マンション大規模修繕工事とは、建物の長寿命化と快適な住環境維持のために重要な工事です。特に3回目の大規模修繕工事は、マンションの将来を左右する重要な節目といえます。
近年、多くのマンションで大規模修繕工事の実施が課題とされています。建物の経年劣化に伴って工事の内容や費用は回を追うごとに変化するため、3回目ともなると設備の更新や耐震補強など、より大規模な工事が必要となる場合もあります。そこで本記事では、大規模修繕工事の重要性や実施状況・工事内容・修繕費をはじめとするコスト面の課題などついて詳しく解説します。また、管理組合としての対応策や、専門家へのアドバイス依頼の重要性についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
マンション大規模修繕工事1〜3回目の重要性とその背景
大規模修繕工事は、マンションの長寿命化を促進し、住民の安全と快適性を確保するために不可欠です。
定期的な修繕工事は、建物の老朽化や劣化を防ぎ、将来的な修繕費用を抑える効果もあります。
また、適切な修繕計画と工事実施により、マンションの資産価値を維持し、入居者の満足度を高めることにもつながります。
大規模修繕工事が行われる背景は、建物の経年劣化による修繕が必要になったことや、自然災害への備えなどが主なものです。
特に給水設備の修繕は重要な課題であり、老朽化や水漏れなどの問題が発生することがあります。
このような問題は、住民の生活に大きな影響を与えるだけでなく、建物自体の損傷や水漏れによる隣人トラブルなども引き起こす可能性があります。
以上のように、大規模修繕工事はマンション管理の重要な要素であり、定期的な実施が建物と住民の健全性を保つために欠かせないものです。
マンション大規模修繕工事1〜3回目の実施状況
ここでは、国土交通省が行った調査による大規模修繕の実施状況について解説していきます。
まず、大規模修繕の回数別に戸数、延床面積、築年数、平均修繕周期、工事金額を表にまとめました。
カッコ内は各回数の全体から見た割合となっています。
表:大規模修繕の回数別の比較
回数 | 1回目 | 2回目 | 3回目以上 |
戸数 | 51〜75戸(21.6%) | 51〜75戸(25.1%) | 51〜75戸(18.5%) |
延床面積 | 20,000㎡超(20.5%) | 4,000〜6,000㎡(20.6%) | 20,000㎡超(13.2%) |
築年数 | 15年以下(51.6%) | 26〜30年(47.2%) | 41年以上(46.5%) |
平均修繕周期 | 15.6年 | 14.0年 | 12.9年 |
工事金額 | 4,000〜6,000万円(17.3%) | 6,000〜8,000万円(18.1%) | 6,000〜8,000万円10,000〜15,000万円(16.9%) |
1戸あたりの工事金額 | 100〜125万円/戸(31.4%) | 75〜100万円/戸100〜125万円/戸(27.6%) | 75〜100万円/戸(28.4%) |
大規模修繕3回目の数値に注目してみると、築41年以上で行われている割合が最も高く、回数の増加によって修繕周期が短くなるようです。
また、3回目以上の大規模修繕は、過去2回の工事よりも大きな費用がかかっています。
表:大規模修繕の回数別工事割合
回数 | 1回目 | 2回目 | 3回目以上 |
建築系工事 | 58.8% | 59.0% | 63.6% |
設備系工事 | 1.3% | 1.4% | 2.2% |
外構・付属施設 | 1.2% | 1.6% | 1.2% |
仮設工事 | 25.3% | 22.3% | 19.4% |
その他 | 3.2% | 6.2% | 3.0% |
建築系工事の内訳は、屋根防水、床防水、外壁塗装、外壁タイル、シーリング工事、鉄部等塗装、建具・金物等、共用内部です。
また、設備系工事には、給水設備、排水設備、ガス設備、空調・換気設備、電灯設備等、情報・通信設備、消防用設備、昇降機設備、駐車場設備が含まれています。
マンションの工事回数と総工事金額に対する割合は、工事回数が多くなると、建築系工事と設備系工事の割合が高くなり、仮設工事の割合が低くなる傾向があるようです。
表:大規模修繕工事の回数別建築系工事金額の割合
回数 | 1回目 | 2回目 | 3回目以上 |
外壁塗装 | 21.6% | 23.4% | 28.8% |
床防水 | 20.9% | 17.9% | 15.7% |
外壁タイル | 18.5% | 10.5% | 7.1% |
屋根防水 | 12.1% | 17.2% | 12.9% |
シーリング工事 | 14.5% | 11.4% | 9.1% |
鉄部等塗装 | 6.6% | 6.9% | 8.8% |
建具・金物等 | 1.9% | 7.2% | 15.3% |
共用内部 | 3.9% | 5.5% | 2.4% |
建築系工事のみの内訳では、どの工事回数でも外壁塗装の割合が最も高く、床防水が次に高いようです。
また、工事箇所によって費用の割合が増減する傾向にありますが、これは経年劣化や耐用年数が関係してくるものと考えられます。
参考:国土交通省-令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査
マンション大規模修繕工事3回目の工事内容
大規模修繕工事3回目の工事内容は、屋根防水の撤去・新設、建具の取り替え、給排水管の取り替え、耐用年数を迎えた設備の取り替えなどが含まれます。
これらの工事は、回数が重ねるごとに範囲が広がり、費用も高額になる傾向があります。
なぜなら、マンションの各部分がすでに寿命に達しているか、寿命に近づいているからです。
マンションが築40年近く経つ頃に行われる3回目の大規模修繕工事では、手摺り、サッシ窓、玄関扉などの取り替えや給排水設備、配管、エレベーターなどの修繕が多くなることが予想されます。
そのため、修繕計画立案時には修繕コンサルタントのアドバイスを受けることが重要です。
3回目とはじめてのマンション大規模修繕は工事内容はどう違う?
約12年程度で行われる1回目の大規模修繕は、建物の経年劣化を防ぐ予防的な工事が中心です。外壁の塗り替えや屋上防水、バルコニーの防水など、主に建物の外部に関する工事が多くを占めます。この時期は給排水管などの設備面は比較的健全なため、点検や部分的な補修程度に留まり、工事費用も比較的抑えられます。
一方、築30年以上を超える3回目になると、建物の老朽化が進んでいるため、工事内容は大きく変わります。通常の外壁や防水工事に加えて、給排水管の更新やエレベーターの改修など、建物の基幹設備に関わる大規模な工事が必要です。また、省エネ性能の向上など、建物の機能を高める工事も検討される時期となり、工事費用は1回目に比べて大幅に増加します。ただし、具体的な工事内容は建物の使用状況や劣化状態、修繕積立金の状況などを考慮して決める必要があります。
マンション大規模修繕3回目以降におけるコスト面の課題
大規模修繕の範囲は、修繕のたびに拡大し費用もかさみます。
時間の経過とともに発生する追加メンテナンスに対処する必要性、規制や基準の変更、技術の進歩などがコストの増加の主な要因です。
また、高層建築物の複雑さと、仮設工事や改修工事中に発生する難題も、コスト増加の原因となる可能性があります。
さらに、マンションの規模や過去の改修回数も費用と施工範囲に影響を与える可能性があります。
管理組合は、潜在的なコスト超過を軽減するために、こうした改修工事を慎重に計画し、予算を立てることが重要です。
マンション大規模修繕3回目でコンサルタントにアドバイスを受ける重要性
3回目の大規模修繕工事では、各項目の工法や材料、状況に応じた修繕についてコンサルタントにアドバイスを求めることが重要です。
特に給水設備の修繕については、配管経路の複雑さが課題となることがあります。
マンション全体の機能や将来の変化を考慮しながら、修繕コンサルタントを加えた計画立案が重要です。
コンサルタントは調査や診断、設計、施工会社選定の協力、工事監理など、さまざまな業務を担当しています。
特に、工事監理の割合が最も高く、大規模修繕工事1回目から3回目までの業務の割合は50%を超えています。
また、設計コンサルタント業務の発注先の選定方法としては、「見積もり合わせ方式」が最も一般的です。
管理組合は、コンサルタントのアドバイスを受けて、修繕工事の計画と予算を立てることが重要です。
マンション大規模修繕3回目までの管理組合員高齢化による否定的な意見への対応
大規模修繕が3回目ともなると、管理組合員の高齢化も懸念すべき点となります。
人によっては否定的な意見が出されるかもしれませんが、否定的であっても貴重な意見である以上、対応は必要です。
否定的な意見には、組合員とのオープンかつ透明なコミュニケーションを確保しましょう。
高齢者の意見や懸念材料を聞き、理解することが重要です。
また、高齢者に向けて、修繕工事の必要性やメリットについての情報を提供しましょう。
専門家やコンサルタントを招いて説明会を開催することも有効です。
さらに、修繕工事にかかる予算や費用について、明確な説明を行いましょう。
組合員が負担を理解し、納得することが重要です。
高齢者のニーズや懸念に対応するため、異なる修繕工事のオプションを提案するのも得策といえます。
例えば、バリアフリー設備の導入や安全対策の強化など、高齢者に配慮した改修案を提示しましょう。
組合員が工事に参加できるようにすることで、彼らの関与感を高めることが可能です。
例えば、委員会や作業グループの形成、アンケート調査の実施など、組合員の意見を反映させる仕組みを作りましょう。
これらの対応策は、組合員との信頼関係を築き、高齢化による否定的な意見への理解と共感を示すために役立ちます。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
まとめ
ここまで、マンションにおける大規模修繕3回目の実施状況について解説してきました。
大規模修繕工事は、マンションの長寿命化と住民の安全・快適性確保に不可欠です。
定期的な修繕は建物の老朽化や劣化を防ぎ、将来の修繕費用を抑える効果もあります。
また、適切な修繕計画と工事実施により、マンションの資産価値を維持し、入居者の満足度も高まるでしょう。
大規模修繕工事が行われる背景には、建物の経年劣化や自然災害への備えがあります。
特に給水設備の修繕は重要であり、老朽化や水漏れなどの問題が発生する可能性があります。
マンションの大規模修繕工事においては、修繕コンサルタントのアドバイスを受けることが重要です。
コンサルタントは、適切な計画立案や工事実施をサポートし、マンション管理の健全性を保つ役割を果たします。
また、管理組合員との円滑な関係を維持するためにできることがあります。
3回目となる大規模修繕において、課題を克服してスムーズに事が運べるよう、この記事を参考にしていただけると幸いです。