屋根の修繕やリフォームを検討していませんか?「屋根カバー工法」という工法は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を被せる施工方法で、防水工事で行われる葺き替え工事とは異なるアプローチを取ります。
屋根カバー工法のメリットは、工期の短縮や費用の削減、そして既存屋根材の撤去が不要な点にあります。特に、ガルバリウム鋼板などの軽量で耐久性の高い屋根材を使用することで、長期的な保護効果が期待できます。一方で、重量増加や既存の問題点が隠れてしまうといったデメリットも存在します。
施工手順はシンプルですが、適切な下地処理や防水対策が不可欠です。外壁との取り合いや棟部分の処理など、細かな点にも注意が必要です。
本記事では、屋根カバー工法の基礎知識かメリット・デメリット、適切な施工手順や費用の目安まで詳しく解説します。
おすすめの工法ですので、ぜひ最後までお読みください。
目次
屋根カバー工法とは?
屋根カバー工法とは、古い屋根の上から新しい屋根を被せて張る工法のことです。
屋根カバー工法は、既存の屋根の上から新しい屋根材を被せる工法です。古い屋根を剥がさずに施工できるため、廃材処分の手間や費用を抑えることができます。この工法は、軽い金属製の屋根材が使用されることが多く、特に一般住宅で採用されることが増えています。
屋根カバー工法と葺き替え工事との違い
屋根カバー工法と葺き替え工事との違いは、既存の屋根材を撤去するかどうかにあります。
- 屋根カバー工法: 古い屋根材をそのまま残し、その上から新しい屋根材を設置します。
- 葺き替え工事: 既存の屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材を取り付けます。
工期と費用の違い
屋根カバー工法は、既存屋根を撤去する作業が不要なため、工期が短く、費用も抑えられるのが大きな特徴です。一方、葺き替え工事は撤去作業や廃材処理の費用が加わるため、カバー工法に比べてコストが高くなる傾向があります。
適用条件の違い
屋根カバー工法は、既存の屋根が比較的健全な状態である場合に適用されます。既存屋根に重大な劣化や損傷がある場合は、葺き替え工事が必要になることがあります。
葺き替え工事に比べると、屋根カバー工法は費用を抑えて短い工期で工事を完了することができます。
屋根カバー工法の施工手順
屋根カバー工法は、以下のような手順で施工されます。
屋根カバー工法の施工手順1.棟板金・貫板を撤去
屋根カバー工法では、既存屋根材の撤去は行いません。
ただし、屋根材の頂点の部分にある棟板金と、その下地部分である貫板のみ撤去します。
屋根カバー工法の施工手順2.防水紙を敷く
棟板金と貫板が撤去できたら、既存屋根材の上から防水紙を敷いていきます。
屋根は雨の影響を受けやすいため、建物の防水性能を高めるためにも屋根の防水工事は重要です。
屋根カバー工法の施工手順3.新しい屋根材を葺く
防水紙がしっかりと敷けたら、防水紙の上から新しい屋根材を葺きます。
屋根カバー工法の施工手順4.棟板金・貫板を設置
屋根材の上には、新しい棟板金と貫板を設置します。
屋根カバー工法の施工手順5.棟板金にコーキング処理
板金同士が重なる部分は雨の侵入経路となりやすいため、隙間をしっかりとコーキング処理することで防水性能を高めることが重要です。
屋根カバー工法の施工手順6.完成
以上の工程で、屋根カバー工法の施工が完了します。
屋根カバー工法のメリット・デメリット
屋根カバー工法の施工を検討している方は、どのようなメリット・デメリットがあるのか気になりますよね。
ここでは、屋根カバー工法のメリットとデメリットについてそれぞれ詳しく解説していくので、参考にしてみてください。
屋根カバー工法のメリット
屋根カバー工法のメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 費用が抑えられる
- 屋根の断熱性・遮音性・防水性が上がる
- 工期が短い
3つのメリットについて、さらに詳しく紹介していきます。
屋根カバー工法のメリット1.費用が抑えられる
撤去費用・廃材処分費用がかからないためリフォーム費用が抑えられる
屋根カバー工法では、既存屋根材の撤去を行わずに上から新しい屋根を施工します。
そのため、既存屋根材の撤去費用や廃材処分費用はかかりません。
このような費用がかからない分、屋根材の撤去を必要とする葺き替え工事に比べてリフォーム費用を抑えることができます。
屋根カバー工法のメリット2.屋根の断熱性・遮音性・防水性が上がる
屋根カバー工法では既存屋根材の上から新しい屋根を施工するため、工事後には屋根が二重構造になります。
屋根が二重構造になることによって、屋根の遮音性・防音性が上がる効果が期待できます。
また、新しい屋根材に断熱性に優れたものを選ぶことによって、屋根の断熱効果を高めることもできるでしょう。
屋根カバー工法のメリット3.工期が短い
屋根カバー工法では既存屋根材を撤去する手間がないため、葺き替え工事に比べて短い期間でリフォームを終えることができます。
工期が短いことは、家主の負担が少ないだけではなくリフォーム費用を抑えることにもつながります。
屋根カバー工法のデメリット
費用を抑えられるなどメリットの大きい屋根カバー工法ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 屋根の内部点検ができない
- 再リフォームや修理の際の費用が高い
- 使用可能な屋根材が限られている
- 屋根の重量が増え耐震性が下がる
それぞれのデメリットについて、詳しく紹介していきます。
屋根カバー工法のデメリット1.屋根の内部点検ができない
既存屋根材の上から新しい屋根を施工する屋根カバー工法では、屋根内部の点検が困難になってしまいます。
そのため、気づかないうちに屋根内部の劣化や腐食が進んでしまう可能性があります。
特に既存屋根材に劣化症状がある場合では、内部での腐食などが発生し進行してしまうリスクが高いです。
一度屋根からの雨漏りが発生した住宅のリフォームや雨漏りの修理としては、屋根カバー工法は適していない工事だと言えます。
屋根カバー工法のデメリット2.再リフォーム・修理の費用が高くなる
屋根カバー工法を施工した屋根は、二重構造で通常の屋根よりも分厚くなります。
二重構造になることで得られるメリットもあるのですが、その後に再リフォームや修理を行う際にはデメリットにもなります。
屋根カバー工法を施した屋根の場合、再リフォームや修理の際に分厚くなった二重構造の屋根材を剥がす工程が必要です。
そのため、撤去に時間がかかったり廃材処分費用が高額になったりと、結果的にリフォーム費用が高くなってしまうでしょう。
まだ築年数が浅い住宅など将来的なリフォームや補修を行う可能性が高い方にとっては、屋根カバー工法は最適な工事ではありません。
屋根カバー工法のデメリット3.使用可能な屋根材が限られている
屋根カバー工法で使用できるのは、軽い金属系の屋根材に限られてしまいます。
そのため、瓦屋根などを希望する方は屋根カバー工法では採用することができません。
屋根材にこだわりのある方で金属系以外の材料を希望する方にとっては、屋根カバー工法では理想の屋根を叶えることができなくなってしまいます。
屋根カバー工法のデメリット4.屋根の重量が増えることで耐震性が下がる
屋根カバー工法では既存屋根材の上から新しい屋根を施工するため、軽い金属製の屋根材を使用するとはいえ、屋根の重量が増えることは避けられません。
そのため建物への負担が増加するだけではなく、耐震性が下がるリスクがあります。
現在は耐震性に問題がない場合でも、地震のたびによく揺れる住宅にはおすすめできない工法です。
また、揺れに敏感な住人がいる場合は、現在よりも強く揺れを感じてストレスとなってしまうかもしれません。
カバー工法ができる屋根・できない屋根
屋根カバー工法は、施工できる屋根とできない屋根があります。
屋根カバー工法を希望したとしても、既存の屋根によっては施工できない可能性も考えられます。
カバー工法ができる屋根
カバー工法ができる屋根は、限られています。
屋根カバー工法を行えるかどうかで重要となるのは、既存屋根材の素材と形状が平らであるかどうかです。
以下のような屋根材でできた屋根は、カバー工法での施工が可能です。
金属
改修工事における金属屋根は防水性と耐久性に優れた屋根材です。軽量で施工性が良く、既存屋根の上からカバー工法での改修も可能です。30年以上の長寿命が特徴です。
アスファルトシングル
アスファルトシングルは、石油系の防水材と砂粒を組み合わせた軽量な屋根材です。デザイン性が高く、施工が容易で比較的安価なことから、戸建て住宅に多く採用されています。
化粧スレート
化粧スレートはセメントと繊維を原料とした屋根材です。耐火性に優れ、豊富な色やデザインが特徴です。価格が比較的安く、一般住宅でよく使用される人気の屋根材です。
カバー工法ができない屋根
屋根カバー工法に興味を持った方は、既存の屋根がここで紹介する「屋根カバー工法が施工できない屋根」に当てはまらないかどうか確認してみましょう。
瓦屋根
屋根カバー工法を行うためには、既存屋根の形状がフラットであることが必須です。
そのため、表面が平らではなく波打ったようなデザインをしている瓦屋根は、屋根カバー工法での施工ができない屋根に該当してしまいます。
古くから使用されてきた瓦屋根の家は旧耐震基準である可能性も高く、耐震性が低下する屋根カバー工法は適していません。
そして瓦屋根はもともと重量があることが特徴なので、二重構造でさらに重量を増やしてしまう屋根カバー工法との相性が悪いと言えるでしょう。
古いトタン屋根
金属製であるトタン屋根に対して屋根カバー工法で施工することは、技術的には可能です。
しかし古いトタン屋根の場合は、屋根の下地部分が劣化していることがほとんどです。
トタン屋根に対して屋根カバー工法が施工できるかどうかは、既存屋根の状態によって決まります。
古いトタン屋根のほとんどは劣化しているため、屋根カバー工法での施工が難しいでしょう。
劣化が進んだコロニアルの屋根
コロニアルの屋根は、先ほど紹介したトタン屋根と同様に技術的には施工可能です。
しかし劣化が進んだコロニアルの屋根の場合は、屋根カバー工法を行うことができません。
コロニアルの屋根が古い場合やすでに雨漏りが生じている場合、下地の傷みが激しい場合などでは屋根カバー工法は避けるべきだと言えるでしょう。
屋根カバー工法の費用目安
屋根カバー工法での工事を行う際には、費用がどれくらいかかるのかが気になるポイントですよね。
一般的な屋根の費用相場 | |
屋根カバー工法代 | 11,000円/屋根平米 |
足場代 | 200,000円 |
一般的な屋根カバー工法の費用目安は、屋根平米×11,000円ほどです。
この屋根工事にかかる費用にプラスして、工事の際に必要となる足場代が20万円ほどかかるでしょう。
費用を抑えることのできる屋根カバー工法ですが、全体費用はやはり屋根の面積によってかなり変わります。
傷みが進んだ屋根の費用相場 | |
野地板増し張り屋根カバー工法 | 13,000円/屋根平米 |
足場代 | 200,000円 |
また、傷みが進んだ屋根に対して行う野地板増し張り屋根カバー工法の場合は、費用目安が屋根平米×1.3万円ほどです。
こちらの場合でも、別途足場代が20万円ほどかかります。
野地板の増し張りに関しては、屋根の形や使用する屋根材などさまざまな要因によって費用が変動するでしょう。
屋根カバー工法の注意点
屋根カバー工法を行うためには、いくつかの注意点があります。
ここでは、施工前に知っておきたい注意点を4つ紹介するので、屋根カバー工法を検討している方はぜひ確認しておきましょう。
屋根カバー工法の注意点|施工可能な屋根か確認する
屋根カバー工法はすべての屋根に対応可能なわけではなく、施工できる屋根が限られています。
既存の屋根が屋根カバー工法に対応可能かどうかを確認しましょう。
基本的に瓦屋根などの屋根の表面が波打った形状の屋根には、施工することができません。
表面が平らな形状の屋根で、
- 金属屋根
- アスファルトシングル
- 化粧スレート
でできた屋根の場合は、屋根カバー工法の施工が可能です。
屋根カバー工法の注意点|新しい屋根材は既存屋根よりも軽いものを選ぶ
屋根カバー工法で使用する新しい屋根材は、既存屋根よりも軽い素材のものを選ぶ必要があります。
屋根カバー工法では屋根が二重構造になり重さが負担となるため、少しでもリスクを減らすために新しい屋根材の候補は既存屋根よりも軽いものから選ぶことになります。
屋根カバー工法によく使用される屋根材では、重い順にスレート屋根材→アスファルトシングル→金属屋根材となっていて、金属屋根材が最も軽いです。
屋根カバー工法の注意点|2度目のカバー工法はできない
屋根カバー工法は一度しか行えないリフォーム工事で、同じ屋根カバー工法を二度行うことはできません。
既存屋根材を撤去せずに行うカバー工法は重要が増していってしまうため、繰り返し行えば建物への大きな負担となります。
そのため、屋根カバー工法は一度限りのリフォーム工事です。
屋根カバー工法の注意点|太陽光パネルを取り付けたい場合は業者に相談する
太陽光パネルの設置は、一般的に屋根材に穴を開けて行います。
カバー工法を施した屋根では、二重になった屋根部分に太陽光パネルを設置することになります。
この際固定の強度に不安が残り太陽光パネルの設置ができない場合もあるので、太陽光パネルの取り付けを検討している方は、事前に業者に相談しましょう。
屋根のカバー工法がおすすめできる場合・できない場合
屋根カバー工法はメリットがある一方でデメリットも目立つ工法です。
そのため、誰にでもおすすめの工法というわけではなく、おすすめできる場合とできない場合にわかれます。
ここでは、そんな屋根カバー工法がおすすめできる場合とできない場合についてそれぞれ紹介します。
屋根カバー工法でのリフォームを検討している方は、確認しておきましょう。
屋根のカバー工法がおすすめできる場合
屋根カバー工法がおすすめできるパターンには、下記のようなものがあります。
- できるだけ工事費用を抑えたい場合
- 既存の屋根にアスベストが含まれる場合
- 10年ほどで転居や家の解体を予定している場合
屋根カバー工法の最大の特徴とも言えるのが、葺き替え工事に比べて費用を抑えられることです。
そのため、工事費用を抑えることを最重要事項にしている方には、屋根カバー工法がおすすめです。
既存の屋根材にアスベストが含まれている場合では、葺き替え工事を行うと粉塵飛散への対策や処分に費用がかかります。
既存屋根材を撤去しないカバー工法では、アスベストが含まれている屋根の場合でもこのような手間と費用を抑えることができます。
そして記事内でも紹介したように、カバー工法は一度きりの工事です。
10年ほどで転居や解体の予定がある場合では、次回メンテナンスを考慮する必要がなく費用も抑えられるため、カバー工法がおすすめできます。
屋根のカバー工法がおすすめできない場合
屋根カバー工法がおすすめできないパターンには、下記のようなものがあります。
- 既存屋根が雨漏りを起こしている、または起こしたことがある場合
- 長期的に居住し、リフォームなどの工事予定がある場合
- 屋根材に瓦やスレートを採用したい場合
- 家が地震でよく揺れると感じている場合
屋根カバー工法を行うと屋根内部の腐食に気付きにくいため、すでに既存屋根材が劣化している可能性の高い雨漏りのある屋根の場合は、カバー工法はおすすめできません。
またカバー工法は一度きりの工事で、将来的にリフォームするとなると二重構造になった屋根を撤去する余計な手間と費用がかかります。
そのため長期的に住んで将来的に再度屋根の工事を行う可能性が高い場合には、カバー工法は避けましょう。
屋根カバー工法では使用できる屋根材が限られるため、対応していない屋根材の採用を希望する場合にはおすすめできません。
カバー工法を施工して屋根の重みが増すと、耐震性が低下します。
地震の揺れが従来より大きく感じることもあるため、現時点で家が地震でよく揺れると感じている場合は避けるといいでしょう。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
屋根カバー工法のまとめ
屋根カバー工法は費用を抑えられる工事ですが、おすすめできる場合が限定されています。
- カバー工法では既存屋根材の上から軽い屋根を施工し、二重構造になる
- 撤去費用が必要ないため、工事費用が抑えられる
- 瓦屋根に対しては施工できない
- カバー工法は一度しか施工できない
- 10年程度の短期的な補修に向いている
屋根カバー工法と葺き替え工事のどちらが適しているのか、今回の記事を参考に検討してみてくださいね。