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防水工事をするのに必要な資格は?防水施工技能士とは

「防水工事を行う際に資格は必要?」

こんな疑問をお持ちのかたも多いようです。
そこで今回は防水工事に関する資格について解説していきます。

また防水工事を行う際には、施工箇所に合った工法を採用することが大切です。
記事の前半では防水工事の種類についても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。

防水工事とは

防水工事とは、建物に防水性能をプラスすることで建物の寿命を延ばす工事のこと。
雨水から建物を守り、漏水を防ぎます。
屋上やベランダ、バルコニーに施工することが多いでしょう。

また防水工事は、建物の外観や内観を綺麗な状態に保つことも目的として行われます。
適切に防水工事を行うことで、変色や染みからも守ってくれますよ。

ちなみに防水工事を行う技術者のことを「防水工」と呼ぶことがあります。

防水工事の種類

防水工事には、次のようにさまざまな種類があります。

  • ウレタン防水
  • シート防水
  • FRP防水
  • アスファルト防水

ウレタン防水

主成分として「ポリイソシアネート」が入った主剤に硬化剤を混ぜわせた、液体状の防水材を塗る工法です。

液体状なので形状が複雑な箇所にも施工できます。
また過去にウレタン防水以外で施工された防水層の上からも使えるので、メンテナンス性も良いでしょう。

工事後は廃材も出ないので、環境にも優しいです。

ウレタン防水の耐用年数は12年ほどですが、5~6年に一度トップコートを塗り替える必要があります。

シート防水

塩化ビニール製やゴム製のシートを用いて防水する工法のこと。

シートは厚さが均一なので、仕上がりにムラが出ません。
費用もリーズナブルで耐用年数も十分なので、広く行われています。
工期も2~4日程度と短めです。

ただしシート防水を施すには、ある程度の広さがないといけません。
また複雑な形状の箇所への施工は難しく、障害物のない屋上で使われることが多いです。

シート防水には「塩ビシート防水」と「ゴムシート防水」の2種類があります。

塩ビシート防水

塩ビシート防水は、塩化ビニール製のシートを下地に貼付ける工法です。
既存の下地の上から施工できるため、改修工事でも良く利用されます。

塩ビシート防水の耐用年数は13~15年ほどです。

ゴムシート防水

ゴムシート防水は、合成ゴム製のシートを下地に貼る工法です。

塩ビシート防水と同じように施工しますが、ゴムシートは塩ビシートよりも厚さが薄いので、耐用年数は10~12年と短めです。
紫外線による劣化も起きやすいので、ゴムシート防水は近年ではあまり使われません。

FRP防水

繊維強化プラスチック製のガラスマットに、液体状のポリエステル樹脂を塗ることで硬化させる工法です。

FRP防水は耐久性があり熱にも強いです。
FRP防水の上を車両が通っても耐えられるほど強度があります。
ただし紫外線に弱いのが弱点です。

紫外線カット効果のあるトップコートを、定期的に塗り替えることが必要です。

また伸縮性がないため、木造建築や広い場所に使うと下地の影響を受けやすく、ひび割れが発生する恐れがあるので要注意。
しかも材量が高価なため、使用する範囲は限られてくるでしょう。

FRP防水の耐用年数は10年前後です。

アスファルト防水

アスファルト防水は、アスファルトを染み込ませた合成繊維の布(ルーフィング)を貼る工法です。

防水性能が高く、防水層も厚いです。
15~25年の長い耐用年数が魅力でしょう。
防水層の上を人や車が通ってもビクともしないので、屋上駐車場でも使われます。

ちなみにアスファルト防水には次の3つの工法があります。

熱工法

釜で溶かしたアスファルトを使って、ルーフィングを貼付けていく方法です。
熱工法は危険が伴うので、施工の際は十分に注意しなくてはなりません。

また施工時には煙や臭いが発生するので、周囲への配慮も必要です。

トーチ工法

ルーフィングをバーナーであぶって溶着させる方法です。

熱工法のように煙や臭いが発生しないので、トーチ工法が採用されるケースも多いです。

常温工法

常温工法はルーフィングを粘着剤で貼付けていく方法です。

熱を使わないので安全な工法です。

防水工事に資格は必要?

防水工事を行う場合、基本的に資格や学歴は必要ありません。
一般的には防水工事を行う会社に就職し、工事現場で経験を積んでいきます。

また専門学校や職業訓練校で知識やスキルを身に付けてから、防水工事の会社に就職する道もあります。

防水施工技能士とは

防水工としてスキルアップを目指すなら、国家資格である「防水施工技能士」の資格取得がおすすめです。
防水施工技能士の資格を持っていれば、防水に関しての知識や高いスキルがあることの証明になります。

防水工事は社会のインフラを作る大切な仕事のため、将来性もあるでしょう。

防水施工技能士には上級の1級と、中級の2級があります。
資格保持者の収入は一般的な会社員と同水準ですが、勤め先によっては資格手当が出る場合もあります。

ちなみに防水施工技能士資格の受験料は学科が3,100円、実技が18,200円です。(受験する地域によって異なる場合あり)

受験資格

防水施工技能士の受験資格は次のとおりです。

 受験資格
1級7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験
2級実務経験2年以上(ただし学歴によっては実務経験不要)

試験内容

防水施工技能士の試験は「学科試験」と「実技試験」の両方に合格する必要があります。
学科試験では「建設一般」「製図」「関係法規」「安全衛生」の4ジャンル以外に、「選択科目」が出題されます。

選択科目では以下のものから選んで受験します。

  • アスファルト防水施工法
  • ウレタンゴム系塗膜防水施工法
  • アクリルゴム系塗膜防水施工法
  • 合成ゴム系シート防水施工法
  • 塩化ビニル系シート防水施工法
  • セメント系防水施工法
  • シーリング防水施工法
  • 改質アスファルトシートトーチ工法防水施工法
  • FRP防水施工法

実技では学科と同じように、以下のものから選択して受験します。

  • アスファルト防水工事作業
  • ウレタンゴム系塗膜防水工事作業
  • アクリルゴム系塗膜防水工事作業
  • 合成ゴム系シート防水工事作業
  • 塩化ビニル系シート防水工事作業
  • セメント系防水工事作業
  • シーリング防水工事作業
  • 改質アスファルトシートトーチ工法防水工事作業
  • FRP防水工事作業

試験日程は、6月~行われる前期日程と、12月~行われる後期日程がありますよ。

防水施工技能士が向いている人は?

防水施工技能士の1級は7年以上の実務経験が必要なので、根気強さや勤勉さがある人が向いているでしょう。

実際の工事現場では炎天下や真冬の屋外での作業もあります。
防水施工技能士として仕事を行うには体力も必要ですが、一度知識やスキルを身に付けてしまえば、一生物の財産になるでしょう。

防水施工技能士の資格は、転職の際にも役立ちますよ。

大規模な防水工事には建設業許可が必要

請負代金が500万円以上の防水工事を行うには「建設業許可」が必要です。
建設業許可には、大きく分けて「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があります。

4,000万円以上の下請契約を結ぶには、特定建設業許可が必要です。
それ以外の場合は、一般建設業許可で工事ができます。

ちなみに建設業許可を得るには、「経営業務の管理責任者」または「専任技術者」が在籍している必要があります。

  • 経営業務の管理責任者…原則として会社の役員のみ
  • 専任技術者…防水施工技能士などの有資格者、実務経験が10年以上の人、建築・土木系学科の卒業後に実務経験がある人など

防水工事の流れ

防水工事は以下のような流れで行われます。

今回はウレタン防水の例を見ていきます。

  1. 洗浄・下地補修
  2. プライマー塗布
  3. 通気マットの貼付け・脱気筒の取付け
  4. ウレタン樹脂の塗布
  5. トップコートの塗布

1、洗浄・下地補修

高圧洗浄機で施工箇所の汚れを取り除きます。

ひび割れなどがある場合は補修もしておきます。

2、プライマー塗布

ウレタン樹脂を接着しやすくするために、プライマー(下塗り材)を塗っておきます。

プライマーには、ウレタン樹脂が下地に吸収されるのを防ぐ働きもあります。

3、通気マットの貼付け・脱気筒の取付け

通気緩衝工法の場合、まずは通気マットを専用の接着剤で貼付けていきます。

通気マットを貼付けたら、湿気を外に逃がす役割を持つ脱気筒を設置します。

4、ウレタン樹脂の塗布

ローラーやコテを使い、ウレタン樹脂を塗布します。

ウレタン樹脂が乾燥したら再度塗り重ねます。(2~3回繰り返す)

5、トップコートの塗布

ウレタン樹脂の乾燥後は、上からトップコートを塗ります。
トップコートは、防水層を紫外線や風雨から守ってくれますよ。

以上で防水工事の完了です。

まとめ

防水工事を行うには特別な資格は必要ありませんが、防水施工技能士の資格があると有利に仕事ができるでしょう。
工事会社によっては、資格保持者が若い職人の指導にあたるケースもあります。

「防水工事会社でキャリアアップしたい!」というかたは、ぜひ防水施工技能士を取得してみてくださいね。

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