綿密な計画を立てていても、マンションの大規模修繕工事では予期せぬトラブルが発生することがあります。
住民が生活をするなかで実施される大規模修繕では、体調不良によるトラブルが起こるケースが少なくありません。
そこで今回は、マンション大規模修繕工事で起こる住民の体調不良と原因、対策について解説します。
実際にトラブルに見舞われた時に慌てないためにも、事前にトラブルの原因を知り、対策をしておきましょう
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
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マンション大規模修繕工事で起こる主なトラブル
マンション大規模修繕では、主に費用、騒音、臭気のトラブルが起こります。
なかには、体調不良を起こすものもあるため注意が必要です。
最初に、工事で起こる主なトラブル内容を紹介します。
費用トラブル
費用に関するトラブルを未然に防ぐためには、見積書にどの程度の工事が含まれているのかを事前に確認し、追加工事が必要になった都度、見積もりを取ることが重要です。
特に追加費用のトラブルが起こりやすいため注意しましょう。
大規模修繕工事では、新たな修繕箇所を見つけたり、追加工事をするために仮設足場を設置することがあります。
追加工事の内容や費用について、管理組合と施工業者の意見が合致していれば問題はないものの、合意なく工事を行い、工事完了時に請求される問題も起こっています。
騒音トラブル
マンション大規模修繕の仮設足場工事や外壁工事では、騒音が発生することがあります。
特に外壁工事では、ひび割れを起こしたタイルを電動カッターで剥がしたり、タイル接着剤を流し込むための穴をあけたりする際に、ドリルの音が聞こえることが一般的です。
仮設工事では、組み立てや解体時に大きな金属音が発生します。
また、足場を組み立てる際には、足場の変形や倒壊を防ぐために、壁つなぎを設置するほか、ドリルで穴を開けて設置するため、大きな音がします。
騒音に対する苦情を避けるためには、工事業者と打ち合わせを行い、騒音が発生する時間帯を決め、時間内に工事を行うことを決めておくとよいでしょう。
さらに、工事日だけではなく、大きな音が発生する時間帯を住民に知らせることも重要です。
臭気トラブル
大規模修繕工事では、それぞれの住戸の玄関周辺の塗装工事も行われます。
塗装工事は、エントランスの錆や腐食を補修し、美観を保つために重要な工事です。
しかし、塗料からの揮発性シンナーが強い臭いを発生させ、体調不良を引き起こすことがあります。
塗料の臭いは不快で、ストレスで気分が悪くなる方も多いです。
臭いによる体調不良の問題を防ぐためには、臭いが出にくい塗料を使用できるよう、施工業者に相談してみましょう。
また、事前に入居者にアンケートをとり、子どもにアレルギーがないか、高齢者は身体的な理由で臭いを我慢できるかなどを確認するのも効果的です。
臭いが我慢できない場合は、住民が外出しているときに担当者や管理者の立会いのもとで作業を行う方法も有効でしょう。
ただし、合意に至らない場合は、工事を行えないこともあります。
マンション大規模修繕で体調不良を起こすストレスの原因
マンションの大規模修繕は建物全体に関わるうえ、入居者が日常生活を送っている間に行われるため、ストレスになることもあります。
ここでは、マンション大規模修繕で体調不良を起こす主な原因を紹介します。
騒音・振動
マンションの大規模修繕工事に限らず、どのような工事でもストレスの原因のひとつは騒音と振動です。
特に騒音は工事上避けられません。
建設会社が防音シートの設置や設備による騒音対策を行っても、騒音は発生します。
体調不良を起こすような騒音や振動を発生させる工事として、以下が挙げられます。
- 足場工事
- 外壁工事
- 清掃作業
大規模修繕工事は騒音や振動が多く、特にコンクリートを削る音やドリルの振動、タイルを剥がす際のカッターの音などが大きく、長期間工事が続くとストレスが蓄積されていき体調不良を起こすことがあります。
臭い
ストレスの原因となるのが「臭い」ですが、防水工事や塗装工事を行う際には注意が必要です。
塗装工事で使用する塗料はシンナー臭を発するだけではなく、防水工事で使用する防水材も独特の臭いを発します。
防水工事や塗装工事中は窓を開けることができないため、窓を閉めていても独特の臭いが室内に入ってくることがあります。
臭いは音と同じで感じ方には個人差がありますが、臭いに敏感な方や喘息持ちの方は体調不良を起こすようなストレスを感じるかもしれません。
私物の片付けと保管
大規模修繕工事の範囲に各部屋のベランダやバルコニーが含まれる場合は、ベランダに置かれた私物を片付け、窓に取り付けられた網戸を外してから工事を行う必要があります。
工事の妨げになるため、私物の片付けや網戸の取り外しが必要です。
ベランダやバルコニーをプライベートな場所だとイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、ベランダやバルコニーは「個人の使用が認められている共用部分」なため、私物の片付けや網戸の撤去が必要です。
片付けや網戸の撤去は手間がかかりますが、体調不良を起こすストレスの原因は保管場所だといえるでしょう。
網戸やベランダの私物は、部屋の中に収納する必要があるため、部屋に十分なスペースがないと邪魔になります。
工事期間中にトランクルームを借りることは可能ですが、費用がかかるためストレスになるかもしれません。
プライバシー侵害
大規模修繕は、外壁工事の際に建物の周囲に足場を設置することが一般的です。
足場の架設・解体時の騒音だけではなく、工事期間中は作業員が足場の上で作業するため、工事時間中は外に人の気配があります。
加えて、作業員からはどうしても室内が見えてしまうため、プライバシー保護などの問題もあるでしょう。
気にしない方もいますが、部屋の近くで工事が行われているとストレスになります。
しかし、基本的には工事をする時間帯はカーテンを閉めるよう案内があるほか、作業員も部屋の中を覗かないように指導されているため気にする必要はありません。
洗濯物を干せない
大規模修繕の工事期間中は、建物の周囲に足場が設置され、工事期間中は大量の粉塵が発生します。
洗濯物は乾燥機にかけるか、室内に干す必要があり、家族の人数が多い家庭ではストレスを感じるでしょう。
大規模修繕期間中、ずっと洗濯物を外に干してはいけないというわけではありません。
施工業者は、作業掲示板に洗濯物を干せる日と干せない日のスケジュールを掲示しています。
外干しができる日は外干しもできますが、ホコリで汚れるのため、洗濯物は乾燥機か室内干しがベストです。
基本的に施工業者は住民にストレスを与えないように様々な対策をしていますが、臭いや騒音、振動は必ず発生してしまうため、敏感になりやすい方は注意が必要です。
マンション大規模修繕で体調不良やトラブルを防ぐコツ
事前に対策をしておくと、体調不良やトラブル、苦情を防ぐことは可能です。
ここでは、マンション大規模修繕で入居者にストレスをかけず、体調不良を起こす事態を防ぐコツを解説します。
工事中は安全誘導を行う
大規模修繕工事では、マンションの外壁に足場が組まれるだけではなく、敷地内に資材や廃棄置き場が設けられたり、エントランスや共用廊下が養生されたりすることもあります。
通常とは異なる状態になるため、各所に掲示される安全誘導や注意事項に従い、周辺を通行する際には注意をしなければなりません。
また、小さな子どもがいる家庭では、工事用の足場や立入禁止区域には立ち入らせないなど、安全確保も必要です。
洗濯物干しができないことを周知
大規模修繕工事中は、エントランスに工事掲示板を設置し、工事内容を住民に日程の案内をします。
工事掲示板は毎日変わり、工事に関する協力依頼が掲示されるため、月曜日から土曜日までどのような工事が予定されているのか、制限事項や対象箇所などの情報を確認が可能です。
特に入居者が確認すべきは、「翌日どのような作業をするのか」「翌日洗濯物が干せるのか」ということです。
翌日は部屋周辺でどのような作業をするのか、洗濯物はベランダに干しても大丈夫なのかを知ることで、対策ができるでしょう。
私物の片付けに協力
大規模修繕工事では、作業員が頻繁にバルコニーに出入りします。
そのため、大規模修繕工事に伴い、バルコニー内の清掃が必要です。
工事の内容によって清掃の程度は異なりますが、物干し竿と室外機以外は清掃しておくと良いでしょう。
廊下をはじめ共用部も他の工事を行うため、基本的には室内に収納します。
また、自身で動かせない大きな物や移動が困難な物も片付ける必要があるため、片付けが困難な場合は工事の現場代理人に相談しましょう。
網戸の取外しや取付けの協力
大規模修繕工事とは、窓周辺の下地補修やシーリング工事なども含まれます。
網戸を取り付けたままでは施工が困難な箇所もあるため、網戸を取り外さなければなりません。
多くの網戸は、室内側から網戸のロック金具を取り外す必要があり、網戸の取り外しや工事後の取り付けは各住宅で行うのが一般的で、取り外した網戸は工事中も室内で保管します。
プライバシー保護や防犯対策を行う
バルコニー側に設置された足場から、室内が見える場合があります。
特に高層階に住んでいる方は、普段はバルコニーからの周囲の視線を気にすることはありません。
しかし、大規模修繕工事中は普段とは違う環境になり、ストレスを感じることもあるでしょう。
足場上は作業員や工事関係者が通ることもあるため、大規模修繕工事中は日中にカーテンを閉めて対策をするのがおすすめです。
体調不良を防ぎ大規模修繕をスムーズに進める方法
大規模修繕工事は一般的に12~15年に1度の頻度で行われますが、マンションに住む以上避けられないもので
す。
ここでは、大規模修繕工事期間中の体調不良やストレスを感じないための工夫を紹介します。
トラブルを想定して先に対策を打つ
あらかじめトラブルを予測し、修繕計画を立て、トラブル発生時の対応マニュアルを作成しておくとよいでしょう。
大規模修繕の進行に関わる修繕委員会の方は、工事に関する知識を深め、修繕計画書を作成する際にも知識を深める必要があります。
住民や建設会社の意見を考慮しながら、計画を立てることが重要です。
予定に余裕を持った修繕計画を立てる
修繕積立金の追加や値上げは有効な手段ですが、住民の同意を得るのは難しいものです。
また、金融機関から借り入れをすればトラブルを回避できますが、月々の利息や返済を考慮すると得策ではありません。
修繕費用に関するトラブルの多くは、適切な長期修繕計画ができていないことが原因です。
経済的にゆとりのある計画に見直すことを検討しましょう。
実績のある優良業者を選ぶ
大規模修繕工事の円滑な進行のカギを握っているのは、施工業者です。
トラブルを回避する方法を熟知している施工業者もあれば、アフターケアが手厚い施工業者もあります。
大規模修繕の実績があり、トラブルを想定したうえで最良の工事を提案してくれる業者を選びましょう。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
まとめ
マンション大規模修繕で体調不良を起こす原因、トラブルの対策を解説しました。
まとめると、
- 臭い・騒音・振動で体調不良になる
- さまざまな我慢で次第にストレスが蓄積されて体調不良を起こす
- 十分な告知やストレスがかからない工事になるよう工夫する
大規模修繕は住環境を改善するために必要な工事であり、入居者は協力しなければなりません。
しかし、マンションの大規模修繕工事は、入居者が通常の生活を送っている間に行われるため不都合が生じ、予想以上のストレスがかかることがあります。
体調不良を含めたトラブルを防ぐノウハウがある業者に相談をしましょう。