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アパート経営に必要なアパートの修繕費用の目安とは?相場を詳しく解説

アパートの修繕費の目安を知りたい人

アパートの修繕費の目安を知りたい人

アパートの修繕費の目安はいくら?
アパートの修繕費の費用相場はどれくらい?
アパートの修繕費は賃貸料(家賃)に含めて徴収していい?
アパートの修繕費は最大でどれくらい?平均はいくら?
アパート経営でメンテナンス費用を準備する方法は?

アパート経営は、家賃収入を得られる安定的な投資方法として人気があります。
しかし安定した収益を維持するには、建物の定期的な修繕が欠かせません。
アパート修繕費は経営における大きな支出項目の一つであり、計画的に準備しておかなければ、経営を圧迫する可能性があります。

特に大規模修繕は、屋根の補修や外壁の塗り替えなど多額の費用がかかるため、修繕計画を立て適切に費用を積立てておくことが重要です。
また定期的な予防補修は、修繕費用の抑制にもつながります。

アパート経営における修繕費用の相場や目安を知ることは、長期的な経営戦略を立てる上で非常に重要です。
さらに減価償却制度を活用することで、税務面でのメリットも得られます。

本記事では、アパート経営にかかる修繕費の目安とその負担を抑えるコツについて詳しく解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

アパート経営で行う修繕工事の種類と費用目安

アパート経営では、経年劣化や突発的な事故・災害による修繕費用が発生します。

修繕工事および費用の目安は以下のとおりです。

修繕工事の種類費用の目安
原状回復数万〜20万円程度
補修数万〜数十万程度
予防補修数万〜数十万程度
大規模修繕数百万〜1千万円程度

修繕費用は、アパート経営における大きな支出項目になります。

事前に修繕が必要になるケースと費用の目安を知り、計画的に準備しておくことが重要です。

アパート経営で行う修繕工事の種類と費用目安.1原状回復

原状回復とは、入居者が退去する際に、入居前の状態に戻すことです。

具体的には、以下の項目が対象となります。

  • クロス(壁紙)の張替え
  • フローリングの張り替え
  • 畳の表替え
  • 襖や障子の張替え
  • 網戸の張替え
  • 水回りの清掃・消毒 
  • ハウスクリーニング

一般的には、退去時のハウスクリーニングで済む場合が多いのですが、入居者の責任によって室内が破損されたり、改造した場合は、入居者の負担によって修繕を行います。

なお、2004年の民法改正によって、賃借人の原状回復義務が明記されています。

賃借人の原状回復義務

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用:改正民法第621条(賃借人の原状回復義務)e-GOV

アパート経営で行う修繕工事の種類と費用目安.2補修

補修とは、経年劣化や損傷によって傷んだ部分を元の状態に戻す工事です。

補修と似た「更新」という言葉がありますが、更新は老朽化した設備を新しいものに取り替える工事内容になります。

補修工事は、更新工事よりも費用が安価で、工期も短くなります。

しかし、傷みの程度によっては、補修では対応できない場合があります。

補修工事は、アパートの寿命を延ばし、入居者の満足度を高めるために重要です。

アパート経営で行う修繕工事の種類と費用目安.3予防補修

予防補修とは、故障や不具合が発生する前に、定期的に設備や建物を点検し、必要に応じて補修を行うことです。

予防補修を行う場合、以下のような目的があります。

  • 故障や不具合による設備の停止や建物の損傷を未然に防ぐ
  • 修繕費用の抑制
  • 長寿命化

予防補修は、設備や建物の維持管理において重要な役割を果たします。

初期費用はかかりますが、長期的に見ると修繕費用の抑制や寿命化につながるため、費用対効果の高い方法といえるでしょう。

アパート経営で行う修繕工事の種類と費用目安.4大規模修繕

大規模修繕とは、10年~15年に一度程度、計画的に行われる大規模な修繕工事のことです。

大規模修繕は、以下のような目的で行われます。

  • 建物の経年劣化による損傷を補修し、資産価値を維持する
  • 居住者の快適な生活環境を維持する
  • 安全性を確保する

大規模修繕工事の費用は、毎月の管理費と一緒に徴収される修繕積立金で賄われます。

計画的に修繕積立金を積み立て、適切なタイミングで大規模修繕を行うことで、建物の資産価値を維持することが可能です。

アパート経営と修繕費|貸主の負担

賃貸借契約において、修繕費用における貸主と借主の負担割合は民法で定められています。

賃貸人による修繕等

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

引用:改正民法第606条(賃貸人による修繕等)e-GOV

また、貸主が負担する修繕部分は、以下のように考えられています。

室内の経年劣化・自然摩耗

賃貸借契約において、貸主は室内の経年劣化・自然摩耗による修繕費用を負担する必要があります。

経年劣化と自然摩耗の概念については、以下のとおりです。

経年劣化自然摩耗
概念時間の経過とともに建物や設備が自然に劣化することであり、避けられない現象入居者が通常使用する範囲で発生する損耗であり、故意・過失によるものではない
具体例・壁紙の日焼け
・フローリングの傷
・畳のへこみ
・画鋲の穴
・家具の設置による床の跡

古くなった設備の交換・大規模修繕

古くなった設備の交換や、大規模修繕においても、修繕費用の負担は貸主になります。

設備の交換は、原則として貸主が負担し、大規模修繕は毎月の管理費と一緒に徴収される修繕積立金で賄われます。

設備の交換大規模修繕
修繕内容築年数とともに老朽化する設備の交換建物の構造躯体や共用部分の修繕
具体例・給湯器
・エアコン
・トイレ
・キッチン
・浴室
・外壁塗装
・屋上防水
・鉄部塗装
・給排水管の更新
・電気設備の更新
・エレベーターの更新

設備の交換、大規模修繕においては、賃貸借契約書で修繕費用の負担割合を変更することも可能です。

また、特約内容によっては、借主負担となる場合もあります。

アパート経営と修繕費|借主の負担

アパートの修繕費用は、原則として貸主が負担しますが、借主が負担するケースもあります。

借主が負担する修繕部分と具体例は以下のとおりです。

修繕部分・故意・過失による損傷
・通常の使用を超える損耗
・借主の故意・過失による設備の故障・破損
・入居時にあった既存の傷や汚れを放置したことによる悪化
・退去時に原状回復義務を果たさなかった場合の修繕費用
具体例・入居者がつけた壁の穴
・故意に汚したフローリング
・過失で壊した水栓
・ペットによる傷や汚れ
・タバコのヤニによる壁紙の変色
・家具の設置跡が残ったまま退去

借主の負担部分については、判断が分かれることもあり、トラブルの要因になることもあります。

トラブルを回避するためには、以下の方法が有効です。

  • 入居時に室内を写真撮影しておき、退去時に貸主と立ち会いをして、修繕箇所を確認する
  • 賃貸借契約書の内容をよく確認し、不明な点があれば事前に貸主に確認する
  • 原状回復義務を理解し、退去時には適切な原状回復を行う

参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)|国土交通省住宅局

アパート経営における修繕費の相場・修繕箇所・修繕工事のタイミング

修繕工事のタイミングは、修繕箇所の種類や状態によって異なります。

  • 住宅設備
  • 内装
  • 間取り変更
  • 雨漏り対策

それぞれの修繕工事のタイミング、費用相場について解説していきます。

修繕工事のタイミング:住宅設備の入れ替え

住宅設備は、経年劣化によって性能が低下したり、故障したりすることがあります。

また、機能やデザインが古くなったために入れ替えることもあります。

修繕箇所相場修理・交換実施の目安
エアコン修理・交換修理:1万5,000円~15万円/台
※故障内容による
7年~10年程度
交換:5万円~15万円/台
給湯器修理・交換修理:6,000円~5万円/台
※故障内容による
10年~12年程度
交換:10万円~15万円/台
キッチンガスコンロ修理・交換修理:1,000円~1万円/台8~10年程度
交換:5万円~20万円/台
ユニットバス修理・交換修理:5万円~20万円(壁・床など)10~15年程度
交換:50万円~150万円
ウォシュレット修理・交換修理:1万5,000円~3万円/台
※故障内容による
7年~10年程度
交換:3万円~6万円/台
配管設備・ポンプ修理10万円~70万円
(配管長さ、状態、修理内容による)
15年~20年程度

修理・交換の時期や費用については、あくまでも目安です。

また、使い方によって年数は多少変動すると考えておきましょう。

内装の貼り替え

内装の張り替えは、経年劣化や損傷によって美観や機能が低下した際に必要となります。

修繕箇所相場修理・交換実施の目安
クロス張替1,000円~1,500円/平米6年~8年程度
退去時にも
クッションフロア張替3,000円~5,000円/平米8年~12年程度
退去時にも

内装の張り替えは、費用がかかるため、適切なタイミングで行うことが重要です。

定期的に室内を点検し、張り替えの必要性を感じたら、早めに業者に相談しましょう。

間取り変更などのリフォーム

間取りの変更は、ライフスタイルの変化や家族構成の変化に合わせて行うリフォームです。

間取りの変更を検討するタイミングは、一般的に15年前後とされています。

ただし、以下のような変化があった場合は、間取り変更のタイミングといえるでしょう。

  • 家族が増えた
  • 子供が独立した
  • 高齢者向けの改修が必要になった
  • 部屋の使い方を変えたい

雨漏り対策・外観に関する工事

雨漏りは、建物の構造や内装を損傷させるだけでなく、カビやダニの発生など健康被害の原因にもなります。

また、外観の劣化は、建物の美観を損なうだけでなく雨漏りの原因にもなるため、早めの対策が必要です。

修繕箇所相場修理・交換実施の目安
屋上防水・ベランダ防水80万円~100万円/100平米あたり10年~15年
手すり・階段防錆5万円~15万円階段一基・一階部分あたり
外壁(補修)60万円~150万円/100平米あたり
外壁(塗装)50万円~100万円/100平米あたり

屋上・屋根防水工事

屋上・屋根防水工事は、雨漏りを防ぎ、建物を長持ちさせるために必要な工事です。

雨漏りの原因となるような、以下の破損や劣化があれば、早めに対処しましょう。

  • 雨漏り
  • 塗装の剥がれ
  • ひび割れ
  • コケやカビの発生

屋上・屋根防水工事は、建物を長持ちさせるための重要な投資です。

適切なタイミングで適切な工事を行うことで、雨漏りによる被害を防ぎ、建物の寿命を延ばすことができます。

ベランダや階段などの防水・防錆工事

ベランダや階段は、雨や風などの影響を受けやすく、劣化しやすい場所です。

手すりなど、構成している部材の材質が鉄であると、サビが発生することがあります。

建物の外に設置されている場合、サビが原因で落下する危険があるので、早急な対応が必要です。

防水・防錆工事を行うことで、サビの発生を防ぎ、建物の寿命を延ばすことができます。

外壁補修・塗装工事

外壁補修・塗装工事は、建物の外観を美しく保ち、劣化を防ぐために必要な工事です。

  • 塗装の剥がれ
  • ひび割れ
  • カビやコケの発生
  • 色あせ

以上のような劣化症状が発生した場合は、シーリング工事、塗装工事、張り替えなどによって対応します。

外壁の耐用年数を考慮して、10年〜15年ぐらいで点検することがベストなタイミングといえるでしょう。

アパート経営で工事にかかる修繕費用の計上方法

アパートの修繕工事は、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

アパート修繕工事にかかる費用は、大きく分けて「修繕費」と「資本的支出」の2つに分類されます。

修繕費・一度に要する工事の支出が20万円未満のもの
・3年以内の周期で生じる支出(定期的、頻繁な修繕が必要なもの)
・事業所得や不動産所得の計算上、支払った年の必要経費として計上
資本的支出・一度に要する工事の支出が20万円以上のもの
・建物の価値を向上させる工事
・建物の取得価額に加算して、耐用年数に応じて減価償却費として計上

例外として、グレードアップを伴わない外壁塗装は、20万円以上の支出でも費用として計上できます。

したがって、修繕費を費用として計上するためには、20万円未満の工事内容にするのがポイントです。

修繕費を適切に計上することで、課税所得を減らすことができます。

具体的な判断は、税理士等に相談することをおすすめします。

アパートの修繕工事を成功させるポイント

アパートの修繕工事は、建物の維持管理だけでなく、入居率の向上や家賃収入アップにもつながる重要な投資です。

工事を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

アパートの修繕工事を成功させるポイント.1長期的な修繕計画を立てる

長期的な修繕計画は、建物の維持管理だけでなく、将来の修繕費用の負担を平準化し、安定した経営を行うために重要です。

修繕計画作成を立てるには、以下のポイントを押さえましょう。

  • 調査・診断:建物の構造や設備、過去の修繕履歴、現状の劣化状況
  • 修繕項目の選定:必要修繕項目、修繕時期、修繕費用
  • 計画の作成:修繕項目、修繕時期、修繕費用、資金計画
  • 見直し:定期的な見直し、状況に応じた修正

修繕計画は専門知識が必要になるので、専門業者への依頼をおすすめします。

また、30年程度を目安に作成し、修繕積立金の適切設定から入居者への計画説明まで、適切な計画を立てることが重要です。

アパートの修繕工事を成功させるポイント.2修繕積立金を確保しておく

修繕積立金は、将来の修繕工事費用に備えて積み立てるものです。

修繕積立金を確保しておくことは、建物の維持管理だけでなく、将来の支出を抑えるためにも重要です。

修繕積立金は、適切な管理により、建物の価値を維持し、安定した経営を行うことができます。

修繕積立金の目安

修繕積立金の目安は、以下の要素によって異なります。

  • 建物の規模
  • 築年数
  • 構造
  • 設備
  • 立地

また、国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、修繕積立金の平均額の算出方法は以下のとおりです。

(算出式) 計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月) 

Z=(A+B+C)÷X÷Y

A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
X:マンションの総専有床面積(㎡)
Y:長期修繕計画の計画期間(ヶ月)
Z:計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)

参考:マンションの修繕積立金に関するガイドライン|国土交通省

アパート経営で修繕費を抑えるコツ

アパートの修繕費を抑えるには、以下のコツがあります。

  • 定期点検と小規模修繕を行う
  • まとめて工事を行う
  • 修繕費を含めた建築プランを立てる

アパート経営で修繕費を抑えるコツ.1定期点検と小規模修繕を行う

アパートの修繕費を抑えるには、定期点検と小規模修繕を行うことが重要です。

定期点検は、費用を抑えるだけでなく、資産価値の維持にもつながります。

また、小規模修繕は、将来的に発生する大きな修繕費用を抑えるためにも必要です。

小さな劣化・損傷を放置しておくと、後々大がかりな工事に発展する可能性もあります。

被害が小さいうちに対応してもらえるように、専門家である業者に依頼して定期的に点検することが重要です。

将来の費用を抑え、資産価値を維持するためにも、積極的に点検・修繕を取り組みましょう。

アパート経営で修繕費を抑えるコツ.2まとめて工事を行う

アパートの修繕費を抑えるためには、まとめて工事を行うことが有効です。

まとめて工事を行うことで、以下のようなメリットが得られます。

  • 足場代などの共通費を一度で済ませられる
  • 工事期間の短縮
  • 入居者への負担軽減
  • 業者との交渉力向上

特に、外壁塗装と屋根塗装は足場代が一度で済むので、同じタイミングで行うようにしましょう。

アパート経営で修繕費を抑えるコツ.3修繕費を含めた建築プランを立てる

修繕費はアパート経営における大きな支出であり、建築プランを立てる際には、修繕費を抑える対策を講じることが重要です。

建築プランを立てるためには、以下のようなポイントがあります。

  • 耐久性の高い材料を使用する
  • メンテナンスしやすい設計にする
  • 省エネ設備を導入する
  • 修繕計画を立てる

具体的には、外壁をタイルにするなど、耐久性の高い材料を使用して修繕頻度を減らします。

また、屋上の場合は、防水性が高くメンテナンスのしやすい材料で塗装するのが効果的です。

将来の費用予測や、資金繰りに注意し、建築プランの段階から対策を講じておきましょう。

アパート経営における修繕費のまとめ

ここまで、アパートの修繕費用について解説してきました。

この記事の要点を、以下のようにまとめています。

  • 修繕費の種類は「原状回復」「補修」「予防補修」「大規模修繕」
  • 修繕費の負担割合は「貸主負担」と「借主負担」の2種類
  • 修繕工事のタイミングは、修繕箇所の種類や状態によって異なる
  • 修繕費を計上する方法は、修繕費と資本的支出の2種類
  • 修繕工事を成功させるポイントは、長期的な修繕計画と修繕積立金の確保が重要
  • 修繕費を抑えるコツは、定期点検と小規模修繕、まとめて工事を行う、建築プランが重要

修繕費はアパート経営において重要な要素です。

長期的な視点に立って計画的に修繕を行うことで、建物の資産価値を維持し、安定した経営を実現しましょう。

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