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マンション大規模修繕の費用負担はどのくらい?工事別の費用負担と負担を軽減する方法

マンションの大規模修繕工事を計画する場合、最も重要なことはどのくらいの費用がかかるのか、費用負担についてです。

マンションの大規模修繕工事というとお金がかかることは予想できても、いくらかかるかはわからないという方が多いのではないでしょうか。

資金が足りなければ満足のいく工事を行うことができません。

さらに、大規模修繕工事の資金が不足しているマンションの割合は約34%にのぼっており、費用不足に陥る可能性もあるでしょう。

費用負担がどのくらいなのか、相場を把握し、負担を軽減することが大切です。

そこで今回は、マンションの大規模修繕工事の平均的な費用負担と、費用負担の軽減方法について詳しく解説します。

マンションの大規模修繕工事の費用負担

国土交通省の調べでは、戸あたり工事金額は、「100~125万円/戸」の割合が最も高く、次いで「75~100万円/戸」、「125~150万 円/戸」でした。

マンション大規模修繕の合計費用負担は、総戸数によって異なります。

最初に、マンションの規模別の大規模修繕の費用負担を確認しておきましょう。

小規模マンション(総戸数50戸未満)

小規模なマンションで、仮に20戸であれば、費用負担は約2,000万円です。

入居者数は少ないものの、費用負担は数千万円にのぼります。

中規模マンション(総戸数50~100戸)

中規模なマンションでも、大規模修繕の費用負担は数千万円かかります。

仮に40戸であれば、費用負担は約4,000万円です。

また、100戸に近い中規模マンションでは1億円を超えることもあるでしょう。

大規模マンション(総戸数100戸以上)

大規模マンションでは、基本的に費用負担は億単位になります。

大規模マンションで仮に200戸の場合、大規模修繕工事の費用相場は約2億円です。

マンションの修繕費の算出方法

マンションは、快適な居住空間と資産価値を長期にわたって維持するために、定期的な修繕が欠かせません。

しかし、マンションの大規模修繕には多額の費用がかかるため、事前に修繕積立金を貯めておく必要があります。

ここでは、マンション大の修繕積立金とは何か、3つの算出方法を解説します。

修繕積立金とは

修繕積立金とは、マンションの大規模修繕のために積み立てておく修繕費用のことです。

修繕費を積み立てる際には、いつ修繕工事を行うかによっていくら必要になるかを計算しましょう。

金額を間違えると、修繕費が足りなくなったり、工事が満足に完了しなかったりするため、マンションの状態に合った方法で積み立てる必要があります。

修繕積立金の積立方法

マンションの修繕積立金には、3つの積立方法があります。

  • 均等積立方式
  • 段階増額積立方式
  • 修繕積立基金

それぞれの積立方法について、メリット・デメリットを含めて詳しく解説します。

均等積立方式

均等積立方式とは、マンションの大規模修繕にかかる見積累積工事費を積立期間で均等に分割する方式です。

均等積立方式のメリットは、毎月の修繕積立金額が変わらないため、計算や管理がしやすいことです。

マンション入居者にとっては、修繕積立金額が増えないということは、家計をやりくりをするうえで大切なポイントだといえるでしょう。

また、均等負担方式は、積立金額の変更や増額について、マンション住民への説明会や取り決めが不要です。

ただし、新築時から積立金額が高額になり、マンションを購入した方は購入代金を支払った直後に徴収される高額な修繕積立金が負担となる場合があります。

段階増額積立方式

段階増額積立方式は、修繕積立金の額を段階的に増やしていく方式です。

段階増額積立方式のメリットは、新築マンションの場合、修繕積立金の額が低く、購入者の負担が軽減されることです。

購入費用が安ければ、マンション購入を検討している方が購入しやすくなり、入居率アップにつながるでしょう。

デメリットは、修繕積立金の額が徐々に増えていくため、計算や管理に手間がかかることです。

また、修繕積立金を滞納する可能性も高くなります。

修繕積立金の額が増えると、間違った金額を振り込んだり、支払いが困難になったりする入居者が増えるでしょう。

マンションの大規模修繕工事の実施を検討していても、修繕費が不足するケースは少なくありません。

そのため、必要に応じて積立金を増額していく段階増額方式を採用しているマンションも多いですが、デメリットも考慮した積立金の徴収が必要です。

修繕積立基金

修繕積立基金とは、修繕積立一時金とも呼ばれ、新築マンションの購入者が入居前に支払うお金です。

大規模修繕工事は約12年ごとに実施されますが、地震や火災など不測の事態に備えて、あらかじめ一時金を集めておくケースが増えています。

修繕積立基金は、大規模修繕工事の修繕費を事前にある程度確保できることがメリットです。

しかし、正しい修繕積立基金の設定をしなければ大規模修繕に必要な資金が不足する可能性があります。

大規模修繕工事の資金不足を避けるためにも、修繕積立基金の金額は慎重に検討しなければなりません。

マンション大規模修繕の工事別の費用負担

マンション大規模修繕では、工事内容や工程ごとの費用負担を把握しておくことが大切です。

劣化状況や使用する材料で費用は変動しますが、目安を知っておくと見積りの金額が適正なのかを判断できます。

ここでは、主な工事内容とそれぞれの費用負担の目安を紹介します。

仮設足場

仮設足場工事には、屋外に設置する足場のほか、侵入防止の対策、資材の運搬費、警備員の人件費などが含まれます。

同一仮設工事における共通仮設費とは、仮設事務所・トイレ、作業員の休憩所、資材を置いておく倉庫など共通施設や、工事に係る電気代、水道代です。

直接仮設工事(仮設足場)と共通仮設工事の概算費用は、設置する足場や共通設備の種類によって異なりますが、マンション大規模修繕の総工事費の約2割を仮設工事が占めます。

例えば、全体の工事費が75~100万円/戸の場合、仮設工事費として15~20万円/戸が必要です。

下地補修工事

基礎補修工事は、主に外壁のコンクリートやモルタルのひび割れ、モルタルの浮き、鉄筋の腐食などを補修します。

問題箇所を補修することで建物の耐久性を向上させるだけではなく、後の塗装工事やタイル補修工事の仕上がりにも影響を及ぼす重要な工事です。

コンクリートやモルタルの下地補修に関する費用については、ひび割れや爆裂補修の場合、以下の費用負担の目安となります。

Uカットシール工法1,500~2,500円/㎡
爆裂補修1,000~2,500円/箇所

外壁改修工事

大規模修繕の場合、最も重要な工事は外壁です。

外壁タイルを中心に補修工事を行い、タイルの浮き部分、ひび割れ、欠損部分の補修を行います。

ひび割れや欠落した部分の貼り替えを実施し、一部を撤去してから接着剤で既存タイルに合ったタイルを貼り付けます。

その他の外壁補修工事については、下地処理を行った後、再塗装を行うことが多いです。

外壁に使用する材料によって費用は異なります。

アクリル1,500/㎡
シリコン2,300~3,500円/㎡
フッ素:3,500~4,800円/㎡

マンションの大規模修繕工事では、外壁の改修費用が高額になることがあります。

総工費の約2割が外壁改修に必要といわれており、総工費が3,000万円であれば外壁リフォームに600万円必要ということです。

防水工事

防水工事は、屋上、共用廊下、階段、各部屋のバルコニーなどの修繕です。

特に屋上は雨風、紫外線が原因で防水層が劣化するため、マンション大規模修繕では必ず防水工事が行われます。

マンションごとに適切な工法は異なりますが、大規模修繕ではウレタン防水が多用され、バルコニーや階段、共用廊下などは防滑塩ビシートが使用されることが多いです。

屋上防水工事の費用負担は工法によっても大きく変わるため、あくまでも目安として捉え、詳細は見積もりで確認しましょう。

ウレタン防水工法3,500~5,500円/㎡
アスファルト防水8,000円~/㎡
シート防水工法3,000~6,500円/㎡
FRP防水工法5,500~9,000円/㎡

シーリング工事

シーリング工事とは、玄関ドア、サッシ周りなど、コンクリートと接する部分にゴム状のシーリング材を使用する工事のことです。

シーリングを施す目的は見た目の美しさもありますが、防水性能を高めることが主な目的です。

目地にシーリングが施されていないと、漏水の可能性が高くなります。

シーリング工事の費用負担は、追加工事と打ち替え工事で以下の通りです。

シーリング打ち増し工事600~900円/m
シーリング交換(打ち替え)工事800~1,200円/m

鉄部塗装工事

鉄部塗装工事とは、主にマンションの鉄部など、サビが発生している箇所を中心に塗装する工事のことです。

サビが発生している箇所は、サビが発生している箇所を洗浄(サビ落とし)し、サビ止め材、上塗り材の順に塗布していきます。

鉄部の塗装費用負担の目安は、施工場所によって異なります。

階段8~20万円
ベランダ5~15万円
門扉3万円前後
雨戸2,000~5,000円(1枚あたり)
ポストなど8,000円前後

現場経費・諸経費

電気、給排水設備、エレベーターなどの設備修繕が必要な場合は、工事範囲によって費用が発生します。

ほかにも、施工業者の現場監督の人件費、周辺対応に必要な費用なども必要です。

マンション大規模修繕に関わる一般的な工事内容を紹介しましたが、業者が提示する見積書には、紹介した項目ごとの概算金額が記載されています。

現場経費や諸経費の目安は、直接工事費の10~15%程度です。

例えば、直接工事費が1,000万円であれば、100万円から150万円程度が諸経費および現場経費として必要になります。

マンション大規模修繕の費用負担を減らす方法

事前に対策をすれば、マンション大規模修繕の費用負担を軽減できる可能性が高いです。

ここでは、マンション大規模修繕の費用負担を減らすための具体的な方法を紹介します。

定期的な修繕をする

定期的な建物の修繕は、劣化を遅らせるほか、破損を予防する効果があります。

劣化や損傷が少なければ、大規模修繕の手間も省けます。

一方、定期的な修繕を行っていないマンションの場合、大規模修繕時に工事量や工期が大幅に増える可能性が高いです。

工事量が増えて工期が長くなれば費用負担も大きくなるため、できるだけ定期的な修繕を心がけましょう。

追加費用を想定しておく

大規模修繕を検討する場合は、事前に追加費用を見込んでおく必要があります。

追加費用が払えないといったことがないよう、予備費を用意しましょう。

なお、予備費の目安は、見積もりの5%~10%です。

過去の工事の経験を活かす

管理組合の方の多くは、マンション大規模修繕には慣れていません。

そのため、過去の大規模修繕を振り返ってみると、後悔する点があるかもしれません。

管理組合の経験を活かすためにも、1回目の大規模修繕に関わった組合員は、2回目の大規模修繕を検討する際に再度組合員やアドバイザーとしての参加をおすすめします。

1回目の大規模修繕は10年以上前の出来事ですが、1度経験した方ならではの意見が聞けるかもしれません。

居住者の意見を取り入れる

2回目の大規模修繕工事の場合、竣工から30年近くが経過しています。

入居者も歳を重ねているため、新築時に比べてバリアフリー化やセキュリティ強化の要望が多くなるでしょう。

また、マンションによっては、築年数の経過とともに外部所有者の割合が増えることもあります。

外部所有者が多い場合、自身が住む家ではないため、「高額な費用をかけるのではなく、できるだけ安く大規模修繕工事を済ませたい」と考える方も多いです。

アンケートを実施し、入居者や区分所有者の意見を集めながら検討を進めるとよいでしょう。

建物診断を実施する

大規模修繕工事を行う場合、事前調査で建物診断を実施します。

建物診断により、マンションの劣化状況や不具合箇所、工事の適切な時期などを把握することが可能です。

また、工事が不要な箇所を特定でき、無駄な費用負担の回避にもつながります。

施工業者や設計事務所に連絡し、建物診断を依頼しましょう。

相見積もりを取る

マンション大規模修繕の費用負担を軽減するためには、相見積もりを取ることが大切です。

相見積もりを取りすぎても意味がないため、5~10社に絞り、相見積もりを比較してみましょう。

見積もりを出してもらう際、建物診断を受ければ、同じ条件で検査結果をもとに複数の施工業者に相見積もりを依頼することができます。

5~10社から相見積もりを取ると、工事費に20%程度の差が出ることが多いです。

なお、「◯◯工事一式」などと「一式」で見積もりを提出してくる業者には注意が必要です。

工事単価が同じでも費用が高くなるケースもあるため、実際に詳細な内訳が明記されているか、細かくチェックしましょう。

信頼できる業者に依頼

信頼できる優良業者に依頼できれば、無駄な工事を行わず、必要な工事のみを適正価格で実施できます。

また、優良業者に依頼をすれば不当な追加費用の請求を受けることはなく、大きなトラブルを避けられるでしょう。

信頼できる施工業者であれば不明点の相談もしやすいため、費用以外の負担も軽減できる可能性が高いです。

マンション大規模修繕費用負担まとめ

マンション大規模修繕の費用負担について解説しました。

まとめると、

  • マンションの大規模修繕は目安は1戸あたり100~125万円
  • マンションの戸数によっておおよその相場がわかる
  • 費用負担を減らすために定期修繕が必要

マンションの大規模修繕の費用負担は1戸あたり100~125万円ですが、あくまでも目安です。

大規模修繕の費用負担を抑えるためにも複数の業者に相見積もりを取り、実績があり適正価格で請け負う優良業者を選びましょう。

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