防水層の修理工事を知りたい人
防水層とは?
防水層の施工方法は
屋上に防水層は必要?
防水工事とは防水層を作る工事?
屋上防水工事で作る防水層の種類は?
ベランダ・バルコニー・屋根などの平面は水漏れの原因となりやすく、屋上雨漏りは特に注意が必要です。
防水層とは建築物を守る重要な役割を果たし、シート防水やアスファルト防水など様々な工法があります。屋上から雨漏りの際は原因究明と適切な防水工事が不可欠です。
この記事では、防水の仕組みや工事の種類、防水層の役割や費用の目安を解説します。
また、防水層の劣化によるトラブルや費用を抑えるポイントについても触れています。
漏水への早期対処が可能になる情報ですので、ぜひ最後までお読みください。
目次
防水層とは?コンクリート建築物が果たす役割
防水層とは、コンクリート建物の屋上に設けられており、雨水が入るのを防ぐ仕組みです。
ビルやマンションなどのコンクリート建築物は屋根が平らなため、排水溝だけでは雨漏りのリスクを防ぐことができません。
そのため、コンクリート建築物では屋上全体を防水する防水層が必要です。
屋上のコンクリートに雨水が浸入し、建物の耐久性の低下を防ぐことで、建物の寿命を延ばし、資産価値を守ることができます。
防水層の施工形態
防水層は3種類の形態があります。
以下にその3種類の施工方法・その形態で防水層を作る防水工事の種類・特徴をまとめました。
施工形態 | 膜を作る | 膜を張る | 膜を複合する |
施工方法 | 液状の防水材を施工面に塗布する | 防水シートを施工面に張る | 防水シートと液状の防水材を張り重ねる |
防水工事の種類 | ウレタン防水 FRP防水 | シート防水 (ゴムシート防水/塩ビシート防水) | アスファルト防水 |
特徴 | 維ぎ目がなく、シームレスな防水層が形成される 工法によっては下地の影響を受ける 塗膜の厚さを均一にさせる技術が必要 | 均質・品質が安定している 施工箇所によっては維ぎ目ができる | 工期が長い 塗膜防水とシート防水の欠点を補う |
防水層の劣化によるトラブル
屋上に防水層がない場合、室内に雨が漏れるだけではなく、建物の躯体の劣化や耐震性の低下、美観の低下などの問題が発生します。
屋根からの雨水がコンクリートを伝って室内に漏れると、天井や壁を汚す原因です。
防水層劣化による耐震性の低下
コンクリート建物は、構造部が鉄筋でできています。
鉄筋は、錆から守るために弱アルカリ性の塗膜で覆われています。
紫外線や雨風などにより経年劣化が進むと、屋上のコンクリート表層から空気中の炭酸ガスが浸透しやすくなります。
化学反応によってコンクリートはアルカリ性を失い中性に傾き、鉄筋を錆から守る役割を果たせません。
結果、コンクリートにヒビ割れが生じて、雨水が構造体に染み込み、耐震性が低下します。
防水層の美観が損なわれる
コンクリート内部に水分が溜まると、エフロレッセンスという現象が起こります。
エフロレッセンスは、コンクリート内部に浸透した雨水が水酸化カルシウムと混ざり合い、内部から表面に移動することで発生します。
表面に移動した水溶液が乾燥し、空気中に存在する炭酸ガスと結合して白い粉となり、表面に付着する現象です。
エフロレッセンスは建物の劣化速度を早めるものではないものの、コンクリート内部に水分が浸透しているかどうかを判断する指標のひとつと考えられるでしょう。
また、白っぽくなり美観を損ねます。
防水層は、コンクリートをアスファルトやシートで覆い建物内部への雨水の浸入を防ぐことで、建物の劣化を防ぎ、美観を保つものでもあるのです。
防水層の種類
主な4種類の防水工事のメリット・デメリットを紹介します。
また、工期、耐用年数、修理工事費についても細かく比較してみましょう。
塗膜防水|ウレタン防水
ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を流し込んで防水層を作ります。
そのため、防水シートとは異なり継ぎ目がなく、すっきりとした外観になり、雨水の浸入を防ぐことが可能です。
塗料の単価が比較的安く、耐久性に優れているため、ウレタン防水工法が選ばれることが多いでしょう。
凹凸のある下地や複雑な形状の屋上にも施工できるのがメリットで、木造建築にも対応しています。
デメリットは、職人の技術力が低いと塗りムラができることです。
また、ほかの防水に比べて耐久性に劣るため、約10年ごとに塗り替えなければなりません。
施工にかかる日数も比較的長いことを念頭に、ウレタン防水を選ぶかどうかを決めましょう。
工法名 | ウレタン防水 |
施工にかかる日数 | 5~7日 |
耐用年数 | 約8~10年 |
費用相場 | 4,500~7,500円/㎡ |
工法 | 密着工法 密着メッシュ工法 通気緩衝工法 |
ウレタン防水の工法は3種類あり、以下はそれらの特徴です。
- 密着工法
下地に直接ウレタンを塗布していく方法です。
複雑な形の場所や凹凸のある場所にも施工がしやすいメリットがあります。 - 密着メッシュ工法
メッシュシートを防水層と下地の間にいれた状態で施工します。
勾配がある場所などにも均一に塗布することができます。 - 通気緩衝工法
下地に密着させず通気性のあるシートの上にウレタン樹脂を塗布します。水分を逃すことができるので、水分が多い場所にも施工しやすいのが特徴です。すでに雨漏りが起きてしまった場所にも選択されています。
塗膜防水|FRP防水
FRP防水とは「Fiber Reinforced Plastic」の略称で、ガラスマットと樹脂を積層して防水層を形成する防水工法です。
強度、耐久性、耐水性、耐熱性に優れ、非常に軽量であることが特徴です。
そのため、主に一般住宅のベランダやバルコニーに使われています。
また、塗膜の硬化が早く、1~2日程度で施工が完了することがメリットです。
デメリットは、硬くて弾力性に乏しく、ヒビ割れしやすいことが挙げられます。
さらに、塗料の費用が高く、紫外線に弱いため5年に1度程度上塗りをしなければなりません。
FRP防水 | |
施工にかかる日数 | 2~4日 |
耐用年数 | 約12~20年 |
費用相場 | 5,000~7,500円/㎡ |
工法 | ー |
シート防水
シート防水とは、屋根の下地や屋根の内側(ルーフィング)に防水シートを敷く工法です。
一般的に使用されるシートには、塩化ビニールシート(PVC)とゴムシートの2種類があります。
しかし、最近ではゴムシートよりも耐久性に優れた塩化ビニールシートの人気が高いです。
いずれも紫外線に強く、過酷な環境でも耐候性が高いというメリットがあります。
土台も割れにくいため、屋根の内側を防水すれば雨漏りも防げるでしょう。
また、他の工法に比べてコストや工期を抑えることができます。
デメリットは、床の形状に合わせてシートをカットするため、複雑な形状の屋根には施工できないことです。
工法名 | シート防水 |
施工にかかる日数 | 5~7日 |
耐用年数 | 約10~20年 |
費用相場 | 6,000~8,000円/㎡ |
工法 | 密着工法 機械的固定工法 |
シート防水には2種類の工法があり、以下はそれらの特徴です。
- 密着工法
専用の接着剤を使用して、下地に直接防水シートを貼り付けて施工します。
下地の影響が大きい工法のため、水分を含んでいたり破損があったりする下地への施工は注意が必要です。 - 機械固定方式
専用の機械でビスなどを打ち込むことで防水シートを貼り付けます。
下地との防水シートの間に隙間ができ、脱湿することができるため、下地の影響を受けにくいのが特徴です。
アスファルト防水
アスファルト防水は、合成繊維で作られたシートと液状のアスファルトを張り合わせることで、厚い防水層を形成する防水工法です。
主にビルやマンションの屋上(陸屋根)に用いられ、一般住宅に用いられることは少ないといえます。
メリットは、耐久性に優れ、長持ちし、頑丈であることです。
ただし、耐久性が高い反面、重量があり、工法によっては施工時に強い臭気が発生します。
工法名 | シート防水 |
施工にかかる日数 | 3週間ほど |
耐用年数 | 約15年~25年 |
費用相場 | 5,000~8,000円/㎡ |
工法 | 熱工法 常温工法(冷工法) トーチ工法 |
アスファルト防水には3種類の工法があり、以下はそれらの特徴です。
- 熱工法
溶かしたアスファルトを使い、ルーフィングシートを重ねて防水層を形成します
施工時に独特の臭い、煙が発生することから近隣への配慮が必要となります - トーチ工法
シートに染み込んだアスファルトをトーチバーナーを使って溶かすことで、ルーフィングシートと接着させ施工させます。臭いや熱も少なく、熱工法に変わって選ばれることが多くなっています - 常温工法
名前の通り、改良されたシートを使って熱を使用せずに接着させます
安全な施工が実現しますが、熱工法やバーナー工法と比べると接着性が劣ります
防水層改修工事にかかる費用
防水層の改修工事にかかる費用は防水工事の種類と工法によって異なります。
防水層の改修工事の費用相場を以下にまとめました。
防水工事の種類 | 費用相場 | 耐用年数 |
ウレタン防水通気緩衝工法(絶縁工法) | 約5,500~6,500円/㎡ | 13~15年程度 |
ウレタン防水密着工法 | 約4,500~5,500円/㎡ | 2~5年程度 |
塩ビシート防水機械的固定工法 | 約5,500~7,500円/㎡ | 15年~20年程度 |
塩ビシート防水密着工法 | 約4,000~5,000円/㎡ | 10年~15年程度 |
ゴムシート防水 | 約4,000~5,000円/㎡ | 10年~15年程度 |
改質アスファルトシート防水 | 約4,500~7,000円/㎡ | 15年~20年程度 |
FRP防水 | 約5,000~7,000円/㎡ | 10~15年程度 |
上記の費用に加え、既存防水層の撤去費や人件費などがかかる場合があります。
表の価格はあくまで相場です。施工会社や資材によって料金は異なるので、参考程度にご覧ください。
防水層改修工事の費用を抑えるポイント
防水工事の説明されても、プロにしかわからない専門用語が使われており、内訳を理解できない方が多いのではないでしょうか。
また、防水工事の工法によっても内訳が異なり、すべての専門用語を理解するのは難しいものです。
しかし、いくつかのポイントを理解しておくことで、見積もりが適切かどうかの判断がしやすくなるでしょう。
ここでは、防水工事の費用を抑えることにつながるポイントを紹介します。
防水層のトップコートは定期的に塗り直す
工法によって異なりますが、最上層であるトップコートには、防水層を紫外線から守る役割があります。
5年ごとにトップコートをメンテナンスすることで、防水層や下地の劣化を防ぐことが可能です。
メンテナンスコストが高い防水層の工事の頻度を少なくし、トータルの修理工事費用を抑えることにつながります。
防水層周辺の定期的な排水管の清掃
排水溝を定期的に清掃することで、防水層の劣化を防ぐことができます。
排水溝にゴミや落ち葉が詰まり、防水層に雨水が溜まることが雨漏りの原因のひとつです。
防水層を長持ちさせるためには、定期的にドレンを清掃し、排水機能を維持しましょう。
一般的に、排水溝の清掃は年に2回程度で十分といわれています。
ただし、台風の後は飛散物や落ち葉で排水溝が詰まりやすいため、早めに掃除をすることが大切です。
防水層に雑草が生えてきたら抜く
屋根に生えた雑草を抜くことも、防水層の寿命を延ばすことにつながります。
雑草が生えてきたら、根元から抜きましょう。
雑草の根が防水層の内部に侵入すると、防水層の劣化を早めてしまうためです。
ただし、大きな雑草を抜いた後は、穴から水が漏れていないか確認しましょう。
自社施工の業者は防水層の費用を抑えられる
自社で受注・管理だけ行い、防水工事自体は別の会社に委託している会社も少なくありません。
別の会社に委託していると、当然受注・管理を行う業者では工事費にマージンが上乗せされます。
そのため、自社で工事を行う業者よりも、工事費が高くなる傾向にあります。
一概には言えないものの、防水工事を自社で行っている防水工事会社に依頼すれば、同じ工事内容であっても防水工事の金額を抑えられるでしょう。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
信頼できる業者に依頼して防水層工事の費用を抑えよう
防水工事には主に4つの工法があり、それぞれ費用が異なります。
また、建物の状態や施工箇所によっても費用は変動します。
費用を抑えるためにも信頼できる業者に依頼し、適切な防水工事を行いましょう。