大規模修繕工事では、防水工事や設備の交換のほか、外壁塗装も行います。経年劣化した床や外壁を塗り替える塗装は、美観を良くするだけではありません。塗料の選択や適切な年数での塗り替えは、コンクリートの炭化や鉄筋の腐食を防ぎ、建物を守る重要な目的があります。
しかし大規模修繕工事と小規模修繕工事のどちらで行うべきか、タイミングを迷うケースもあるでしょう。また、見た目が劣化していないと、塗装や塗り替えは必要なのかと疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、大規模修繕工事と小規模修繕工事の違い、マンションの塗装の必要性や塗装工事の流れ、外壁塗装の耐用年数や費用、信頼できる業者の選び方について紹介します。
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
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マンション外壁塗装は大規模修繕と小規模修繕どちらで行う?
マンションの修繕には小規模修繕と大規模修繕があり、外壁塗装工事や鉄部塗装工事、防水塗装工事は、基本的に大規模修繕で行います。
規模修繕とは、マンション自体の性能を新築時の状態まで回復させ、性能を向上させる修繕のことです。
一方、小規模修繕とは、マンションや設備の劣化や不具合が生じた部分を補修・交換し、日常生活で支障なく使用できるように機能や性能を回復させることを呼びます。
なお、玄関ドアや鉄部の塗り替えについては、5~6年でサビが発生するといわれているため、劣化している場所は大規模修繕工事ではなく小規模修繕工事として都度塗り替えが必要です。
定期的に塗装をすることで、美しい外観を維持し、耐用年数を延ばすことができます。
特に、屋上や床(バルコニー)の防水塗装は、5年に1度トップコートの補修をすると長持ちします。
マンション大規模修繕工事で塗装を行う場所
マンションの大規模修繕工事で塗装工事を行う場合、建物や鉄部の塗り替えが主な目的となります。
主な塗装箇所は次のとおりです。
- 屋上
- 共用廊下
- 階段
- バルコニー
- 鉄部
- 外部鉄骨階段
- 壁面
- 天井面
- 共用廊下の手摺
- 消火栓ボックス
- 玄関ドア
- メーターボックス
大規模修繕の場合、建物外壁(壁・天井)の塗装部分や、鉄部のサビや剥がれが発生している箇所は塗り替えます。
マンション大規模修繕工事で外壁塗装をする理由
マンション大規模修繕工事で外壁や床を塗装する理由は、資産価値の維持、建物を長持ちさせるためです。
それぞれの理由について、詳しく確認しておきましょう。
マンション大規模修繕工事の外壁塗装で美観を維持
マンションを綺麗な見た目のまま保つことは、マンションの資産価値に大きく影響します。
資産価値というと、マンションそのものの価格を思い浮かべる方も多いですが、実際には塗装をしたからといってマンションの価格に大きな差が出るわけではありません。
しかし、美観の維持はマンションに住む人の快適性に大きく影響します。
結果、退去者が減り、マンションの空室率が下がり、資産価値が維持されるでしょう。
マンション塗装は建物を守り長持ちさせる大規模修繕の一種
マンションの塗装は、建物を塗膜で保護し、寿命を延ばすために重要です。
塗膜とは、塗料を乾燥させると完成する、固定された膜を指します。
美観を向上させるだけではなく、防水・遮熱・断熱効果、防汚・防カビ・抗菌効果などがある重要な部分です。
マンションは常に紫外線や雨の影響を受けており、日々塗膜が劣化しています。
塗り替えをせずに長期間放置していると、下地の柱が腐る、雨漏りをするなどのトラブルが起こるため、適したタイミングで塗装工事を行うことが重要です。
大規模修繕でマンションの塗装が必要な症状
マンションの状態によっては、大規模修繕工事を予定している前でも外壁塗装工事が必要なケースがあります。
例えば、雨漏りが発生していたり、鉄筋コンクリートが剥がれていたりする場合は、大規模修繕の前でも外壁塗装を行わなければなりません。
チョーキングや塗膜の剥がれに気づいているにも関わらず外壁塗装をしなければ、建物は長持ちしないでしょう。
また、カビやコケ、藻、幅0.3mm以上のひび割れなどに気づいたら、早めに外壁塗装をしましょう。
劣化のサインを放置しておくと、マンションの資産価値を下げてしまうことにもなりかねません。
「大規模修繕の前に余計な出費はしたくない」と考える方も多いですが、建物の劣化を防ぐためにも小規模修繕工事をおすすめします。
大規模修繕におけるマンション外壁塗装工事の費用相場と費用内訳
マンションの外壁塗装工事にかかる費用は、塗り替えをする場所の劣化状態、選択する塗料、施工方法、追加工事をするのかどうかや業者などによって大きく異なります。
例えば、スプレーガンを使用する吹き付け塗装か、ローラーを使用するローラー塗装か、刷毛を使用するのかなどの要素です。
吹き付け塗装には2つの方法があり、方法によって費用が異なります。
一般的なマンションの外壁塗装にかかる費用は、1㎡あたり2,000円~6,000円程度が相場です。
ほかにも、塗装時の足場代、塗料が周りに飛び散らないようにするネット代、養生シートの設置代、外壁塗装前の汚れを落とす高圧洗浄代、雑費がかかります。
マンション大規模修繕工事の塗り替えや塗装の種類
大規模修繕工事で行う塗装にはいくつかの種類があり、予算や塗り替えをする場所に合わせて最適なものを選ばなけれなりません。
ここでは、大規模修繕工事の塗装の種類、それぞれの特徴を紹介します。
アクリル塗料
アクリル塗料は他の塗料に比べて扱いやすく、価格も安い種類です。
色再現性が高くバリエーションが豊富、 塗料がリーズナブルなため、費用を抑えることができます。
さらに、透湿性が高く、湿気を透過するため、軒天などに適しているでしょう
しかし、耐用年数が4~8年程度と短く、耐用年数が短いため耐久性も低いことから、近年外壁用塗料として使用されることは減っています。
ウレタン塗料
ウレタン塗料は、費用と耐久性のバランスが良い種類です。
耐用年数も7~10年程度と長く、価格も他の塗料に比べ高価ではありません。
アクリル塗料よりも耐久性が安定しており、多くのメーカーが生産しているため、色のバリエーションが豊富です。
価格も高くなく、ある程度の耐久性もある点から、コストパフォーマンスが良いでしょう。
しかし、最近では耐用年数の長いシリコン塗料が使われることが多くなり、アクリル塗料同様、あまり使われなくなってきています。
また、塗料の特性上、他の塗料に比べて色あせが早いこと、汚れに弱いことはデメリットです。
シリコン塗料
シリコン塗料は価格も比較的リーズナブルで、耐用年数が7~15年もあり、現在普及している塗料のなかでは最もバランスの取れた塗料です。
種類が豊富なため、住宅塗装で多く採用されています。
ただし、他の塗料に比べ弾性率が低いため、ひび割れしやすいことがデメリットです。
特に、耐用年数の10年を超えると割れる可能性が高いでしょう。
また、他の塗料に比べ密着性が低いため、取り扱いが難しい点に注意が必要です。
ラジカル制御塗料
ラジカル制御塗料は、ラジカルの発生を抑制できる種類で、耐用年数は12~16年と耐久性が高いのが特徴です。
ラジカルとは、酸化チタンが紫外線や水の影響を受けて発生し、塗料の劣化を引き起こす劣化因子のことを指します。
ラジカルが塗膜樹脂を傷めることが、外壁を触ると白い粉がつくチョーキング現象を起こす原因のひとつです。
ラジカル制御塗料を使用すればチョーキング現象が起こりにくくなり、耐用年数と価格のバランスが良いといえます。
また、どのようなベースにも対応可能です。
しかし、黒やネイビーなどの濃い色は効果がなく、新しい塗料のため商品数や実績も少ないため、実際の耐用年数の判断が難しい点に注意が必要です。
フッ素塗料
フッ素塗料は、蛍石と合成樹脂を原料としたフッ素含有塗料です。
耐用年数は15~20年と非常に耐久性が高く、紫外線や汚れにも強いことが特徴です。
そのため、マンションや大規模建築物など頻繁に塗り替えができない建物によく使われます。
親水性が高く、汚れやホコリが付着しても雨で洗い流すことが可能です。
また、紫外線に強く、耐候性が高いこともメリットだといえます。
ただし、親水性が高いため艶消しができず、塗膜が他の塗料より硬いため、ひび割れしやすい点に注意が必要です。
無機塗料
無機塗料とは、塗料の原料に無機物質を添加した塗料で、耐用年数が20~25年と最も耐久性の高い塗料です。
無機物とは炭素を含まない物質のことで、無機物が含まれるため耐久性が高く、紫外線の影響も受けにくいといえます。
現在市販されている塗料のなかで最も耐久性と親水性が高いため、雨で汚れを洗い流すことが可能です。
ただし、親水性が高いため、艶消しができません。
また、塗膜が他の塗料より硬いため、ひび割れしやすいこと、費用がかかることを理解しておきましょう。
光触媒塗料
光触媒塗料は酸化チタンを主成分とした塗料で、セルフクリーニング機能を持つため雨で汚れを洗い流すことができます。
また、遮熱効果、防カビ効果が期待できることが特徴です。
耐用年数は15~20年と長いですが、主流の塗料が製造中止になったため、あまり使われなくなりました。
ただし、紫外線や雨を活用して汚れを除去するため、紫外線が当たらない箇所は綺麗に維持しにくいでしょう。
さらに、他の塗料に比べて塗りにくいため、施工不良が発生しやすく工期が長いこと、種類が少ないことはデメリットです。
マンション大規模修繕の外壁塗装で気をつけたい2つのポイント
マンションの塗装は、やり方を誤るとクレームが発生したり、予算を大幅に超えたりする危険性があります。
以下の点に注意して、塗装や塗り替えを進めましょう。
マンション大規模修繕の塗装前に住民や近隣へ連絡を必ず行う
マンションの外壁工事は、戸建住宅に比べて規模が大きいです。
足場の組み立てと解体、騒音や塗装の臭いなどのクレームやトラブルが発生しやすいでしょう。
工期が長くなるため、周辺への影響期間も長くなります。
大規模修繕工事で塗装を行う際には、マンションの住民だけではなく近隣の住民にも挨拶に回り、工事のスケジュールを説明し、理解を得ておくとよいでしょう。
場合によっては、洗濯物を屋外に干せないこともあります。
外壁の掃除や塗装の際、塗料や薬品の強い臭いがすることもあり、窓が開けられないません。
結果、苦情やトラブルに発展することもあります。
工事期間や様々な工程について、事前に情報を共有し、「工事期間中は洗濯物を外に干せません」などの注意書きを掲示するなど、周知徹底を図りましょう。
注意事項を事前に告知することで、大きな問題になるのを防げます。
マンション大規模修繕の塗装は2色以上使用するコストが高い
2色以上で塗装すると手間がかかるため、1色で塗装する場合と比べて工事費が高くなってしまいます。
1色でよいのか、2色にする必要があるのか、十分に検討しましょう。
ただし、コストがかかってもデザインを重視する場合や、必要性に応じて、2色以上で塗装しても問題はありません。
大規模修繕のマンション外壁塗装で耐用年数を延ばすコツ
耐用年数は環境など様々な要因で変化するため、必ずしも外壁塗装を最長耐用年数まで維持できるわけではありません。
しかし、長持ちさせるコツを実践するか実践しないかで耐用年数は変わってきます。
長持ちさせるために大規模修繕で外壁塗装をする場合、次の大規模修繕まで外壁塗装の寿命を延ばすために、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
大規模修繕では耐用年数を意識してマンション塗装用の塗料を選ぶ
耐用年数が長い塗料を選択すれば、短期間に何度も塗りなおしをする必要はありません。
特にフッ素塗料は耐用年数が長いためおすすめです。
なお、耐用年数の長い塗料には、フッ素塗料の他に、無機塗料や光触媒塗料があります。
無機塗料や光触媒塗料は、フッ素塗料に比べると高価な点に注意が必要です。
マンション塗装や大規模修繕に精通した優良業者に依頼する
外壁塗装を長持ちさせるためには、信頼できる業者を選ぶこともポイントです。
規定量を守らなかったり、極端に薄く塗ったり、下塗りを丁寧に行わなかったりするなど悪徳業者もいます。
そのため、信頼できる業者かどうかを見極めるためには、以下のポイントを必ずチェックしましょう。
- 大規模修繕時の外壁塗装の実績を確認
- 資本金が豊富な業者に依頼
- 複数の業者に依頼して担当者の対応が早いか確認
上記のポイントは、依頼する業者のホームページに記載していることが多いです。
大規模修繕でもマンション外壁は原則3回塗装
外壁塗装では、3度塗りが原則といわれています。
外壁塗装を3回以上行うことで、耐久性のある塗膜が形成され、耐用年数を延ばせるためです。
ただし、外壁の劣化症状、塗料の種類によっては、回数を増やすことでかえって状態が悪化することもあります。
つまり、必ずしも回数を増やせば耐用年数が延びるというわけではありません。
適切な塗り回数を見極めるには高度な塗装技術が必要なため、塗り回数を増やす場合は必ず実績のあるプロに依頼しましょう。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
マンション大規模修繕で外壁塗装を行う場合は耐用年数を把握しよう
大規模修繕工事は、およそ10~15年周期で行われます。
そのため、大規模修繕工事のタイミングで外壁塗装を行う方法が有効ですが、鉄部の塗装は5年に1度の補修が必要です。
また、塗料によって耐久年数や特性が異なるため、違いを理解しておくことが大切です。
違いを理解することで、大規模修繕に最適な時期に、最適な外壁塗装工事を行うことができます。
しかし、どの塗料がマンションに適しているのか、塗装のタイミングを見極めるのは簡単ではありません。
そのため、信頼できる専門家に相談することが大切です。
大規模修繕工事のタイミングはもちろん、気になる箇所がある場合には小規模修繕工事を実施し、マンションの美観や快適性を維持しましょう。