ビルの中規模修繕費用を徹底解説|目安・内訳・コスト削減のポイント

2025/07/24

中小規模のビルを所有・管理しているオーナー様や管理会社にとって「中規模修繕」は、避けて通れない課題の一つです。
とはいえ「具体的にどれくらいの費用がかかるのか」「どのような工事が含まれるのか」「費用を抑えるためにはどうしたら良いか」など、不明点も多いのが実情です。

本記事では、中規模修繕工事にかかる費用の目安や工事項目・見積もりの取り方・コストダウンのポイントまでを丁寧に解説します。

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目次

中規模修繕とは

中規模修繕とは、建物全体の老朽化を踏まえた計画的な改修であり、大規模修繕と比べて費用・工事期間は抑えられるものの、一定規模の準備と予算が必要な工事です。
定期的に実施される中規模修繕は、建物の寿命を延ばし、テナントや利用者の満足度を保つためにも欠かせません。
具体的には以下のようなケースが、該当します。

  • 延床面積…1000〜3000㎡程度
  • 階数…3〜6階建て程度
  • 用途…事務所ビル・テナント併用ビル・医療・福祉施設 など
  • 工事内容…外壁塗装・防水工事・給排水管の更生工事・共用部分の補修など

中規模修繕は、日常的な保全修繕と大規模修繕の中間に位置づけられ、予算計画に柔軟性を持たせる意味でも重要な工事といえます。

中規模修繕の費用相場

ビルの中規模修繕では、工事項目と建物の規模によって費用総額が大きく変わります。
ここでは、建物の規模別の費用相場と主な工事項目別の内訳を紹介します。
事前に費用感を掴んでおくことで、想定外の出費を抑え、スムーズな資金調達にもつながります。

戸数・階数別の修繕費目安

以下の表は、建物の規模別における中規模修繕の費用相場を示しています。

建物規模想定費用総額坪単価の目安
延床1000㎡未満800〜1200万円3〜4万円/坪
延床1500㎡前後1200〜1800万円3〜4.5万円/坪
延床2000㎡以上1800〜2500万円4〜5万円/坪

これはあくまで概算であり、構造材の種類(鉄骨造・RC造など)や立地条件・施工時期・天候による制約などによって増減します。
とくに都市部では仮設足場や搬入搬出のコストが上昇する傾向があるため、エリア別の費用感も参考にすると良いでしょう。

工事項目ごとの費用内訳

以下は、代表的な工事項目とそれぞれの費用の目安です。

  • 外壁補修・塗装工事…500〜800万円(建物全面)
  • 屋上防水工事:150〜300万円(アスファルト防水 or ウレタン防水)
  • 給排水管更新・更生:200〜500万円(共用部中心)
  • 共用部内装工事:100〜300万円(照明・天井・床材など)
  • 仮設足場・養生工事:200〜400万円

それぞれの工事において、採用する材料や施工範囲、日数によって大きく金額が異なります。
また、修繕工事は複数業者が関与するため、工程管理や施工管理の質によっても仕上がりとコスト効率が左右されます。
建物用途や入居者の構成によっては、夜間作業や週末作業による追加費用が発生する点にも注意が必要です。

中規模修繕費用に影響する主な要因

中規模修繕にかかる費用は、建物の延床面積や階数といった物理的条件だけでなく、さまざまな要因によって左右されます。
これらの要因を事前に把握しておくことで、予算オーバーを防ぎ、見積もり内容の妥当性を見極めることができます。
以下では、費用に大きく影響を与える代表的な要素を詳しく解説します。

建物の劣化状況と使用材料

建物の劣化具合やこれまで使用されてきた材料の種類は、修繕費用に大きな差をもたらします。
たとえば、外壁がタイル仕上げであれば、モルタル仕上げと比べて目地補修や張り替えに手間がかかり、費用も増加する傾向にあります。
さらに、タイルの種類が特殊である場合、材料の取り寄せコストや職人の技術料が上乗せされることもあります。

加えて、修繕履歴の有無も重要なポイントです。
過去に適切な修繕が定期的に行われていた建物では、劣化の進行が抑えられており、今回の工事にかかる手間が軽減される可能性があります。
逆に、長年放置された建物では、表面だけでなく内部構造まで劣化が進んでいるケースもあり、大掛かりな下地補修が必要となることで、工期と費用が増加します。

工法の選定(塗装・防水・補修の違い)

工事の目的が同じであっても、採用する工法によって費用には大きな差が出ます。
たとえば、防水工事ひとつを取っても、ウレタン塗膜防水・アスファルトシート防水・塩ビシート防水といった複数の選択肢があり、それぞれ耐用年数や施工性・材料費が異なります。

塗装工事においても、使用する塗料の種類により価格差があります。
シリコン系塗料・フッ素系塗料・無機塗料などがあり、それぞれの耐久年数や性能に応じて費用が変動します。
塗料の選定には、今後の再塗装周期や美観の維持・耐候性などの観点から中長期的な計画を立てることが求められます。

施工会社の選び方・見積もりの違い

施工会社の選定も、費用に大きく関わってきます。
表面的に同じ工事内容であっても、業者によって数十万円から数百万円の価格差が生じるケースは少なくありません。
これは、職人を自社で雇用しているか外注か、資材の仕入れルートや量による原価差・現場管理費や共通仮設費の取り扱いなど、内部の運営体制によって経費の積算方法が異なるためです。
そのため、見積もりの質を見極める力が発注者側にも求められます。

実録!新東亜工業の施工事例|8階建てマンションの大規模修繕工事

築17年の8階建てマンションにおける、管理組合主導による大規模修繕工事の一部始終をご紹介します。
「予算オーバーを避けたい」「融資は極力使いたくない」といった現実的な課題を抱える中で、新東亜工業がどのように提案し、信頼を築きながら工事を完遂したのか──。
理事会への説明から近隣対応、完成後のフォローまで、実際のやり取りを交えてリアルにお伝えします。

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ご相談内容

築17年が経過し、管理組合では以前から大規模修繕の検討がされていましたが、資材高騰などにより予算が合わず延期されていた背景があります。「融資は避けたい」「必要な部分に絞って実施したい」といった要望の中、数社に見積り依頼をされていた中で弊社にご相談をいただきました。

担当者:お問い合わせありがとうございます。ご予算に合わせて施工範囲を調整することも可能です。弊社は子会社で材料問屋を持っているため、同じ工事でも他社様より価格を抑えるご提案が可能です。
お客様:なるべく費用を抑えたいので、ぜひ現地調査をお願いします。図面などもご用意します。
担当者:ありがとうございます。図面と、屋上に鍵があるようであればご用意をお願いします。

工事の概要|工事金額と期間

大規模修繕 施工前
大規模修繕 施工後
https://shintoakogyo.co.jp/case/posts/69525/
項目 内容
建物種別 分譲マンション(8階建て)
所在地 東京都内(詳細非公開)
工事内容 大規模修繕工事(外壁補修・塗装・防水・シーリング・長尺シート他)
工法 足場設置のうえ全面修繕/ウレタン塗膜防水(密着工法)他
その他特記事項 理事会へのプレゼンあり、工事中の騒音・近隣対策対応あり

工事金額:2,430万円 期間:約2カ月間

現地調査で判明した劣化症状

現地調査では、屋上の防水層や外壁のシーリング、タイル目地などに劣化が見られました。既存のアスファルトシート防水はまだ機能していたものの、再施工のタイミングとしては適切であり、ウレタン塗膜防水による上塗りを推奨しました。また、タイルの一部には硬化不良が確認され、慎重な撤去作業が必要な状態でした。

担当者:屋上はアスファルトシート防水ですね。状態は悪くないので、ウレタン塗膜防水の密着工法が適しています。
お客様:それでお願いします。あとベランダは見た目を良くしたいので、長尺シートも検討したいです。
担当者:シートは費用が倍近くかかるので、ウレタンの方が予算には優しいですね。
お客様:でも可能ならシートにしたいので、そちらで見積りお願いします。

施工中のやり取りと配慮

工事期間中は、騒音や近隣への影響を最小限に抑える配慮を行いました。作業工程や騒音の案内は掲示板やホワイトボードで事前に周知し、近隣住民や管理人との連携も徹底。足場設置やメッシュシートの風対策も含め、安全対策も万全に対応しました。また、アスベスト調査も事前に実施し、含有なしを確認済みです。

お客様:日曜に音がしたって苦情が来たのですが…。
担当者:調べたところ、隣の工事のものでした。担当者に周知のお願いはしておきました。
お客様:ありがとうございます。トラブルにならなくてよかったです。

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引き渡し時のご感想

工事完了後、お客様からは「タイルもまったく違和感がない」「すごく綺麗になった」と高い評価をいただきました。タイルの保管方法や施工写真・保証書を含めた竣工図書の提出も行い、今後のメンテナンスにも役立てていただける内容でお渡ししました。

お客様:どこを張り替えたかわからないくらい自然ですね。
担当者:窯焼きで色を合わせたので、かなり近く再現できています。必要があればいつでもご連絡ください。
お客様:ありがとうございます。次は廊下の床や照明をまとめて検討したいと思います。

今回の工事では、以下のような成果が得られました。

  • ご予算に合わせた柔軟な工事範囲調整
  • 自社施工・材料問屋からの直接仕入れでコストダウンを実現
  • 理事会での丁寧なプレゼンと近隣配慮で信頼を構築
  • 施工中の進捗報告や打ち合わせで透明性を確保
  • 外観と防水性が向上し、物件価値の維持につながった

新東亜工業では、お客様の状況に合わせた提案と対応を徹底しております。大規模修繕に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

中規模修繕工事の見積もりと注意点

修繕工事を実施するにあたり、複数業者からの見積もりを取得して内容を比較する「相見積もり」は基本です。
しかし、金額の比較だけでなく、見積もりの中身や工事体制、保証内容なども含めて総合的に判断することが大切です。

見積書のチェックポイント

良質な見積書には、工事項目ごとの数量・単価が細かく記載されており、仮設費や養生費・諸経費の内訳も明確になっています。
使用する材料名や工法名が具体的で、各工程ごとの費用が透明であればあるほど、トラブルの発生リスクは抑えられます。

一方、「一式」表記が多用されている見積書は注意が必要です。
これでは工事範囲が不明瞭になり、追加費用を請求される可能性があります。
不明点があれば、担当者にその場で説明を求め、可能な限り明細を明らかにしてもらうことが大切です。
また、消費税の記載方法が税込か税抜かも確認しておきましょう。

相見積もりの取り方と比較方法

相見積もりを取る際には、同じ条件で比較ができるよう、各社に同一の仕様書や要望書を提示することが重要です。
これが不十分だと、各社の見積もり内容に差が出すぎて比較が困難になります。
可能であれば、建築士や第三者機関に依頼して、共通の見積依頼書を作成してもらうと安心です。

比較の際は価格以外にも、担当者の説明力・工程管理体制・保証内容・アフターサービスの有無なども確認しましょう。
工事完了後の定期点検の有無なども、長期的な建物の維持においては重要な要素です。

設計監理方式の活用メリット

設計監理方式とは、設計と工事監理を専門家(建築士など)が担当し、発注者側の代理として工事の品質・進捗・コストを管理する方式です。
この方式を採用することで、施工業者との癒着を防ぎ、客観的かつ公正な判断がなされやすくなります。

見積もり段階でも、専門家の知見によって必要な工事と不要な工事を仕分けし、仕様を明確化することができるため、無駄な費用を削減することが可能です。
また、工事中も定期的な現場確認や報告が行われることで、施工ミスや工期遅延の防止につながります。

設計監理方式を取り入れることで、品質の高い修繕工事を、適正価格で、安心して発注できる環境を整えることができます。

中規模修繕の費用を抑えるコツと助成制度の活用

中規模修繕の費用を抑えながらも品質を確保するためには、単なる節約ではなく、戦略的な工夫と情報収集が欠かせません。
このセクションでは、無理のない形でコストを調整するためのポイントと、利用可能な補助制度について詳しく解説します。

工事内容の優先順位付け

中規模修繕の費用をできるだけ抑えつつ、品質を維持するためには、計画の立て方と情報収集の工夫が欠かせません。
まず、費用削減の基本は「工事内容の優先順位付け」です。
すべての補修箇所を一度に実施しようとすれば、当然コストは膨らみます。
しかし、劣化の程度や緊急性を見極めたうえで「今やるべき工事」と「次回に先送りできる工事」を仕分けることで、費用を分散させることができます。
また、同じ内容の工事であっても、使用する材料や工法によって金額に差が生じます。
たとえば外壁塗装であれば、シリコン系塗料よりもフッ素系や無機塗料のほうが高額ですが、耐用年数が長いため、長期的には再塗装の回数を減らしトータルコストを下げることも可能です。
初期費用だけにとらわれず、長期的な視点で判断することが重要です。

修繕工事の発注時期を工夫する

修繕工事の発注時期を工夫することでも、コスト調整に役立ちます。
建設業界の繁忙期である春〜夏を避けて、秋〜冬の閑散期に工事を依頼することで、割安な価格で契約できる場合があります。
事前に業者へスケジュールの相談を行い、柔軟に時期を調整できれば、見積額の引き下げにつながる可能性があります。
また、閑散期には工期の融通が利きやすく、施工体制の安定にもつながるため、品質面でもメリットがあります。
発注タイミングを調整するだけでも、大きな違いが生まれるでしょう。

公的な補助金制度を上手に活用する

さらに、公的な補助金制度を上手に活用することで、修繕費用を抑えることができます。
たとえば、省エネ改修やバリアフリー対応工事など、条件を満たす特定の工事には、自治体や国から補助金が出ることがあります。
なお補助金は年度ごとに予算枠が設定されているため、申請のタイミングが重要です。
募集期間や申請要件を事前に確認し、できれば専門家のサポートを受けながら書類を準備することをおすすめします。

中規模修繕を依頼する業者の選び方

中規模修繕を成功させるには、信頼できる施工業者を見極めることが非常に重要です。
費用の妥当性だけでなく、品質管理・対応力・アフターフォロー体制など多角的な視点で判断することが求められます。

建設業許可と施工実績の確認

まず大切なのは「建設業許可」を有しているかの確認です。
許可業者であれば、一定の技術者要件や資本金基準を満たしており、無許可業者に比べて信頼性が高い傾向にあります。
また、これまでの施工実績や対応エリアを確認しましょう。
中規模ビルに特化した修繕経験が豊富であることはもちろん、建物の構造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造など)に応じた対応力があるかも重要な評価ポイントです。

現地調査の精度と見積書の信頼性

現地調査の丁寧さも、見極め材料のひとつです。
初回の現地調査において、劣化部位を写真付きで記録し、数量拾い出しを正確に行っている業者は、見積書の精度も高く、工事のトラブルが起きにくくなります。
また見積書には、材料名・工法名・数量・単価が細かく記載されているかもチェックしましょう。

設計監理方式の導入と工事監理体制

第三者の監理者(設計事務所や建築士)を交えた設計監理方式を採用することにより、発注者と施工者の間に適切な距離が生まれ、透明性のある工事運営が期待できます。
仕様書作成や工程管理・品質確認などを客観的に行える点で、結果としてトラブル防止にもつながります。

保証内容とアフターサポートの有無

最後に、保証制度やアフターメンテナンスの有無も確認しましょう。
工事後の不具合に対して無償で対応する保証があるかどうかで、施工会社の責任感を測ることができます。
少しでも不明な点があれば、見積書や契約前の打ち合わせの段階で納得できるまで質問する姿勢が大切です。

中規模修繕に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 中規模修繕の適切なタイミングはいつですか?

建物の築年数が15〜25年を経過した頃が、中規模修繕の一つの目安です。
ただし、過去の修繕履歴や使用材料・立地環境によって異なります。
外壁や屋上の劣化・排水管の不具合などが見られる場合は、早めの実施が望ましいです。

Q2. 修繕工事中のテナント営業は可能ですか?

基本的には営業可能ですが、外壁足場の設置や工事音・振動などにより一定の影響は避けられません。
事前に説明会を開いてテナントと情報共有を行い、営業時間外の工事調整や騒音の配慮を行うことでトラブルを防げます。

Q4. 業者選定で失敗しないためのポイントは?

実績と信頼性を重視することが、基本です。
過去の施工事例や口コミ・建設業許可の有無を確認するほか、現地調査の精度や見積書の明瞭さも判断材料になります。
できれば設計監理者の立ち合いのもとで、入札・選定を行うとより安心です。

Q5. 修繕内容の記録はどう残せば良いですか?

工事完了後は、施工写真・工事報告書・保証書?使用材料の仕様書などを一式で保管しましょう。
将来の再修繕時に必要な情報となるだけでなく、建物売却時にも資産価値を証明する資料になります。

まとめ

中規模修繕は、費用と手間がかかる一大イベントである一方で、建物の安全性・快適性・資産価値を守るためには欠かせないプロセスです。
後手に回ると、劣化が深刻化し、結果的により大きな費用が発生するリスクもあります。

そのため、早めの劣化診断や長期修繕計画の見直しを行い、事前に必要な工事項目を把握しておくことが重要です。
また、複数の見積もりを比較検討し、信頼できる業者を選定することで、品質とコストのバランスを取ることができます。
さらに、助成制度や資金調達の選択肢を理解しておくことで、無理のない形で修繕を実行に移すことが可能になります。

情報のアンテナを張り、必要なタイミングで行動できる体制を整えることが、中規模修繕成功の決め手となるでしょう。