小規模マンションの修繕工事の実施を検討している人
小規模マンションが大規模しゅうぜん工事を成功させるポイントは?
小規模マンションも大規模な修繕工事は実施するのがいい?
小規模マンションの大規模修繕工事は、戸数や規模が少ないため、大規模マンションに比べて工事費や期間が短いのが特徴です。
それでも大きな負担になるため、事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。
この記事では、工事前の準備、内容、工事後のトラブル、また対処法について解説します。
今後の修繕工事を行う際、当記事を参考にしていただければ幸いです。
目次
小規模マンションで行う大規模修繕のメリット
小規模マンションの大規模修繕のメリットは、大きく分けて以下の3つです。
資産価値の維持・向上
大規模修繕工事により、マンションの外観や設備がきれいになり、資産価値が維持・向上します。
また、雨漏りや劣化などのトラブルを未然に防ぐことで、マンションの価値が守られます。
居住環境の向上
大規模修繕工事により、外壁や防水工事が行われることで、雨漏りや結露などのトラブルを防ぎ、快適な居住環境が維持できます。
また、給排水管工事やエレベーター工事が行われることで、安心・安全な暮らしを実現することも可能です。
管理組合と住民の団結力向上
大規模修繕工事は、マンションの管理組合にとって大きなイベントです。
工事の準備や運営に協力することで、管理組合の団結力が向上し、マンションの運営が円滑になります。
また、小規模マンションは、世帯数が少ないため、管理組合の総会や理事会で合意形成がしやすいというメリットがあります。
そのため、工事の計画や予算を決める際に、多くの住民の意見が反映されやすいです。
小規模マンションは世帯数が少ないため、役割分担や意思決定がスムーズに進み、工事計画を効率的に進められます。
工事中のトラブルや問題が発生した場合にも、迅速に対応しやすいです。
工事の準備や運営に協力することで、住民同士の交流が深まり、コミュニティの活性化につながります。
工事前の準備
工事前の準備として、まず管理会社や施工会社との打ち合わせを行います。
工事の内容や費用、スケジュールなどをしっかりと確認しておきましょう。
また、長期修繕計画も作成しておくと、将来の大規模修繕に備えることが可能です。
大規模修繕工事の準備は、早めに行うのが大切です。
管理会社からの工事提案書を待つのではなく、マンション管理組合自らが主体的に動きましょう。
具体的な準備は、以下のとおりです。
- 劣化診断を実施し、マンションの現状を把握する
- 複数の施工会社から見積もりを取り、比較検討する
- 管理会社や施工会社との打ち合わせを重ね、納得のいく工事内容を決める
早めの準備と慎重な検討を重ねることで、マンションの資産価値を守り、快適な住環境が維持できます。
大規模修繕の推奨サイクルと材料選び
大規模修繕の推奨サイクルは、一般的に10年〜15年といわれています。
ただし、マンションの築年数や立地条件、周辺環境などによっても異なります。
大規模修繕工事では、長持ちする材料を選ぶことが大切です。
耐用年数や品質、保証などをしっかりと確認しましょう。
高い工事費だから安心とは限らない?
大規模修繕工事の元請は、必ずしも安心を保証するものではありません。
大手の管理会社が入っているマンションの場合、管理会社に大規模修繕工事を依頼するのが安心だと考える方もいるようです。
しかし、実際に工事を行うのは下請け会社であり、元請である大手管理会社が下請けへのコストを抑えれば、工事品質の低下につながります。
したがって、高い工事費=安心とは限りません。
このような場合、複数の施工会社から見積もりを取り、比較検討することが大切です。
実際、大手の分譲マンションでは、系列会社や子会社である管理会社が元請になって大規模修繕工事を実施するケースが多くなっています。
この方法では、必然的に競争原理も働かないため、工事費が割高であるケースも多く見受けられます。
工事の内容と足場の必要性
小規模マンションの大規模修繕工事では、一般的に以下の内容が行われます。
- 共通仮設工事
- 足場仮設工事
- シーリング工事
- 下地補修工事
- 鉄部塗装工事
- 外壁高圧洗浄工事
- 内外壁塗装工事
- バルコニー床防水工事
- その他各種防水工事
実は、大規模修繕工事の際、高所作業のために架けられる足場は、工事費の大きな割合を占めているのです。
一般的なマンションでは足場仮設費用が総工事費の15~20%を占めており、小規模マンションではさらに高くなる傾向があります。
足場仮設工事は、工事完了後には何も残らないため、無駄なコストと捉えられがちです。
しかし、足場を使わなければ、高所作業が困難なため、工事の安全性や効率が低下してしまいます。
そこで、小規模マンションならではのコストダウン方法を紹介します。
一つの方法は、外壁タイルなどの施工状態を確認することです。
もし、良好な状態であれば、足場をかけて修繕する必要はありません。
また、小規模マンションであれば、吊り足場(ブランコ)工法などの代替手段で、費用を抑えながら効率よく修繕できます。
屋上の防水・シーリング防水・塗装などの工事では、より性能の高い高耐久性の材料を使うことで、多少工事費が高くなっても、次回の修繕までの周期を延ばすことも可能です。
このように、工事内容や施工方法を工夫することで、無駄なコストを削減し、効果的な大規模修繕が実現できます。
諸経費と設計コンサルタントの問題
大規模修繕工事には、工事費以外に諸経費もかかります。
諸経費とは、施工管理費や設計監理費、材料費に含まれない費用のことです。
諸経費は、工事費の10~20%程度とされており、小規模マンションでは特に負担が大きくなりがちです。
昨今、大規模修繕工事の施工会社選定において、談合や癒着、バックマージンといった悪質コンサル問題が問題になっています。
談合とは、複数の業者が事前に結託して、見積もり金額を合わせることです。
談合により、本来より割高な工事代金を、修繕積立金から支払わざるを得ない管理組合が多くなっています。
また、業者とコンサルタントが癒着関係にあることで談合が容易になり、問題視されています。
バックマージンとは、施工会社がコンサルタントに支払う見返り金で、コンサルタントは本来より安価な業務報酬で施工会社を推薦することが可能です。
設計監理方式の落とし穴
設計監理方式は、あらかじめ管理会社や設計コンサルタントによって決められた仕様をもとに、施工会社の選定を進めていくための公平で透明な選定方式です。
しかし、同じ仕様に基づいて見積もりを行うため、金額を調整するだけで簡単に談合ができてしまう側面もあります。
特に、極端に安価な費用で引き受ける設計監理方式のコンサルタントには要注意です。
施工会社からのバックマージンを受け取る前提だからこそ安価な業務報酬が設定されているのです。
悪質コンサル対策
悪質コンサル問題を防ぐためには、以下の対策が必要です。
- 複数の施工会社から見積もりを取る
- 見積もりの金額を比較する
- 施工会社の実績や評判を調べる
- 施工会社との打ち合わせを重ねる
また、設計監理方式のコンサルタントを選ぶ際には、複数の候補から選び、業務報酬や選定方法を慎重に確認するようにしましょう。
工事後のトラブル
小規模マンションの大規模修繕工事後のトラブルとしては、以下のようなものが挙げられます。
また、工事後のトラブルが発生した場合は、早めに施工会社や管理会社に連絡し、対応を依頼することが大切です。
工事の品質や仕様の不備
工事の品質や仕様が不備だった場合、雨漏りや結露、ひび割れなどのトラブルが発生する可能性があります。
また、工事後に追加工事が必要になるケースもあります。
工事費の増額
工事費の増額が発生した場合、管理組合は追加の修繕積立金の積み立てが必要になります。
また、工事期間の延長や工事内容の変更が発生する可能性もあります。
住民の不満やクレーム
工事期間中は、住民の生活に大きな影響を与えます。
そのため、工事による騒音や振動、近隣住民への配慮などに対する住民の不満やクレームが発生する可能性があります。
小規模マンションで行う大規模修繕の注意点と対処法
小規模マンションで行う大規模修繕の注意点は、以下のとおりです。
工事費の負担が大きくなる
小規模マンションの場合、戸数や規模が少ないため、工事費は1戸あたりの負担が大きくなります。
そのため、工事費を抑えるためには、工事内容や仕様の見直し、施工会社の選定など、さまざまな対策を講じることが重要です。
具体的な対策は、複数の施工会社から見積もりを取り、工事費や仕様の比較検討を行いましょう。
ただし、見積もりには、工事費のほかに管理費や損害保険料などの費用も含まれるため注意が必要です。
また、施工会社の選定は、実績や評判などを調査し、信頼できるところに依頼することが重要です。
さらに、工事後の保証内容を確認しておきましょう。
工事内容によっては、保証期間や保証内容が異なる場合があります。
合意形成が難しい
小規模マンションの場合、世帯数が少ないため、合意形成が難しいという課題があります。
そのため、工事の計画や予算を決める際には、住民の意見を十分に反映させ、合意形成を図ることが重要です。
また、工事中の騒音や振動などの影響について、住民への周知や説明を徹底しましょう。
工事期間が短くなる
小規模マンションの場合、工事期間が短くなる傾向があります。
そのため、工事のスケジュールを綿密に計画し、工事中の住民の生活への影響を最小限に抑えることが重要です。
工事内容やスケジュールなどを明確に定めておき、住民の理解と協力を得ましょう。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
まとめ
ここまで、小規模マンションにおける大規模修繕のポイントについて解説してきました。
小規模マンションの大規模修繕工事は、戸数や規模が少ないため、大規模マンションに比べて工事費や期間が短いのが特徴です。
それでも大きな負担になるため、以下のポイントを押さえて事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。
- メリット:資産価値の維持・向上、居住環境の向上、管理組合と住民の団結力向上
- デメリット:戸当たりの工事費負担が大きくなる、合意形成が難しい、工事期間が短くなる
- 工事前に劣化診断を実施し、マンションの現状を把握する
- 複数の施工会社から見積もりを取り、比較検討する
- 管理会社や施工会社との打ち合わせを重ね、納得のいく工事内容を決める
- 工事費の負担を抑えるには、工事内容や仕様の見直し、施工会社の選定など、さまざまな対策を講じる
- 合意形成が難しい場合は、住民の意見を十分に反映させ、合意形成を図る
- 工事期間が短い場合は、工事のスケジュールを綿密に計画し、住民の生活への影響を最小限に抑える
小規模マンションにおいて、大規模修繕は一大イベントともいえます。
しっかり準備して、適切に工事が行えるようにしましょう。
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