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分譲と賃貸の違いとは?分譲マンションと賃貸マンションのメリットを比較

マンションの大規模修繕工事は、建物の長寿命化と資産価値の維持に不可欠ですが、分譲マンションと賃貸マンションでは、その進め方に大きな違いがあります。

分譲マンションでは、管理組合が中心となって大規模修繕を進めます。複数の所有者の合意が必要なため、工事の決定が複雑になりがちです。一方、賃貸マンションではオーナーの判断で工事を進められるため、意思決定が比較的スムーズです。

分譲マンションで大規模修繕を行う目的は居住者の生活環境改善や資産価値の維持ですが、賃貸マンションでは入居率の向上や賃料の維持・増加が重要な要素となります。

この記事では、分譲マンションと賃貸マンションの大規模修繕の違いを詳しく解説し、それぞれの特徴や進め方、メリット・デメリットを比較します。マンションオーナーや管理組合の方々にとって、大規模修繕を計画する上で参考になる情報ですので、ぜひ最後までお読みください。

マンションにおける分譲と賃貸の違い

マンションにおける分譲と賃貸の違いについて解説していきます。

分譲マンション賃貸マンション
分類区分所有建物1棟建物
所有者複数の区分所有者オーナー単独
意思決定管理組合(多数決)プラス理事会オーナー単独
大規模修繕共有部分のみ(専有部分は区分所有者が個別に実施)共有部分プラス専有部分もオーナーが実施

マンションにおける分譲と賃貸の違い|所有者

分譲マンションと賃貸マンションの大きな違いは、前述の通り、所有者が異なる点です。

分譲マンションには複数の所有者がいますが、賃貸マンションはワンオーナーです。

マンションにおける分譲と賃貸の違い|意思決定者

マンション内で工事の実施や設備の変更などを決める際、分譲マンションは総会で多数決によって決められます。反対に賃貸マンションでは、オーナー判断となります。

分譲は住民の意見が反映されやすいが時間がかかり、賃貸は迅速だが入居者の意見が反映されにくいといった違いがあります。

マンションにおける分譲と賃貸の違い|大規模修繕の実施

「分譲マンションは複数の所有者がいる」・「賃貸マンションはワンオーナー」です。

複数の所有者がいる分譲マンションと、ワンオーナである賃貸マンションでは、大規模修繕の進め方が異なるようです。

マンションにおける分譲と賃貸の違い|所有範囲

また、分譲マンションの所有権が区分所有法という独自の法律で決められていることも一つの理由です。

区分所有法とはマンションのように建物が独立した各部分を所有することを指し、「共有部分」と「専有部分」が明確に分けられて、区分所有者と賃貸入居者の財産を守れるように作られた法律です。

また、分譲マンションを所有する「区分所有者」の権利を明確にし、マンションを適切に管理・維持していくために必要な法律です。

「専有部分」は、独立して区分された室内空間を指し、○○号室といった、区分所有者の住戸の内部のことをいいます。

マンションの「専有部分」以外の場所が「共有部分」となり、管理やメンテナンスを行うのは管理組合になります。

対して賃貸マンションの大規模修繕における意思決定は、土地も建物もすべてオーナーが所有しているので、建物修繕のスケジュールや、どこを修繕するのかを決めるのはオーナーが単独で行います。

マンションの大規模修繕における意思決定者が分譲と賃貸とで異なることがわかったところで、具体的な工事の進め方をそれぞれ確認しましょう。

大規模修繕における分譲と賃貸の区分の違い

分譲マンションと賃貸マンションにおける大規模修繕は、具体的にはどのように異なるのか、みていきましょう。

大規模修繕における分譲と賃貸の区分について|分譲マンションの場合

分譲マンションは区分が「専有部分」「共用部分」「敷地」の3つに分かれていて、それぞれ所有者が異なります。

前述のとおり、分譲マンションは区分所有法により、共用部分は区分所有者全員の共有財産であり、ひとり一人の区分所有者は、専有面積の割合に応じて共用部分と敷地を権利として割り当てられています。

建物の部位所有者
専有部分壁・天井に囲まれた独立した住居空間
・部屋番号で区切られた住居空間の部分
・玄関扉は、鍵や内部塗装部分のみが専有部分
・設備に関しては共用部分内にある部分以外は専有部分
・天井や床、壁や窓(枠やガラス部分)は専有部分に含まれない
例)壁紙、建具、間仕切り、キッチン、風呂、トイレなどの住宅設備
区分所有者(区分建物の独立した部分を購入し、使用している人)
共有部分専有部分以外の部分
例)エントランス、エレベーター、廊下、階段、住戸に付随したバルコニー、マンション自体の外壁、天井、床など
区分所有者全員で共有
敷地建物がたつ土地部分区分所有者全員で共有
※境界部分が曖昧な部分に関してはマンションの管理規約で定める

一棟のマンションにおいて、「専有部分」以外が「共有部分」であり、共用部分は数個の専有部分に通ずる廊下・または階段室その他構造上、区分所有者の全員、または一部供用される部分とされます。

分譲マンションにおける大規模修繕は、上記の専有部分に関わる部分で、意思決定者は区分所有者全員で結成された管理組合になります。

管理組合で決定された事を実際に実行するのが、管理組合のなかから選抜された人たちで構成される理事会、という事になります。

分譲マンションにおける大規模修繕は、理事会の中から特別に修繕委員会が組織される場合もみられます。

大規模修繕における分譲と賃貸の区分について|賃貸マンションの場合

賃貸マンションにおける大規模修繕における意思決定は、すべてオーナーが行います。

施工対象部分も、工事スケジュールもすべてオーナーが決めます。

マンションにおける大規模修繕の役割は、「安全性の確保」「資産価値の維持・向上」「住居者の住環境の向上」です。

賃貸マンションはオーナーのポテンシャルに応じてこれらが左右される、とも考えられます。

分譲マンションで大規模修繕を行うメリット・デメリット

大規模修繕工事を行うメリット・デメリットは分譲マンションではどのようなものがあるのでしょうか。

メリット

  • 一人あたりの負担が軽い
  • 修繕積立金で修繕費用が賄える

分譲マンションでは各区分所有者が、月々の修繕積立金を所有区分の面積の割合に応じて、管理費とともに月々負担します。

建物の規模にもよりますが、大規模修繕工事に掛かる費用は数千万円から数億円掛かりますが、一戸あたりの負担は数十万円から100万円程度の金額です。

最初の購入時から修繕積立金の金額が設定されているので、大規模修繕のことを考えて特別に用意する必要はありません。

最初から金額が分かっていて、区分所有者全員で工事費を負担する仕組みは安心できる点です。

デメリット

  • 修繕工事の調整に時間が掛る
  • 自分の意志とは異なる内容で計画が決定してしまう場合がある

分譲マンションにおいて、大規模修繕工事の意思決定権は区分所有者で構成される理事会・管理組合になります。

それぞれ考えや希望が異なり、月に一度行われる理事会、臨時で決行される説明会など、住民同士の意見をすり合わせながら進行します。

業者選定、見積もりに対する見解、修繕を行う部分など、意見を出し合い、まとめながら進めるので、工事の調整に1年以上掛かることも。

また、最終的な決断は管理組合の過半数で行われますが、自分の意見と異なる方向で決まる場合も少なくありません。

賃貸マンションで大規模修繕を行うメリット・デメリット

賃貸マンションで大規模修繕を行うメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

メリット

  • オーナーの場合は工事の実行を単独で決められる
  • 修繕工事を何回かに分けて行うことができる

賃貸マンションにおける意思決定はワンオーナーなので、工事の実行はオーナーのタイミングで行えます。

修繕工事のスケジュールもオーナーが決めるので、予算の都合など、何回かに分けて行うことも可能です。

例えば、外壁補修で足場を組んだついでに、屋上防水を行うことで荷揚げなどが楽になるなど、工事内容・スケジュールを変更できたりと、素早いタイミングでいい方向に運べます。

デメリット

  • 修繕費用はオーナーが用意する
  • オーナー1人の負担が大きく、手間と時間が掛る

賃貸マンションはワンオーナーなので、必然的にオーナーが大規模修繕費用を用意します。

マンションの規模にもよりますが、大規模修繕となると足場の組み立てが必要になり、費用も数千万ほどにもなり、計画的な資金準備が必要です。

また、修繕計画の段取りをすべてオーナーが行う必要があり、修繕の必要ヵ箇所の見極めや業者の選定をひとりで行うため、手間と時間、経験値が必要になります。

ひとりですべてを段取りよく、しかも修繕のタイミングを図りながら、適正価格で行わなければならず、オーナーの経験値や取り組み姿勢によって大きな差が生まれる可能性もあります。

分譲と賃貸の違いは他にも!マンション大規模修繕で注意すべきポイント

分譲マンションの大規模修繕で注意すべきポイントは、マイホームとして自ら住んでいる所有者と、賃貸運用している大家との意識の違いです。

マイホームオーナーと賃貸オーナー

ここまで分譲マンションと賃貸マンションに分けて大規模修繕を考えてきましたが、ここでは分譲マンションの大規模修繕について、注意すべきポイントを解説します。

分譲マンションにおける区分所有者は、自らが住むことを目的にした住居として購入していますが、マンションの戸数の、少なくない割合で一定数、個人が投資目的に購入している、最初は住んでいたが転勤などで一時的に転貸ししたり、企業が社宅用に購入している場合があります。

平成30年度の完成年次別内訳をみると、完成年次が古いマンションほど、賃貸戸数割合が20%越えのマンションが多くなります。

出典:国土交通省住宅:マンションに関する統計・データ等 – 国土交通省

分譲マンションにマイホームとして住んでいる区分所有者は、マンションの修繕費資産価値は、住環境を改善する費用として必然なものと捉えます。

分譲マンションの購入時の修繕積立金は低めに抑えていることが多く、建物の築年数が増すにつれ、段階増額積み立て方式を採っているケースは少なくありません。

マイホームオーナー、賃貸を目的としたオーナー、両者とも、資産価値の維持のため、多少の値上げに対してある程度寛容であるといえます。

とはいえ、投資目的など、賃貸を目的としたオーナーはまず費用対効果を考え、入居者が確保される範囲での改修以外に掛かる費用はなるべく抑えたいと考えるのが妥当です。

また、投資・賃貸を目的としたオーナーは近い将来、手放すことも考えているので、修繕積立金の大幅な増額に対してはあまり好意的ではないでしょう。

意見の相違

マイホームオーナーと賃貸オーナーでは、修繕費用やその工事範囲、内容について、意見が食い違う場合が考えられます。

その理由は、前述の通り、それぞれ、マンションに対する価値や考えが異なることにあります。

また、マンションの築年数が古くなるにつれ、住居者の高齢化が考えられ、年金生活へと移行していることが多く、修繕積立金の額が上がることに難色を示す高齢者も少なくないと思われます。

対して賃貸オーナーは、集客力アップのために、費用対効果が得られる修繕工事には積極的に投資したいと考え、修繕積立金が多少値上げしても、その額は惜しくないと考えるでしょう。

こうしたケースを想定し、投資目的で分譲マンションの区分所有を考えている方は、大規模修繕の計画、修繕積立金の残高や、値上げ予定などを事前に確認することが大切です。

分譲と賃貸の違いで内容も変わる|分譲マンションの大規模修繕

マンションの大規模修繕とは、経年により、劣化した建物・設備を修繕し、景観面・安全面などから資産価値の維持につなげる工事です。

建設基準法によると、屋根・階段・壁・柱・床・はりのうち、一種類以上またはその半分以上を修繕・模様替えをする工事を大規模修繕工事とする、と定義されています。

分譲マンションでは足場を掛けるような、大掛かりな修繕工事を大規模修繕工事と呼び、主な施工対象は共用部分です。

費用相場(1戸あたり)1回目75万円から125万円
費用相場(1戸あたり)2回目90万円から150万円
工期の目安4カ月以上(50戸以上)
工事内容防水工事、外壁補修、シーリング工事、鉄部の塗装、給排水管工事

分譲マンションにおける大規模修繕の費用

下記の表ではマンションの一戸あたりが大規模修繕に負担するおおよその金額を提示しています。

2回目の工事に掛かる金額が1回目に掛かる金額を上回ることがわかりますね。

大規模修繕工事は、回数を重ねるごとに高額になることが多い傾向にあります。

2回目以降の大規模修繕工事に掛かる費用が高くなる理由

2回目以降の大規模修繕工事に掛かる費用が高くなる理由は以下の2点です。

  • 経年により、修繕しなければいけない箇所が増えてくる
  • 人件費と資材費の高騰
  • コンサルティング費用が上乗せされることも

1回目の修繕工事では防水工事や塗装工事、建具の点検などを行いますが、2回目以降はこれらの工事に加え、建具、給排水管、耐用年数を超えた設備の取り換えなどが行われます。

また、外壁、屋根の劣化が激しいところは撤去・再工事を行い、工事の範囲は広くなり、掛かる費用も増加します。

また、昨今の社会情勢も費用に重くのしかかる要因です。

ロシア・ウクライナ情勢の影響では資材の高騰、少子高齢化・人口減少による働き手不足による人件費の高騰は避けられない現実です。

今後、マンションの大規模修繕を考えている人にとって、費用がこれまで以上にかさむことは、悩ましいですね。

3回目以降の大規模修繕工事を控えている方は、建て替えも視野に入れて工事の実施を検討をするのもいいでしょう。

また、マンションの大規模修繕では、外部の設計コンサルタントなどに、建物の調査や診断、設計、施工会社選定への協力、工事監理などを委託するケースがあります。

分譲マンションにおける大規模修繕工事の工期

分譲マンションの大規模修繕工事に掛かる期間には、「計画から着工まで」と、「着工から工事完了まで」の2つに分けられます。

一般的に、「計画から着工まで」には1~2年かかり、「着工から工事完了まで」には50戸以下であれば3~4カ月、50戸以上であれば4カ月以上掛かります。

大規模修繕工事の工期は、約2年半掛かると考えておくといいでしょう。

分譲マンションにおける大規模修繕工事が必要な理由

なぜ、マンションには大規模修繕が必要なのか、その理由をみてみましょう。

建物や設備の経年劣化

当然のことですが、建物は経年で劣化していきます。

日々、強い太陽光、大雨、強風、地震、などの外的要因からダメージを受けている外壁、屋上、設備を放置すると劣化が進み、建物内部にまで影響を及ぼします

建物内部だけではなく、建物の耐久性・耐震性にも影響してくると大きな問題になりかねません。

大規模修繕工事を行うことでこれらを避けることが可能です。

資産価値の維持

大規模修繕を行うもう一つの理由は、資産価値の維持にあります。

マンションの経年劣化を放置すると、景観の悪化、漏水、設備の故障など、住む環境として、支障をきたすことが考えられます。

住環境が悪化したままでは、建物の資産価値が下がり、売却しにくい・賃貸で借り手がいない、という状態に陥ります。

メンテナンスが行き届いているかどうかはマンション購入の決め手にもなり得ますので、価格や家賃を下げないためにも、大規模修繕工事は非常に重要です。

大規模修繕工事でよくある質問

Q

大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?

A

大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。

Q

工事中の生活にどんな影響がありますか?

A

足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。

Q

バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?

A

バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。

Q

工事期間中、エアコンは使えますか?

A

基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。

Q

大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?

A

塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。

Q

大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?

A

できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。

Q

修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?

A

築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。

Q

大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?

A

大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。

分譲と賃貸の違いについてのまとめ

マンションの大規模修繕における分譲と賃貸の施工の違いを解説してきました。

マンションの大規模修繕における分譲と賃貸の違いをまとめると、以下の通りになります。

  • 分譲と賃貸.では大規模修繕において意思決定者が違う
  • 分譲マンションの大規模修繕の一人当たりの負担は軽い
  • 賃貸マンションにおける修繕費はオーナーが準備する
  • 分譲マンションの大規模修繕工事は調整に時間が掛かる
  • 分譲マンションでも、マイホームオーナーと賃貸オーナーが存在し、意見が異なることも

いかがでしたでしょうか。

分譲マンション・賃貸マンションにおいて、意思決定者が異なること、また分譲マンションにおいてもマイホームオーナーと賃貸オーナーが存在することが分かりました。

また、大規模修繕は回を重ねるごとに費用が高くなり、施工カ所の範囲も広くなります。

それぞれの立場で、マンションの劣化具合など、大規模修繕工事を考えるうえで、メリット・デメリットなど、参考にして頂けると幸いです。

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