マンション管理組合が実施する大規模修繕工事では、修繕積立金だけでは修繕費が不足するケースがあります。そのため、住宅金融支援機構などが提供する借入金の活用がある中で、管理組合向けローンは有力な選択肢となっています。
ただし、ローンには金利負担というデメリットがあり、アパートとは異なる特別な決議も必要です。大規模修繕工事の融資を受けるには、管理組合内での合意形成が重要になります。
本記事では、マンションローン商品の種類や活用について、具体的な手続きの流れや、注意点まで、わかりやすく解説していきます。工事を成功させるための資金計画の参考にしてください。
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
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マンション大規模修繕で活用できるローンとは?
マンション大規模修繕では、管理組合や区分所有者個人が利用できる専用のローン商品があります。
国土交通省の調査によると、築後30年を目安に3,000万円~1億円程度の修繕費用がかかるとされていて修繕積立金だけでは足りないケースが多くなっています。
過去には60戸のマンションで、25年目の修繕費1億4,000万円が必要だった事例があります。
そういった場面をサポートするために金融機関は、大規模修繕向けの融資商品を用意しています。
管理組合向けですと『大規模修繕ローン』『マンション修繕ローン 』など、区分所有者個人向けには『フラット35リフォームローン』『マンションリフォームローン』など。
区分所有者には管理費や修繕積立金の負担がある一方、管理組合は積立金でも不足する場合があるためこういったローンを利用するケースは多く見られます。
マンション大規模修繕で活用できるローン商品の種類について
マンション大規模修繕で活用できるローン商品には、上記でも少し触れたように主に管理組合向けと区分所有者個人向けの2種類があります。
①管理組合向けローン
管理組合が修繕費総額に対する融資を受けられるものとなっています。
工事費の支払いが一時に必要となるため、まとまった資金調達が不可欠な大規模修繕では数千万円~数億円の費用がかかることが多い。
※実例ですと、70戸規模のマンションで1億5,000万円の修繕費が必要だったケースがあります。
管理組合向けローンの特徴
- 借入限度額は修繕見積金額の80~100%程度
- 金利は変動金利が一般的
- 融資期間は5年~20年
- 主な商品にマンション大規模修繕ローンなどがある
修繕時期が予定より早く到来した場合や、想定を上回る費用がかかった場合など管理組合は修繕積立金で全額を賄うのが困難なケースも多いためローンの利用を検討することが重要です。
②区分所有者個人向けローン
こちらは、区分所有者個人が自己負担分の修繕費用を借り入れできるものとなっています。
修繕工事においては、修繕費総額の一部を個人が負担する必要がある場合もあります。
区分所有割合(専有面積比など)に応じて区分所有者に按分される費用があり、100万円~数百万円単位の個人負担となることが一般的です。
- 収入が一時的に減少していた
- 他の生活費で準備できなかった
- 積立不足だった など
上記のような理由で、個人で修繕費用の準備が十分でない場合などが想定されます。
区分所有者個人向けローンの特徴
- 借入限度額は修繕費個人分担金の範囲内
- 金利は固定金利が中心
- 融資期間は3年~35年
- 主な商品にフラット35リフォームローン、リフォームローンなど
このように、マンション大規模修繕では立場に合わせて適切なローン活用が可能です。
マンション大規模修繕でローンを利用するメリット・デメリット
ローンを利用するメリットとデメリットについて、解説していきます。
マンション大規模修繕でローンを利用するメリット
まずメリットとしてはローンを利用することで、修繕時の一時的な資金負担を軽減できるという点です。
修繕時期が早まったり、想定外の費用増があっても資金を調達しやすく長期の返済で負担を分散できます。
借入期間を長く設定すれば、月々の返済額を抑えられる。
返済期間10年の場合
修繕費8,000万円 → 月々返済額約67万円
マンション大規模修繕でローンを利用するデメリット
金利負担が発生するため、将来の収支を圧迫するリスクがあります。
金利は修繕費の5~10%程度と試算されます。
賃料収入が減少した場合など、返済が滞る可能性もあるため注意が必要です。
空室が増えると収支が悪化し、返済が困難になるリスクがあるることを想定することが重要です。
マンション大規模修繕で現預金を活用するメリット・デメリット
現預金活用も大規模修繕の資金調達手段の一つですが、メリット・デメリットを踏まえる必要があります。
マンション大規模修繕で現預金を活用するメリット
ローン手続きが不要で、金利負担もないという点が大きなメリットです。
融資審査の必要がないため、スピーディーな資金調達が可能な上に金利負担がないため、総支払額を抑えることが可能です。
マンション大規模修繕で現預金を活用するデメリット
現預金には限りがあり、多額の費用を賄うのが難しい場合があり管理組合の修繕積立金だけでは不足してしまうことが想定されます。
国交省データによると、25年目の大規模修繕では平均1億4千万円の費用が見込まれていて積立額は500万円~1,000万円程度が一般的です。
資金を現預金に回すと、運用益を失う可能性があり投資用資産を現金化する必要が出てくる場合も。
資産の多くを現金化すると、将来の収益機会を失う危険性もありますので注意が必要です。
マンション大規模修繕でローン融資を受ける流れ
ローン融資を受ける一般的な流れは、以下の通りです。
- 修繕内容・見積額を決定する
- 管理組合役員会や区分所有者集会で、融資の方針を決める
- 複数の金融機関に見積もりを依頼する
- 最終的な融資先を選定し、融資申請手続きを行う
- 融資実行後、修繕工事を発注・実施する
- 契約に基づき、融資返済を開始する
マンション大規模修繕でローンの選び方について
低金利で長期返済可能な融資を選ぶことが重要です。
金利の違いは長期的な支払総額に大きく影響してしまいます。
金利1%の差で、10年返済の場合で数百万円の開きが出る可能性があります。
長期返済なら月々の負担を軽減でき、逆に融資期間を長くすれば、月々の返済額を抑えることができます。
選定のポイント
- 借入限度額が修繕費に見合っているか
- 手数料や事務手数料の有無
- 団体向け優遇制度の有無 など
マンション大規模修繕向けのローン選びでは、様々な角度から比較検討する必要があります。
無理のない返済計画を立てましょう。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
マンション大規模修繕におけるローンについてまとめ
今回はマンションの修繕におけるローンや融資について解説しました。
マンションの大規模修繕は非常に多額の資金が必要になります。実際には1戸あたり100万円前後、1棟では数千万円かかることが多く、しっかり計画しないと修繕資金不足になってしまいます。
ローンや融資を使用する場合には手続きや審査について把握した上で申請を行いましょう。