
アスファルト防水の押さえコンクリートを解説|劣化する?改修工事は必要?
2023/12/05

押さえコンクリートを知りたい人
押さえコンクリートとは?
アスファルト防水の押さえコンクリートの特徴は?
押さえコンクリートの屋上の防水層を改修したい!
押さえコンクリートと保護コンクリートの違いは?
押さえコンクリートをシート防水に変えたい!
押さえコンクリートに防水工事は必要?
「押さえコンクリート」という言葉を聞いてすぐに理解できる方は、屋上防水について理解の深い方でしょう。
屋上防水においてアスファルト防水を施工する場合、押さえコンクリート仕上げと露出仕上げの2つの仕上げ方法があり、屋上の使用目的によってどちらの工法を行うかを判断します。
この記事では、屋上の防水で最も広く利用されているアスファルト防水の押さえコンクリート仕上げについて解説します。
アスファルト防水は防水工事の中でも最も耐久性の高い工法で、さらに仕上げ方法によってその効果は異なります。
露出仕上げとの違いや、各項目での比較も紹介していますので、どのような屋上が押さえコンクリート仕上げに向いているのか、またその補修方法なども紹介します。
屋上防水を考える方にとって、施工法の選択肢が増えるなど、有益な情報となっていますので、是非最後までお読みくださいね。
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目次
アスファルト防水の押さえコンクリートとは?
アスファルト防水の押さえコンクリートとは、防水層の上にコンクリートを打設し、防水層を保護する仕上げ方法のことです。紫外線や風雨による劣化を防ぎ、防水機能を長持ちさせる役割を果たします。
また、温度変化による膨張・収縮を抑え、防水層のひび割れを防ぐ効果もあります。さらに、屋上の歩行や機材の設置に対応し、耐荷重性を高めるメリットもあります。主にビルやマンションの屋上に採用され、耐久性とメンテナンス性を向上させる工法です。
アスファルト防水押さえコンクリート仕上げの耐用年数
押さえコンクリート仕上げのアスファルト防水の耐用年数は、17年といわれています。
耐用年数は一般的に工法・仕様・気象条件等で異なりますが、ある程度の目安として、通称、総プロによる「建築防水の耐久性向上技術」の中の「防水層の標準耐用年数」によると、アスファルト防水押さえコンクリート仕上げの場合は17年と示されています。
また、防水材料のメーカーである田島ルーフィング㈱の研究による見解をみると、平均耐用年数は26年とされています。
両者で大きな差が見られますが、定期的に防水施工のプロである防水専門業者による点検は欠かさず行いましょう。
※総プロとは、昭和55年から5年間にわたり実施された建設省総合技術開発プロジェクト「建築物の耐久性向上技術の開発」の総称。
アスファルト防水を含む押さえコンクリート仕上げが必要な屋上
屋上には様々な使い方があるのはご存知でしょうか。
特に押さえコンクリート仕上げのアスファルト防水が施された屋上は、高い耐久性を持ち、次のような使い方に向いています。
- デパートや公共施設など、多くの人が頻繁に歩く屋上
- オフィスビルやマンションなど憩いの場所として用いる屋上
- 病院など、洗濯物を干す場所として用いる屋上
- 駐車場として用いる屋上
人や車が頻繁に出入りする屋上は耐久性と防水性の両方が求められることには納得ですね。
押さえコンクリートの役割とメリット
押さえコンクリートは、アスファルト防水の上に施工される保護層であり、主に防水層の耐久性向上や外部環境からの影響を軽減する役割を果たします。特に、屋上や広い防水面において、その効果が大きく発揮されます。ここでは、押さえコンクリートの3つの主要な役割とメリットについて詳しく解説します。
防水層の保護
アスファルト防水層は、施工直後は高い防水性能を持っていますが、紫外線や風雨、物理的な衝撃によって徐々に劣化します。押さえコンクリートを施工することで、これらの外的要因から防水層を守り、耐用年数を延ばすことが可能になります。
具体的な劣化要因と押さえコンクリートの効果
劣化要因 | 押さえコンクリートの保護効果 |
---|---|
紫外線 | 直射日光を遮り、防水層の劣化を遅らせる |
風雨・温度変化 | 雨水の直接的な影響を防ぎ、温度変化の影響を緩和 |
飛来物や歩行によるダメージ | 外部の衝撃から防水層を保護し、損傷を防ぐ |
特に、屋上が頻繁に利用される建物では、防水層の上を直接歩行すると摩耗が進みやすくなります。押さえコンクリートを設置することで、直接的な摩耗を防ぎ、防水機能を長期間維持できます。
温度変化の緩和
アスファルト防水層は熱の影響を受けやすく、温度変化によって伸縮を繰り返します。これが続くと、ひび割れや防水層の浮きが発生し、防水性能が低下する可能性があります。押さえコンクリートは熱容量が大きいため、温度変化を緩和し、防水層へのダメージを軽減します。
温度変化による防水層への影響
- 夏季の直射日光による温度上昇(50〜70℃以上)
- 冬季の寒冷による収縮(0℃以下)
- 昼夜の温度差による膨張・収縮の繰り返し
押さえコンクリートがあることで、これらの温度変化を吸収し、防水層への負担を軽減します。特に、寒暖差の激しい地域や、屋上の直射日光が強い環境では、押さえコンクリートが防水層の劣化防止に大きく貢献します。
歩行や荷重への対応
屋上をメンテナンス通路や物置スペースとして活用する場合、防水層の耐荷重性を向上させるために押さえコンクリートが施工されます。防水層は基本的に柔らかく、直接の荷重に耐える設計ではないため、コンクリートを施工することで、歩行や機材の設置による損傷を防ぐことができます。
押さえコンクリートが必要なシチュエーション
利用用途 | 押さえコンクリートの必要性 |
---|---|
屋上の歩行通路 | 防水層を直接踏まないための保護 |
エアコン室外機・機材の設置 | 重量物による防水層の破損防止 |
緊急時の避難通路 | 安全な歩行路の確保 |
屋上庭園・緑化スペース | 重量を支えつつ、防水層を保護 |
また、押さえコンクリートの厚みを適切に設定することで、建物全体の耐荷重設計を最適化できます。一般的には5~6cm程度の厚さで施工され、荷重が大きい場合は補強メッシュを入れることで、ひび割れを防ぎ、耐久性を向上させます。
押さえコンクリートは、アスファルト防水の保護・温度変化の緩和・耐荷重性の向上という3つの大きな役割を果たします。特に、屋上の利用用途が広がる昨今では、単なる防水機能の維持だけでなく、安全で利便性の高いスペースを確保するためにも、押さえコンクリートの適切な施工が重要です。
適切な厚さや目地の設置、定期的なメンテナンスを行うことで、建物の耐久性を大幅に向上させることができます。
アスファルト防水の押さえコンクリート仕上げにおける劣化症状
押さえコンクリートは、屋上の厳しい自然環境にさらされ、温度変化・紫外線・雨風・地震などにより年月を重ねることで劣化が進みます。
押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の劣化症状を下記にまとめました。
症状がみられる場合は、改修を視野に入れましょう。
アスファルト防水の劣化症状1.押さえコンクリート仕上げのひび割れ
押さえコンクリートは建物への負荷を少なくするため、厚さ約6cmで打設します。
コンクリートは、温度の変化や、コンクリートに含まれた水分によって膨張・収縮繰り返し、ひび割れに発展します。
最初は軽微なひび割れでも、そこに雨水などが侵入し、さらに劣化が進みます。
アスファルト防水の劣化症状2.押さえコンクリート仕上げの浮き
コンクリートにひび割れが発生し、そこに振動などによってずれが生じ、浮きが発生します。
アスファルト防水の劣化症状3.押さえコンクリート仕上げ伸縮目地のひび割れや剥がれ
コンクリートは日々伸縮し、劣化が進む特徴があるため、それを防ぐために縦横3メートル間隔で伸縮目地を打設します。
温度差などによって大きく伸縮・膨張を繰り返し、地震などの振動によって生じるコンクリートへの負担を伸縮性のある伸縮目地が吸収してくれるのです。
コンクリートの膨張を吸収する役割を持つ伸縮目地も、経年により劣化し、その機能が失われます。
時には劣化した伸縮目地が表面から飛び出し、歩行の障害になることもあり、伸縮目地の劣化の症状であるひび割れ・剥がれには気を付けておくべきでしょう。
アスファルト防水の劣化症状4.押さえコンクリート仕上げに水たまりの発生
押さえコンクリート・伸縮目地の経年による劣化により、押さえコンクリートとアスファルト防水層の間に雨水が侵入することが考えられます。
アスファルト防水層は耐久性もあり、防水効果も高いのですが、この防水層も経年などの理由で劣化していると、建物への浸水は防ぐことは難しいでしょう。
アスファルト防水押さえコンクリートの改修方法とポイント
押さえコンクリートは、防水層を保護する役割を果たしますが、経年劣化によってひび割れや剥離などの問題が発生することがあります。改修方法は、部分補修・全面改修・防水工法の選定の3つのアプローチに分かれ、それぞれの状況に応じた適切な対応が求められます。
改修方法やポイントについて詳しく解説していきます。
部分補修:ひび割れや小規模な劣化への対応
押さえコンクリートに発生する軽微なひび割れや小規模な剥がれは、早期に補修することで、劣化の進行を防ぎ、防水機能を維持できます。部分補修では、以下の方法を採用します。
主な補修方法
劣化症状 | 補修方法 |
---|---|
小さなひび割れ(0.3mm以下) | 防水補修材(エポキシ樹脂、ポリマーセメント)を充填 |
大きなひび割れ(0.3mm以上) | ひび割れ部分をVカットし、エポキシ樹脂やシーリング材を注入 |
表面の剥がれ | 剥がれた部分を除去し、新たにモルタルや補修材を塗布 |
防水層の浮きや膨れ | 部分的に防水層を剥がし、新しい防水材を塗布 |
ポイント
- ひび割れが広がる前に早めに対処することが重要です。放置すると、水が浸入し、防水層にダメージを与える可能性があります。
- シーリング材や補修材の適切な選定が必要です。防水性を確保するため、防水性能を持つ補修材を使用することが推奨されます。
全面改修:広範囲の劣化時の対応
押さえコンクリートが広範囲に劣化している場合、部分補修では対応しきれないため、防水層と押さえコンクリートの撤去・再施工が必要になります。全面改修を行う主なケースとして、以下のような状況が考えられます。
全面改修が必要な主な症状
- コンクリートの広範囲のひび割れや剥がれ
- 押さえコンクリートが浮いている
- 防水層が破損し、漏水が発生している
- 改修後10年以上経過し、防水性能が低下している
全面改修の流れ
- 既存の押さえコンクリートと防水層の撤去
- 劣化したコンクリートを**斫り工法(はつりこうほう)**などで撤去し、防水層を露出させる。
- 既存の防水層が機能していない場合、新しい防水層を施工する。
- 防水層の再施工
- ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水など、建物の状況に適した防水工法を選定し、防水施工を行う。
- 押さえコンクリートの再施工
- 新しい押さえコンクリートを打設し、適切な厚さと強度を確保する。
- 伸縮目地を設置し、ひび割れ防止対策を行う。
- 養生・仕上げ
- コンクリートが十分に硬化するまで養生し、必要に応じて表面仕上げを施す。
ポイント
- 改修後の耐久性を確保するために、適切な厚み(5〜6cm)で押さえコンクリートを打設する。
- 排水機能を考慮し、適切な勾配を確保することが重要。排水不良があると、雨水が溜まりやすくなり、防水層の劣化を早める原因となる。
防水工法の選択:改修時の適切な工法
全面改修を行う際は、既存の防水層や建物の用途に応じた適切な防水工法を選ぶことが重要です。以下の表で、主要な防水工法の特徴を比較します。
改修時の防水工法の選定基準
防水工法 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
アスファルト防水(トーチ工法) | 防水シートを溶着する工法 | 耐久性が高く、長寿命 | 施工に高温作業が必要 |
ウレタン防水 | 液状のウレタンを塗布 | 施工が容易で継ぎ目がない | 耐久性が他の工法より低め |
シート防水(塩ビ・ゴム) | 防水シートを接着・固定 | 施工が早く、防水性が高い | シートの継ぎ目から水が浸入する可能性 |
FRP防水 | ガラス繊維強化プラスチックを使用 | 高強度で耐久性がある | 施工費が高め |
ポイント
- 防水層の種類によっては、押さえコンクリートを撤去せずにオーバーレイ施工(既存の防水層の上に新しい防水層を施工する方法)が可能な場合もある。
- 建物の用途や環境(気温・湿度・荷重)を考慮し、最適な防水工法を選定する。
- 施工後のメンテナンス性も考慮し、点検しやすい工法を選ぶことが重要。
押さえコンクリートの改修には、部分補修・全面改修・防水工法の選定の3つのステップが重要です。
小規模な劣化であれば適切な補修材を使用した部分補修で対応可能ですが、広範囲に劣化している場合は、防水層の改修も含めた全面改修が必要となります。
防水工法を適切に選定し、施工後のメンテナンスを怠らないことで、建物の耐久性を維持し、防水機能を長持ちさせることができます。
アスファルト防水押さえコンクリート仕上げの改修方法の流れや手順
押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修方法の流れを紹介します。
こちらでは、一般的な改修方法であるコンクリートを撤去せずに上から新しい防水層を新設する方法の流れをご確認くださいね。
アスファルト防水改修の流れ1.押さえコンクリート仕上げ伸縮目地の撤去・シーリング充填
伸縮目地は温度差などによって大きく伸縮・膨張を繰り返し、地震などの振動によって生じるコンクリートへの負担を軽減する役割を担っています。
伸縮目地自体も経年によりその役割を果たせなくなっているため、改修の際はすべての伸縮目地を撤去します。
古い伸縮目地を残したまま新しい防水層を形成してしまうと、さらに劣化が進んだ伸縮目地が反り上がり、せっかく新設した防水層を破損させてしまう可能性があるためです。
既存の伸縮目地を撤去した後は、きれいに清掃し、新たにシーリング材を充填し、へらなどを使って押さえ、平滑に仕上げます。
アスファルト防水改修の流れ2.押さえコンクリート仕上げの下地処理
次に、劣化してくぼみや出っ張りがある既存の押さえコンクリートを平滑にする作業を行います。
新しい防水層の剥離を防ぐためです。
既存の押さえコンクリートにひび割れや欠損がみられる場合は、補修を施し、樹脂モルタルなどにより表面を平滑に仕上げます。
アスファルト防水改修の流れ3.押さえコンクリート仕上げ防水層の形成
下地が整ったら次は、新しい防水層を形成していきます。
押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修の場合、既存の下地との通気性が重要になるので、コンクリートと新しい防水層の間に隙間を作り、通気性が保てる「通気緩衝工法」や、「脱気工法」と呼ばれる工法を採用します。
「通気緩衝工法」とは、下地に通気緩衝シートを貼り付け、その上からウレタン防水を塗り付ける工法です。
通気緩衝シートが下地であるコンクリートの水分を吸収し、逃す役割を担います。
また、「脱気工法」とは、新しい防水層を完全に下地に密着させずに水分の逃げ道を作る絶縁工法、鋼製ディスクを設置し、機械的に通気層を作り、水分を逃す機械固定工法などがあり、この2つの工法を併用することもあります。
押さえコンクリート仕上げとアスファルト露出防水の違い比較一覧
押さえコンクリート仕上げとアスファルト露出防水の違いを表にまとめてみました。
アスファルト露出防水とは、防水層が露出して見える、アスファルト防水の仕上げ方法です。
押さえコンクリート仕上げアスファルト防水 | アスファルト露出防水 | |
特徴 | ・防水層の上にコンクリートが打設されている ・重いので屋上への負荷が大きい ・耐用年数は約17年 | ・防水層が露出している ・軽いので屋上への負荷が少ない ・耐用年数は約13年 |
目視確認 | × 困難 | 〇 可能 |
メリット | ・防水層が外傷を受けにくい ・紫外線による劣化の心配がない | ・不具合を初期段階で補修できる ・漏水箇所が見つけやすく、局部補修が可能 |
デメリット | ・万一漏水した場合、損傷箇所を特定できず、全面改修することもある ・防水層の劣化の度合いを目視では確認できない ・防水層の劣化の度合いを確認するには大掛かりな撤去作業が必要 | 防水層が露出しているので外的損傷を受けやすい |
採用される屋上の特徴 | 車や人の出入りが頻繁にある屋上 | 通常人などの立ち入りがない屋上 |
押さえコンクリート仕上げとアスファルト露出防水の違いはその耐用年数、屋上の使用方法によるところが大きいのではないでしょうか。
違いを理解して、適切な改修方法を選択することは、建物を守る上でとても重要なことですね。
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アスファルト防水押さえコンクリート仕上げのまとめ
これまで、押さえコンクリート仕上げアスファルト防水についての情報、またその改修について紹介してきました。
また、アスファルト防水のもう一つの仕上げ方法である露出防水との違いも見てきましたね。
- アスファルト防水の押さえコンクリート仕上げ・露出仕上は、屋上の使用目的によって異なる
- 押さえコンクリート仕上げは高い耐久性を持ち、人や車の出入りが頻繁な屋上に適切な仕上げ方法
- アスファルト防水の露出仕上げは、人の出入りなどがあまりない屋上に適している
- 押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修方法は通常、既存の防水層は撤去しない
- 押さえコンクリート仕上げアスファルト防水の改修は下地との通気性が大切
いかがでしたでしょうか。アスファルト防水でも、仕上げによって大きく用途が変わり、またその改修方法も異なります。
一概に防水補修を行うといっても様々な施工法を用途や状況に合わせての選択が必要です。
屋上防水は建物の寿命を長く健全に保つ重要な手段であることは間違いありません。
ぜひ、防水工事のプロである防水工事専門業者のアドバイスを参考に、大切な資産である建物の価値を維持してくださいね。
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