マンションの共用部分を壊した時の対処法|修繕費や保険・報告先などを解説

2025/11/06

「駐車場で柱にぶつけてしまった」「子どもが共用廊下の窓ガラスを割ってしまった」…

マンションで生活していると、誰にでも起こりうるのが共用部分の破損トラブルです。突然のアクシデントに動揺し、どうすればいいのか分からず不安になる方も多いでしょう。

共用部分を壊してしまった時、最も大切なのは速やかに適切な対応をとることです。

放置すれば被害が拡大するだけでなく、他の住民の安全にも関わる問題に発展する可能性があります。

しかし、正しい手順を踏めば、修繕費の負担を軽減できる方法もあります。

この記事では、マンションの共用部分を破損してしまった際の正しい対処法を分かりやすく解説します。

報告先や修繕費の負担、保険の活用方法まで、あなたの不安を一つずつ解消していきます。焦らず、一緒に解決への道を見つけていきましょう。

この記事で分かること

  • マンション共用部分を壊した時の正しい対処手順
  • 修繕費用は誰が負担するのか
  • 個人賠償責任保険の活用方法と請求手順
  • 警察への届出が必要なケースと刑事責任
  • よくあるトラブル事例と予防策

マンション共用部分を壊した時にまずすべきこと

共用部分を破損してしまった時、初動対応が非常に重要です。

適切な対応を取ることで、被害の拡大を防ぎ、その後の手続きもスムーズに進められます。

すぐに管理会社または管理人へ連絡する

共用部分に破損が発生したら、まず真っ先にすべきことは管理会社または管理人への連絡です。

「少しの傷だから大丈夫」「自分で直せるかもしれない」といった判断は避け、必ず報告するようにしてください。

連絡する際には、以下の3つの情報を明確に伝えることが大切です。

  • 事故が起きた場所 ▶︎ 具体的な階数やエリア名を伝える
  • 事故の発生日時 ▶︎ 可能な限り正確な時間を報告する
  • 破損箇所の状況 ▶︎ どのような状態か、範囲はどの程度かを説明する

これらの情報は、管理会社が応急措置を行うために必要不可欠です。報告が遅れると、破損箇所の損傷が時間とともに進行し、より大きな事故を招く可能性があります。

特に水漏れや構造に関わる破損の場合、数時間の遅れが被害を何倍にも拡大させてしまうこともあるのです。

また、破損してしまったという焦りや、賠償責任への不安から連絡をためらう気持ちも理解できます。

しかし、誠実に速やかに報告することが、結果的に最も円滑な解決につながります。住民全体の安全のためにも、問題を先送りにせず、勇気を持って報告しましょう。

破損箇所の写真を撮影しておく

管理会社への連絡と並行して行うべきなのが、破損箇所の写真撮影です。スマートフォンで構いませんので、破損の状況を複数の角度から記録しておきましょう。

写真撮影が重要な理由は、主に2つあります。

1つ目は証拠保全です。時間が経つと破損箇所の状態が変化したり、他の要因が加わったりする可能性があります。事故直後の状態を記録しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

2つ目は保険申請時の必要書類としての役割です。

個人賠償責任保険を利用する際、保険会社は事故状況を詳しく確認します。写真があれば、状況説明がスムーズになり、審査も円滑に進みます。

撮影のポイントとしては、全体像と詳細の両方を撮ることです。

破損箇所全体が分かる引きの写真と、傷や割れた部分のアップ写真の両方を残しておくと良いでしょう。

また、可能であれば破損箇所の周辺環境も撮影しておくと、事故の経緯を説明する際に役立ちます。

応急措置が必要な場合の対応

破損の内容によっては、二次被害を防ぐための応急措置が必要になることがあります。

例えば、窓ガラスが割れて破片が散乱している場合や、水漏れが発生している場合などです。

ただし、応急措置を行う際は必ず管理会社の指示を仰いでください。

善意で行った対応が、かえって状況を悪化させてしまうケースもあります。特に配管や電気設備に関わる破損は、専門知識がない状態で触ると危険です。

管理会社に連絡がつかない緊急時には、以下のような基本的な対応を検討してください。

  • 窓ガラスの破片 ▶︎ 怪我防止のため、立入禁止の表示をする
  • 水漏れ ▶︎ 元栓を閉めて水の流出を止める
  • 電気設備の破損 ▶︎ ブレーカーを落として感電を防ぐ

いずれの場合も、あくまで一時的な対応に留め、専門家の到着を待つことが大切です。

自己判断で修理を進めてしまうと、後々の費用請求や保険適用に影響が出る可能性もあります。

管理会社が到着するまでの間、被害拡大を最小限に抑えることを第一に考えましょう。

マンション共用部分破損時の修繕費は誰が負担するの?

共用部分を破損してしまった場合、最も気になるのが「修繕費用は誰が払うのか」という点でしょう。

結論から申し上げますと、破損の原因を作った当事者が費用を負担するのが原則です。

マンションの共用部分は、本来であれば管理組合が修繕積立金を使って維持管理を行います。しかし、居住者が故意または過失によって破損させた場合は、その責任は当事者が負うことになります。

これは故意か過失かを問わず、破損の原因を作った事実があれば適用されます。

例えば、駐車場で車を柱にぶつけてしまった場合、運転していた本人が修繕費を負担します。

また、子どもが遊んでいて窓ガラスを割ってしまった場合は、監督責任を持つ親が費用を負担することになります。ペットが共用部分の壁を傷つけた場合も同様に、飼い主が責任を負います。

ただし、例外的なケースも存在します。

  • 建物の経年劣化や自然災害が原因で破損が発生した場合
  • 破損の原因となった人物が特定できない場合

上記のような場合は、管理組合が修繕積立金から費用を支出することが一般的です。

修繕費用の相場は、破損の内容によって大きく異なります。

破損箇所修繕費用の目安
共用廊下の窓ガラス(小)2万円~5万円
エントランスのガラスドア10万円~30万円
駐車場の柱・壁の補修5万円~15万円
共用廊下の壁紙張り替え3万円~8万円
エレベーター内壁の補修5万円~20万円

これらはあくまで目安であり、破損の程度や修繕方法によって金額は変動します。

管理会社から見積もりが提示されたら、内訳を詳しく確認し、不明な点は積極的に質問することをお勧めします。

重要なのは、修繕費用の負担義務があるからといって、一人で抱え込む必要はないということです。

次の章で詳しく解説しますが、個人賠償責任保険を活用すれば、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。

共有部分の破損費用を個人賠償責任保険でカバーする方法

共用部分の破損に対して修繕費用を負担しなければならない場合でも、個人賠償責任保険を利用すれば費用を補填できる可能性があります。

多くの方が加入している保険ですが、意外とその存在を忘れているケースも少なくありません。

個人賠償責任保険とは?

個人賠償責任保険とは、日常生活で他人に損害を与えてしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償される保険です。

マンションの共用部分は「他人の財物」に該当するため、多くの場合で保険の補償対象となります。

この保険の大きな特徴は、補償対象者の範囲が広い点です。

保険に加入している本人だけでなく、以下の方々も補償の対象に含まれます。

  • 配偶者
  • 同居している親族(子ども、両親など)
  • 別居している未婚の子ども

つまり、お子さんが共用部分を破損してしまった場合でも、親が加入している個人賠償責任保険で対応できるのです。

ペットが原因の破損についても、飼い主の監督責任として補償されるケースが多くあります。

個人賠償責任保険は、単独の保険商品として加入するよりも、火災保険や自動車保険の特約として付帯していることが一般的です。

ご自身が加入している保険証券を確認し、「個人賠償責任特約」や「日常生活賠償特約」といった名称の特約が付いていないかチェックしてみましょう。

なお、マンションの管理組合が加入しているマンション総合保険とは別物です。

マンション総合保険は共用部分の建物自体を対象とする保険であり、居住者が原因で破損が発生した場合は、通常は個人の賠償責任が優先されます。

保険適用となるケース・ならないケース

個人賠償責任保険がすべてのケースで適用されるわけではありません。

補償される場合と、されない場合の違いを理解しておくことが大切です。

保険適用となる主なケース

  • 駐車場で車を柱にぶつけて破損させた(自動車保険の対物賠償で対応)
  • 子どもが遊んでいて共用廊下の窓ガラスを割った
  • 引越し作業中に共用部分の壁を傷つけた
  • ペットが共用部分のドアや壁を傷つけた
  • バルコニーから物を落として駐輪場の屋根を壊した

これらは日常生活の中で偶然発生した事故であり、保険の補償対象となる可能性が高いケースです。

保険適用とならない主なケース

  • 故意による破損▶︎わざと壊した場合は補償対象外
  • 家族間の事故▶︎同居家族の所有物への損害は対象外
  • 業務中の事故▶︎仕事として行っていた作業中の破損
  • 地震や噴火による破損▶︎自然災害は別の保険で対応

特に注意が必要なのは、自動車による破損は個人賠償責任保険ではなく自動車保険の対物賠償責任保険で対応するという点です。

駐車場での事故の場合は、自動車保険の保険会社に連絡してください。

また、保険会社によって補償内容や条件が異なる場合があります。ご自身の保険の約款を確認するか、保険会社に直接問い合わせて、今回のケースが補償対象になるか確認することをお勧めします。

保険金請求の手順と必要書類

個人賠償責任保険を利用する際は、速やかに保険会社へ連絡することが重要です。

事故発生から時間が経ちすぎると、保険金の支払いが認められないケースもありますので、破損が発生したら早めに手続きを開始しましょう。

保険金請求の基本的な流れは以下の通りです。

  • ステップ1 ▶︎ 保険会社に事故の発生を連絡する
  • ステップ2 ▶︎ 保険会社から送られてくる書類に必要事項を記入する
  • ステップ3 ▶︎ 必要書類を揃えて保険会社に提出する
  • ステップ4 ▶︎ 保険会社による審査が行われる
  • ステップ5 ▶︎ 審査通過後、保険金が支払われる

保険金請求の際に一般的に必要となる書類は、以下の通りです。

必要書類内容
保険金請求書保険会社指定の様式に記入
事故状況報告書いつ・どこで・何が起きたかを詳細に記載
破損箇所の写真事故直後に撮影したもの
修繕費用の見積書管理会社から取得した正式な見積書
修繕完了後の領収書実際に支払った金額の証明

特に事故状況報告書は、保険会社が審査を行う上で重要な書類です。事故の経緯を時系列で詳しく、かつ正確に記載しましょう。

曖昧な表現や不明瞭な説明は避け、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識して書くと分かりやすくなります。

また、保険会社によっては示談交渉サービスが付帯している場合があります。

このサービスがあれば、保険会社が管理組合や管理会社との交渉を代行してくれるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。ご自身の保険にこのサービスが含まれているか確認してみましょう。

保険金請求で注意したいのは、修繕工事を行う前に保険会社の承認を得ることです。

先に修繕を完了させてしまうと、保険会社が現場を確認できず、保険金が支払われないケースもあります。必ず保険会社の指示に従って手続きを進めてください。

マンションの破損や事故などのトラブルに関するよくある質問

マンションの共用部分に関するトラブルについて、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。不安や疑問の解消にお役立てください。

Q. 共用部分を壊してしまった場合、警察に届け出る必要はありますか?

結論から申し上げますと、過失による破損の場合、基本的に警察への届出は不要です。マンションの共用部分破損は、主に民事上の問題として扱われます。

ただし、故意に他人の財物を破損した場合は器物損壊罪(刑法第261条)に該当し、刑事事件となる可能性があります。

しかし、この罪が成立するには「故意」が必要であり、うっかりや不注意といった過失による破損では刑事責任は問われません。

自身が過失で破損させてしまった場合は、警察ではなく管理会社への報告を最優先してください。

その後、保険会社や管理組合と誠実に対応することで、民事上の責任を果たすことができます。

Q. マンションの共用部分とは具体的にどこまでを指しますか?

共用部分とは、マンションの居住者全員が共同で使用する部分を指します。

区分所有法では、専有部分以外のすべての部分が共用部分とされています。

共用部分は大きく分けて「法定共用部分」と「規約共用部分」の2種類があります。

法定共用部分の主な例

  • エントランスホール
  • 共用廊下、階段、エレベーター
  • 建物の躯体(壁、柱、床、屋根、基礎)
  • 給排水管などの共用設備
  • 電気・ガスの配管や配線(専有部分に至る直前まで)

規約共用部分の主な例

  • 管理人室、集会室
  • 駐車場、駐輪場、バイク置き場
  • ゴミ置き場
  • 管理規約で共用と定められた部分

意外と知られていないのが、バルコニーや窓ガラスも共用部分に該当するという点です。

これらは各住戸に付属していますが、法律上は共用部分であり、居住者には「専用使用権」が与えられているに過ぎません。

そのため、これらの部分を破損した場合も、共用部分破損として扱われます。

一方、専有部分とは各住戸の内部、具体的には壁の内側(コンクリート躯体の内側)から室内にかけての空間を指します。床や天井の仕上げ材、室内のドアや設備などは専有部分となります。

共用部分と専有部分の境界は、マンションの管理規約によって詳しく定められています。

判断に迷う場合は、管理規約を確認するか、管理会社に問い合わせることをお勧めします。

Q. 子どもやペットが共用部分を壊した場合、誰が責任を負いますか?

子どもやペットが共用部分を破損させた場合、監督責任を持つ親または飼い主が損害賠償責任を負います

これは民法第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)および第718条(動物の占有者等の責任)に基づくものです。

ただし、個人賠償責任保険の補償対象には、これらのケースも含まれることが一般的です。

保険に加入していれば、子どもやペットが原因の破損についても、保険金で修繕費用をカバーできる可能性があります。

同居している親族が起こした事故も補償範囲に含まれますので、ご家族が加入している保険を確認してみましょう。

日頃から子どもには共用部分での遊び方について注意を促し、ペットは適切にコントロールすることで、トラブルを未然に防ぐことが大切です。予防こそが最も効果的な対策と言えるでしょう。

まとめ

マンションの共用部分を破損してしまった時は、誰でも不安になるものです。

しかし、適切な対応を取れば、問題は必ず解決できます。

  • 破損が発生したら速やかに管理会社または管理人に連絡する
  • 修繕費用は原則として破損の原因を作った当事者が負担する
  • 条件によっては、個人賠償責任保険で補填できる可能性がある
  • 保険金請求には事故状況報告書や見積書などの書類が必要なため早めに保険会社へ連絡する
  • 過失による破損では刑事責任は問われないが、民事上の賠償責任は発生する
  • 子どもやペットによる破損も個人賠償責任保険の補償対象となる

最も大切なのは、問題を隠さず、誠実に対応することです。管理会社や管理組合は、居住者の味方です。

隠蔽や放置は状況を悪化させるだけでなく、他の住民の安全を脅かす可能性もあります。

また、万が一に備えて、今一度ご自身やご家族が加入している保険の内容を確認しておくことをお勧めします。

もし困った時は、一人で悩まず、管理会社や保険会社、必要に応じて弁護士などの専門家に相談してください。

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