 
              大規模の修繕で屋根工事はどうする?葺き替え・カバー工法の違いと費用相場について
2025/09/30
大規模修繕の計画を立てるとき、外壁や防水工事に目が行きがちですが、実は屋根工事も建物全体の寿命を左右する極めて重要な工事項目です。屋根は常に雨風や紫外線にさらされており、劣化が進むと雨漏りや断熱性能の低下を引き起こし、建物の価値を大きく損なう原因になります。
「屋根は大規模修繕でどのように工事するのか?」「葺き替えとカバー工法のどちらが良いのか?」「費用はいくらかかるのか?」といった疑問は、多くのオーナーや管理組合が抱える共通の悩みです。ここでは、大規模修繕における屋根工事の基本から工法ごとの違い、費用相場や工期の目安を詳しく解説していきます。
目次
- 1 大規模の修繕で屋根は何をする?基本と考え方
- 2 屋根工事の選択肢:葺き替え/カバー工法/部分補修
- 3 屋根工事の工法比較表:特徴・費用・工期・メリットデメリット
- 4 いくらかかる?大規模な修繕での屋根修繕の費用相場と工期の早見表
- 5 大規模な修繕で屋根工事を行う際の失敗しない見積もり比較のコツ
- 6 屋根工事の工期とスケジュール調整:入居者配慮と季節要因
- 7 足場共用でどれだけ下がる?屋根工事コスト最適化の考え方
- 8 大規模の修繕で屋根工事の補助金・助成金・減税の可能性
- 9 大規模の修繕での屋根工事の保証内容と耐用年数を確認する
- 10 大規模の修繕で屋根工事に関するよくある質問(FAQ)
- 11 大規模の修繕における屋根工事のまとめ
大規模の修繕で屋根は何をする?基本と考え方
大規模修繕の屋根工事は、単なる見た目の改善ではなく、建物全体の性能維持に直結する工事です。屋根は建物の最上部で雨水や日射を直接受けるため、劣化が進むと以下のような問題が発生します。
- 雨漏りによる室内や共用部の損傷
- 断熱性能低下による空調効率の悪化
- 屋根材の剥がれや落下による安全リスク
大規模修繕で屋根工事を行う最大の利点は、足場を外壁工事と共用できるためコストを大きく抑えられる点です。屋根単独で工事を行う場合、足場設置費用が数百万円単位で追加されますが、外壁工事と同時施工すればこの費用を削減できます。
屋根工事でチェックされる主な項目は以下の通りです。
- 屋根材の劣化(瓦の割れ、スレートの欠け、金属屋根の錆など)
- 下地材(野地板、ルーフィング)の腐食や浮き
- 雨仕舞(棟や谷部、軒先など雨水が集中する部位)の劣化
- 断熱・遮音性能の確認と改善の余地
つまり、大規模修繕で屋根工事を行う目的は「見た目を直す」のではなく、雨漏りを防ぎ、建物の性能と資産価値を維持するためなのです。
屋根工事の選択肢:葺き替え/カバー工法/部分補修
屋根工事の方法は建物の状態や予算に応じて異なります。大規模修繕で選ばれる代表的な工法は「葺き替え」「カバー工法(重ね葺き)」「部分補修」の3種類です。
葺き替え工法
既存の屋根材を撤去し、下地の野地板や防水シートを補修したうえで新しい屋根材を施工する方法です。屋根全体を根本から刷新できるため、最も耐久性が高く安心できる工法といえます。築30年以上経過した建物や下地の劣化が進んでいる場合は、葺き替えが選択されることが多いです。ただし費用や工期は他工法より大きくなります。
カバー工法(重ね葺き)
既存屋根の上から新しい屋根材をかぶせる工法で、撤去や廃材処分を行わない分、費用と工期を抑えやすいのが特徴です。特にスレート屋根からガルバリウム鋼板にカバーするケースが多く、断熱・遮音性能も改善できます。ただし、下地が劣化している場合は適用できず、重量増による耐震性への影響も注意が必要です。
部分補修
屋根材の割れや一部の雨漏りなど、劣化が限定的な場合に行われる応急的な工事です。費用が安く短工期で済むのがメリットですが、根本的な解決にはならず、数年後に再工事が必要になる可能性が高いです。大規模修繕では「つなぎの工事」として採用されることがあります。
屋根工事の工法比較表:特徴・費用・工期・メリットデメリット
各工法の違いを一覧で比較できるよう、表にまとめました。大規模修繕で屋根工事を検討する際の判断材料として活用できます。
| 工法 | 特徴 | 費用相場 | 工期 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|---|---|---|
| 葺き替え工法 | 既存屋根を撤去し、下地から新しく施工 | 1㎡あたり9,000〜15,000円 30坪で約300万〜500万円 | 2〜3週間 | 耐久性が最も高い/下地補修も可能/資産価値向上 | 費用が高い/工期が長い/廃材処分費用がかかる | 
| カバー工法(重ね葺き) | 既存屋根の上に新しい屋根材をかぶせる | 1㎡あたり6,000〜10,000円 30坪で約200万〜350万円 | 1〜2週間 | 工期が短い/費用が抑えられる/廃材が少ない | 下地劣化には不向き/重量増で耐震性に影響する場合あり | 
| 部分補修 | 一部の屋根材や防水を補修 | 数万円〜数十万円 | 数日〜1週間 | 費用が安い/小規模工事で可能 | 応急処置に過ぎず再工事リスクが高い | 
いくらかかる?大規模な修繕での屋根修繕の費用相場と工期の早見表
実際の工事費用や工期をイメージしやすいように、目安をまとめました。大規模修繕の見積もりを比較する際の参考になります。
| 工法 | 費用目安(30坪換算) | 標準工期 | 
|---|---|---|
| 葺き替え工法 | 約300万〜500万円 | 2〜3週間 | 
| カバー工法 | 約200万〜350万円 | 1〜2週間 | 
| 部分補修 | 数万円〜数十万円 | 数日〜1週間 | 
この金額はあくまで目安です。実際には以下の要因で変動します。
- 使用する屋根材のグレード(スレート、ガルバリウム、瓦など)
- 下地の劣化状況と補修範囲
- 屋根形状(片流れ・寄棟・複雑形状など)
- 足場設置の有無(外壁工事と共用するかどうか)
見積もりを確認する際は、単価だけではなく工事範囲や廃材処分費、保証内容まで含めた総額を比較することが不可欠です。
大規模な修繕で屋根工事を行う際の失敗しない見積もり比較のコツ
大規模修繕で屋根工事を行う場合、複数業者からの見積もり比較が必須です。同じ屋根葺き替え工事でも、業者によって数十万〜数百万円の差が出ることがあります。金額の安さだけで選ぶと、工事範囲が不足していたり、保証が不十分だったりと後悔するケースが少なくありません。
見積もりを比較するときの主なチェックポイントは以下の通りです。
- 屋根材の種類とグレード:安価なスレートか、長寿命のガルバリウム鋼板かで大きく異なる
- ルーフィング(防水シート)の種類:寿命10年程度のものか、30年持つ高耐久品か
- 役物の範囲:棟板金、谷樋、雪止め金具などが含まれているか
- 保証内容:工事保証は何年か、屋根材メーカー保証はあるか
- 数量の算定方法:屋根面積の算出根拠が明確か、勾配や形状による割増はどうか
見積もり比較表のイメージ
| 項目 | 業者A | 業者B | 業者C | 
|---|---|---|---|
| 屋根材 | スレート(15年耐用) | ガルバリウム鋼板(25年耐用) | スレート(20年耐用) | 
| ルーフィング | 一般品(10年) | 高耐久品(30年) | 一般品(15年) | 
| 保証 | 工事保証5年 | 工事保証10年 | 工事保証7年 | 
| 総額 | 320万円 | 420万円 | 360万円 | 
単純な金額比較ではなく、仕様と保証を加味した“実質コストで判断することが重要です。
屋根工事の工期とスケジュール調整:入居者配慮と季節要因
屋根工事は天候の影響を受けやすく、スケジュール調整が重要です。梅雨や台風シーズンに工事を行うと、雨天で作業が止まり、工期が延びて追加費用につながる可能性があります。
入居者への配慮ポイント
- 騒音や粉じんが発生するため、日中の作業時間を事前に告知する
- 賃貸物件では入居者説明会を実施し、ベランダ利用制限などを丁寧に説明する
- 荷揚げ作業でクレーン車を使用する場合、搬入経路や駐車制限の影響も伝える
季節要因の工夫
- 冬季は凍結による安全リスクに注意
- 夏季は熱中症対策や資材の膨張・変形を考慮
- 春や秋の乾燥シーズンは作業効率が高く、最も工期が安定しやすい
全体の大規模修繕工期(3〜4か月)の中で、屋根工事がクリティカルパスになる場合もあるため、早めの工程調整が不可欠です。
足場共用でどれだけ下がる?屋根工事コスト最適化の考え方
屋根工事単体で足場を組むと、100万〜200万円程度の仮設費用が発生することがあります。大規模修繕で外壁工事と同時に実施すれば、足場を共用できるためコストを大幅に削減できます。
例:30坪の建物で屋根葺き替えのみを行う場合
- 単独実施:総額約400万円(足場費用込み)
- 外壁と同時実施:総額約300〜350万円(足場費用共用)
このように、同時施工にするだけで50万〜100万円以上の差が出ることもあります。オーナーや管理組合は、必ず「足場共用によるコスト差」を見積もり時に確認するべきです。
大規模の修繕で屋根工事の補助金・助成金・減税の可能性
屋根工事は単なる修繕ではなく、省エネ改修や耐震改修の一環として補助金や助成金の対象になるケースがあります。
代表的な対象例
- 省エネ性能向上:断熱性能の高い屋根材や遮熱塗料を導入した場合
- 耐震改修:瓦から軽量金属屋根に葺き替えることで耐震性が向上するケース
- 再生可能エネルギー連携:太陽光パネル設置と同時に屋根改修を行う場合
補助制度の利用の流れ
- 事前に自治体や国の制度を調査(年度ごとに条件が変わるため要確認)
- 工事契約前に補助金申請の可否を確認
- 工事完了後に実績報告を提出し、補助金を受け取る
数十万〜数百万円規模の支援が受けられる場合もあり、資金計画を大きく助けてくれます。
大規模の修繕での屋根工事の保証内容と耐用年数を確認する
大規模修繕で屋根工事を行った後、どのくらいの期間持つのかを確認しておくことも大切です。
- 一般的な屋根材の耐用年数:15〜30年
- 高耐久金属屋根(ガルバリウムなど):30年以上持つケースあり
- 施工会社の工事保証:5〜10年が一般的
- 屋根材メーカー保証:製品ごとに異なる(10年〜30年)
契約時には「保証対象は屋根材だけか、防水シートも含むのか」「保証期間は工事保証とメーカー保証のどちらか」を必ず確認し、書面に残しておきましょう。
大規模の修繕で屋根工事に関するよくある質問(FAQ)
大規模修繕の屋根工事に関するよくある質問を紹介します
Q1. 大規模修繕で必ず屋根の葺き替えをしなければなりませんか?
いいえ、必ずしも葺き替えが必要なわけではありません。屋根材や下地がまだ健全な場合は、**カバー工法(重ね葺き)**や部分補修で対応可能です。ただし築30年以上経過し、下地が劣化している場合は葺き替えを行ったほうが安心です。
Q2. 屋根の葺き替え費用はいくらくらいかかりますか?
一般的な相場は 1㎡あたり9,000〜15,000円。30坪の屋根であれば 300万〜500万円前後が目安です。カバー工法なら 200万〜350万円程度に抑えられる場合もあります。屋根材の種類や形状、下地補修の有無で金額は大きく変動します。
Q3. 屋根工事の工期はどのくらいかかりますか?
葺き替えの場合は 2〜3週間程度、カバー工法なら 1〜2週間が目安です。部分補修なら数日で済むこともあります。大規模修繕全体の工期(3〜4か月)の中で屋根工事が組み込まれるため、外壁や防水工事との調整も必要です。
Q4. 修繕積立金で屋根工事をまかなえますか?
基本的には修繕積立金で対応しますが、不足している場合は 一時金徴収や借入で補填するケースがあります。長期修繕計画に屋根葺き替えの費用をあらかじめ盛り込み、定期的に積立状況を見直すことが重要です。
Q5. 屋根工事で補助金や助成金は使えますか?
はい、条件次第で利用できます。
- 省エネ性能向上(遮熱・断熱屋根材への交換)
- 耐震性向上(瓦から軽量金属屋根への変更)
- 再生可能エネルギー連携(太陽光パネル設置と同時工事)
といったケースでは、自治体や国の補助制度が使える可能性があります。工事契約前に施工業者と相談し、事前申請が必要か確認しておくと安心です。
Q6. 屋根工事後の保証はどのくらいありますか?
施工会社による工事保証は 5〜10年程度が一般的です。加えて、屋根材メーカーの保証が 10〜30年つくこともあります。契約時に保証対象や期間を明確に確認し、書面に残しておくことが大切です。
Q7. 雨漏りが発生している場合は部分補修で十分ですか?
軽度の雨漏りであれば部分補修で一時的に対応できますが、根本的な解決にはならないケースが多いです。下地が劣化している場合は、葺き替え工法で根本から改修するほうが再発リスクを減らせます。
大規模の修繕における屋根工事のまとめ
大規模修繕における屋根工事は、建物の寿命と資産価値を守るために欠かせない重要な工程です。葺き替え工法は費用や工期が大きい一方で、20〜30年の安心を得られる確実な方法です。カバー工法は費用を抑えたい場合に有効で、部分補修は応急的な選択肢となります。
見積もりの比較では、単なる金額の安さではなく、屋根材のグレード・下地補修の有無・保証内容・足場共用によるコスト削減といった要素を総合的に判断することが重要です。また、補助金や助成金を上手に活用することで、資金負担を軽減できる可能性もあります。
オーナーや管理組合は、専門家の診断を受けながら長期修繕計画に屋根工事を組み込み、将来に備えた資産保全を進めることが求められます。
 
         
                       
                       
                       
     
         
         
        