マンション大規模修繕の修繕積立金とは?相場から不足時の対策を解説

マンション大規模修繕の修繕積立金とは?相場から不足時の対策を解説

2026/02/25

マンションの大規模修繕は12〜15年周期で実施される大がかりな工事であり、その費用は数千万円から億単位に及びます。

この費用を支えるのが毎月積み立てている修繕積立金ですが、国土交通省の調査によると全国のマンションの約34.8%で積立金が不足しているのが現状です。

本記事では、マンションの大規模修繕に必要な修繕積立金の相場から、国土交通省ガイドラインの最新基準、積立金が不足した場合の具体的な対処法まで解説しています。

マンションの大規模修繕における修繕積立金とは

ここでは、大規模修繕を支える修繕積立金の基本的な仕組みや、混同されやすい管理費との違い、具体的な使い道について解説いたします。

修繕積立金の基本的な仕組みと役割

修繕積立金とは、マンションの共用部分を将来的に修繕するために、区分所有者が毎月一定額を管理組合に積み立てる費用のことです。

マンションは時間の経過とともに外壁や屋根、防水層、給排水設備などが劣化するため、定期的な修繕が必要になります。

特に大規模修繕工事は1回あたり数千万円から億単位の費用がかかるため、工事直前にまとめて徴収することは現実的ではありません。

そのため、毎月少しずつ修繕積立金を積み立てることで、将来の大規模修繕に必要な資金を計画的に確保する仕組みが採用されています。

積立金の負担割合は、一般的に専有部分の床面積に応じて決められるため、広い住戸ほど負担額が大きくなります。

また、修繕積立金は一度積み立てた資金を修繕以外の目的に使用することはできず、マンション売却時にも返金されない点が特徴です。

修繕積立金と管理費の違い

マンションの維持に必要な費用として毎月徴収される修繕積立金と管理費は、混同されやすいものの、その目的は明確に異なります。

管理費は日常的な管理業務に使用される「維持費」であるのに対し、修繕積立金は将来の大規模修繕に備えた「修繕費」という位置づけです。

項目修繕積立金管理費
目的将来の大規模修繕工事への備え日常の管理・維持業務
使い道外壁塗装・防水工事・設備更新など清掃・点検・管理会社への委託費など
性質長期的に積み立てる資金毎月使用される経費
月額平均約13,000円約15,000円

管理組合の会計では、両者を「一般会計」と「修繕積立金会計」に分けて処理するのが原則です。

混同すると年度末の残高確認で不整合が生じるため、帳簿上も必ず区分して管理する必要があります。

修繕積立金の主な使い道

修繕積立金は主にマンションの共用部分の修繕に充てられます。

代表的な使い道としては、12〜15年周期で実施される大規模修繕工事のほか、給排水設備やエレベーターなどの設備更新、自然災害による突発的な修繕などが挙げられます。

大規模修繕では外壁塗装や屋上防水工事、シーリング工事、鉄部塗装などが主な工事項目となります。

修繕積立金の仕組みについてさらに詳しく知りたい方は、マンションの修繕積立金の仕組みや相場を解説した記事もあわせてご覧ください。

大規模修繕に必要な修繕積立金の相場と目安

ここでは、国土交通省のガイドラインやマンション総合調査のデータをもとに、大規模修繕に必要な修繕積立金の相場を具体的にご紹介します。

国土交通省ガイドラインによる修繕積立金の目安額

国土交通省が公表する「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)では、マンションの規模や階数に応じた修繕積立金の目安額が示されています。

このガイドラインは366件の長期修繕計画事例を分析して算出されたもので、均等積立方式による専有面積1㎡あたりの月額単価が示されています。

マンションの区分平均値(㎡/月)事例の2/3が収まる幅
15階未満・5,000㎡未満335円235円〜430円
15階未満・5,000〜10,000㎡252円170円〜320円
15階未満・10,000㎡以上271円200円〜330円
20階以上338円240円〜410円

たとえば、15階未満で延床面積8,000㎡のマンションにおいて専有面積70㎡の住戸の場合、月額の目安は252円×70㎡=約17,640円となります。

ただし、機械式駐車場がある場合はさらに加算が必要です。

なお、このガイドラインはあくまで「目安」であり、個々のマンションの設備や立地条件によって適正額は異なります。

出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

マンション規模・築年数別の修繕積立金相場

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、修繕積立金の1住戸あたり月額平均は13,054円(駐車場使用料等からの充当額を除く)となっています。

規模別では、20戸以下の小規模マンションほど1戸あたりの負担が割高になる傾向があります。

これはエントランスの自動ドアやエレベーターなど、マンション規模に比例しない設備修繕費を少ない戸数で分担するためです。

また、築年数が経過するほど修繕積立金の月額は上昇する傾向にあり、2回目・3回目の大規模修繕では給排水管の更新やエレベーターの交換など大がかりな工事が増えるため、必要な費用も増加していきます。

大規模修繕の1戸あたりの費用目安

マンションの大規模修繕にかかる費用は、国土交通省の「マンション大規模修繕工事実態調査」によると、1戸あたり75万〜125万円が最も多い価格帯です。

マンション全体では中規模マンション(40〜50戸)で4,000万〜6,000万円、大規模マンション(100戸以上)では1億円を超えるケースも珍しくありません。

大規模修繕の費用相場について詳しくは、マンションの大規模修繕費用相場を解説した記事をご参照ください。

修繕積立金の積立方式を比較|均等積立と段階増額

修繕積立金の積立方式には大きく2つの方式があり、どちらを採用するかによって毎月の負担額や将来の資金計画が大きく異なります。

ここでは、それぞれの特徴と令和6年のガイドライン改定で示された新基準を解説いたします。

均等積立方式の特徴

均等積立方式は、長期修繕計画で計画された修繕工事費の総額を計画期間中で均等に割り、毎月同じ金額を積み立てる方式です。

将来の負担額が変わらないため、区分所有者にとっては資金計画が立てやすく、値上げに伴う合意形成の問題も回避できます。

国土交通省も安定的な資金確保の観点から、均等積立方式を望ましい方式として推奨しています。

メリット
  • 毎月の積立額が一定で、長期的な家計管理がしやすい
  • 値上げの議決が不要で、合意形成のトラブルを回避できる
  • 将来的な修繕積立金の不足リスクが低い

段階増額積立方式の特徴

段階増額積立方式は、新築当初は修繕積立金を低く設定し、築年数が経過するにつれて段階的に引き上げていく方式です。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、均等積立方式が40.5%、段階増額積立方式が47.1%と、現在はやや段階増額方式が多い状況です。

新築マンションで購入時の月額負担を軽く見せるために採用されるケースが多いものの、将来の値上げが前提となるため注意が必要です。

×デメリット
  • 将来的に大幅な値上げが発生し、家計を圧迫する可能性がある
  • 値上げには総会決議が必要で、合意形成が困難になりやすい
  • 予定通りに増額できず、修繕積立金が不足する事例が多い

実際に、段階増額積立方式を採用しているマンション249事例の調査では、計画当初から最終計画年までの値上げ幅の平均が約3.6倍に達しているという報告もあります。

新築時に月額7,000円だった修繕積立金が、築20年を過ぎる頃には25,000円以上に上がるケースがあるということです。

令和6年ガイドライン改定で示された値上げ幅の基準

令和6年6月に改定された国土交通省のガイドラインでは、段階増額積立方式における値上げ幅の具体的な基準が新たに示されました。

出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン等の改定について」

ガイドライン改正の要点

均等積立方式とした場合の月額を「基準額」とし、段階増額積立方式の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は基準額の1.1倍以内とすることが示されました。

つまり、新築時の低い設定額から最終的な値上げ幅は最大1.8倍程度に収まる計算です。

この基準は管理計画認定制度にも反映される予定で、過度な値上げを抑制しつつ、安定的な資金確保を促す狙いがあります。

この改定により、管理組合は段階増額方式を採用する際の適切な引上げ計画を立てやすくなりました。

国土交通省のガイドライン全体について詳しくは、大規模修繕の国土交通省ガイドラインを解説した記事をご確認ください。

マンションの修繕積立金が不足する原因と対処法

修繕積立金の不足は多くのマンションで共通する深刻な課題です。

なぜ不足が起きるのか、その原因を理解したうえで、適切な対処法を講じることが大規模修繕の成功につながります。

修繕積立金が不足する3つの主な原因

マンションの修繕積立金が不足する背景には、複数の要因が絡み合っています。

修繕積立金が不足する原因
  • 新築時の設定額が低すぎること
  • 長期修繕計画の見直しが行われていないこと
  • 建築資材価格や人件費の高騰

まず1つ目は、新築時の設定額が低すぎることです。

分譲会社がマンション販売時の月額負担を軽く見せるために、修繕積立金を本来必要な水準よりも大幅に低く設定するケースが少なくありません。

2つ目は、長期修繕計画の見直しが行われていないことです。

国土交通省は5年程度ごとの見直しを推奨していますが、一度も見直していないマンションでは、建築資材の高騰や設備の追加劣化分が反映されず、計画と実態にギャップが生じてしまいます。

3つ目は、建築資材価格や人件費の高騰です。

近年は建築コストが大幅に上昇しており、当初の長期修繕計画で想定していた工事費では対応しきれないケースが増えています。

特に2020年以降は世界的な物価上昇の影響を受け、修繕費用が計画を上回る事例が目立ちます。

修繕積立金の値上げについて詳しくは、修繕積立金の値上げに関する解説記事も参考になさってください。

積立金が不足した場合の具体的な対処法

大規模修繕の時期が近づいているにもかかわらず修繕積立金が不足している場合、管理組合には以下のような対応策が考えられます。

対処法
  • 修繕積立金の増額を検討する
  • 一時金の徴収を検討する
  • 金融機関からの借入を活用する
  • 工事内容の優先順位を見直す

それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、マンションの状況に応じた判断が求められます。

修繕積立金の増額を検討する

まず、長期修繕計画を見直したうえで月々の修繕積立金の増額を総会で決議します。

工事が差し迫っていない場合は、段階的な増額で将来の不足分を補うことが可能です。

ただし総会での過半数の賛成が必要なため、住民への丁寧な説明が欠かせません。

一時金の徴収を検討する

工事が近く、増額では間に合わない場合は、区分所有者から一時金を徴収する方法があります。

金利がかからず手早く不足分を補えますが、住民への負担が大きいため合意形成が難しい面もあります。

金融機関からの借入を活用する

住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」など、管理組合向けの融資制度を活用する方法です。

利息は発生しますが、住民に一時的な高額負担を求めずに済むため、合意を得やすいメリットがあります。

工事内容の優先順位を見直す

建物診断の結果をもとに、緊急性の高い工事と先送りできる工事を明確にします。

劣化が軽度な箇所は次回の大規模修繕に回すことで、当面の費用を抑えることが可能です。

ただし、先送りにより劣化が進行し、将来的にコストが増大するリスクもあるため、専門家の判断を仰ぐことが重要です。

修繕積立金が不足しているからといって大規模修繕を安易に先送りにすることは、建物の劣化を加速させ、将来的にさらに多額の費用が必要になるリスクがあります。

早い段階で専門家に相談し、適切な資金計画を立てることが大切です。

大規模修繕の修繕積立金を適正に管理するポイント

修繕積立金の不足を未然に防ぎ、スムーズに大規模修繕を実施するためには、日頃からの管理体制が重要です。

ここでは、管理組合が実践すべき2つのポイントをご紹介いたします。

長期修繕計画の定期的な見直しが重要

修繕積立金の適正額は、長期修繕計画に基づいて算出されます。

国土交通省のガイドラインでは、計画期間を30年以上とし大規模修繕を2回以上含む期間を設定すること、そして5年程度ごとの見直しを推奨しています。

長期修繕計画を定期的に見直すことで、建築資材価格の変動や建物の劣化進行状況を反映した正確な資金計画を維持できます。

見直しの際には、建物診断を実施したうえで修繕工事の内容と時期を再設定し、必要な修繕積立金の額を再計算します。

見直しの結果、積立金の増額が必要と判明した場合は早期に総会で合意を得ることが重要です。

長期修繕計画の作成方法や見直しについては、長期修繕計画の作成手順と見直し方法を解説した記事で詳しくまとめています。

施工会社選びでコストを適正化する方法

大規模修繕の費用を適正に抑えるためには、施工会社の選び方も大きなポイントになります。

管理会社任せにするのではなく、管理組合が主体的に複数の施工会社から見積もりを取得し、工事内容と価格を比較検討することが重要です。

特に注目すべきは発注形態の違いです。

元請け施工会社に直接発注する場合と、下請けを介して発注する場合では、中間マージンの有無で費用が大きく異なります。

また、工事項目ごとの単価を細かく確認し、不要な工事が含まれていないかを精査することも、修繕積立金の有効活用につながります。

修繕積立金の負担を抑える大規模修繕の進め方

ここでは、創業16年・施工実績5,000件以上の現場経験をもとに、修繕積立金の負担を少しでも軽減するための実践的なポイントをお伝えします。

複数社の相見積もりで適正価格を見極める

大規模修繕を成功させるうえで、相見積もりの取得は非常に重要なプロセスです。

最低でも3社以上から見積もりを取得し、工事範囲・使用材料・施工方法・保証内容を比較することをおすすめします。

見積書の項目や単価が施工会社によって大きく異なることは珍しくなく、比較検討することで適正価格が見えてきます。

また、安さだけで判断するのではなく、過去の施工実績や工事後の保証制度、住民対応の体制なども総合的に評価することが、結果的に修繕積立金を有効に活用することにつながります。

元請け施工で中間マージンを削減する

大規模修繕の費用には、施工会社間の中間マージンが含まれるケースがあります。

元請け→下請け→孫請けと工事が多重委託されると、その都度マージンが上乗せされ、結果的に修繕積立金の負担が増加してしまいます。

元請け施工を行う会社に直接依頼することで、中間マージンをなくし、同じ工事内容でもコストを抑えることが可能です。

大規模修繕工事の詳細については、新東亜工業の大規模修繕工事サービスページもぜひご覧ください。

大規模修繕の修繕積立金に関するよくある質問(FAQ)

マンション大規模修繕の修繕積立金に関して、管理組合の方からよくいただくご質問にお答えします。

マンションの修繕積立金の平均月額はいくらですか?
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、修繕積立金の1住戸あたり月額平均は約13,054円です。
ただし、マンションの規模や築年数、設備内容によって金額は大きく異なります。
国土交通省のガイドラインでは専有面積1㎡あたりの目安額も示されており、ご自身のマンションの適正額を確認する際の参考になります。
修繕積立金が足りない場合、大規模修繕はどうなりますか?
修繕積立金が不足している場合、管理組合は「修繕積立金の増額」「一時金の徴収」「金融機関からの借入」「工事内容の見直し」といった対応策を検討することになります。
大規模修繕の先送りは建物の劣化を加速させるリスクがあるため、早期に専門家に相談して適切な資金計画を立てることが重要です。
均等積立方式と段階増額積立方式のどちらが良いですか?
国土交通省は、将来にわたり安定的な修繕積立金を確保する観点から均等積立方式を推奨しています。
均等積立方式は毎月の負担が変わらず資金計画が立てやすい一方、段階増額積立方式は当初の負担が軽い反面、将来的な値上げの合意形成が難しいというリスクがあります。
可能であれば、段階増額方式から均等積立方式への移行を管理組合で検討されることをおすすめいたします。
修繕積立金の値上げは拒否できますか?
修繕積立金の値上げは管理組合の総会で決議されるため、個人の判断で拒否することは原則できません。
総会で過半数の賛成を得て可決された場合、全区分所有者に支払い義務が生じます。
値上げに反対する場合は、総会の場で意見を述べたり、代替案を提案することが建設的な対応となります。
大規模修繕の費用を抑えるにはどうすれば良いですか?
大規模修繕の費用を適正に抑えるためには、複数の施工会社から相見積もりを取得すること、中間マージンの発生しない元請け施工会社を選ぶこと、建物診断に基づいて工事の優先順位を見極めることが有効です。
管理会社に任せきりにするのではなく、管理組合が主体的に情報収集と比較検討を行うことが大切です。

まとめ

本記事のポイントをまとめると、修繕積立金の月額平均は約13,000円で、国土交通省のガイドラインに基づく目安額と照らし合わせてご自身のマンションの状況を確認することが第一歩です。

修繕積立金の不足が懸念される場合は、長期修繕計画の見直しと早期の対策が重要です。

また、施工会社の選び方次第で大規模修繕の費用は大きく変わります。

相見積もりの取得や元請け施工の活用により、限られた修繕積立金を最大限に活かすことが可能です。

新東亜工業では、中間マージンゼロの元請け施工で、創業16年・5,000件以上の施工実績をもとに、お客様に最適なプランをご提案しております。

修繕積立金や大規模修繕に関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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