大規模修繕で屋根葺き替えは必要?費用相場・工法の違い・注意点を解説

2025/09/30

大規模修繕工事の際、外壁塗装や防水工事に注目が集まりがちですが、実は「屋根工事」も建物全体の寿命を大きく左右する重要な工事項目です。特に築20〜30年を超えるマンションやビルでは、屋根材や下地の劣化が進行し、雨漏りや断熱性能の低下といった深刻な問題を招くことがあります。
「屋根葺き替えが必要なのか、それともカバー工法で済むのか」「大規模修繕で屋根工事にいくらかかるのか」と悩むオーナーや管理組合は少なくありません。判断を誤ると修繕積立金の不足や再工事につながり、大きな負担を抱えるリスクもあります。
本記事では大規模修繕の屋根葺き替えの基本知識、葺き替えが必要になるタイミング、工法の種類と費用相場について詳しく解説し、オーナーや管理組合が最適な判断を下せるようサポートします。

大規模修繕で行う屋根葺き替えとは

屋根葺き替えとは、既存の屋根材をすべて撤去し、劣化した下地を補修または交換したうえで、新しい屋根材を施工する工事です。単なる「屋根の張り替え」ではなく、屋根全体をリフレッシュする大規模工事といえます。

葺き替えの工程は以下の流れで進みます。

  1. 既存屋根材(瓦・スレート・金属など)の撤去
  2. 下地(野地板・ルーフィングシート)の状態確認
  3. 劣化部分の補修や新しい下地材の施工
  4. 新しい屋根材の設置
  5. 防水・断熱性能の確認

この工事により、雨水の侵入を防ぎ、耐震性や断熱性を高め、資産価値を維持する効果が期待できます。大規模修繕のタイミングで外壁や防水工事と同時に行えば、足場の設置費用を共有でき、工事の効率化にもつながります。


屋根葺き替えが必要になるタイミング

屋根葺き替えが必要になるかどうかは、建物の築年数や劣化症状を総合的に判断します。以下は代表的なタイミングです。

築年数が30年以上経過している場合

屋根材や下地の寿命は30年前後とされるケースが多く、塗装や部分補修では対応しきれなくなります。築30年以上で一度も葺き替えをしていない場合は、大規模修繕の計画に組み込むのが一般的です。

雨漏りや水染みが発生している場合

天井や壁にシミ、カビが見られる場合は、防水層が機能していない可能性が高いです。応急補修では一時的に止まっても再発することが多く、葺き替えが根本的な解決策となります。

屋根材の破損やズレが目立つ場合

瓦の割れ、スレート材の欠けや浮き、金属屋根の錆や穴あきは、耐久性の限界を示しています。放置すれば強風や地震で落下の危険があり、安全性の面からも葺き替えが求められます。

下地材の劣化が確認された場合

野地板やルーフィングシート(防水シート)が腐食していると、カバー工法では対応できません。下地から修繕する必要があるため、葺き替え工法が選択されます。

屋根工事の種類と工法の比較

大規模修繕で検討される屋根工事には、主に3つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、費用とメリット・デメリットを比較することが大切です。

工法特徴費用相場工期メリットデメリット
葺き替え工法既存の屋根を撤去し、新しい屋根材に全面交換1㎡あたり9,000〜15,000円
30坪で約300万〜500万円
2〜3週間下地からリフレッシュでき耐久性◎/資産価値が高まる費用が高い/廃材処分が必要/工期が長い
カバー工法(重ね葺き)既存屋根の上に新しい屋根材を重ねる1㎡あたり6,000〜10,000円
30坪で約200万〜350万円
1〜2週間工期短縮/費用抑制/廃材が少ない下地の劣化に対応不可/重量増で耐震性に影響
部分補修屋根材や一部の補修のみ数万円〜数十万円数日〜1週間費用が安い/短工期で可能応急処置に過ぎず再工事リスク高い

選び方のポイント

  • 築年数30年以上・下地劣化あり → 葺き替え工法が最適
  • 築15〜25年・下地に問題なし → コストを抑えるならカバー工法
  • 部分的な破損・雨漏り初期段階 → 部分補修で応急対応可能

大規模修繕では外壁や防水と同時に工事することが多いため、長期的なコストと建物寿命を考慮して選ぶことが重要です。

屋根葺き替えにかかる費用相場と工期

大規模修繕のなかでも屋根葺き替えは大規模でコストのかかる工事のひとつです。外壁や防水工事に比べても「いくら必要になるのか」「工事はどれくらいの期間で終わるのか」が見えにくいため、オーナーや管理組合にとって不安が大きい部分といえます。ここでは、費用と工期の相場感を詳しく解説します。

費用相場の目安

屋根葺き替えの費用は、建物の規模・工法・屋根材の種類・下地の劣化状況など複数の要因で変動します。大規模修繕の現場でよく見られる目安は以下の通りです。

  • 葺き替え工法:1㎡あたり9,000〜15,000円
    例:30坪(約100㎡)の屋根 → 300万〜500万円前後
  • カバー工法(重ね葺き):1㎡あたり6,000〜10,000円
    例:30坪の屋根 → 200万〜350万円程度
  • 部分補修:状況によって数万円〜数十万円

さらに、以下のような要素も総額を左右します。

  • 屋根材の選択肢:スレートは比較的安価、金属屋根(ガルバリウム鋼板など)はやや高額だが軽量で耐久性に優れる。瓦は重量があり撤去費用や廃材処分費が高くつきやすい。
  • 下地補修の有無:野地板や防水シートが劣化している場合は追加費用が発生する。
  • 屋根形状の複雑さ:片流れ屋根よりも寄棟や入母屋など勾配や谷部が多い屋根は施工費が割高になる。
  • 足場設置の範囲:屋根工事単体で足場を組むと費用が増えるが、大規模修繕の外壁工事と同時なら足場費用を共有できる。

つまり、同じ30坪規模の建物でも、条件次第で200万円台から500万円以上まで幅が出ることがあります。

工期の目安

屋根工事の工期は、工法や屋根の形状によっても異なります。一般的な目安は以下の通りです。

  • 葺き替え工法:2〜3週間程度
    屋根材を撤去 → 下地補修 → 新規屋根材設置と工程が多いため時間がかかる。
  • カバー工法(重ね葺き):1〜2週間程度
    既存屋根を撤去しない分、短期間で完了する。
  • 部分補修:数日〜1週間程度
    範囲が限定的であれば短工期で済む。

ただしこれは「屋根単体の工期」です。大規模修繕では外壁塗装や防水工事と並行して進めるため、全体の工期は3〜4か月に及ぶケースが多いです。屋根工事は天候の影響も受けやすく、梅雨や台風シーズンには工期が延びることも想定しておく必要があります。

屋根葺き替えのメリットとデメリット

屋根葺き替えはコストと時間がかかりますが、建物全体の耐久性や資産価値を守る大切な工事です。判断を誤らないよう、メリットとデメリットを整理しておきましょう。

メリット

  • 耐久性の大幅向上:下地から新しくするため、20〜30年先まで安心して使用可能。
  • 雨漏り防止:防水シートを新設することで漏水リスクを大幅に軽減。
  • 断熱・遮音性アップ:屋根材や断熱材を見直すことで居住環境が快適に。
  • 資産価値維持:外観・性能が向上することで物件評価額や賃貸需要が安定。

デメリット

  • 高額な費用:数百万円単位の支出が必要。修繕積立金不足の場合は一時金や借入を検討する必要あり。
  • 長い工期:撤去や廃材処分を伴うため、他工事よりも期間が長め。
  • 生活への影響:騒音や粉じん、工事車両の出入りなど入居者への配慮が不可欠。

大規模修繕で屋根葺き替えを検討する際の注意点

屋根葺き替えは高額で影響範囲も広いため、検討段階での準備が重要です。以下の点に注意して進めましょう。

管理組合や専門家の診断を受ける

屋根の劣化状況は外観だけでは判断できません。建築士や施工会社による点検を必ず受け、葺き替えが本当に必要かどうかを専門的に診断してもらいましょう。

足場を共用するメリットを活かす

屋根工事は足場が必須です。外壁や防水工事と同時に実施することで足場費用を共有でき、数百万円規模のコスト削減につながる場合もあります。

補助金や助成金の活用

省エネ改修や耐震工事を兼ねる屋根工事は、自治体の補助金や助成金の対象になるケースがあります。申請のタイミングや条件を確認し、利用できれば費用負担を大幅に減らせます。

保証内容と屋根材の確認

使用する屋根材の耐久年数や施工会社の保証内容を事前に確認することが重要です。保証が10年つくのか、20年以上持つ屋根材なのかを把握することで、次回修繕までの計画を立てやすくなります。

大規模修繕の屋根葺き替えに関するよくある質問(FAQ)

大規模修繕の屋根葺き替えに関する質問を紹介します。

Q1. 大規模修繕では必ず屋根葺き替えをしなければならないのですか?

必ずしも葺き替えが必要なわけではありません。下地や屋根材の状態によっては、**カバー工法(重ね葺き)**や部分補修で対応できる場合もあります。ただし、築30年以上経過している建物や、下地材に劣化が見つかった場合は、葺き替えが最適と判断されることが多いです。

Q2. 屋根葺き替えにかかる費用の目安はいくらですか?

一般的な相場は、1㎡あたり9,000〜15,000円です。30坪(約100㎡)で計算すると300万〜500万円前後となります。カバー工法なら1㎡あたり6,000〜10,000円、総額200万〜350万円程度で収まるケースもあります。建物の規模や屋根材の種類、下地の補修有無によって費用は大きく変動するため、複数業者からの相見積もりが不可欠です。

Q3. 屋根葺き替えの工期はどのくらいかかりますか?

葺き替え工法の場合は2〜3週間前後が目安です。カバー工法なら1〜2週間程度で済みます。部分補修は数日〜1週間で終わることもあります。大規模修繕全体では外壁や防水工事と並行して進めるため、全体の工期は3〜4か月に及ぶケースも少なくありません。

Q4. 修繕積立金で屋根葺き替えを賄えますか?不足した場合はどうなりますか?

管理組合が積み立てた修繕積立金で賄うのが基本ですが、金額が不足する場合は一時金の徴収金融機関からの借入で対応するケースがあります。オーナーや理事会は長期修繕計画を定期的に見直し、屋根葺き替えのタイミングに備えて積立金を調整することが重要です。

Q5. 屋根葺き替えに補助金や助成金は利用できますか?

耐震改修や省エネ改修を兼ねる場合は、自治体の補助制度の対象になることがあります。例えば、太陽光パネル設置に合わせた屋根改修や断熱性能の向上工事などです。申請には条件や期限があるため、事前に自治体や施工業者に確認しておくと安心です。

大規模修繕で行う屋根葺き替えのまとめ

大規模修繕で行う屋根葺き替えは、建物の寿命を大きく左右する重要な工事です。費用は数百万円規模、工期も2〜3週間以上かかるため、修繕積立金や資金計画の準備が欠かせません。葺き替え工法とカバー工法にはそれぞれ特徴があり、建物の状態や予算に応じて最適な方法を選ぶことが求められます。
また、足場の共用や補助金の活用など、費用を抑える工夫も可能です。オーナーや管理組合は、専門家の診断を受けながら長期修繕計画に屋根工事を組み込み、将来の資産価値を守るための判断を行いましょう。

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