防水工事は、建物の耐久性と安全性を保つために非常に重要な工程です。
そのため、防水工事を行うためには一定の資格や許可が必要です。
必要な資格・許認可には、主に防水施工技能士や建設業許可が該当します。
このうち防水施工技能士は、防水工事の専門知識と技術を有していることを示す国家資格です。
また、大規模な防水工事を行う場合には、建設業許可が必須となります。
建設業許可を取得することで、適切な施工基準を守り、安全かつ効率的な工事を実施することが可能になります。
この記事では、防水工事に必要な資格や建設業許可の詳細について解説していきます。
目次
防水工事に必要な資格とは?資格取得のポイントを解説!
防水工事に必要な資格としては「防水施工技能士」という国家資格があります。
防水工事に必須の資格ではありませんが、多くの経験と技能・専門知識を有していることが証明できることから、施工品質の担保にもなるでしょう。
1級と2級に分かれており、資格を取得するためには、まず技能士試験に合格しなければなりません。
試験内容は学科試験と実技試験に分かれており、実務経験も必要です。
具体的に2級技能士の場合、現場での実務経験が3年以上必要です。
さらに資格取得後にも、定期的な講習や更新が必要となることもあるので、継続的な学習が求められます。
防水工事の種類と選び方
防水工事の種類と選び方について、まず主要な工法を理解することが重要です。
一般的な防水工法には、アスファルト防水・ウレタン防水・シート防水・塗膜防水などがあります。
それぞれの工法には特性があり、用途や施工箇所によって適したものが異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。
アスファルト防水
アスファルト防水は、アスファルトやタールを主成分とする防水材を使用して施工される方法です。
耐候性や耐久性が求められる場所において、信頼性の高い防水方法として選ばれています。
ウレタン防水
ウレタン防水は、ポリウレタン樹脂を基にした液状の防水材を使用して施工する方法です。
この工法は柔軟性があり、施工が比較的容易であるため、屋上やバルコニー・浴室などの小規模な防水工事に適しています。
シート防水
シート防水は、防水シートを使用して施工する方法です。
シートは一般にポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂製で、柔軟性があり施工が比較的簡単です。
広い面積や形状が複雑な部位にも適しており、屋上や地下室・浴室など幅広い用途で利用されています。
塗膜防水
塗膜防水は、特定の材料を液状または塗布可能な状態で基材に塗布することで、防水効果を得る方法です。
一般的にはアクリル系やエポキシ系の塗料が使用され、耐候性や耐久性に優れています。
主に屋内の浴室やキッチンなどの小規模な防水工事に適しており、素材の特性によって施工方法が異なります。
防水施工技能士の取得方法とメリット
防水施工技能士の資格を取得することは、専門性の高い技術者としての信頼性を高めることができます。
防水施工技能士の取得要件
1級 | 2級 | |
必要な実務経験 | 7年以上 | 2年以上 |
必要となる実務経験は、職業訓練歴や学歴により異なる場合があるため、あらかじめ確認しておきましょう。
いずれも実技試験と学科試験が行われ、このうち学科試験では建設工事や消防法関連・安全衛生に関する内容が出題されます。
さらに、アスファルト防水施工法・ウレタンゴム系塗膜防水施工法・アクリルゴム系塗膜防水施工法・合成ゴム系シート防水施工法・塩化ビニル系シート防水施工法・セメント系防水施工法・シーリング防水施工法・改善アスファルトシートトーチ工法防水施工法・FRP防水施工法の9種類から、いずれか1科目を選択します。
さらに実技試験では、学科試験と同様にいずれか1科目を選択し、下地処理から各防水工事施工までの一連の流れを行います。
年に2回試験が行われますが、どの科目を選択するかによって日程が異なるため、事前に確認したうえで準備を進めましょう。
防水施工技能士を取得することによるメリット
防水施工技能士を取得することで、施工への信頼が増すことは大きなメリットです。
大規模な工事や公共工事などでは、信頼性や施工の正確さが重視されます。
そのような工事を行う際、資格を有していることで施主からの信頼を得られるでしょう。
また防水施工技能士を所持していると、一部の資格を取得する際に特定の科目が免除されます。
実技や専門知識の理解へ時間を費やせるため、建設工事業界で必要なさまざまな資格取得を検討される方にとって有利と言えるでしょう。
建設業許可とは?大規模防水工事に必要な許可を解説
建設業許可とは、建設業者が一定の基準を満たしたうえで、法律に基づき取得する必要がある許可です。
特に大規模な防水工事を行う場合には、建設業許可が不可欠です。
許可を取得することで適正な施工基準を守り、法律に則った工事を行うことが可能になります。
許可の種類は建設業の種類ごとに分かれており、防水工事を含む「特定建設業許可」または「一般建設業許可」があります。
特定建設業許可
特定建設業許可は、発注者から直接請け負った工事1件に対し、下請代金の総額が4000万円もしくは一式工事で6000万円以上の施工が行われる場合に必要です。
経営業務管理責任者や専任技術者が在籍していること・欠格事項に該当していないことなど、認可には多くの要件があります。
一般建設業許可
一般建設業許可は、材料費込みで500万円以上の工事を請け負う場合に必要です。
500万円以下の工事や木造住宅で150平米未満の工事の場合は、建築業許可自体も必要ありません。
これらの許可を持つことで、公共工事や大規模な民間工事の受注が可能になり、事業の幅が大きく広がります。
取得には、財務状況や技術者の資格・過去の施工実績などが審査対象となり、厳しい基準をクリアする必要があります。
建設業許可の取得要件
建設業許可を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
建設業許可の取得要件
経営業務管理責任者がいること
まず、経営業務の管理責任者が一定の資格を持ち、実務経験があることが求められます。
管理者として5年以上建設業に携わっているか、6年以上管理責任者を補佐した経験を持つ者が在籍している必要があります。
履行に足りる財政的基礎を有すること
また、財務基盤の安定性を証明するために、一定の資本金や自己資本の要件もあります。
特に特定建設業許可は大規模な工事を請け負うことから、要件すべてを満たしておく必要があります。
専任技術者がいること
技術者の配置要件として、建設業に必要な資格を持つ技術者を一定数以上配置する必要があります。
ただし、一般建設業許可と特定建設業許可では要件が異なるため、工事の規模に合わせて配置することが求められます。
欠格要件に該当していないこと
破産者や一般建設業・特定建設業許可の取り消しを受け5年を経過していない者・反社会的勢力に所属していないことなど、欠格事項には多くの項目があります。
欠格事項だけでなく、いずれにも抵触していない者のみが申請・許可を受けられるため、あらかじめ確認しておくことが重要です。
建設業許可の申請手順
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必要書類の準備
まず、建設業許可を取得するためには、必要な書類を準備することから始めます。
基本的に必要な書類には、会社の登記事項証明書・定款・代表者の身分証明書・経営業務の管理責任者の実務経験証明書・技術者の資格証明書・財務諸表・納税証明書などがあります。
これらの書類は、各種証明を行うために必要であり、不備がないようにしっかりと準備しましょう。
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経営業務の管理責任者の確認
建設業許可を取得するためには、経営業務の管理責任者が必要です。
この管理責任者は、一定の実務経験が求められます。
具体的には、一般建設業の場合は5年以上、特定建設業の場合は7年以上の実務経験が必要です。
管理責任者の実務経験を証明するための書類も用意します。
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専任技術者の配置
次に、専任技術者を配置する必要があります。
専任技術者は、建設業に必要な資格や実務経験を有する技術者であり、工事現場の技術的な管理を行います。
技術者の資格証明書や実務経験証明書を用意し、申請書に添付します。
これにより、技術的に適切な施工が行える体制を整えていることを証明します。
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財務基盤の確認
建設業許可を取得するためには、財務基盤が安定していることを証明する必要があります。
これには、直近の財務諸表や自己資本の確認書類などが必要です。
一定の資本金や純資産額が求められるため、財務状況を適切に管理し、証明書類を準備します。
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申請書の作成と提出
すべての必要書類が揃ったら、建設業許可申請書を作成します。
申請書には、会社の基本情報や経営業務の管理責任者・専任技術者の情報・財務状況などを記載します。
申請書と添付書類を所轄の地方自治体の建設業許可窓口に提出します。
提出前には、書類の不備がないかしっかりと確認しましょう。
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審査と許可の取得
申請書が受理されると、所轄の地方自治体で審査が行われます。
審査では、提出書類の内容確認や実地調査などが行われます。
審査期間は通常1〜3ヶ月程度です。
審査に問題がなければ、建設業許可証が交付されます。
許可証を受け取った後は、適切に管理し、必要に応じて更新手続きを行います。
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許可後の対応
許可を取得した後も、適切な経営と施工を続けるために、定期的な報告や更新手続きが必要です。
建設業許可の有効期間は5年であり、期間満了前に更新手続きを行わなければなりません。
また、事業内容や役員の変更があった場合には、変更届を提出する必要があります。
これにより、許可の継続と信頼性の維持が図られます。
まとめ
防水工事においては、まず施工者が適切な資格や許可を持っていることが重要です。
このうち防水施工技能士は国家資格であり、その施工者が防水工事に関する高度な技術と知識を有していることを保証します。
また、大規模な防水工事を行う場合には、建設業許可が必要です。
この許可は、法令に基づいて建設業務を行うための許可であり、適切な施工基準を守るための重要な要件となります。
さらに防水工事の選択には、各種工法の特性を理解することが不可欠です。
アスファルトやウレタン・シート・塗膜などの防水材料には、それぞれ特有の耐久性や適用範囲があります。
建物の用途や地域の気候条件・予算に応じて最適な工法を選定し、施工計画を立てることが成功の鍵です。
専門性の高い業者との信頼関係を築きながら、建物の耐久性と安全性を保つための適切な防水工事を計画的に実施していくことが、持続可能な建築管理の基盤と言えるでしょう。