均一で仕上がりにムラがないことがメリットのひとつです。

シート防水は平らで単純な形状の場所にしか施工できないため、主にマンションやビルの屋上で採用されています。

塩ビシート防水|ALC造建物の屋上防水でも主流

塩化ビニール素材で作られた防水シートを使用する工事を、塩ビシート防水と呼びます。

塩ビシートはゴムシートに比べて耐久性に優れていて、摩擦や紫外線にも強いです。

シート防水に用いられる防水シートは、この塩ビシートが主流です。

鉄骨ALC造建物の屋上防水工事の場合、プライマーには、下地との相性がいいニトリルゴム系またはエボキシ樹脂系の接着剤を使用します。

ゴムシート防水|ALC造建物の屋上防水を抑える

合成ゴムで作られた防水シートを使用工事を、ゴムシート防水と呼びます。

ゴムシートは伸縮性があり比較的軽量で、塩ビシートに比べて工事費用を抑えることができます。

しかし耐久性が劣り紫外線にも弱いというデメリットから、最近では塩ビシートを使用した防水工事が主流です。

ゴムシート防水の場合、目地処理には絶縁テープを使用します。

鉄骨ALC造建物の屋上防水工事4.ウレタン防水

ウレタン防水とは、液体状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成していく防水工事です。

ウレタン防水には目立った短所がなく、日本で最も多く行われている防水工事でもあります。

鉄骨ALC造建物の屋上に施工する場合、工法は通気緩衝工法(絶縁工法)を用います。

通気緩衝工法とは、ウレタン樹脂を下地に密着させずに防水する工法のことです。

この工法では、通気緩衝シートと呼ばれる無数の穴が空いた防水シートを使用することが特徴です。

鉄骨ALC造建物の勾配屋根の防水工事

鉄骨ALC造建物の勾配屋根への防水工事について、

  • 葺き替え工事
  • カバー工法
  • 塗装工事

の3つの種類をそれぞれ解説していきます。

鉄骨ALC造建物の勾配屋根の防水工事1.葺き替え工事

屋根材が劣化している場合は、既存屋根材を撤去して葺き替え工事を行います。

葺き替え工事費用に加えて、解体や廃材処理にかかる費用も必要となるため、高額な費用が必要となるでしょう。

工期も長くなることの多い、本格的な屋根のリフォーム工事です。

鉄骨ALC造建物の勾配屋根の防水工事2.カバー工法

カバー工法は、既存屋根材の下地に劣化が見られない場合に行う工事です。

既存屋根材を撤去することなく、上から新しい屋根材を被せます。

既存屋根材の撤去や廃材処理の費用が必要ないため、短い工期で費用を抑えられることが特徴です。

カバー工法を行うと屋根が二重構造になるため、断熱効果や防音効果が高まります。

しかし、既存屋根材が劣化している場合にはカバー工法を行うことができません。

鉄骨ALC造建物の勾配屋根の防水工事3.塗装工事

塗装工事は、既存屋根の表面の石粒の剥がれが気になる場合に行う工事です。

また、屋根材を保護する目的で塗装工事を行う場合もあります。

この際、屋根に剥がれや浮きがあれば部分的に補修を行います。

塗装工事は、葺き替え工事、カバー工法に比べて費用がかかりません。

屋根材を保護し耐久性や防水性を保つためにも、定期的な塗り替えを行いましょう。

また、定期的な塗装工事は、屋根や建物の美観を保つ意味でも有効です。

鉄骨ALC造建物の屋上・屋根の防水工事の費用

防水工事を検討している際、やはり気になるのは費用面ですよね。

防水工事にかかる費用は、工法や施工面積などによって異なります。

鉄骨ALC造建物の屋上・屋根の防水工事にかかる費用相場は、以下の表を参考にしてください。

防水工事費用相場(1㎡あたり)
アスファルト防水約7,800円/㎡
改質アスファルトシート防水トーチ工法約8,200円/㎡
改質アスファルトシート防水常温工法(冷工法)約8,900円/㎡
塩ビシート防水約4,500〜7,000円/㎡
ゴムシート防水約4,000〜6,000円/㎡
ウレタン防水通気緩衝工法(絶縁工法)約5,400円/㎡
スレート屋根葺き替え工事約5,000円〜8,000円/㎡
アスファルトシングル屋根葺き替え工事約5,000円〜7,000円/㎡
カバー工法屋根平米×11,000円

価格相場は工事方法を決めていく上でもちろん重要な要素ですが、それぞれの工事にはメリット・デメリットがありますし、施工場所や状況などによっても最適な工事は異なります。

費用だけで防水工事を決めるのではなく、建物にとって最適なものを選ぶようにしましょう

鉄骨ALC造建物の屋根防水に関わるシーリング工事とは

鉄骨ALC造建物に限らず、すべての建物には必ずシーリング材が使われています。

シーリング工事とは、シーリング材を使用して目地の隙間を塞ぐ工事のことです。

外壁の目地にシーリング工事を施せば、内側への水の侵入を防ぎ雨漏りや下地の劣化などを予防します。

また、シーリング材は柔軟性や伸縮性に優れています。

そのため、雨の侵入を防ぎ防水性を高めることはもちろん、地震や風などで起きる建物の揺れや動きを緩衝させる効果も得られるでしょう。

この効果によって、外壁自体にヒビが入ったり損傷してしまったりすることの予防が可能です。

シーリングは時々コーキングと呼ばれることもあり、この2つに明確な違いはありません。

最近の建築・塗装業界では、シーリングという言葉が主流となっています。

シーリング材は、温度変化や紫外線などの影響を受けて、徐々に劣化していってしまいます。

劣化が進むとシーリング材にヒビや切れなどが現れ、その部分が雨水の侵入経路となり雨漏りにつながるリスクがあるため、定期的なメンテナンスや補修が必要です。

鉄骨ALC造建物の屋根防水に重要なシーリング工事の費用

シーリング工事の費用は、施工範囲によって大きく変わります。

また、使用するシーリング材の種類によっても、単価が多少変動するでしょう。

シーリング工事には、打ち替え工事と増しうち工事の2種類があります。

打ち替え工事は既存シーリング材を撤去し全て新しいシーリング材に打ち替える方法、増し打ち工事は既存シーリングの上から追加で新しいシーリング材を打つ方法のことです。

単価費用の目安としては、

  • 打ち替え工事の単価は1mあたり900円~
  • 増し打ち工事の単価は1mあたり500円~

この金額に施工面積をかけて、「1mあたりの単価×施工m数」の計算結果が大体の費用相場となるでしょう。

やはり既存シーリング材を撤去して全て新しいシーリング材にする打ち替え工事の方が、費用は高くなります。

また、マンションなどに施工する場合、シーリング工事の費用に加えて足場代がかかることがあります。

工事の際に足場を組む必要がある場合は、1㎡あたり900円~1,100円ほどの足場代が別途必要です。

1㎡あたりの足場代はなかなか想像できない方も多いと思いますが、30坪の2階建て住宅の場合で約180平米の足場が必要と考え、足場にかかる費用は約16万円~20万円ほどが目安となります。

鉄骨ALC造建物の屋上・屋根に防水工事を行うタイミング

屋上や屋根に劣化症状が現れたら、できるだけ早く防水工事を行いましょう。

屋上や屋根に防水工事を行うサインとなる劣化症状には、以下のようなものがあります。

  • チョーキング現象
  • 摩耗
  • ひび割れ
  • 剥がれ・浮き
  • 膨れ
  • 水たまり
  • 雨漏り

防水層の劣化症状は、見てわかるものがほとんどです。

目に見えてわかる劣化症状が現れている場合は、放置すると雨漏りが発生するリスクが高いです。

上記のような劣化症状を発見したら、早急に防水工事を検討してみてくださいね。

鉄骨ALC造建物の屋上・屋根と外壁の防水工事はセットがおすすめ

鉄骨ALC造建物の場合、屋根形状が屋上や陸屋根などのフラットな形状であることが多いです。

屋上や屋根の防水層が劣化していると雨漏りを起こす可能性が高く、それにより室内の湿度が上がればALC外壁にも悪影響を及ぼします。

そのため、屋上・屋根と外壁のどちらかの劣化症状が気になったタイミングで、両方の防水工事をセットで依頼するといいでしょう。

外壁と屋上・屋根の両方を施工できる業者に依頼すれば、工事期間の手間や負担も減らすことができるのでおすすめです。

また、別々のタイミングで工事を行うパターンと比べて足場を組むのが一度で済むため、屋上・屋根と外壁の防水工事を一度に行うと足場代の節約にもつながります。

防水工事でよくある質問

Q

防水工事の種類にはどんなものがありますか?

A

主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。

Q

防水工事の費用はどのくらいかかりますか?

A

工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。

Q

工事の期間はどのくらいかかりますか?

A

工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。

Q

工事中の生活にどんな影響がありますか?

A

騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。

Q

防水工事のタイミングはいつが良いですか?

A

一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。

まとめ

鉄骨ALC造建物は、軽量で丈夫なALCパネルを使用して建設された建物のことです。

メリットも多い鉄骨ALC造建物ですが水に弱いという特徴も持っているため、防水工事や防水層のメンテナンスは欠かせないポイントです。

今回は、防水工事の種類や費用相場まで、鉄骨ALC造建物について詳しく紹介しました。

ぜひ今回の記事を参考に、適切なメンテナンスを行ってくださいね。

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