オフィスビル大規模修繕の費用目安を知りたい人
オフィスビルの大規模修繕・中規模修繕・小規模修繕の費用の目安はいくら?
オフィスビルの大規模修繕・中規模修繕・小規模修繕には修繕計画は必要?
オフィスビルの管理と維持は、その規模に関わらず、所有者にとって重要な課題です。時には小規模な修繕から、一定の周期で行われる大規模な修繕まで、さまざまなスケールの作業が計画されます。しかし、これらの修繕は一体いつ行うべきなのか、そしてその費用の相場はどのくらいなのかわからない方も多いです。
そこで本記事では、オフィスビルの修繕に関連する具体的な修繕内容から時期、そしてオフィスビル修繕費用の目安まで、規模別に深掘りしています。また、実際の施工事例や実績も紹介し、疑問や課題を解決する手助けとなる情報を提供します。オフィスビルの修繕計画を効果的に立てられる内容が満載なので、ぜひこの記事を参考に、オフィスビルの小規模修繕や大規模修繕までの計画立案にお役立てください。
目次
ビルの大規模修繕にかかる費用の目安
ビルの大規模修繕にかかる費用の相場はおよそ2,500万円〜3,500万円です。
ただ、建物の構造や修繕箇所の数、資材のグレードなどによって価格は前後するので注意しましょう。
以下はオフィスビルの修繕周期・工事内容・費用目安をまとめた表です。
修繕周期 | 工事内容 | 費用目安 |
7〜10年 | 給排水ポンプ更改など | 約150〜300万円 |
10〜15年 | 屋上防水・外壁塗装・タイル貼り替えなど | 約100〜1,000万円 |
15〜20年 | 空調設備更改など | 約300〜2,500万円 |
25〜30年 | エレベーターのリニューアル | 約1,200万円〜 |
30〜35年 | グレードアップ工事など | 約1,000万円〜 |
上記の費用はあくまで目安です。
前述しましたが、大規模修繕の費用は変動するので、上記は参考程度にご覧ください。
ビルの大規模修繕を行う際の注意点
大規模修繕の費用に関する注意点は以下の2つです。
- 修繕費は計画的に積み立てる
- 修繕費は資本的支出で処理する
オフィスビルや商業ビルのオーナー様は上記の注意点を抑えて大規模修繕工事に臨みましょう。
以下で注意すべき理由について詳しく解説していきます。
ビルの修繕費は計画的に積み立てる
マンションの修繕に関する費用は「修繕積立金」で賄われます。修繕積立金は、居住者が毎月積み立てる修繕費用のことです。
しかし、オフィスビルや商業ビルでは修繕積立金のような制度は基本的にありません。
大規模修繕は莫大な費用がかかる上、建物の健全な状態を維持するためには小規模・中規模の修繕も必要です。
そのため、オーナーは利用者から支払われる賃貸料から計画的に修繕費を積み立て、ビルの修繕・改修工事に備えましょう。
計画的に修繕費を積み立てていれば、雨漏りなどのトラブルに見舞われても、修繕費が手元にあれば安心できます。
ビルの修繕費は資本的支出で処理する
大規模修繕工事の費用は「資本的支出」で処理しましょう。
そもそも「大規模修繕」の大規模とはどれくらいの範囲を指しているのでしょうか?
建築基準法によると、大規模修繕工事とは建物の半分以上を修繕する工事のことです。
引用:大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
また、大規模修繕工事は建物の長寿命化を目指して行います。
つまり、大規模修繕工事は部分的な修繕・補修工事ではないので、「修繕費」として一括経理処理することはできません。修繕費で一括計上した場合、税務署から否認され、余計な出費をしてしまう可能性があります。
しかし、資本的支出で処理した場合、耐用年数に応じて減価償却が可能になります。
資本的支出と修繕費の判断基準
ビルに限らず、建物の工事には資本的支出で処理するケースと、修繕費で処理できるケースがあります。
では、その判断基準はどういったケースなのでしょう?
国税庁によると、資本的支出または修繕費に該当する例は以下のとおりです。
資本的支出の例示
7-8-1 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」により追加)
(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
引用元:国税庁「第8節 資本的支出よ修繕費」
修繕費に含まれる費用
7-8-2 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」、平7年課法2-7「五」により改正)
(1) 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。
(2) 機械装置の移設(7-3-12《集中生産を行う等のための機械装置の移設費》の本文の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額
(3) 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。ただし、次に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。
イ 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合
ロ 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合
ハ 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合
(4) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。
(5) 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額
引用元:国税庁「第8節 資本的支出よ修繕費」
簡単にまとめると、資本的支出となる工事は、
- 資産価値の向上を目的とした工事
- 耐久性・耐震性などを上げ、建物の寿命を伸ばすことを目的した工事
修繕費となる工事は、
- 建物の状態を維持するために行う定期点検・メンテナンス
- 破損部分の修繕・補修工事
ビルで修繕費用を積み立てるメリット
ビルの大規模修繕に向けて修繕費を積み立てるメリットは以下のとおりです。
- 突然の修繕・交換の出費にも備えられる
- 資産価値を向上させる工事ができる
修繕費を計画的に積み立て、確保しておくことで、突然の修繕・交換の出費にも対処することができます。
劣化の放置は大変危険です。特に雨漏りは建物の躯体を劣化させる原因の一つなので、早急に手を打つ必要があります。
トラブルを未然に防ぐためには、大規模修繕に加え、定期的な点検・メンテナンスを行うとよいでしょう。定期的な点検・メンテナンスは修繕費の節減に繋がります。
また、修繕費を積み立てておくことで、建物をグレードアップさせる工事が可能になり、資産価値の向上に繋がります。
修繕費に余裕がなければ必要最低限の工事しか行えません。大規模修繕における必要最低限の工事とは、建物の機能と美観を回復させる工事です。
ビルの修繕用が不足した場合の解決策
建物は築年数に伴って修繕が必要となる箇所が増えていくため、必要な工事に対して修繕積立金が不足する場合があります。
また、テナントに空きがある場合、賃貸収入が減るため、修繕費が計画通りに集まらないこともあります。
この場合、賃貸料をあげれば修繕費は計画通りに集まりますが、利用者の反感を買う恐れもあるので、オーナー様としてはなるべく避けたい方法でしょう。
修繕費が不足した場合は以下の施策を行えば解決されるでしょう。
- 補助金を活用する
- 金融機関から融資を受ける
- 工事内容を見直す
以下で上記施策それぞれの内容と実施する上での注意点を解説していきます。
補助金を活用する
非住宅に該当するビルは補助金の対象外になることがほとんどですが、修繕工事の内容が省エネに繋がる場合は、補助金を受けられます。
補助金が受けられる事業一覧
各都道府県にも非住宅を対象にした事業がある場合があるので、チェックしてみてください。
補助金制度の概要は年度ごとに更新され、かつ応募締切日が設定されています。
補助金制度を活用する際は必ず制度の概要をホームページなどで確認しましょう。
金融機関から融資を受ける
銀行やローン会社、住宅金融支援機構などの金融機関から借入もしくは融資を受ける手もあります。
しかし、利息を含めた返済金額が増えれば、経営を圧迫するリスクがあり、資産価値が下がる可能性もあります。
そのため、金融機関から借入もしくは融資を受ける際は、緊急性が高い修繕箇所のみに借入金・融資を利用し、そのほかの工事は修繕積立金で賄える範囲内で行うのが懸命です。
工事内容を見直す
緊急性がそれほど高くない箇所の工事を延期することで、大規模修繕の費用を抑えることができます。
しかし、前述の方法は一時凌すぎません。緊急性が高くなくてもいつかは工事しなければならないので、修繕計画を練り直す必要があります。
オフィスビルで大規模修繕を行う目的
オフィスビルや商業ビルで大規模修繕を行う目的は以下の通りです。
- 建物の機能・美観の回復
- 入居テナント・利用者の安全性の確保
- 時代のニーズに応じたグレードアップ工事による資産価値の向上
マンションの大規模修繕工事においても同様の目的で行います。
オフィスビルの修繕周期
オフィスビルや商業ビルの修繕工事は、建物の劣化状態や部材の耐用年数を考慮して、所有者であるオーナーの判断で実施します。
マンションの多くは一般的に12年〜15年周期で大規模修繕が行われていますが、オフィスビルや商業ビルに関しては、12年〜15年に一度の大規模修繕は行われていないのが現状です。
「12年〜15年周期で大規模修繕」が業界で浸透しているのは、国土交通省が12年周期の大規模修繕を推奨しているからです。
しかし、12年周期の大規模修繕はあくまで「推奨」であり、建築基準法では大規模修繕の実施周期は定められていません。つまり、定期的な大規模修繕は義務ではないのです。
だからといって、修繕工事を行わなくていい、ということにはなりません。
入居テナントや利用者の安全を守るのはビルのオーナーの義務であり、オフィスビル・商業ビルにおいても経年劣化は避けられないため、定期的な修繕・補修工事は必要不可欠です。
大規模修繕工事の実施が難しい場合は、中規模修繕・分散方式に切り替えてみるのがおすすめです。
オフィスビル修繕の種類・工事内容
オフィスビルの修繕工事は、その規模や範囲によって大きく分けて三つのカテゴリーに分類されます。
それぞれのカテゴリーがどのような内容を含むかとその違いについて詳しく見ていきましょう。
ビルの大規模修繕
大規模修繕は、オフィスビル全体のリニューアルや、大掛かりな設備の更新などを主として行います。
これには、外壁の塗り替えや屋根の修理、構造体の強化など、ビルの長寿命化を目指すプロジェクトが含まれます。
また、セキュリティシステムのアップデートや、環境に配慮した省エネ設備へのアップグレードも行われることが多いです。
これらのプロジェクトは時間も費用もかかり、計画的に行う必要があります。
ビルの中規模修繕
中規模修繕は、オフィスビルの特定のセクションや設備の改善や更新が目立ちます。
例としては、エレベーターやエスカレーターのメンテナンスや更新、共有スペースのリフレッシュなどがあります。
また、通信システムの更新や、安全対策の強化といった、ビルの運営に直接影響を与える要素が更新されることが多いです。
ビルの小規模修繕
小規模修繕は、日常的なメンテナンスや修理作業を指します。
これには、照明の交換や壁紙の張り替え、床材の更新などが含まれます。
また、小規模ながらも、トイレの改修や手すりの取り付けといったアクセス性の向上に関連する作業も行われることがあります。
これらの作業は比較的短期間で完了し、オフィスビルの運営をスムーズに続けるために不可欠です。
このように、オフィスビルの修繕工事は規模によって内容と目的が異なります。
修繕の計画や施工において、それぞれの特性を理解し、適切な準備と実施を行うことが重要です。
ビルの大規模修繕を行う際のポイント
マンションでは長期修繕計画という、大規模修繕の実施に向けた計画書が策定されます。長期修繕計画には、毎月徴収する修繕積立金の額、施工箇所、修繕周期などが記載されています。
オフィスビルや商業ビルにおいても、建物の劣化や入居テナントのニーズに合わせた修繕計画書を策定しましょう。
綿密な修繕計画は修繕費の節減にも繋がります。
無計画な修繕工事を行ってばかりいると、資金が底をつくばかりか、建物の価値を損ねることもあります。
だからこそ、5年~10年の中期修繕計画・10年~20年の長期修繕計画を立て、計画に基づいた修繕工事を実施するのが大切です。
オフィスビル大規模修繕の施工実例
オフィスビルの施工実例と大規模修繕の工事内容を見てみましょう
【個人様】東京都新宿区Sビル 大規模修繕工事
- 仮説足場工事
- 下地補修工事(ひび割れ・爆裂欠損部の補修)
- 洗浄工事
- シーリング工事
- 塗装工事(外壁・天井・雨樋・ポスト・手すり・換気フード・鉄部・など)
- 屋上防水工事(ウレタン防水・密着工法)
下地補修工事・爆裂欠損補修
外壁塗装
屋上防水・ウレタン防水密着工法
【企業様】東京都千代田区Kビル 大規模修繕工事
- 仮説足場工事
- 下地補修工事(ひび割れ補修・モルタル浮き補修・鉄筋爆裂補修・欠損補修・塗膜脆弱部補修)
- 洗浄工事
- シーリング工事(外壁維ぎ目・パネル目地・サッシ廻り・石目地・ドア廻り)
- 塗装工事(外壁・屋上パネル・鉄扉)
- 防水工事(バルコニー・階段)
下地補修工事・ひび割れ補修
シーリング工事・パネル目地
外壁塗装工事
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大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。