シンダーコンクリートについて知りたい人
シンダーコンクリートとは?
シンダーコンクリート・押さえコンクリート・保護コンクリートの違いは?
シンダーコンクリートの防水効果はどれくらい?
屋上防水をシンダーコンクリートにすることはできる?
屋上防水の改修工事でシンダーコンクリートの上にウレタン防水で改修することはできる?
軽量で施工性に優れたシンダーコンクリートは、バルコニーなど様々な場所で採用されています。施工面や費用面にメリットがあり防水工事の必要なコンクリートの屋上などで使用されます。
しかし、経年劣化によって様々な問題が発生するのも事実です。
この記事では、シンダーコンクリートの劣化を防ぎ、長持ちさせるための対処法について徹底解説します。
目次
シンダーコンクリートとは
屋上防水に100年以上の実績があるアスファルト防水は、人の歩行を想定していないため保護が必要です。
そこで、防水層を風雨や紫外線から守るために、コンクリートを敷設します。
これが「シンダーコンクリート」や「保護コンクリート」と呼ばれるものです。
一般的なコンクリートは重いので、建物への負担を軽減するため、軽量なシンダー(石炭の燃え殻)を骨材とした軽量コンクリートが使用されます。
近年では、シンダーを使わず、人工軽量骨材を使用したものが主流となり、「保護コンクリート」と呼ばれることが多いです。
屋上防水を守るために重要な役割を果たすシンダーコンクリートと保護コンクリート、それぞれの特性を理解し、適切な選択が求められます。
シンダーコンクリートのメリット
シンダーコンクリートは、軽量で施工性に優れ、断熱性にも優れたコンクリートです。
屋上やバルコニーなどの軽量化が必要な場所に適しています。
軽量化によるメリット
シンダーコンクリートは、一般的なコンクリートよりも軽量なコンクリートです。
軽量であるため、以下のようなメリットがあります。
- 上階への水の使用による水漏れリスクを軽減
- 建物の構造体への負担を軽減
- 地震時の揺れを抑える
- 軽量なので、運搬や施工が容易
- 型枠や足場の負担を軽減
- 材料費や運搬費を削減
- 工期短縮によるコスト削減
- 建物のCO2排出量を削減
- 資源の節約
このように、シンダーコンクリートは、従来のコンクリートでは難しかった課題を解決し、様々なメリットをもたらしてくれます。
断熱性によるメリット
シンダーコンクリートは、軽量である上に、断熱性にも優れたコンクリートです。
断熱性によるメリットは以下の通りです。
- 冷暖房費の節約
熱伝導率が低いため、外気の影響を受けにくく、室内温度を一定に保ちやすい
結果的に冷暖房の使用量を減らし、ランニングコストを削減できます - 快適な室内環境の実現
夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境を実現します - 環境負荷の低減
冷暖房の使用量削減により、CO2排出量を削減し、環境負荷を低減できます - 結露の発生を抑え、カビやダニの繁殖を抑制
このように、シンダーコンクリートは、断熱性による様々なメリットがあります。
快適な室内環境を実現し、環境負荷を低減する効果が期待できます。
その他のメリット
シンダーコンクリートには、軽量と断熱性以外にもメリットがあります。
- 施工性:流動性に優れ、施工が容易
- 耐久性:耐久性に優れ、長持ちする
- 経済性:比較的安価な材料
シンダーコンクリートは、様々なメリットを持つ材料です。
用途に応じて適切な種類を選び、適切な施工方法とメンテナンス方法を理解することで、長持ちする構造物を造ることができます。
シンダーコンクリートのデメリット
シンダーコンクリートは、軽量で施工性に優れ、断熱性にも優れたコンクリートですが、いくつかのデメリットがあります。
以下に、主なデメリットをいくつか紹介します。
- 強度が低い:一般的なコンクリートよりも強度が低いため、荷重がかかる場所には不向き
- ひび割れが発生しやすい:乾燥収縮や温度変化の影響を受けやすく、ひび割れが発生しやすい
- 耐久性が低い:炭酸ガスによる劣化や凍結融解による劣化を受けやすい
- 防水性が低い:水を通しやすい性質があるため、防水対策が必要
- 施工に注意が必要:流動性が高いため、施工に注意が必要
シンダーコンクリートは、軽量化と施工性を重視する場所に適していますが、強度が低い、ひび割れが発生しやすいなどのデメリットがあります。
これらのデメリットを理解した上で、用途に応じて適切な材料を選ぶことが重要です。
シンダーコンクリートの劣化事例
シンダーコンクリートは、経年劣化によってさまざまな問題が発生します。
以下は、シンダーコンクリートの主な劣化事例です。
コンクリートが割れている
コンクリートの割れの事例は、その大きさによって緊急度が異なります。
以下のような事例が起きたら、早めに業者へ連絡しましょう。
- 細いひび割れ:表面的なひび割れで、構造的な問題がない場合が多い
- 大きなひび割れ:構造的な問題が発生している可能性があり、早急な補修が必要
- コンクリートの剥離:コンクリートが剥がれ落ち、鉄筋が露出している場合がある
また、コンクリートの割れには、以下のような原因が考えられます。
- 乾燥収縮
- 温度変化
- 荷重
- 施工不良
- 材料の劣化
シンダーコンクリートは、適切なメンテナンスを行うことで、長持ちさせることができます。
定期的に点検を行い、早期に劣化を発見・補修することが重要です。
伸縮目地が劣化している
伸縮目地は、コンクリートの伸縮を吸収し、ひび割れを防ぐために設けられています。
伸縮目地の劣化症状は、以下の通りです。
- ひび割れ:伸縮目地にひび割れが発生している
- 破断:伸縮目地が破断している
- 剥離:伸縮目地がコンクリートから剥離している
- 沈下:伸縮目地が沈下している
- 水の浸入:伸縮目地から水が浸入している
また、伸縮目地は、以下の原因によって劣化します。
- 紫外線
- 風雨
- 凍結融解
- 荷重
- 施工不良
伸縮目地の劣化は、コンクリートのひび割れや破断などの重大な被害につながります。
定期的に点検を行い、早期に劣化を発見・補修することが重要です。
シンダーコンクリートに適した防水工法
シンダーコンクリートは軽量で施工性に優れ、断熱性にも優れたコンクリートですが、防水性が低いというデメリットがあります。
そのため、シンダーコンクリートには、以下の点に留意した防水工法が必要になります。
- シンダーコンクリートの特徴を考慮する
- 下地の状態を調査する
- 予算や工期を考慮する
- 将来的なメンテナンスも考慮する
そこで、既存のシンダーコンクリートを活かし、適切な処置と防水施工を行うことが最善の選択肢と考えられます。
既存のシンダーコンクリートを維持する理由は、撤去・再施工はコストと工期がかかることと、適切な処置で、十分な耐久性と防水性を確保できることです。
防水工法を選択するにあたり、アスファルト防水は重量の増加、火災リスク、煙・臭気の問題があります。
しかし、ウレタン防水は軽量で、手軽に施工でき、安全性も高いです。
また、通気緩衝工法を採用することで、水蒸気による防水層の膨れを抑制します。
屋上防水改修工事でシンダー コンクリート上にウレタン塗膜防水は可能?
屋上防水改修工事で、シンダーコンクリート(軽量コンクリート)の上にウレタン塗膜防水を施工することは可能ですが、以下の点に注意が必要です。
1. 下地の強度と安定性の確認
シンダーコンクリートは通常のコンクリートに比べて強度が劣る場合があるため、防水層の施工前に下地の状態をしっかり確認する必要があります。亀裂や剥がれがあると防水層が劣化しやすくなるため、必要であれば補修や下地の強化が求められます。
2. 下地の平滑化
ウレタン防水は液状で塗布されるため、下地が平滑で清潔であることが重要です。シンダーコンクリートは表面が粗いため、プライマーの塗布を行う前に必要に応じてモルタルなどで平滑化処理を行います。
3. プライマーの使用
シンダーコンクリートとウレタン防水層の密着性を確保するため、プライマーを丁寧に塗布します。ウレタン防水の接着性を向上させるために、専用のプライマーが必要となることが多いです。
4. 防水層の保護
ウレタン防水層は紫外線や温度変化に弱いため、トップコートや保護層を塗布することで長期的な耐久性が確保されます。特にシンダーコンクリート上の施工では、補強材の使用や適切な厚みの確保が効果的です。
5. 定期メンテナンス
シンダーコンクリート上のウレタン塗膜防水はメンテナンスが非常に重要です。定期的なトップコートの再塗布や、劣化の点検を行うことで、防水効果が長期間持続します。
これらの工程を正しく行うことで、シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水を適切に施工し、十分な防水効果を発揮させることが可能です。
屋上防水でのシンダーコンクリート改修工事の流れ
シンダーコンクリート改修工事は、以下のような流れで施工します。
- 伸縮目地の処理
- 下地の補修
- 下地の調整
- 新たな防水層を形成
ここでは、通気緩衝工法(脱気工法)の具体的な流れを解説していきます。
伸縮目地の処理
一部の伸縮目地は、紫外線による劣化などで表面から飛び出していることがあります。
飛び出した目地は全て撤去し、樹脂モルタルやシーリング材で埋め戻すします。
防水メーカーによって異なりますが、特殊加工ステンレス板を用いた目地埋設も可能です。
シンダーコンクリート内の水分対策として、脱気筒を設置します。
目地埋設時に、脱気筒設置箇所(目地交差部)を埋めないようにすることが重要です。
脱気筒の設置箇所は、メーカーによって異なりますが、60~100㎡あたり1箇所程度とされています。
飛び出した伸縮目地は撤去し、適切な埋め戻しと脱気筒設置を行うことで、新しい防水層の施工と長期的な防水効果を維持できます。
防水材料や施工方法については、専門業者に相談し、最適なプランを選択することが重要です。
下地の補修
防水施工前に、コンクリート表面にひび割れ、欠損、ワイヤメッシュの腐食がないか確認します。
- ひび割れ・欠損:樹脂モルタルで補修し、平滑な表面を作る
- ワイヤメッシュの腐食:腐食膨張したワイヤメッシュは、爆裂や露筋の原因となるため、樹脂モルタルで補修する
- モルタルの剥離:モルタルが剥離している場合は、樹脂モルタルで補修する
補修の目的は、防水層の施工前に、下地を平滑にすることで、密着性を高め、防水効果を最大限に発揮させることです。
ワイヤメッシュの腐食を放置すると、コンクリートの構造的な問題に発展する可能性があるため、早期に補修する必要があります。
補修には樹脂モルタルを使用し、ひび割れ、欠損、腐食部分を埋めて平滑にします。
また、補修後は、十分な乾燥時間の確保が必要です。
下地調整
シンダーコンクリートは、年数経過によって紫外線や風雨の影響を受け、表面がザラザラになります。
表面がザラザラになっていると、新規防水材の密着不良や防水層の剥離を引き起こす可能性があります。
新規防水材を施工する前に、下地調整を行い、表面を滑らかにすることが必要です。
下地調整方法は、樹脂モルタルによる表面の補修と通気層を設けたボードの敷き詰めの2種類があります。
通気層の役割は、シンダーコンクリート内部の水分を逃がし、防水層の膨れや剥離を防ぐことです。
ボードはセメントによる点付け接着で、通気層を確保します。
新たな防水層を形成
シンダーコンクリートは、年数を経て内部や下部に水分を蓄積します。
従来の密着防水では、水分が逃げ道がなくなり、蒸気によって防水層が膨らみ、破損してしまう可能性が高いです。
新規の防水層をコンクリートに密着させずに、空気や蒸気の通り道となる隙間を設けることで、防水層の膨張を防ぎます。
このように、通気緩衝工法(脱気工法)は、シンダーコンクリート内部の水分の影響による防水層の破損を防ぐ、効果的な工法です。
シンダーコンクリートの劣化を防ぐ対策
シンダーコンクリートの劣化を防ぐには、以下の対策が効果的です。
定期的な点検とメンテナンス
シンダーコンクリートは軽量で施工性に優れていますが、経年劣化によって防水性が低下し、ひび割れや剥離などの問題が発生する可能性があります。
これらの問題を防ぎ、シンダーコンクリートを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが重要です。
シンダーコンクリートは、経年劣化によって防水性が低下し、ひび割れや剥離などの問題が発生しやすいです。
定期的なメンテナンスによって、これらの問題を早期に発見・解決し、シンダーコンクリートの寿命を延ばしてくれます。
定期的なメンテナンスは、シンダーコンクリートを長持ちさせ、建物の美観と安全性を維持するために重要です。
専門業者に相談し、適切なメンテナンスプランを検討しましょう。
防水層の保護
シンダーコンクリートは、水に弱いため、防水工事を行うことが重要です。
防水層は、シンダーコンクリート内部の水分を防ぎ、劣化を防ぐ役割を果たします。
防水層は、経年劣化によって性能が低下していきます。
定期的に点検を行い、劣化箇所は早めに補修しましょう。
防水層の施工は、専門の業者に依頼するのがおすすめです。
施工方法が不適切だと、防水層の性能が低下したり、劣化の原因となったりする可能性があります。
下地の保護
シンダーコンクリートの劣化を防ぐためには、下地の保護が重要です。
シンダーコンクリートの劣化を防ぐための下地保護対策には、以下のようなものがあります。
防水対策
シンダーコンクリートは、雨水や地下水などの水分にさらされると、劣化が進みやすくなります。
そのため、防水対策を施すことで、シンダーコンクリートの劣化を防ぐことができます。防水対策には、塗膜防水やシート防水、浸透防水などがあります。
塗装対策
シンダーコンクリート表面は、紫外線や風雨によって劣化しやすくなります。
そのため、塗装によってシンダーコンクリート表面を保護することで、劣化を防ぐことが可能です。
塗装には、防水塗料や保護塗料などの種類があります。
シーリング対策
シンダーコンクリートの継ぎ目や隙間は、水や空気の侵入口となり、劣化の原因となります。
そのため、シーリングによって継ぎ目や隙間を埋めることで、水や空気の侵入を防ぎ、劣化を防ぐことが可能です。
シーリング材には、ウレタンシーリングやポリウレタンシーリングなどがあります。
シンダーコンクリートの劣化を防ぐためには、これらの対策を組み合わせて行うことが効果的です。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
シンダーコンクリートの防水についてまとめ
ここまで、シンダーコンクリートの防水について解説してきました。
シンダーコンクリートとは、軽量で断熱性に優れたコンクリートです。
- シンダーコンクリートのメリットは、軽量、断熱性、施工性、経済性が高いこと
- シンダーコンクリートのデメリットは、強度が低い、ひび割れが発生しやすい、耐久性と防水性が低い
- シンダーコンクリートの劣化事例は、コンクリートの割れ、剥離、伸縮目地の劣化がある
- シンダーコンクリートに適した防水工法は、通気緩衝工法(脱気工法)で、水分を逃がし、防水層の膨張を防ぐ
- シンダーコンクリート改修工事の流れは、以下のとおり。
- 伸縮目地の処理
- 下地の補修
- 下地調整
- 新たな防水層の形成
- シンダーコンクリートの劣化を防ぐ対策には、定期的な点検とメンテナンス、防水層や下地の保護がある
シンダーコンクリートは、適切なメンテナンスと防水対策を行うことで、長持ちさせることができます。
専門業者に相談し、状況に応じた適切な対策を検討しましょう。