マンションの大規模修繕は何年ごとに必要?適切な周期を解説
2025/07/24
マンションの資産価値を維持し、長期的に安全かつ快適な居住環境を保つためには、計画的な大規模修繕が不可欠です。特に、外壁や屋上などの共用部分は、時間の経過とともに確実に劣化していくため、適切な時期に適切な工事を行うことで将来的な大規模トラブルや資産価値の低下を未然に防ぐことができます。
とはいえ、「そもそも何年ごとに大規模修繕を行えばいいのか?」「築年数に応じた修繕項目にはどのようなものがあるのか?」といった疑問を持つ管理組合や居住者の方は少なくありません。
本記事では、マンションの大規模修繕における適切な周期と、築年数ごとの修繕内容のポイントをわかりやすく整理して解説していきます。
目次
マンションの大規模修繕は何年ごとに行うのが適切?
マンションの大規模修繕は、建物の安全性や快適な住環境を保つうえで欠かせない重要なメンテナンスです。
ここでは、マンションの大規模修繕を何年ごとに行うべきか、その目安やポイントをわかりやすく解説します。
目安は12年周期が基本
国土交通省が発行する「長期修繕計画作成ガイドライン」においては、マンションの大規模修繕はおおむね12年ごとの周期で実施することが推奨されています。
これは屋上の防水層・外壁の塗装・鉄部の塗装や補修といった重要な部位の耐用年数が概ね10〜15年程度であることに基づいており、修繕周期の設定に合理性があります。
多くの分譲マンションでは、このガイドラインを基に長期修繕計画が策定されており、12年を基準とした修繕スケジュールを採用することで、将来の不具合や高額な修繕費用を抑える効果も期待されています。
なぜ12年なのか?
屋上やバルコニーの防水層・外壁塗装・コーキング材・鉄部の塗装などは、年数の経過とともに風雨や紫外線、気温変化などによる劣化が進みます。これらの部材はおおよそ10~15年で性能が大きく低下すると言われており、そのため12年という周期が「早すぎず遅すぎない」バランスの取れたタイミングとされています。
また、エレベーターの制御装置や給排水設備などの共用インフラも経年によって劣化が進行し、20年を超えると不具合や事故のリスクが高まります。これらの状況を踏まえ、12年ごとの定期修繕は予防保全として非常に有効です。
長期修繕計画との連動が重要な理由
大規模修繕工事は、1回あたり数千万円から高額な場合には億単位の費用がかかる非常に大規模なプロジェクトです。したがって、資金面での備えが不十分な場合、計画が頓挫するリスクもあります。そのような事態を避けるためにも、長期修繕計画は重要な指針となります。
国土交通省のガイドラインに準拠した長期修繕計画では、12年周期の大規模修繕を軸に、鉄部塗装・防水補修・設備更新といった中小規模の修繕項目も適切にスケジューリングされます。これにより、修繕積立金の積立額に明確な根拠が与えられるのです。
管理組合は、この計画を定期的に見直し、実情に即した内容に更新することで資金不足のリスクを回避し、マンション全体の健全な維持管理を実現することが求められます。
築年数ごとに見るマンション大規模修繕のポイントと注意点
マンションの長期的な安全性と快適な住環境を維持するためには、築年数に応じた適切な大規模修繕が欠かせません。
ここでは、築年数ごとに異なるマンションの大規模修繕ポイントと注意点をわかりやすく解説します。
築10~15年:初回大規模修繕と主な内容
築10年を超えた頃から、建物の外観や共用部に少しずつ劣化の兆候が見られるようになります。具体的には、外壁の微細なひび割れ(クラック)、タイルの浮き、鉄部のサビの進行、コーキングの硬化、屋上の防水層の劣化などが代表的です。この段階での修繕は、目立った破損が起きる前に実施する「予防保全型修繕」となります。
主な修繕内容:
- 外壁塗装およびひび割れ補修(シーリング含む)
- タイルの補修および打診調査による浮き部分の補修
- 屋上・バルコニーの防水層の再施工
- 鉄部(手すり、階段、扉等)の塗装と防錆処理
- コーキング材の打ち替えと建具のチェック
初回の大規模修繕は、建物の美観を保つだけでなく、雨漏りやコンクリート中性化による内部腐食を防止する意味でも極めて重要です。
また、修繕実施後のマンションの資産価値を高める効果もあり、将来的な売却を検討している居住者にとってもメリットがあります。
築20~30年:2回目・3回目の修繕と追加すべき項目
2回目・3回目の修繕では、1回目の修繕内容の再実施に加え、設備面の更新が重要課題となってきます。特に、築20年を超えると給水・排水管の老朽化、エレベーターの制御装置の故障、照明の不具合など、設備関連のトラブルが増加しやすくなります。
追加すべき項目:
項目カテゴリ | 内容 | 補足説明 |
---|---|---|
給排水設備の更新 | 給水管・排水管の更生工事または交換工事(共用・専有部) | 配管内部の劣化や漏水リスクに対応するため、全面的な見直しが必要です。 |
昇降設備の更新 | エレベーターのリニューアル(機械室の更新、制御装置の交換) | 故障防止と省エネ性能向上、安全性の強化が目的となります。 |
防水性能の維持 | 屋上防水およびバルコニー防水の全面更新 | 既存防水層の劣化が進むため、再防水工事が重要です。 |
バリアフリー化対応 | スロープ設置、手すりの追加など | 高齢化に備えた住環境整備が求められます。 |
省エネ・快適性向上 | 断熱改修、照明のLED化など | 光熱費削減と環境配慮、住民の快適性向上を図る工事です。 |
この段階では、建物自体の長寿命化だけでなく、住民の生活環境や安全性への配慮もより一層求められます。高齢化が進む中で、将来的な暮らしやすさを見据えた設備・構造のアップデートも重要な視点です。
築30年以上:抜本的な改修の検討も視野に
築30年を超えたマンションでは、もはや小手先の修繕だけでは対応が難しくなるケースもあります。躯体そのものの劣化や、設計当初には想定されていなかった住民構成の変化、法令改正への対応など、複合的な課題が浮き彫りになります。
検討すべき内容:
- 躯体(柱・梁・スラブ)の劣化診断と補強計画の立案
- 耐震診断と必要に応じた耐震補強工事
- 給排水・電気・通信インフラの全面刷新
- 空室率の増加や建物の老朽化に伴う建替えや敷地売却の検討
この時期には、費用対効果や管理組合の意思形成だけでなく、将来的な維持管理方針そのものを根本から見直す必要も出てきます。
抜本的な対策として「マンション再生(建替え、合築、売却など)」という選択肢も現実味を帯びてくる段階です。
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。
工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
建物の劣化とオーナー様のご相談内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
相談のきっかけ
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
お問い合わせや工事のお見積もり無料!まずはメール・お電話からご相談ください!
年数だけで判断しない!劣化症状から考えるマンション大規模修繕の必要性
マンションの大規模修繕は「築何年か」という年数だけで決めるのではなく、実際の劣化状況をしっかりと確認して判断することが大切です。
建物の立地や方角・日照条件・施工時の品質などによって劣化スピードは大きく異なるため、同じ築年数でも修繕の必要性にはばらつきが出るのが現実です。
塗装の剥がれ・ひび割れ・雨漏りなどの具体例
外壁の塗装が色あせたり、チョーキング(白い粉が手につく現象)が出てきたり、ひび割れが生じたりするのは、明確な劣化のサインです。屋上やバルコニーの床に水がたまっていたり、防水シートが浮いていたりする場合も要注意です。
さらに、共用廊下や階段部分で鉄部に赤サビが発生している、雨漏りの跡がある、といった現象が見られれば、早急な対応が求められます。
目視で判断できる症状と専門調査の違い
居住者や管理人が目視で気づける劣化症状も多いですが、実際には内部で進行している深刻な問題が隠れていることもあります。たとえば、タイルの浮きやコンクリートの中性化は打診調査や中性化試験といった専門的な診断が必要です。
定期的に専門業者に建物診断を依頼し、目に見えない劣化も含めて把握することが、適切な修繕時期の判断につながります。
早期発見でコストを抑えるコツ
劣化が軽微なうちに修繕を行えば、必要な工事範囲も狭く、費用も比較的抑えることができます。たとえば、防水層の劣化が進んでからの修繕では、防水だけでなく内部の躯体補修や天井材の張り替えなど多岐にわたる工事が必要になります。
逆に、定期的な点検によって問題を早期に把握できれば、最低限の補修で済ませることができ、長期的には大幅なコスト削減になります。
マンション大規模修繕の流れと工事期間の目安
マンションの大規模修繕は、長期にわたる準備と複数の工程を経て実施されます。全体の流れを理解しておくことで、住民への周知やトラブル回避にもつながり、スムーズな工事進行が可能となります。
建物調査・劣化診断(1~2か月)
最初のステップは、建物の現状把握です。建築士や診断専門業者が建物全体を調査し、外壁のひび割れや鉄部のサビ、屋上防水層の状態などをチェックします。
タイルの浮きやコンクリートの中性化など、目に見えない劣化も打診調査や各種試験によって可視化されます。この調査結果が、今後の設計や工事範囲を決める重要な資料となります。
設計・見積もり・業者選定(3~6か月)
劣化診断の結果をもとに、必要な修繕内容を設計事務所やコンサルタントが図面化します。その後、複数の施工業者から見積もりを取り、仕様・価格・実績などを比較しながら選定を行います。
選定には管理組合の合意形成も必要なため、理事会や総会の開催、住民説明会などに数か月を要する場合もあります。
工事着工から完了まで(約3~6か月)
業者が決定すると、着工に向けた準備が進められ、実際の工事に入ります。足場の設置や仮設設備の設置・安全対策の導入を経て、本格的な補修・更新作業が始まります。
外壁補修・防水工事・鉄部塗装など、作業は段階的に進められます。工事期間中は騒音・振動・共用部制限などの影響があるため、工事前のスケジュール共有と定期的な進捗報告が不可欠です。
マンション大規模修繕を進めるために押さえておきたい準備ポイント
大規模修繕を円滑に実施するには、単に業者に依頼すればよいというものではなく、管理組合が主体となって計画的に準備を進める必要があります。
合意形成や資金の準備、工事方式の選定など、多くの段取りを経て初めて適正な修繕が実現します。
長期修繕計画の見直し
長期修繕計画は、竣工時または管理会社主導で作成されているケースがほとんどですが、築年数の経過や実際の劣化状況によって修繕スケジュールや内容にズレが生じることがあります。
そのため、少なくとも5年に1度は専門業者に依頼して計画の見直しを行い、現実に即した内容へとアップデートすることが重要です。
管理組合での合意形成と資金準備
大規模修繕工事は多額の費用がかかるため、理事会や総会などでの合意形成が不可欠です。また、修繕積立金が不足している場合は、管理組合での議論を経て一時金の徴収や借入を検討する必要があります。資金準備は最低でも2〜3年前から始めておくと、無理のない形で修繕を実施できます。
設計監理方式・責任施工方式の選び方
大規模修繕の発注方式には、「設計監理方式」と「責任施工方式」の2つがあります。前者は、設計事務所が工事内容を設計し、その監理を行いながら施工業者を別途選定する方式で、透明性や品質管理に優れています。
一方、後者は施工業者が一括して設計と施工を行うため、コスト面ではメリットがありますが、チェック機能が弱くなりがちです。それぞれの特徴を踏まえて、自分たちのマンションに合った方式を選ぶことが大切です。
マンション大規模修繕でよくある質問(FAQ)
マンション大規模修繕でよくある質問について紹介します。参考にしてみてください。
Q1.築年数より早く大規模修繕が必要になることはありますか?
A.はい、あります。築年数が浅くても、立地環境や施工不良・管理の状態などによっては早期に劣化が進むことがあります。例えば、海沿いのマンションでは塩害の影響を受けて鉄部の腐食が進行しやすく、通常より早めの修繕が必要になることもあります。
築年数だけに頼らず、定期的な建物診断で劣化状況を把握することが重要です。
Q2.12年周期以外で実施するデメリットは?
A.12年を大幅に過ぎてから修繕を行う場合、劣化が深刻化して補修範囲が拡大し、結果的に工事費用が膨らむ可能性があります。また、設備や躯体の損傷が進行してしまうと、計画外の緊急対応が必要となり、住民生活に影響を与えるリスクもあります。
反対に、早すぎる修繕は部材の耐用年数を十分に使い切れず、コストパフォーマンスが低下することもあるため、最適なタイミングを見極めることが肝心です。
Q3.大規模修繕は何年かかり続けるのですか?
A.一般的には、1回の大規模修繕工事にかかる期間は約3〜6カ月程度ですが、マンションの規模や修繕内容によって異なります。工事の期間中は足場が設置され、騒音や振動・共有スペースの使用制限が発生することもあります。
そのため、事前に住民への説明会を開き、工事のスケジュールや影響について共有することが、スムーズな進行とトラブル防止に繋がります。
マンションの大規模修繕は年数だけでなく劣化状況で判断を|まとめ
マンションの大規模修繕は、単に築年数を基準に行うものではありません。建物の使用状況や劣化の進行度を踏まえ、計画的に進めることが重要です。初回の大規模修繕は築10〜15年を目安とし、築30年を超える頃には、給排水設備の更新や構造補強といった抜本的な対応も視野に入れる必要があります。
そのためには、定期的な建物診断の実施と専門家の意見を踏まえた長期修繕計画の見直しが不可欠です。あわせて、管理組合内での合意形成や資金の準備も、円滑な修繕を実現するうえで欠かせません。これらを怠ると、緊急対応や予期せぬ追加費用が発生するリスクが高まります。したがって、事前の準備が極めて重要です。
住民一人ひとりが修繕の重要性を理解し、信頼できる専門業者と協力することで、マンションの資産価値と安心な住環境を長期的に維持することが可能になります。継続的な意識と行動こそが、建物の寿命を延ばし、快適な暮らしを守る鍵となります。