屋上の断熱について知りたい人
屋上に断熱効果は後付けできる?
屋上に適した断熱材は?
屋上に行う外断熱工法や内断熱工法とは?
断熱工法はアスファルト露出防水でないと施工できない?
屋上は太陽光や熱の影響を直接受けるため、防水層の劣化や室温上昇などの問題が発生しやすい場所でもあり、屋上防水と同時に断熱・遮熱効果を発揮するサーモコントロール断熱工法が注目を集めています。
この工法ではアスファルト防水やシート防水・ウレタン防水などの従来の防水工法に、断熱材を組み合わせることで、室温を快適に保ちつつ、防水層の劣化も抑制します。特に屋上外断熱工法や露出断熱防水工法は、建物全体の省エネ性能を向上させる効果があります。
AS防水などの新しい工法も登場し、屋上防水の選択肢は広がっています。露出型の断熱防水は、美観と機能性を両立させた人気の工法です。
この記事では、屋上防水の基本的な役割から防水と断熱・遮熱を同時に行うメリット、さらにサーモコントロール断熱の詳細まで、幅広く解説していきます。屋上防水工事をお考えの方や建物の省エネ対策に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
屋上の外は防水で断熱を後付けできる?
ビルの屋上に断熱性能を後付けできるのでしょうか。
結論からいうと、断熱の後付けは可能で、2つの方法があります。
1つ目は、既存の防水層の上に断熱材を敷き詰めて、その上から新たに防水層を形成する方法が一般的です。
この方法は、既存の防水層を傷めることなく、断熱性能をプラスできるため、多くの建物に採用されています。
また、断熱性能のない防水層と比べると、躯体コンクリートの伸縮を抑制できるため、ひび割れなどが発生するリスクを軽減でき、建物の長寿命化にもつながります。
もう1つは、既存の防水層の上に断熱遮熱塗料を塗る方法です。
この方法は、低コストで済むものの、あまり大きな効果は得られません。
ビルの屋上に断熱性能をプラスするには、既存の防水層の上に断熱材を敷き詰めて、その上から新たに防水層を形成する方法がよいでしょう。
屋外における屋上防水と断熱工法の関係
屋上防水と断熱工法は、どちらも建物の維持管理において重要な役割を果たしています。
両者を組み合わせることで、防水性能と断熱性能を向上させ、建物の寿命を延ばすことが可能です。
屋上防水は、雨や雪、風、太陽光などの影響から建物を守る役割を担っています。
一方、断熱工法とは、防水層と躯体の間に断熱層を設ける工法のことです。
断熱工法は、内断熱工法と外断熱工法の2種類があり、外断熱工法は、内断熱工法に比べて、躯体の熱劣化を防ぎ、屋上防水の耐久性を高め、省エネルギーに効果的な工法です。
屋上の外に行う防水工事で得られる断熱・遮熱効果
屋上防水工事と同時に行う断熱・遮熱で得られる効果は、以下の通りです。
- 断熱性能の向上
- 防水層の保護
- 省エネ効果
屋上の外に行う防水工事で得られる断熱・遮熱効果1.断熱性能の向上
防水工事と同時に断熱材を施工することで、断熱性能をより向上させることができます。
断熱材は、熱を通しにくい性質を持つため、断熱材を施工することで、建物の内部に熱が逃げるのを抑えることが可能です。
屋上の外に行う防水工事で得られる断熱・遮熱効果2.防水層の保護
防水層は、太陽光や熱の影響を受けやすいため、劣化が進みやすくなります。
断熱材を防水層の上に施工することで、断熱材が熱による膨張や収縮を抑え、防水層の劣化を防ぐ効果があります。
屋上の外に行う防水工事で得られる断熱・遮熱効果3.省エネ効果
断熱性能を向上させることで、建物の内部の温度を一定に保つことが可能です。
そのため、暖房や冷房の効率を高めることができ、省エネ効果が期待できます。
具体的には、以下のような効果が期待できます。
- 夏場の室温の上昇を抑え、冷房費の削減につながる
- 冬場の室温の低下を抑え、暖房費の削減につながる
- 室内の温度差を小さくすることで、快適性を向上させる
防水工事を行う際には、断熱材との組み合わせも検討することで、建物の寿命を延ばし、省エネ効果を向上させることが可能です。
屋上外側の防水による断熱と遮断熱の違い
屋上には防水工事と同時に断熱工法も施すことができることが分かりましたね。断熱についてもう少し詳しく知るためにも、
断熱と遮断熱の違いを解説します。
屋上外側の防水における断熱とは?
「断熱」とは、熱を伝えにくい素材で壁や屋上を覆って内部に伝わる熱の量を減らすことです。外気の日射を断熱材で止め、内部の気温の上昇を減らすことを「断熱」と言います。
断熱材が設置された箇所では、建物内部と外部の熱の行き来が制限され、室内の気温は外気温に影響されにくいことがいえます。
また、屋内の冷暖房の気温が外部に流出することを避けます。
屋上外側の防水における遮断熱とは?
「遮断熱」とは、太陽光を遮る素材で外壁や屋上を覆い、ふく遮熱(太陽光がものに当たって温度の上昇を周囲に伝える熱)の発生を抑える技術を指します。日射を建物へ吸収せずに、反射させることをいい、屋上においては、防水層の表面に高反射塗料を塗付することで、ふく遮熱の伝導を防ぎます。
防水の必要な屋上の内・外側に行う断熱工法の種類
屋上に行う断熱工法は主に「内断熱」と「外断熱」の2種類あります。
それぞれの特徴をみていきましょう。
内断熱| 屋上防水の外側からの熱を防ぐ
「内断熱」とは、「充填断熱」ともいわれ、木造建築物において柱間や天井裏、床下に断熱材を充填する工法です。
施工が外断熱に比べ簡単で、低コストなことが特徴です。
内断熱は、外壁に影響のない施工法で、家の外観を変えることなく施工ができます。
ただ、内断熱工法のデメリットは、気密性が低く、断熱材と外壁の間に出来たすき間に結露が発生することです。
外壁内部に結露が発生すると、住宅の劣化の速度を早めてしまうでしょう。
木造住宅とくらべると、鉄筋コンクリート造の方が建物の外側と内側の温度差があるため、結露が発生しやすいことが考えられます。
外断熱| 屋上防水でも利用される方法
「外断熱」とは、建物全体を断熱材で覆う工法です。
建物全体を断熱材で包み込むイメージで、断熱材を屋根材、外装材とあわせて施工します。
日本では床下や壁の内側に断熱材を充填する「内断熱」工法が主流でしたが、より断熱性が高い「外断熱」が取り入れられることも多くなりました。
屋上や屋根は特に暑さ、寒さの影響を受けやすい箇所での「外断熱」は、より断熱効果が得られやすいでしょう。
外断熱工法のデメリットは、外壁が厚くなる点です。外断熱工法を建物に考える際は、敷地や周りの建物との間隔、間取りに余裕がなければいけません。外断熱工法は、狭小地や、間取りが複雑な建物には不向きな施工法だといえます。
また、もう一つデメリットをあげると、施工後の建物は高気密・高断熱になる一方で、何もしないでいると換気が難しい状況になってしまいます。
外断熱工法を行うのと同時に、換気方法も考えましょう。
外の屋上防水工事に使う断熱材の種類
屋上防水に使用する断熱材は大きく分けると
- ポリスチレン
- 硬質ウレタン
- ポリエチレン
- フェノール
の4つになります。
それぞれプラスチックなどを発泡させて製造され、特徴も様々です。
それぞれの特徴を表にまとめました。
種類 | 特徴 | 断熱性能 | 寸法安定性 | 圧縮性能 | 吸水性 | 熱伝導率 |
ポリスチレン | ・発泡したプラスチック製の断熱材・耐水性があり、湿気に強い・軽い | 〇 | 〇 | ◎ | ◎ | 0.028 |
硬質ウレタン | ・ウレタン樹脂に発泡剤を混ぜてできたプラスチック系断熱材・硬質なものから柔軟なものまである・薄い層でも効果がある | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 0.023 |
ポリエチレン | ・ポリエチレン樹脂を基材とした独立気泡体 | △ | 〇 | △ | △ | 0.042 |
フェノール | ・フェノール樹脂を発泡させ、微細な気泡に高断熱ガスを密閉・高い耐火性、低い熱伝導率 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 0.020 |
ポリスチレンフォームは、圧縮強度や耐圧縮クリープ性に特に優れていて、「スキン層あり」「スキン層なし」があります。
「スキン層あり」は保護防水、「スキン層なし」は露出防水に使用されます。
各断熱材は、それぞれ施工箇所に向き、不向きがあります。次の章でみていきましょう。
外にある屋上防水層と断熱材の相性|一覧表
屋上の防水層と断熱材の相性は、建物の耐久性やエネルギー効率に直接影響を与える重要なポイントです。
相性のいい組み合わせが選べると、建物の寿命や、エアコンの使用時など、室内の温度の快適性を高めることが可能です。
防水層と断熱材の相性は以下の4つのポイントでみることができます。
- 湿気管理
- 圧縮強度
- 密着性
- 耐久性
防水層と断熱材は湿度の影響を受けやすく、湿気が防水層と断熱材の間に入り込むと、耐久性が落ちる可能性があります。
上記の4つのポイントが合った組み合わせは、下記の表で「◎最適」となります。
断熱材と防水層の相性を下記の表にまとめました。
種類 | 保護防水 | 露出防水 | ||
アスファルト防水 | アスファルト防水 | シート防水密着工法 | シート防水機械固定工法 | |
ポリスチレン | ◎ 最適 | △ 一部条件下で使用可 | × | ◎ 最適 |
硬質ウレタン | × | ◎ 最適 | △ 一部条件下で使用可 | ◯ 使用可 |
ポリエチレン | × | × | ◯ 使用可 | × |
フェノール | × | × | × | △ 一部条件下で使用可 |
保護防水
保護防水とは、防水層の上にコンクリートやモルタルを打設している形状です。多くの人が出入りする屋上に施工されています。
露出防水
露出防水とは、防水層が露出している状態のことを指します。シート防水は躯体の上に防水シートを密着工法、機械固定工法などで固定する工法で、この場合、断熱材は躯体と防水シートの間に設置します。
ポリスエチレンは耐溶剤性が高く、シート防水密着工法に最適です。
フェノールフォームは、主に内断熱工法で使用されている断熱材で、屋上の防水層ではあまり使用されていませんが、断熱性には優れています。
ポリスチレンフォームは現場での加工性に優れていて、施工しやすい点が、他の3つと比べてより多くの防水層との相性がいい理由のひとつです。
屋上外側防水に使われるサーモコントロール断熱とは
サーモコントロール断熱は、屋上の露出防水に断熱機能・遮熱機能を持たせた、建物の省エネに効果的な改修工法です。
露出防水工法とは、防水層が露出して見える状態で施工する防水工法です。
サーモコントロール断熱が利用できる露出防水は、アスファルト防水常温粘着工法、トーチ工法、塩ビシート防水、ウレタン防水が適しています。
断熱材のある部位で熱の行き来が制限されるため、外気温の影響が少なくなり、また室内冷暖房の熱が流出するのを防ぐ効果があります。
さらに、遮熱塗料を施工することで、太陽光の輻射熱を反射し、屋上の温度上昇を抑えることが可能です。
サーモコントロール断熱は、以下のような場合には特に効果的です。
- 屋上の断熱性能や遮熱性能を向上させたい場合
- 防水層の劣化を防ぎたい場合
- 耐用年数を延ばしたい場合
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
まとめ
この記事では、屋上防水と断熱材について解説してきました。屋上防水に断熱材は後付けできることや、それぞれが相乗効果をもたらし、建物の耐久性も高まることがわかりました。
これまでの要点をまとめました。
- 断熱は外部の熱を建物内部に伝えにくくすること
- 遮熱は、太陽光の熱を建物に吸収させずに反射させること
- 断熱には内断熱と外断熱の2種類ある
- 屋上防水に使われる断熱材の種類は4種類あり、湿気に強いポリスチレンフォームが多くの防水層に適する
- 露出防水にはサーもコントロール断熱工法も適している
屋上の断熱工法を考える場合、防水層との相性で断熱材を決めるなど、専門的な知識が必要です。適切な場所に適切な工法、材料を施すことは建物の管理・維持を考えるうえでとても重要です。ぜひ、防水工事専門業者への相談をおすすめします。
プロの判断や考えを聞いて、よく納得したうえで屋上への防水・断熱工法を施して、安心なマンション管理を行いましょう。